カムイミンタラ逍遥 その3

7月15日 晴れのち曇り

テント場
朝のテント場と忠別岳避難小屋
忠別岳
テント場から忠別岳を望む
4時起床。テント内は11.1℃で、昨日よりは暖かかったと言える。空は晴れていた。北海道に入ってから初めて太陽を見た。今日はヒサゴ沼までの予定なのでゆっくりの出発で構わない。他の2パーティはすでに出発準備を終えたようだ。忠別岳が朝日に映えている。

7:36 出発(高度計:1685m, 温度計:19.4℃)

朝露対策のためカッパを着て出発したが、すぐ暑くなってきた。それにもうこの時間では露は乾いてしまったようだ。20分ほどで登山道との分岐に着き、すぐにカッパの上着を脱ぐ。ズボンを穿いたままなのは、ここから五色岳へかけてのハイマツ対策である。かつりんの下半身の服装は短パンとタイツ。カッパがないとハイマツの枝の切り口でタイツが破れてしまう恐れがあるのだ。
気合を入れて、要所ではうおおおーと唸り声をあげながらハイマツ林を突き進む。ここも覚悟が出来ていたので、なんとか、ほぼコースタイムどおりに五色岳に到着することができた。途中、枝のビンタは3回、弁慶打撲は軽いのが2回で済んだ。しかし全身に花粉を浴び、ザックのストラップやカメラのケースのように黒い部分は花粉が積もって緑色になっていた。それにしても、ここをもう一度帰るのか・・・

9:16 五色岳(1915m, 23.1℃)

トムラウシ
トムラウシが見えた!!
山頂からはトムラウシが見えた。しかし徐々に雲に覆われて、休憩している間にすっかり見えなくなってしまった。これから五色が原に行こうと思っていたのに、これでは広々とした花畑の向こうにトムラウシの図、が見られない。残念。休憩中の、ヒサゴ沼から来たという3人組によれば、今朝は快晴で眺めが最高だったそうだ。
ここで大休止。行動食をとる。ザックをデポして、水筒と軽食とカメラだけを持って五色が原へ下る。

五色が原

五色が原
五色が原の木道を下る
キンバイソウ
五色が原のチシマノキンバイソウ群落
いきなりぬかるみの道だがこれは数メートルで終了し、すぐに木道の階段になる。層雲峡のビジターセンターでの情報どおり、すぐにチシマノキンバイソウが咲き乱れる草原が広がり、なおもだらだらと20分ほども下るとハクサンイチゲの花畑に。広々として気持ちのいいところだ。ほかにも花がいっぱい咲いていて、はるかかなたには紫色に染まった地点が見えたが花の形までは見分けられない。木道の待避線に座ってのんびりと景色を眺めた。道端の草の葉がむしりとられたような痕跡があった。
10数人の中高年のパーティが沼の原方面から登ってきた。昨日大沼でキャンプをして、今日は五色岳までのピストンらしい。そのガイドの話を盗み聞いたのだが、草をむしりとったのはどうやら熊の仕業らしい。そういえばあたりはヒグマの好物であるハクサンボウフウが多く咲いていた。
ずっと頭の中で描いていたイメージよりははるかに花は少なかったが、あらかじめビジターセンターで情報を仕入れていたせいか、あまりがっかりはしなかった。これだけでも充分に、普通以上にきれいな花畑だ。しかしやはりトムラウシの姿がないのは残念だった。

11:05 五色岳発(1920m, 24.0℃)

化雲岳
木道が化雲岳へ続く
またもやハイマツ漕ぎ。しかしこれからは今までの道ほどひどくはない。
化雲岳の方が標高が高いのに、なぜかだらーっと下っていく。20分ほどでハイマツは途切れ途切れになり、木道の道へと変わる。本来なら左前方にトムラウシの姿があるはずだが、雲の中だ。化雲岳は辛うじて見えていた。
道は時折平坦になったりしながらも下りつづけ、ヒサゴ沼と山頂への分岐のところで急激に上昇に転じる。

12:32 化雲岳(2000m, 22.2℃)

化雲岩
ガスの中の化雲岩
花畑
化雲平のハクサンイチゲ群落もガスの中
山頂に着いたころ、あたりは再び濃いガスに包まれてしまった。視界は数十メートルといったところか。携帯電話で天気予報をチェックしようと思ったが、途中で切れてしまった。まだ昼なので、たっぷり休憩。
南の分岐に向けて下り始めたところ、一面のチングルマ群落があって思わず叫び声をあげてしまった。ガスで遠くが見えないだけに、果てしなく続いているような気がしてしまう。そしてもうちょっと下ると、今度は一面のハクサンイチゲ群落に、今度はもう声が出ない。これまた果てしなく続いているようだ。ああ、晴れていれば・・・

14:02 ヒサゴ沼避難小屋(1745m, 24.5℃)

雪渓
ガスの中、雪渓を下る
化雲岳からヒサゴ沼へは木道をずっとあるき、岩まじりのぬかるみ地帯を過ぎてから雪渓の下りとなる。ガスに覆われているのでちょっと怖かったが、幸い踏み跡が多くあったので迷わず行けた。雪渓の下りは2回あり、最初(つまり上)の方が長かった。
早く到着できたが、よい場所はすでにテントが張ってあった。これから最低でも3泊はするので慎重に場所を選び、設営後、治水工事をした。気象通報を聞く余裕もあった。
夕食はチンジャオロースーと鳥めし。ピーマンの炒めが足りずにちょっと青臭くなってしまった。テントは13張り。静かでよかった。しかし前日は夕方になってから15人も押しかけて小屋に入れず、たいへんだったそうだ。そのへんのキャンパーからシートを借りて寝た人もいたらしい。ここまで来て小屋の前でビバークとは・・・ リーダーは、小屋に入れない場合を想定していなかったのか? つうか、ツェルトすら持ってなかったのか? いろいろ考えて眠れなくなってしまった。

7月16日 霧のち雨

テント場
ヒサゴ沼のテント場の様子
朝のテント内は12.7℃だった。濃い霧が辺りを覆い、すぐそばにある小屋すらぼやけて見える。晴れたらトムラウシ、曇っていたらポン化雲岳の辺りを散策しようと考えていたが、どうしようか・・・ と思っていたところ、6時ころから雨が降ってきたので停滞決定。ぐうぐう寝たり、ブランデーケーキでお茶をしたりして楽しく過ごした。
夕食はチャーメンとシウマイ。チャーメンのあんには魚肉ソーセージを入れ、燻たまを添えてみた。チャーメンが思ったほど損壊していなかったのが嬉しかった。ヒサゴ沼では周辺から沼に流れ込む雪解けの沢が水源となる。しかしこの低温のせいだろう、テント場に近いところがこの日から涸れてしまった。
テントは減って、7張りとなった。週の半ばだからだろうか。天気予報を聞くと北海道全体が弱い気圧の谷に入っているという。うーん・・・明日はどうなるか・・・

7月17日 曇りのち雨

朝は12.9℃。どんよりと曇っているが霧というわけではない。2日連続停滞は避けたいところ。幸い雨は降っていないので、ポン化雲岳に出かけることにした。ポン化雲岳自体には登ることができないが、2年前天人峡へ下山の折、周辺の花畑の美しさに圧倒されたので、今回もその花畑を楽しもうと、当初から予定に組み込んでいたのだ。
キツネにテントを荒らされるのが怖いので、食料やごみはザックに詰め込んで小屋にデポさせてもらうことにした。皆出発した後で、内部には連泊者の荷物があるだけだった。

7:24 出発(高度計:1650m, 温度計:23.6℃)

雪渓
雪渓を登る
曇りにしては視界はなかなか良好。ああ、おととい通った雪渓はこんなんだったんだー、と思いながら登る。行く手に大きな岩が見え、あれを目指せばいい。あの大岩にはペンキ印がついているのだ。おとといは雪渓の対岸すら見えなかったのだ。

8:33 化雲岳(1885m, 18.7℃)

化雲岩
化雲岩は今日もガスの中
山頂は霧であった。再び携帯通信にトライしたがまたもやダメだった。ちゃんと棒は3本立つし、i-modeマークもつくのになあ。
化雲岩のたもとに糞があった。色・形からしてヒトのものではない。こんなところにも動物が来ているのだ、と思った。霧は徐々に霧雨を含むようになってきた。

9:30 撤退(1835m, 16.6℃)

シオガマ
雨に濡れるシオガマの花畑
化雲岳からはいったん下る。石ゴロの道で、ガスが濃いと迷いそう。ときどき、目印に小さなケルンを作りながら歩く。周辺はコマクサが多く咲いていた。下りきってからはだらだらと登る。なかなか花畑は現れなかった。記憶では、最初に出てくる花畑はシオガマの濃いピンクだ。
・・・しかし、さきほどまで霧雨だったそれは、いまやはっきりと線になって見えるほどの雨に変わっていた。帰る?どうする? を連発しながらなおもだらだらと歩く。するとお目当てのシオガマの花畑に着いた。よし、これで目標達成だ。というわけでそそくさと撤退。

10:03 化雲岳(1885m, 15.4℃)

11:06 ヒサゴ沼(1620m, 17.5℃)

帰り道は重い雰囲気が漂い、ふたりともほとんど無言で歩いた。沼への下りの途中では霧はなくなり、いつの間にか雨もあがりカッパが乾いていた。しかし沼へと出る最後の潅木帯の露で再び濡れてしまった。でもこの時間なら小屋は空いているだろうし、小屋でだべりながら乾かせばいい。
歩いたのはわずか3時間ほどなのに、なんだかめちゃくちゃ疲れた。小屋には誰もいなかった。

そして今日もまったりと過ごす

12時頃だろうか、小屋に新たな人が到着したのを機にテントに戻ることにした。テントに戻ってから次々と到着する人が現れ、ちょっとしたラッシュになった。15人もの団体まできた。一体どうして、定員40人の小屋にそんな大勢で来るのだろう。その神経が(以下略)
ところで、明日の天気はどうだろう。帰りの飛行機が21日の朝なので、20日中に下山しなければならない。明日18日にトムラウシに登れなかった場合は、19日に登って20日に天人峡に下りることになり、高根が原のあの素晴らしいコマクサ・ロードと、今回の大きな目的のひとつ、裾合平のチングルマ大群落が見られなくなってしまう。それともトムラウシを諦めて白雲岳に向かうか? ヒサゴ沼で4泊してトムラウシに登れないなんて、史上最大の敗退だ。トムラウシだけはなんとしても登りたい。でも、今日のような雨でも登るのか?・・・そんなの楽しくないし、我々の山歩きじゃあない。
史上最大の敗退も覚悟しつつラジオを聞くと、天気はいくぶん好転し、明日は気圧の谷を抜け午後から全道的に晴れ間が出てくるだろうという。ではゆっくりめに出発して昼前後に登頂し、頂上で晴れるのを待つことにしよう。
夕食はパエリャ。水の分量を減らして、液状のパエリャの「素」をその分入れ、普通に米を炊く。味も香りもかなりパエリャっぽい。具を工夫すればもっとおいしくなるだろう。またサラダに豆サラダを食べた。
テントは大分増え、20張りほどにもなった。
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