BAN 有害廃棄物ニュース 2005年12月26日
自分のガラクタは必ずしも他人の宝物にはならない
責任を持って電子廃棄物の山に対処する


情報源: Toxic Trade News / 26 December 2005
One Man's Trash Doesn't Necessarily Become Another Man's Treasure
Combating the Heaps of E-Waste Responsibly
by Charlotte Sector, ABC News

訳:安間 武 (
化学物質問題市民研究会
掲載日:2005年12月31日


 あなたがクリスマスの朝、新しい小さな i Pod nano の包装をあけた時に、なんど、明るく輝く新しいプラスチックの匂い!。しかし今から一年後には、あなたはそれに興味を失って、サンタに新しいのをお願いし、あなたの i Pod nano は異臭を放つ電子仕掛けのガラクタの山の一部となり、地球の裏側では誰かの飲料水を汚染していることなど、とても信じられない。

 シリコンバレー有害物質連合(SVTC)の上級戦略家テッド・スミスは、現在はリサイクルするための経済的インセンティブがないとして、”人々はリサイクルを試みるが、善良な意図をもった努力も十分には報われない。そして、たとえあなたがリサイクルに出しても、あなたの廃電子機器は期待通りの晩年を過ごすことにならないかもしれない”−と述べた。

 研究によれば、アメリカでは、今後18ヶ月で3億1,500万台〜6億台のデスクトップ及びラップトップのコンピュータが陳腐化すると見積もられている。それはロサンゼルス全市を電子廃棄物が22層に積み重ねられる量に匹敵する。SVTCによれば、古いパソコンやテレビは電子廃棄物の流れの中で最も急増している部分である。それらに加えて、使用期間が短くなるとともにサイズも小型化している数百万台の携帯電話、今では概観も無骨なテレビやプリンター、そして、もうすぐ使われなくであろうビデオ装置、その他のガラクタが廃棄物となっている。

 しかし、それはどうにもならないわけではない。電子廃棄物に対処する方法がある。

使用と再使用

 ”最良のシナリオは再使用である”とスミスは助言している。多くの機器は学校や非営利組織などで第2の余生を過ごすことができると彼は述べている。あなたの肉親もまた関心があるかもしれない。

 ”消費者はそれらを家族や友達に提供することで再使用の道を見出している”−と電子機器の製造者と販売業者を代表するグループである消費者電子機器協会(Consumer Electronics Association - CEA)の環境政策情報マネージャーのクリスティーナ・テイラーは述べている。

 もし、あなたの機器の寿命が尽きたなら、それらをあなたの親しい人たちにあげたり、チャリティーに出しても役に立たないので、リサイクルを考えよう。草の根リサイクリング・ネットワークによれば、現在、アメリカでは古いコンピュータのわずか10%しかリサイクルされていない。

 注意深いリサイクルをお願いしたい−と世界的な有害廃棄物監視団体バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)の代表ジム・パケットは述べている。

 多くの会社は貴重な金属を機器から取り出し、残りを埋め立てか焼却に出している。これらの寿命の尽きた物体をこじ開けることはパンドラの箱を開けるようなものである。鉛、水銀、及びカドミウムが漏れ出し、またプラスチックの残骸は臭素化難燃剤や塩ビのような有毒物質でできているので、燃やすと大気を汚染する。

自分の裏庭にはない

 ほとんどの場合、電子廃棄物は余生を海外で過ごす。
 リサイクル用に収集された電子廃棄物の50%〜80%は、中国、インド、パキスタン、その他の発展途上国に送られているとBANのパケットは述べている。

 BANとSVTCによる2002年の報告書によれば、中国のグイユ、インドのニューデリー、及びパキスタンのカラチにある電子廃棄物処理場の周囲から採取した環境サンプルの中に高い濃度の鉛が検出された。ディジタル廃棄物処理の中心グイユの近くの川から採取した水のサンプルから、飲料水の勧告水質基準より190倍高い鉛濃度が検出された。

 人々を毒する”リサイクルの取組”を例えて、環境への義務は彼らがこの代物から得る金よりも重い”とBANのパケット述べた。これらほとんどの途上国において、輸入された使用済みコンピュータの75%は使いものにならないだけでなく、作業者らは分解するための訓練を受けておらず、人や環境を守るための基盤が整っていない−と彼は述べた。

 BANのもうひとつの報告書『ディジタルのゴミの山:アフリカへのハイテク廃棄物の再使用輸出の濫用』によれば、ナイジェリアのラゴス港に入る廃棄コンピュータを満載した500隻ほどのコンテナ船は主に北アメリカ、ヨーロッパ、及び日本から来る。BANはその廃棄物の発生国を機器に取り付けられたタグや様々なハードディスクに残された情報から特定することができるとしている。

 ”消費者はこれらのガラクタから価値だけを得て、汚染のコストを途上国につかませている”とパケット述べた。有害廃棄物を埋め立てや焼却又は海外に送らないことによって環境を大事にする誓いに署名した責任ある回収業者を見つけることを主張している。

アメリカの責任ある回収業者のリスト(クリック

 PC関連産業グループ、政府機関、環境団体、及び非営利組織が立ち上げた ”Rethink Initiative(もう一度考えてイニシアティブ)”のオークション・ウェブサイト eBay は売り手が不要となったコンピュータの買い手を捜すためのウェブサイトである。

eBayのRethink Initiative(クリック)

 シリコンバレー有害物質連合(SVTC)はまた、PCメーカーに彼らの製品のライフサイクルにわたって完全な責任を求めるコンピュータ・テイクバック・キャンペーンを立ち上げた。SVTCの上級戦略家スミスは、ゲームのルールをを変えることを主張している。”あなたは今、それを売り払って手を引くことができるが、もしそれを売るつもりならなら、あなたはそれをメーカーに送り返すべきである”と彼は述べた。

 その責任を、ソニー、アップル、ヒューレットパッカードなどに負わせることで、電子機器メーカーに寿命の長い環境にやさしい製品を採用させることを彼は望んでいる。”最も圧力をかけるべき戦略的な相手は製造者である。彼らは製品設計者だからである”とSVCTのスミスは述べた。

 消費者用電子機器協会(CEA)のテイラーは、産業側は既に、鉛を使用しない電子回路や植物プラスチックのような”よりグリーン”な設計の革新を開始したと述べた。

 BANのパケットはそれを買わない。

 ”非常にしばしば、何かと言って、これらの’グリーン’コンピュータが製造されているが、産業側のメイン・ラインはグリーン設計にシフトしていない。我々は会社が全社をあげて有毒物質の使用を廃止すると公約するまでは、それは疑わしい目標であると考える”と彼は述べた。

 消費者用電子機器協会(CEA)は消費者が電子廃棄物の責任を製造者と共有するシステムを好ましいと考えている。同協会は収集リサイクル・プログラムの費用を負担するために、商品を買う時にリサイクル費用を前払い(5ドル〜10ドル)することを提案している。同協会によれば、そのようなプログラムは既にカリフォルニア州で採用しており、同様な措置がオレゴン州でも採択されようとしている。

ひとつの統一されたシステム

 人々がもはや光り輝かないプラスチックのガラクタを再使用又はリサイクルするようひとつの統一されたシステムを国が採用することが最もよいことだということに全員が同意している。

 SVCTのスミスは、責任ある回収業者のリストを拡張し、検査を通じて認定プログラムを設定することを望んでいる。彼はまた、富める国がガラクタを貧しい国に輸出する流れを止めたいと望んでいる。

 ”我々は、アメリカが他の先進諸国とともに電子廃棄物を他国に捨てるのではなく、自国で処理することを望む”と彼は述べた。


化学物質問題市民研究会
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