Greenpeace/FIDH 及び YPSA 2005年12月9日
船舶解体問題に対する早急な世界的解決のための
共同宣言(最終版)


情報源:Joint Declaration on Implementing Urgent Global Solutions to the Shipbreaking Crisis Final
December 9, 2005 WITH signatures


Greenpeace shipbreaking campaign
International Federation for Human Rights (FIDH)
Young Power in Social Action (YPSA)

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2005年12月08日(ドラフト)
更新日:2005年12月12日(最終版)

このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/shipbreaking/shipbreaking_dec.html

この共同宣言は2005年12月12日ジュネーブで開催される廃船の規制に関する
ILO、IMO、Basel条約事務局の会議で回覧されました。
化学物質問題市民研究会はこの共同宣言に賛同署名しました。(末尾署名団体リスト



 船舶解体(解撤)場は廃船が最後に行き着く場所である。これらの場所で、船舶は主に鉄材を求めて解体される。船のスクラップ、すなわち船舶解体はアジア(バングラデシュ、インド、中国、パキスタン)において数千の労働者に雇用を供給し、船の建造に用いられた材料の多くをリサイクルする。しかし、それは汚れた危険な行為である。解体される船舶のほとんど全ては有害物質を含んでいる。さらに、極端に劣悪な作業条件及び環境条件が船舶解体場の現実である。船舶解体は人権問題とともに環境正義にも関連している。[注1]

 造船産業と廃船のリサイクル活動を規制する既存のバーゼル条約制度のほかに、新たな法的拘束力のある国際的法律文書を採択するために、国際レベルでの交渉が行われている(IMO)。

[注1]:See joint FIDH/Greenpeace (in cooperation with YPSA) mission report on shipbreaking in Bangladesh and India, "END OF LIFE SHIPS - the human cost of breaking ships", December 2005



 我々、末尾に署名した団体は、下記の宣言/決意に関して、これを支持するものである:

 バーゼル条約の第7回バーゼル条約締約国会議(訳注:2004年10月)が、PCBs、アスベスト、重金属、及びその他の有害物質を含む廃船が国際法において有害廃棄物であると法的に定義されるされるであろうと認め、船舶解体の環境的に適切な管理に関する決議において、バーゼル条約締約国に対し、この条約の下にその義務を遂行するよう求めたことを想起しつつ、

 有害廃棄物の国境を越える移動を最小にするためのバーゼル条約及びその決議における義務の条文、特にそのような輸出に対する事前同意手続[注2]、船舶リサイクルに対する環境的に適切な管理、及び先進国から開発途上国への有害廃棄物の輸出の禁止、がなければ、今日、解体される船の大部分はこの精神に反してスクラップ作業が行われるということを承知しつつ、

[注2]:船主が廃船をどのようにしたいのかについて当局に伝え、その許可を得る義務

 対等な土俵と効果的な条約の履行を達成するための緊急の事項として、船主がバーゼル条約の義務と原則を容易に回避できる”抜け穴”をふさぐ必要があることを認識しつつ、

 また、船主が法の支配の外で操業することを許す便宜置籍国システム(訳注:税金/責任のがれなどのために船舶を他国登録するシステム)は、廃船の効果的な管理を達成するために廃絶する必要があることを認識しつつ、

 船主による廃船の事前浄化が行われないために、インド、中国、バングラデシュ、パキスタンのような船舶解体諸国は、人権、環境正義、汚染者負担、及び製造者責任の原則に反して、有害廃棄物と職業衛生管理の負担を現在押し付けられているということを承知しつつ、

 経済的、社会的、及び文化的権利に関する国際的盟約とともに、様々なILO条約が船舶解体施設に関する労働条件に関連しており、特に正当で良好な労働条件の享受に対する労働者の権利、労働組合の結成及び加入の権利、及び、達成できる最も高い健康基準に対する権利を保証しているということを想起しつつ、  これら不法な輸出の結果として引き起こされるアスベスト、残留性有機汚染物質、及び重金属への急性曝露は、石油製品類残渣による爆発とともに、許容できない高いレベルの死亡率と職業病の被害を引き起こしているということを非常に懸念しつつ、

 船舶解体現場における労働条件と環境的防護は第一義的には船舶解体国の所管当局の責任であるが、有毒な船舶解体問題の解決責任は上流側に移行されなくてはならない、すなわち世界的な造船事業により第一に経済的利益を享受している造船産業、船主、及び先進国により負われなくてはならないということを確認しつつ、

 経済的、社会的、及び文化的権利に関する国際的盟約の下に、国家はまた、経済的及び社会的権利を実現するために開発途上国に協力し支援する義務があるということを想起しつつ、  有毒船の問題の多くは、”クリーン”な造船を通じて船での有毒物質の使用を排除することにより解決することができること、及び、そのような設計のグリーン化と、”リサイクルのための設計”が最も重要な事項であることを認識しつつ、

 開発途上国ではクリーンな鉄スクラップが必要であり、且つ、緊急に人間の命を救う必要があることに照らして、造船産業と先進国は廃船のために”ガスフリー・ホットワーク”検定を整備し、廃船前に、そして船舶解体場への最終航海の前に先進国で有害物質を除去することによって事前に船の浄化を行い、バーゼル条約、その決議、及び、環境正義の諸原則に整合する特別の責任があるということを認識しつつ、

 少なくとも、バーゼル条約、国際海事機関、及び国際労働機関の3つの国連機関は、問題の様々な局面を観察しているということ、及び、彼らの努力は、各組織の既存の権限を認めながら、補完的で協調的であるべきということに留意しつつ、

 諮問、調整、及び協力の基盤である、船舶解体に関するILO、IMO 及び バーゼル条約の共同ワーキング・グループは、既存の環境正義と人権の原則及び規制が、船舶解体に関する新たな世界の義務的な制度(監視機能)に導入されることを保証するよう努力すべきであるということに留意しつつ、

 最後に、本件に関し国連レベルで5年以上にわたり国際的に取り組まれているにも関わらず、現場ではほとんど何も改善が行われておらず、有害物質を含む廃船の国際取引のために、世界で最も厳しく貧しい労働が日々、死と疾病に直面させ続けられているということを承知しつつ、

 末尾に署名した団体はここに、国連諸機関及び各国政府がバーゼル条約と既存の IMO、UNEP 及び ILO のガイドラインに基づき、下記の事項を確実なものとする効果的で強制力のある義務的制度を実施することを要求する。
  1. 船の設計者から解体者までを含む全ての主体者のそれぞれの責任が確立されること

  2. 船主と輸出国は廃船中にある有害物質及び爆発性物質の適切な取り扱いに対し責任がありまた法的責任を有すること

  3. 船は有害物質の除去が徐々に行われ、修理のためのドライドッキングの間のようなあらゆる機会を捉えて有害ではない物質に代替されること

  4. 新たな船は解体時に有害性を最小にする観点を持って建造されること

  5. 労働、安全、健康、及び環境に関する国際的基準は船舶解体場において尊重されること

  6. 船主及び政府による基金が船舶解体場の労働条件の改善を支援し、現場での事故の犠牲者とその家族を補償するために設立されること

  7. 船舶解体に関するそのような新たな法的に拘束力のある制度は少なくともバーゼル条約の中に見出されるものと同等であるべきこと。そのような制度は、”処分の意図”に関する完全な透明性、クリーンな造船と有害物質の代替、船舶解体場に送られる前の船の事前浄化、常に船主の特定に関する絶対的な透明性、及び、どのような時にも有害物質を積載した全ての船の十分な透明性のための諸規定を開発すべきこと。
 さらに、我々はOECD加盟諸国が船の事前浄化技術とその支配区域におけるインフラストラクチャーを開発するよう要求する。

 最後に、新たな制度が有効になるためには数年かかるので、我々はバーゼル条約加盟国、及びILO、IMO 及び バーゼル条約の共同ワーキング・グループが、人の命と環境を守るために、バーゼル条約やILOガイドラインのような既存の法律文書の実施を速やかに開始するよう要求する。

以上

署名 _____________________


Signed by
  1. International Federation for Human Rights (FIDH)
  2. Greenpeace International
  3. Young power in Social Action (YPSA, Bangladesh)
  4. International Ban Asbestos Secretariat (IBAS)
  5. International & virtual Ban Asbestos Network
  6. Union of Harbour, Dock Shipbuilding-Repair Workers (DISK Limter Is, Turkey)
  7. International & virtual Ban Asbestos Network for Latin America
  8. Ban Asbestos France
  9. Basel Action Network (BAN, USA)
  10. Corporate Accountability Desk, India
  11. Ban Asbestos Network Japan (BANJAN)
  12. Asbestos ex-exposed Brazilian people Association (Associacao brasileira dos ex-espostos ao amianto)
  13. Japan Occupational Safety and Health Resource Center (JOSHRC)
  14. Centre of Indian Trade Unions (CITU)
  15. Ban Asbestos India
  16. European NGO Platform on Shipbreaking (North Sea Foundation, European Federation for Transport and Environment, Greenpeace, Keep it Blue, Bellona)
  17. Odhikar (a Bengali word meaning "rights", is a human rights organisation in Bangladesh and a member organisation of FIDH)
  18. UBINIG (Bengali name Unnayan Bikalper Nitinirdharoni Gobeshona in English: Policy Research for Development Alternatives; a policy advocacy and research organisation in Bangladesh)
  19. Union of Chambers of Turkish Engineers and Architects (UCTEA)
    Chamber of Environmental Engineers (CEE)
  20. Citizens Against Chemicals Pollution, Japan (化学物質問題市民研究会、日本)

December 9th, 2005


訳者コメント:
  • 廃船の多くが解体用にG8首脳国を含む先進国から開発途上国に輸出されているにもかかわらず、2005年4月28日(木)〜30日に東京で開催された3Rイニシアチブ閣僚会合では廃船の取り扱いについて、一切触れられていない。

  • 有害物質を含む廃船をバーゼル条約の対象とすることにアメリカ、カナダ及び日本が中心となって強く反対している。

  • わが国では廃船は廃棄物として統計資料に含まれているのか?日本の廃船の量は年間どのくらいなのか? 解体のために途上国に輸出されている日本の廃船はどのくらいなのか? は自衛隊の艦船はどうなっているか? どこで誰が解体を行っているのか?

  • かつての造船大国日本が昭和30年代、40年代に建造した多くの船はどうなっているのか?船主が法の支配の外で操業することを許す便宜置籍国システムにより、我が国の船舶はどのくらい他国登録されているのか?
訳注:船舶解体の関連記事(当研究会訳)

BAN 有害廃棄物ニュース 2005年12月14日/船舶解体における人命のコスト
BAN / Greenpeace プレスリリース/ノルウェー、国際的船舶廃棄に関し、二面性を非難される
バングラデシュの船舶解撤ビジネスにおけるアスベスト/世界アスベスト東京会議GAC2004
カナダの廃船が非難の的:有害廃棄物の国際条約を無視:グリーンピース
BAN プレス・リリース/イギリス 「汚染廃船の輸出取引は違法」 判決


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