カムイミンタラ逍遥 2003年7月13日 - 20日 テント縦走

前書き

今夏のメイン山行は4泊程度で、羅臼 - 知床か飯豊を計画していたが、意外に長く夏休みがとれることとなったので、大雪山でのんびりすることにした。
今回の目的は、トムラウシ登頂ももちろんだが、広大な花畑を堪能することが一番。そこで沼の原から入って五色が原を歩き、トムラウシ登頂後、高根が原を通って最後に裾合平を下ることとした。夏の大雪山は2年前、7月にトムラウシ、8月に白雲岳・お鉢と2度歩いているのだが、今回はその2つのコースを結ぶような格好になった。また、この間にヒサゴ沼に4〜5泊し、周辺を楽しく散歩しようという夢のようなプランになった。しかし、後述のとおり、散歩しようと目論んでいたこれらの日は停滞日となってしまったのだった。
また、対エキノコックスの新兵器として、今回は携帯浄水器を持参した。
荷物はかつりんが27kg、相棒が23kgくらいとなった。

7月12日

渡道

昼前の飛行機で旭川へ。飛行機が小さくてちょっと怖かった。胴体の幅は新幹線より狭かったのではないか。座席も通路をはさんで左右に2席ずつしかない。道理ですんなりと窓側の席が選べたわけだ。
旭川空港からバスで旭川駅へ。駅前の西武でナス、ピーマン、プチトマト、みかん、パンを買う。
買ったらすぐにJRに乗る。1両だけの快速列車に40分ばかり揺られ、上川駅に到着、再びバスに乗り層雲峡へ。JRに乗っている間からすでに雨模様。週間予報は良かったのになあ。層雲峡温泉に到着した頃には土砂降りになってきた。

層雲峡で準備

時刻が17時に近かったので、宿にチェックインする前にビジターセンターに行き、登山道の情報収集。7月8日の時点で、沼の原のテント場はかなり水が引いていて、幕営には問題なさそう。登山口近くの2度の渡渉も昨日・今日の雨の程度ではおそらく大丈夫ではないかということだった。しかし肝心の五色が原の花畑が、ここ数年は、以前のように花で埋め尽くされるというイメージからはちょっと違ってきているのだそうだ。写真集のような、一面の花畑は見られなくなってきているという。赤岳のあたりが今一番きれいだという話を聞き、ちょっと心が揺れる。
続いてロープウェイの駅でガスカートリッジを購入。売り場にはイワタニ500Tと250Tが1つずつしかなかったので買い占めた。2年前は4泊5日で250を2つ弱消費した。今回は7泊8日なのでこれでちょうどよいだろう。

宿泊

夕食
夕食はチーズフォンデュ
宿にチェックイン。宿はホテル・ノーザンロッジ。浴場はあまり広くなかったが、なかなかよい湯だった。食事は予約の時点で洋食(チーズフォンデュ)・和食(きのこ鍋)が選べる。チーズ好きな我々はもちろんチーズフォンデュを選んだが、ここのフォンデュは我々が作るものよりもワインの分量が少ないように思った。また、アンガス牛のステーキなども出てきて、味もボリュームもなかなかだった。
翌朝は早いので、朝食にはおにぎり弁当を頼んでおいた。沼の原登山口まではタクシーを使うことになるが、雨がまだ降っていたので今日のところは予約しないで様子を見ることにした。

7月13日 曇り

黒岳7合目
黒岳7合目はガスの中だった
4時30分起床。しかし雨が降っていた。がっかり。いちおう、おにぎり弁当を食べて出発の準備を済ませ、ごろごろしながら雨の上がるのを待った。そのまま7時30分になり、層雲峡でもう1泊することも考え始めたころ、ようやく雨が上がった。
万が一、沼の原のテント場が水没して幕営できなかったときは忠別岳避難小屋まで登るつもりでいたので、出発はできるだけ早くしたかった。また、昨日は大丈夫だろうと言われたが、この雨で川が増水し沼の原の橋が流されている可能性もないことはない。そうなったら水が引くのを待って渡渉するしかない。この2つの理由から、沼の原からの入山を諦め、黒岳から入ることにした。いきなり計画変更となってしまった。
時間が中途半端なせいか、ロープウェイは空いていた。山の上は晴れ上がっているのではないかとちょっぴり期待したが、それは甘い考えだった。7合目は濃い霧に包まれていた。

9:42 黒岳7合目を出発(高度計:1530m, 温度計:21.1℃)

花畑
キンバイソウの花が出迎えてくれた
登るにつれて(というより時間が経つにつれて)、徐々に薄日が差すようになってきた。周囲の花々も美しく、2年前と同じ、ウコンウツギやチシマノキンバイソウの群落が出迎えてくれた。
道は少しぬかるんでいたが、よく踏まれているところなので歩きやすい。しかし、昨年10月以来久々のテント泊で、初めて経験する7泊分の重荷はキツく、なかなかペースが上がらない。

11:20 黒岳(1985m, 24.9℃)

黒岳山頂
黒岳山頂は雲が多かった
予定時間を少しオーバーして登頂。周囲は雲に覆われ、あいにく展望はなかった。黒岳は4度目だが、山頂で眺めがなかったのは今回が初めてだ。
ここまでかなりのローペースだった。時刻は正午に近く、夕方までに白雲の避難小屋まで行けるだろうかと、ちょっと不安になる。黒岳石室に泊まるには早すぎるし、なんとも中途半端だ。しかし当初から2泊目はヒサゴ沼の予定だったので、今日のうちに白雲まで行っておきたいところだ。そうすれば明日ヒサゴ沼まで歩けば計画の変更分を挽回できる。というわけで、気持ちを奮い立たせて歩き始めた。

黒岳を出発

ミネズオウ群落
石室 - 赤石川間のミネズオウ群落
黒岳の西斜面はエゾツツジがたくさん咲いていた。2年前のほとんど同じ日に壮観だったチングルマは、今日はそれほど多くはなかった。日は同じでもその年の気候によって咲いている花はずいぶん違うものなのだ。
石室前では休憩せずに左折し、北海岳方面へ向かう。下り始めは雨でえぐれた歩きにくい道だが、周囲は、遠目からもなにやらピンクの花で埋まっていそうな気配がする。見るとミネズオウであった。今までミネズオウ自体を見る機会もあまりなかったが、この花がここまで斜面を染めるとは思ってもみなかった。

12:43 北海沢(1860m, 23.7℃)

花畑
北海沢の花畑
花畑
慰霊碑周辺の花畑
北海沢は相変わらず美しかった。雪解け跡を一面ピンクに染めるエゾコザクラは実に見事だ。しかし、水を汲もうと思っていたのに残雪が多くてよいところが見つからず、そのまま立ち去ることにした。
ここからはだらだらと登るが、これが結構堪える。心肺系は問題ないのだが、肩への荷重がどうにもきつく、30分ごとに休憩を入れて和らげる。道はコマクサあり、イワブクロあり、イワヒゲありで美しい。山頂まであと20分くらい、というところに遭難者の慰霊碑があるが、その周囲はチングルマやエゾツガザクラで白とピンクに彩られていた。

14:11 北海岳(2105m, 13.1℃)

白雲岳
北海岳から白雲岳を望む
北海岳の山頂からは、旭岳や黒岳は雲に覆われていたが、うまい具合に目指す白雲岳だけが見えた。ここから白雲分岐までは大のお気に入りの道である。もう今日はきつい登りはないので、楽しく下り始める。キバナシャクナゲ、ハクサンイチゲやキバナシオガマなどが咲いている。

15:49 白雲分岐(2125m, 22.8℃)

花畑
白雲岳直下の花畑
北海平のあたりだけ雲が切れていて、陽光が差し込んでいる。道の周囲は遠くからは荒涼としているように見えるが、実はキバナシオガマなどの花でいっぱいだ。分岐へは残雪を3回くらい横切るが、雪解け跡をツガザクラやチングルマが覆っている。やはりこの道は気持ちいい。途中のベンチで休んでいると、単独行者がやってきて昼寝を始めた。これもまた気持ちよさそうだ。
分岐に着いた頃から曇ってきた。小泉岳の方から人がやってきて白雲岳避難小屋の方へ下っていった。小屋は混んでいるだろうか。我々も小休止のあと、後を追った。

16:29 白雲岳避難小屋着(1970m, 18.1℃)

白雲岳テント場
白雲岳テント場の様子
トムラウシ
夕闇のトムラウシ
なんとか17時前に小屋に着けた。小屋の中を覗いてみて、迷わずテントを張ることにした。テントは11張りだけで、たいへん静かだった。夕食は黒豚カレーにした。
夕食後一時的に雲が取れ、夕闇の中に目指すトムラウシが遥かに見えた。この山旅で初お目見えだ。あまりに疲れていて、ラジオの天気予報を聞かないまま眠ってしまった。
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