2006年3月6〜8日 東京
3Rイニシアティブ高級事務レベル会合


化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

更新 2006年3月29日

概要
 2006年3月6日〜8日 東京で開催された3Rイニシアティブ高級事務レベル会合を、6日及び8日の2日間、傍聴したので、その概要を報告します。
 尚、この会議に先立ち2005年4月28日(木)〜30日(土)に東京で開催されたG8 / 3Rイニシアティブ閣僚会合の問題点及び3Rイニシアティブの監視のページもご覧ください。(安間 武)


■3Rイニシアティブ高級事務レベル会合の開催について
環境省平成18年2月13日報道発表
3Rイニシアティブ高級事務レベル会合の結果について(環境省

○開催の経緯
 平成17年4月に東京で開催された3Rイニシアティブ閣僚会合のフォローアップとして、ハイレベルの政府関係者による会合を開催し、閣僚会合での成果を実施に移す。

○開催時期
平成18年3月6日(月)〜8日(水)(プログラム案については、別紙1参照)

○参加国・国際機関の代表(詳細は環境省リスト
3Rイニシアティブ閣僚会合出席の20ヶ国及び関係国際機関
G8(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ロシア、イギリス、アメリカ及び欧州委員会)、ブラジル、中国、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、韓国、シンガポール、南アフリカ共和国、タイ、ベトナム、ADB、アラブ連盟、バーゼル条約事務局、OECD、UNEP、UNDESA、UNCRD、UNESCAP

○主な議題
(1)各国における3Rの推進
 各国・国際機関の3Rに関する取組事例を共有し、途上国での3R推進に関する支援や、関係者間の協力のあり方などについて議論

(2)国際的な3Rの推進
 循環資源や再生産品の国際的な移動と環境保全の確保、そのための各国間及び関係者間の協力のあり方などについて議論

■NGO・市民の参画について

○会議は、政府、国際機関だけで行われ、産業界、NGOs、及び市民が発言又は発表する機会は設定されていなかった。
○一般傍聴は3月6日と8日の総括セッションだけで、3月6日夕刻及び7日の会議(分科会)への一般傍聴は許可されなかった。
 この件について、バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN) が、2006年3月7日、プレスリリース 「3Rイニシアティブ会合の矛盾 市民・メディアに閉ざされた扉」 を発表して抗議した。
○7日の分科会でNGOの役割についての議論があり、8日の議長総括案の討議でも議論があった。
 (8日議長総括/NGOsの役割の項参照

■船舶解体問題について

 アスベストやPCB等有毒物質の除去がなされていない廃船が開発途上国に解体のために輸出され、開発途上国で人の健康と環境を大きく損なっていることについては、欧州委員会が6日の総括セッションで、その問題の緊急性に一言ふれ、会場でインフォメーション・ノートを配布したが、他の参加国からは何も言及がなかった。船舶解体問題はなぜ、3Rの中で議論されないのか?
船のリサイクリングの状況: 欧州委員会からのインフォメーション・ノート(当研究会訳)
  Ship recycling - state of play / Information note from the European Cummission

■廃棄兵器の処理問題について

 ロシアが6日の総括セッションで廃棄兵器の処理について言及した。他の全ての参加国は口をつぐんで、何も反応はなかった。核廃棄物とともに、ダーティーな領域なので各国とも触れたくないのであろうが、見えないところで大きな汚染が行われていることが懸念される。
 船舶解体については国際NGOsも取り上げるが、兵器の廃棄物処理に関する議論はあまり聞かない。

■3月6日 総括セッション

参加各国が自国の3Rの取組について報告した。
報告内容をまとめた各国報告概要(原文:英語)が3月8日、会場で配布された。
○日本(各国報告概要から)
 過去10年間、日本は廃棄物管理とリサイクル政策を改革し、健全な物質循環社会を推進するために新たな法律を導入した。日本はリサイクル率の大幅な向上を達成する一方、最終廃棄処分量とダイオキシン排出を削減した。閣僚会議以来、日本は3Rを推進するためのいくつかの取組を実施した。
  (1) 地方レベルで健全な物質循環社会を確立するための権限の授与
  (2) 容器包装リサイクル法の改正
  (3) 3R活動の推進のための関係者フォーラムの立ち上げ
 国際協力として発展途上国に対するキャパシティ・ビルディングと研究・技術協力がある。それらはアジアのいくつかの国への国家3R戦略の形成のための協力を含む。日本は早ければ2006年秋にアジアにおける3R国際会議を開催する。さらに日本の経験をアジアに広め、アジアの3Rに関する研究を実施する。
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 上記以外に、排出事業者責任の厳守、拡大生産者責任の導入などについての言及があったが、2006年2月24日に発表のあった中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会国際循環型社会形成と環境保全に関する専門委員会の「中間報告」で述べられた廃棄物の国内処理原則に対する言及は一言もなかった。

■3月7日 分科会(一般の傍聴なし)

○分科会1のテーマ:
 各国・国際機関の3Rに関する取組事例を共有し、途上国での3R推進に関する支援や、関係者間の協力のあり方などについて

○分科会2のテーマ:
 循環資源や再生産品の国際的な移動と環境保全の確保、そのための各国間及び関係者間の協力のあり方などについて

■3月8日 議長総括案討議採択

 分科会での討議内容に関する議長総括案が討議された。
 議長総括(環境省仮約) 議長総括(英文仮)

 興味ある事項として下記2点を挙げる。

NGOsの役割(分科会2)
 NGOsの役割に関し、インドから”NGOsの責任(Responsibility)と説明責任(Accountability)を懸念する”とする発言があったが、ほとんどの国はNGOsの参画は当然であり、また、説明責任を果たしていない政府や企業もあるとの発言もあった。最終的には、次のような文言となった。
 ”NGOs は3Rを推進する上で、特に公衆への周知の生成に関して重要な役割を果たすことができる。したがってNGOsは有用な貢献をなすために、3Rに関する将来の会議はもちろん、地域及び国際的な政策に関する話し合いに、もっと参加すべきである。”

貿易障壁
 2005年4月の3Rイニシアティブ閣僚会合では 「物品等の国際流通に対する障壁の低減」がG8諸国、特にアメリカ及びホスト国日本から声高に提言され、発展途上国から懸念の声が上がったが、今回もアメリカは貿易障壁の緩和をしつこく主張した。議長総括案の ”3R実施のためのステップ” に、アメリカが貿易障壁の記述を入れることを主張したが、有害廃棄物の国境を超える移動を考慮しつつという文言を併記べきとする意見を入れて、次のような文言となった。
 ”・・・有害廃棄物の国境を超える移動を考慮しつつ、貿易障壁を克服し・・・”



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