3Rイニシアティブ閣僚会合の問題点
化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

掲載 2005年4月29日
更新 2005年7月 6日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/G8_3R/G8_3R.html


はじめに
3R:廃棄物の発生抑制(リデュースReduce)、再使用(リユースReuse)、再生利用(リサイクルRecycle)


■このページでは、2005年4月28日(木)〜30日(土)に東京で開催されたG8 / 3Rイニシアティブ閣僚会合で、日本が中心となりG8首脳諸国が進めようとしている廃棄物の開発途上国への流通拡大の問題点について明らかにします。
 この閣僚会議のフォローアップとして、2006年3月6日〜8日 東京で開催された3Rイニシアティブ高級事務レベル会合の報告、及び3Rイニシアティブの監視のページもごらんください。

■廃プラ燃やすな!市民協議会が「3Rイニシアティブ閣僚会合に向けた持続可能社会を目指す市民提言」を発表し、当研究会を含む市民団体が賛同しました。この市民提言についてはここをクリックしてください。

■4月29日の3R閣僚会合で日米が中心になって推進している先進国から開発途上国への物品(実態は廃棄物)の流通について、開発途上国から厳しい意見が出されました。日米政府は開発途上国の声に真摯に耳を傾けるべきです。「開発途上国を中心とした発言」についてはここをクリックしてください。

■会議にオブザーバーとして参加した国際環境NGO バーゼルアクションネットワーク(BAN)と脱焼却グローバル連合(GAIA)の代表が4月30日に発表したBAN/GAIA共同プレスリリース

■会議にオブザーバーとして参加した国際環境NGO バーゼルアクションネットワーク(BAN)の提言:
第一回3Rイニシアティブ会合議長総括に対するBAN・GAIAの分析・提言」 (2005年7月6日)
会議概要

開催時期 2005年4月28日(木)〜30日(土)
開催場所 東京プリンスホテル・パークタワー(港区芝公園)
招待参加者(予定) G8(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ロシア、イギリス、アメリカ及び欧州委員会)及びその他招待国(ブラジル、中国、インド、インドネシア、マレイシア、メキシコ、フィリピン、韓国、シンガポール、南アフリカ共和国、タイ、ベトナム)の担当閣僚、関係機関(UNEP、OECD、バーゼル条約事務局、アラブ連盟)の代表
議題 G8行動計画を踏まえ、以下の5つの課題を中心に討議
 [1] 3Rの推進
 [2] 物品等の国際流通に対する障壁の低減
 [3] 様々な関係者間の協力
 [4] 科学技術の推進
 [5] 先進国と開発途上国との協力


会議資料


会議報告


報道資料


問題点

  • この会合に向けたイシューペーパー及びバックグラウンドペーパーによれば、G8各国内における廃棄物の発生の抑制(Reduce)よりも、リサイクル(Recycle)の方に、より重点が置かれているように見える。特に、討議課題 [2] 「物品等の国際流通に対する障壁の低減」 が問題である。

  • 人の健康と環境保護に基づくバーゼル条約(注1)のみならず、わが国の廃棄物処理法(注2)においても、「国内処理の原則」を明確に規定している。それにもかかわらず、経済的動機に基づくリサイクルという口実の下に、G8諸国をはじめとする先進国で発生する廃棄物の処理を開発途上国に押し付けることで、自国の廃棄物問題の軽減をはかり、その結果、開発途上国の人々の健康と環境を脅かしている(注3)。 これは環境正義(Environmental Justice)の観点から許されない。
     注1 : バーゼル条約前文
     注2 : 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(抄)
     注3 : 海外廃棄物関連ニュース

  • 先進国の廃棄物処理システムに、開発途上国という「安全弁」をつけることにより、廃棄物の発生を抑制するというインセンティブが減少し先進国の廃棄物発生の削減が更に大きく後退することが強く懸念される。

  • 開発途上国に廃棄物処理/リサイクルを依存することで、国内の廃棄物処理/リサイクル・システムが崩壊しかねない。環境保全と両立する廃棄物処理/リサイクルを確実なものとするためには、国内の健全な廃棄物処理/リサイクル産業の育成が欠かせない。

  • 中国をはじめとする開発途上国は先進国からの廃棄物の受け入れを望んでいない。
    このことは4月29日の3R閣僚会議における開発途上国からの発言で確認された。
    3Rイニシアティブ閣僚会合/廃棄物流入についての開発途上国を中心とした発言
    各国の中古製品・循環資源に係る輸入規制(経済産業省資料)
    廃棄物等の輸入に関する中国国内法規制等の日本語訳掲載のお知らせ(環境省)

  • 途上国は日本のみならず米国や欧州からも廃棄物を大量に受け入れているが、途上国にとっても自国の廃棄物処理及び廃棄物処分場の問題は、環境保全及び自国民の健康の観点から、先進国以上に大きな問題である。シリコンバレーを上回るハイテク都市といわれているインドのバンガロールでは自国で発生するコンピュータ関連電子廃棄物であふれている。
    循環資源の日本からの輸出量の推移(経済産業省資料)
    朝日2005年1月30日/さらば浪費社会(3)
       「リサイクル、崩壊しかねない ごみ資源のみ込む中国 減量・循環の方策課題」
    自分のガラクタは必ずしも他人の宝物にはならない/ 責任を持って電子廃棄物の山に対処する

  • 資源循環の観点から廃棄物を再生利用の目的で輸出する場合には輸出前に有害物質を全て取り除きクリーンな資源として輸出すべきであり、また、中古品を再使用の目的で輸出する場合には輸出前に再使用に耐える機能を有することを確認すべきである。

  • 中国の例
    テクノロジー廃棄物の山(中国グイユ市)
    女性達が廃棄ケーブルの被覆をはがし中の銅線を回収
    電子廃棄物の爆発的増加(その5)中国の現状
    Environmental Health Perspectives
    Volume 110, Number 4, April 2002
    中国の中古製品・循環資源に係る輸入規制
    (経済産業省資料)
    • 中国では、1998 年1 月1 日以降、「中古機電製品輸入管理強化に関する通知」に基づき、中古電子・電気機器の輸入に際して「機電輸出入司」の許可が必要であるとされ、許可がない中古電子・電気機器の輸入は禁止されている。また、廃中古電子・電気機器についても、2000 年4 月以降、一律輸入禁止となっている。しかし実際には裏ルートで中国本土に運び込まれている。

    • 2003 年12 月の告示111 号により、2004 年7 月1 日から中国向けに再生資源の輸出を行う外国企業に対する書面審査等による登録制度が実施されることが定められた。臨時登録申請は2004 年5 月から開始されている。

    • 2004 年5 月に、中国国家質量監督検験検疫総局の2004 年公告47 号が出され、日本から中国への廃プラスチックの船積前検査が暫定的に停止され、日本からの中国向け廃プラスチックの輸出が一時的に禁止されることになった。


廃棄物のアジアへの移動 (環境省資料/バックグラウンドペーパー別紙7)




廃船の輸出・解体(解撤)の問題が触れられていない
船舶解体解体問題のページへ

解体用に砂浜に引き上げられた廃船
(バングラデシュ・チッタゴン市シタクンダ地域)
バングラデシュの船舶解撤ビジネスにおけるアスベスト
  • 廃船は、アスベスト、有害化学物質(PCB、PCV、PAH(多環芳香族炭化水素)、有機スズ化合物、臭素化難燃剤、等)、廃燃料、重金属など、有害物質を大量に含んでいるが、これらの廃船は、環境法や労働安全衛生法の整備・実施が十分でなく、人件費が安いバングラデシュ、インド、パキスタンなどの 開発途上国に輸出され、劣悪な作業環境の下で解体作業が行われ、これら開発途上国の人々の安全と健康、及び環境を脅かしている。

  • 廃船の多くが解体用にG8首脳国を含む先進国から開発途上国に輸出されているにもかかわらず、今回の3Rイニシアティブ閣僚会合では廃船の取り扱いについて、一切触れられていない。

  • 有害物質を含む廃船をバーゼル条約の対象とすることにアメリカ、カナダ及び日本が中心となって強く反対している。

  • わが国では廃船は廃棄物として統計資料に含まれているのか?日本の廃船の量は年間どのくらいなのか? 解体のために途上国に輸出されている日本の廃船はどのくらいなのか? 自衛隊、海上保安庁、その他政府所有の艦船はどうなっているか? どこで誰が解体を行っているのか?

  • かつての造船・海運大国日本が昭和40年代、50年代に建造し、就航した多くの船はどうなったのか? 日本の船舶の80%以上が船主に法の支配の外で操業することを許す便宜置籍船であると言われている「日本財団図書館/国際海運の構造と便宜置籍船」。バングラディシュのチッタゴンで解体される船舶は70年代後半以降に建造された大型商船で、その 7 割が日本製であるとの報告がある「シップ・アンド・オーシャン財団ニュースレター第110号 2005.03.05 チッタゴン船舶解撤場の現状」。これらの船舶解体に対する日本の責任はどうなっているのか?
国際人権連盟(FIDH)/船舶解体問題に対する早急な世界的解決のための共同宣言(案)
ノルウェー、国際的船舶廃棄に関し、二面性を非難される
バングラデシュの船舶解撤ビジネスにおけるアスベスト
カナダの廃船が非難の的 有害廃棄物の国際条約を無視
イギリス ”汚染廃船の輸出取引は違法” 判決


資料:日本における廃棄物輸出

番外編
行政と近すぎる報道の危なさ 〜3Rイニシャティブの委託費が1億円〜



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