カムイミンタラ逍遥 その2

7月14日 曇り

3時に起きた。寒い。プロトレックを見ると8.9℃だった。風が強い。雨が降っていないのが救いだが、しかしこれではテントの撤収は難しい。小屋の場所も分からないくらい、霧が濃い。周りのテントもひっそりとしている。・・・すっかり停滞ムードが漂い、再び眠りについた。
夜が明けてからだんだん霧は晴れ、明るくなってきた。そして時折雲が切れて、高根が原が見えるようになってきた。隣のテントの人と話をしたが、やはり移動するか迷っているようだった。しかし、周りの住人たちは徐々にテントをたたんで出発していった。我々はどうしようか。昨晩天気予報を聞かなかったことをふと思い出し、携帯で天気予報を見てみると、天気は下り坂にあるようだった。今日ならまだ降られなくて済むかもしれない。ということで、強風吹きすさぶ中テントを撤収し、出発することにした。遅くなったので忠別岳避難小屋までの行程とした。

10:16 出発(高度計:2010m, 温度計:15.1℃)

キバナシオガマ
小屋の前はキバナシオガマが満開
シャクナゲ
シャクナゲの斜面
強風で寒いのでカッパ上下を着こんで出発。キバナシオガマの咲き誇る、水流でえぐれた土の道を雪渓に添うように下っていく。白雲岳の斜面一面にキバナシャクナゲが咲いているのが見えた。

高根が原へ

高根が原
ガスの高根が原を振り返る
エゾツツジ
エゾツツジと緑岳
30分ほども下ると道は右に切れ、ハイマツをかいくぐるように数メートルの段差を登って尾根上に出る。ここから道は砂礫帯の中となる。そして砂礫帯といえば、コマクサである。ここからコマクサの群落が広がる道となるのだ。2年前は近くに大群落があったように憶えているが、今回は道から遠くに咲いているものが多いようだった。
見渡すと、はるか忠別岳の山頂は雲の中であった。この高根が原だけが雲の下にあり、歩いていく道を望むことができた。時折晴れ間が出て旭岳が垣間見えた。

11:34 三笠分岐(1800m, 20.0℃)

花畑
キバナシオガマとホソバウルップソウの混生
三笠新道の分岐の周辺はウルップソウが多い。この時季ではほとんど終わりなのだが、いくつか生きのいいものが残っており、キバナシオガマとの混生も見られた。濃紺と黄色の組み合わせが見事だ。
高原沼方面への道は、やはり閉鎖されていた。

コマクサ・ロード

コマクサ
密度の濃いコマクサ群落
少し休憩して再び歩き出すと、なにやら前方がピンク色をしている。なんとそれは、道の両脇にずううううううううううっと続くコマクサの群落だった。これほどまとまってコマクサを見たのは初めてだ。密度も濃いし、面積も広い。そんなすばらしい、目を奪わずにはいられない大群落が45分歩く間延々と続いたのだった。道はほとんど平坦か、ごく緩い下り。これで天気さえ晴れていてくれたらなあ。でも、順調に行けば帰りにもう一度このコマクサ・ロードを通ることができるだろう。早くも帰りが楽しみになってきたのだった。

平が岳通過

花畑
平が岳あたりのチングルマとエゾコザクラの花畑
コマクサ・ロードは突然のハイマツ林の出現によって終了する。このあたりが平が岳だろう。断続的にハイマツ漕ぎをすると - - とは言っても一般登山道なので枝も切ってあり道もはっきりとわかるのだが - - 途中、砂漠の中のオアシスのように、チングルマとエゾコザクラの花畑が出現。ここは2年前も美しかった。そしてまたもやハイマツ漕ぎをし、切り抜けるとまたもやコマクサ群落が。ここは花の密度はピカイチだったが、先ほどまでのコマクサ・ロードと違って群落はすぐに終了。

ガスの中をだらだらと登る

ガスの道
ガスの中を行く
群落を過ぎると、道ははっきりとした登りになる。とは言っても自転車でもなんとか登れそうなくらいの緩い斜度だ。もちろん、こぶし大の石がゴロゴロの道なので実際に自転車での通行はできない。あたりはいつの間にか霧に包まれてきて、視界は数十メートルほどになってしまった。モチベーションは下がる一方で、黙々と進む。道が平坦になりごく短いハイマツ林を抜けると眼下に忠別沼が見える。・・・はずなのだが、今日は全くわからない。

14:07 忠別沼(1810m, 16.3℃)

忠別沼
忠別沼もガスの中だった
忠別沼でも濃い霧に覆われたままであった。木道の待避線にザックを下ろそうと思っていたが、湿っているので止めた。辺りは花に覆われているようだが、霧が深くてよくわからない。まあここも帰りにまた通るだろう。そのときはどうか晴れていますように。
沼を出ると忠別岳への本格的な登りになる。とは言っても今までの道と同じく、自転車でも登れそうな斜度。しかしこちらは沼を出てすぐハイマツ漕ぎとなりそれが30分くらいは続くであろうか。ハイマツの後はまたこぶし大の石ゴロの道になり、だらだらと登っていく。振り返るとちょっとの間霧が晴れ、忠別沼が一望できた。しかしまたすぐ霧に覆われ、視界がないとすぐ萎える悪い癖で、たいそうばててきた。

15:17 忠別岳(2005m, 14.3℃)

忠別岳山頂
またもやガスの忠別岳山頂
2年ぶりの忠別岳山頂はまたしても深い霧であった。寒いし、休憩もそこそこにすぐ出発。もうあとは小屋まで下るだけだ。
山頂からいったん東に下るが、ここもハクサンイチゲなどの花がたくさん咲いているようだった。帰りにはどうか晴れますように。
道は、廃道への分岐を分けて右(南)に曲がり、ちょっと石ゴロの道を下るとハイマツ・ロードとなる。背丈ほどのハイマツに、引っ張られたりつつかれたりしながら下る。が、ここは以前通ったことのある道、最初からハイマツ漕ぎをする覚悟は出来ていたし、「山と高原地図」のコースタイム40分が大嘘だということもわかっている。17時までに着けばいいや、と軽い気持ちで歩く。

16:56 忠別岳避難小屋(1650m, 15.5℃)

分岐からいきなりハイマツの中を進み、2度3度とうねうね曲がりくねって最後に雪渓を渡ると小屋に到着。気楽に歩いたせいか、17時ぎりぎりになってしまった。今日は歩いていて対向者1パーティ(2人)に会っただけだった。
小屋を覗いてみたが混んでいるのか判然としない。状況を聞くと「混んでいる」というのでテントを張ることにした。後で知ったのだが、1階はいっぱいだが2階が荷物置き場状態で空いていたらしい。まあでもテントの方がいいや。それにこの荷物担いで2階に上がるのもたいへんだし。小屋の周辺はごみを焼いたあとがあって汚れていた。また、6月には小屋にごみを置いていった登山者がいて、キツネに内部を荒らされたということで、注意喚起の張り紙がしてあった。
テント場は小屋を2,3分下ったところ。我々を含めてわずか3張りであった。水は、雪渓を対岸に渡り返したところに、もう一段上の雪田からの雪解け水が流れていて、それを採った。雪渓をサイトの下の方へ下って採っている人もいたが、それじゃ小屋のトイレの下じゃん。
夕食はマーボナス。人が少なかったので今日も静かでよく眠れた。
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