はじめに
4月29日の3R閣僚会合では、[1] 3Rの推進、[2] 物品等の国際流通に対する障壁の低減、[3] 様々な関係者間の協力−の討議が行われましたが、日米が中心になって推進している先進国から開発途上国への物品(実態は廃棄物)の流通について、開発途上国から厳しい意見が出されました。会議を傍聴したので開発途上国の発言を中心に紹介します。
(文責:安間武/化学物質問題市民研究会)
■マレーシア
- バーゼル条約に加盟しており、有害廃棄物の流入については国内で規制している。
- バーゼル条約禁止令(アメンドメント)の一刻も早い成立を願う。
- 経済的価値、リサイクル可能という名目の下に廃棄物が流入し、ゴミ捨て場になっている。
- 廃棄物は発生した国で処理すべきである。
- 廃棄物処理技術を持つ先進国は途上国の廃棄物を有償で受け入れて処理してほしい。
■ブラジル
- マレーシアの考えと基本的に同じ。
- バーゼル条約に加盟している。
- 不正流入の監視、貨物税関検査。
- 障壁緩和には懸念がある。
- 自治体の80%は埋め立て処分場を持っていない。
- 中古品を輸出することで先進国は廃棄物が減るが、輸入する途上国では廃棄物になる。
- 先進国で発生した廃棄物の処分コストを途上国が負担するのは不公平でおかしい。
- 例えば中古のタイヤは寿命が短い。製品ではなく再生原料である。
- 3Rと流通の緩和を同時には議論できない。
- 廃棄物とは何か。物品とは何か。定義が必要。
- 中古品を再生利用する技術資金があれば物品といえる。そうでなければ廃棄物である。
■南アフリカ
- 先進国の不用品(中古の車、PC、冷蔵庫など)が寄贈品として流入するが、これらは寿命が短く、保守技術もないために、直ぐに廃棄物になる。
- 有効期限が切れる直前の殺虫剤が大量に寄贈されるが、有効期限が切れた後の処理ができない。有効期限も知らされていないことが多い。
- 医薬品などにも有効期限直前のものがある。
- エチオピアやエリトリアでは有害廃棄物の海洋投棄が行われている。
- リサイクルが目的ではなく廃棄物に近い物がある。管理監視が必要。
- 先進国の基準は必ずしも途上国に合わない。
- アスベストが禁止になった。
- 違法/合法の定義が必要。
■インドネシア
- 途上国を先進国のゴミ捨て場にしてはならない。
- 中古品を輸入しても半年で廃棄物になる。
- バーゼル条約禁止令(アメンドメント)を支持する。早急に発効させるべきである。
- 途上国の廃棄物管理能力は十分ではない。
- 廃棄物なのか、使用できるのかを試験する設備がない。
- 廃棄物管理能力、技術力の向上が必要。
- 流通の障壁低減は時期早尚。途上国は準備ができていない。
- 3Rの促進と流通障壁の低減は切り離したらどうか?
■フィリピン
- バーゼル条約を支持する。
- 3Rの目標は支持するが、流通障壁の低減には懸念がある。
- 物品の流れに対し先進国と途上国に技術のバイアスがある。
- OECD諸国から非OECD諸国への流れだけでなく、非OECD諸国間の流れも監視する必要がある。
- 海洋投棄の問題がある。IMOとの協力が必要。
■メキシコ
- 能力にバラツキがあるので、国によって懸念する物品が異なる。
- WTOドーハ会議に基づき、環境製品とサービスのリストアップが必要。
- 流通の低減はリストが作成されるまで待つべき。
- 使用済み製品、廃棄物の定義が必要。
- バーゼル条約を順守すべき。
- 廃棄物管理地域センター設立の提案
■中国
- 経済のグローバル化は真剣に検討する必要がある。
- リサイクル資源は有効に利用するが有害廃棄物の国境を越える移動は許されない。
- バーゼル条約の枠組みの中で、いかに進めていくかが問題。
■タイ
■ベトナム
■シンガポール
■ロシア
- 廃棄物の流れを許してはならない。
- 廃棄物の国境を越えての移動で、ひとつの国はきれいになるが、他方は汚染される。
- 核廃棄物、軍事(兵器)廃棄物もある。
■アメリカ
- 廃棄物は50億ドルの国際市場であり、国際流通の障壁は低減すべきである。
- 途上国は廃棄物管理をきちんとやれば問題を回避することができる。
- 中古品を整備して開発途上国に輸出すれば、資源の有効利用になる(例えば建設重機、複写機)。
- 中古品、再生部品の定義が必要。
- 環境だけでなく、産業も関与すべき。
- 3Rは規制でなく自主管理で享受すべきもの。
- 情報の共有。分かりやすいものが必要。
■日本
- 資源の有効利用ができる。
- 有害廃棄物の不法輸出入はバーゼル条約で対応する。
■韓国
- バーゼル条約の枠組みの中で障壁を緩和する。
- 廃棄物、再利用の区別、定義が必要。
- 国際的に認定されたシステムの確立(エコラベル)。
- キャパシティビルディングセンター設立の提案。
■カナダ
- 積極的に再生品、サービスの流通障壁低減を推進
- 再生産製品は重要。
- 編集注:カナダは廃棄物関連の環境政策では問題が多い。
・3R流通障壁低減を推進
・バーゼル禁止令についてアメリカや日本とともに強く反対
・有害物質を含む廃船をバーゼル条約の対象とすることにアメリカや日本とともに強く反対
■イタリア
- バーゼル条約に準拠しつつ障壁緩和に賛成。
- エコダンピングがあってはならない。
- 成り行き任せにはできない。PIC、WTO。
- 廃棄物、化学物質、エネルギー、気候変動はリンクしている。
■イギリス
■欧州委員会
- ドーハ会議で環境製品とサービスのリストを作成することが決まった。
- 電子廃棄物や 廃自動車(End of Life Vehicle)の環境影響が最大の問題。
- 中国との協力が必要。
- バーゼル禁止令を実施している。
- 国際流通は進めるべきであるが、電子廃棄物は域内にとどめておきたい。
■バーゼル条約事務局
- 有害/無害、廃棄物/資源を区別する基準を作成することが重要
- 地域の協力。電子・電気機器管理プログラム
- 途上国の能力構築。受け入れ国の具体的なニーズ。
- パートナーシップ。携帯電話パートナーシップ。
■UNEP
- 生産者責任の拡大(ERP)。
- 環境と貧困が問題。
- 先進国から途上国への技術移転。
- 原材料として管理できないと不法投棄。
■OECD
- 環境に金がかかり過ぎる。例えばドイツの風力発電。
- 経済的効率が重要。費用対効果。
- 先進国から途上国への技術移転。
- 炭素税のように価格を付けると難しくなる。
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