カムイミンタラ逍遥 その7

7月19日 晴れ

夜明け
ヒサゴ沼の夜明け
2:30起床。快晴だ。うーん、この天気があと1日早ければ・・・いや、それはもう言うまい。晴天の高根が原だって楽しみにしていたのだ。

4:59 出発(高度計:1595m, 温度計:14.9℃)

雪渓とトムラウシ
雲海とトムラウシを眺めながら雪渓を登る
化雲岳に向けて登るにつれ、展望が広がってきた。雲海がすばらしかった。ほんとうに海のようだ。日高の連なりもくっきり見えた。トムラウシも今日は優しかった。

5:59 化雲平(1835m, 20.7℃)

化雲平
カムイミンタラのながめ
この素晴らしい高原の広がりはどうだろう。2年前はここで突然トムラウシが雲に隠れてしまったのだが、今日はそんな気配は微塵もない。6:30に出発することにして、ザックを置いて撮影会を開始。
みんな化雲の山頂を目指していくが、実は一番花が美しいのは巻き道である。目の前にどでかい花畑が広がり、その向こう、真正面にトムラウシが堂々と構えているのだ。

7:02 化雲平発

化雲平
化雲平のハクサンイチゲ群落とトムラウシ
しかし30分で満足できるはずはなく、結局1時間近くもいてしまった。こんなんで白雲岳に着けるかなあ。遅くとも17時までには着きたいのだが。
この日は木道の終点付近のハクサンイチゲ群落がすばらしかった。また、巻き道を少し行ったところから見えた花畑も、白・黄色・ピンクの彩りがすばらしかった。ちょっと遠くて、望遠にしても花の種類はわからなかった。
五色岳方面に向かって下りきったところの雪渓にはトレースが付いていた。この雪渓はヒサゴ沼から登ってきた雪渓の延長である。視界さえよければ五色岳方面へのショートカットとして利用できるが、化雲平の花畑が見られないので我々は使わなかった。

8:00 五色岳(1805m, 26.8℃)

旭岳と忠別岳
旭岳と忠別岳が見えた
ハイマツ林でスピードを上げないと、後の高根が原が楽しめなくなってしまう。ほとんど無言でかなりハイペースでとばして歩いた。山頂から旭岳・トムラウシがきれいに見えた。今日はあの旭岳を眺め、目指して歩くのだ。
我々と同じ方向を歩いていた人たちはみなここから沼の原に向けて下山していくようだ。

8:46 忠別岳避難小屋分岐(1640m, 26.7℃)

忠別岳
忠別岳の岩肌
気合を入れて30分ちょっとでハイマツの下りを突破。往きに通ったときに感じていたが、実はここはハイマツの這う向きが、五色岳の方を向いている。つまり、忠別岳に向かって歩くと枝やら根っこやらが払えず、自分に突き刺さってくる。相棒Kはこの下りで弁慶をかなりしたたかに打ち、血がにじむほどの傷を負ってしまった。
見上げると忠別岳の岩肌が荒々しく見える。通過点として見られがちな山だが、ここから見える姿は堂々として立派だ。ここからが今日一番の登りだ。まだまだ気は抜けない。

10:25 忠別岳(1885m, 23.1℃)

忠別岳山頂付近
忠別岳の山頂近くは花が満開だ
これで3度目となった忠別岳は初の快晴であった。東斜面の花畑が美しいのは知っていたが、これはなんということだろう。チングルマ・ハクサンイチゲで埋め尽くされた斜面の向こうに、北を見れば白雲岳南をみればトムラウシが光っていた。まったく予期していなかった花畑の出現に、またまた大休止で30分の撮影会となってしまった。

11:41 忠別沼(1735m, 27.1℃)

忠別沼
エゾコザクラ咲き乱れる忠別沼
忠別岳
忠別沼斜面の花畑と忠別岳
沼の周辺はエゾコザクラがうじゃうじゃと咲いていた。水はきれいに透き通り、水中にはエゾサンショウウオらしき生物がうじゃうじゃとうごめいていた。
とりあえずここに昼までに到着するのが目標だった。そうすればあとはコースタイムが3時間半の高根が原をゆっくりと満喫しながら歩けばいいのだ。これで夕方までに白雲小屋に着ける目処がついた。

高根が原

白雲岳
チシマキンレイカと白雲岳
沼の正面の坂を登りきるとしばらくはチシマキンレイカで黄色になった道を歩き、平が岳を越え、お待ちかねのコマクサ・ロードへ。目指す白雲岳をバックにコマクサの大群落が映え、そしてこれから歩く道がずっと続いているのが見える。なんとも素晴らしい道を満喫できた。やっぱり戻ってきてよかった。・・・しかし、行けども行けども分岐の標識が見えてこない。そういえば、往きに分岐から平が岳のハイマツまで45分くらいかかったっけ。するとまだあとしばらくは着かないのか・・・

14:28 三笠新道分岐(1695m, 20.5℃)

高根が原
白雲岳目指してひたすら歩く
ようやく分岐に着き、へたり込むようにザックを下ろして休憩。ここまで来ればもうあとちょっと、2時間もかからないだろう。ここまでの道は石ゴロだったが、分岐から北は石の少ない道になるのでスピードアップ可能だ。
それにしても長かった。いくら好きな道でも、これじゃあ好きを通り越して苦行である。標高差は300m以内なのだが、なんだかすごい疲れ方だ。そういえば、我々はこれだけペースが遅いのに、誰も追い抜く人がいなかった。白雲からヒサゴに向かう人は多くても、逆はあまりいないのだろうか。
分岐には、白雲小屋から散歩に来ているらしい軽装の人が何人かいた。

15:59 白雲岳避難小屋(1905m, 20.1℃)

テント場
白雲岳テント村の様子
ようやく白雲岳避難小屋に着くと、小屋の前で休んでいた人たちが労ってくれたのが嬉しかった。しかしテント場の方を向くと・・・「な、なんじゃこりゃぁ!!」思わず叫んでしまい、笑われた。3連休初日のテント場は、多くのテントでごった返していたのだった。運動会のときの本部のような大テントまである。すでにアルコールの入ったおぢさんたちが民謡大会までおっぱじめて、草津節が大音量で響き渡っていた。今まで夢のような気分でいたのに、なんだか一気に現実に引き戻されたような気がした。
テントはなんとか張ることができた。しかし残っていたところは人通りが激しく、通行人にしょっちゅう張り綱をひっかけられた。ティッシュを張り綱に巻きつけて目印にしたら、事故は激減した。

その夜

最後の夕食はうな丼。味が薄く感じたのはこれまでの長旅で体が変わってしまったせいだろうか。1週間ぶりの牛乳が胃に染み渡り、美味かった。ここまで歩荷してきた甲斐があったというものだ。
明日の行程を考える。やはりここまできたら最高峰旭岳に登るのが礼儀ではないかとも思ったが、裾合平の花畑が最大の目的であるので、当初の予定どおり旭岳には登らないことにした。その代わりと言ってはナンだが、白雲岳に登ることにした。旭岳は過去に2回登っているが、白雲は1回しかない。それに白雲岳は相棒Kの大のお気に入りの山なのだ。
問題は下山後である。明後日21日の朝の飛行機に乗るためには、旭川周辺に泊まっている必要がある。白雲岳は小屋まで行けば携帯が通じるので(テント場は圏外)、あらかじめピックアップしておいた旭岳温泉のいくつかの宿に電話をいれてみたが、どこも満室という。旭岳温泉にもテント場はあるが、最終日も幕営という事態はちょっと避けたいところ。やはり早く下山して、市内の宿をとる方向でなんとかするしかないな・・・
で、4時出発を目標に、早く寝ようと思ったら、これだけの数のテントがあるのだ、やはり騒々しい。おまけに20時過ぎに到着してテントを張る人までいて、こりゃあいつになったら眠れるだろうと思った。それでも疲れのためだろう、いつの間にか眠ってしまったのだった。テントは最終的には70張り近くになったと思う。
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