聴いた、観た、買った ---淡々と音喰らう日々。

2000.01.16-31

>02.01-15
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★は借りた新着、☆は新規購入。


1/16 ジプシー・キングス Gipsy Kings (Epic, 1987)
『アーリー・カンテ・フラメンコ』V. A. "Early Cante Flamenco" (Arhoolie, 1990)
アンダルシアでフラメンコを見たり、TVやラジオで聴いたりして改めて思ったのは、やはりカンテ(歌)あってのフラメンコだなあ、ということだ。バイレ(踊り)、カンテそしてギターの3者が一体となってのあのうねり、激情、深い沈潜なのだと。

マノロ・サンルーカル『タウロマヒア』 Manolo Sanlucar: "Tauromagia" (PolyGram Iberica, 1988)
ホーンやシタール、シンセなどを積極的に取り入れながらも、カンテと渾然一体となったフラメンコの伝統を、というかそのうねりを醸し出すあたり、やはりこの人は只者ではない。

1/17 パコ・デ・ルシア 『炎』 Paco de Lucia: interpreta a Manuel de Falla (Philips, 1978)
そういう意味では、パコのこの盤(や、その後のジョン・マクラフリンらとの活動)は、フラメンコ「ではない」と言える気がする。そこからギターの要素だけを引き離して純化していく方向。それはフュージョンですらなく、クラシックのごときアプローチだとも言える。だから、ファリャの作品を翻案したこの盤が奇妙に静的な、澄んだ佇まいを示すのは、当然と言えば当然である。

カルリーニョス・ブラウン Carlinhos Brown: "Omelete Man" (EMI, 1998)
パット・メセニー・グループ Pat Metheny Group: "Still Life (Talking)" (Geffen, 1987)

1/18 ダニエラ・メルクリ『アシェー・クイーン』 Daniela Mercury (1991)★
邦題の「アシェー」というのは「神の力」とかいう意味で、地元バイーアではもっと軽く、挨拶にも使うとか。それで「アシェー・ミュージック」というのは、バイーアのリズムを大きくフィーチャーしたダンス・ミュージックを指すそうで、ダニエラその人がこの初ソロにより火付け役となったらしい。最初、ユーロビート化するシンセ音/リフはどうにかならないものか...とも思ったが、時代背景を少しは考慮して評価しないといけないのかも。80年代〜90年代初頭のブラジルの若者が聴く音楽と言えば、欧米のポップス/ロックやその丸写しのブラジル製ポップスだったというから、そこへダニエラがバイーアのカルナヴァルから飛び出して全国区的人気を固めようというこの盤が、多少は若者一般受けしそうな下世話な妥協をあえて選んだ可能性はある。何しろ、カルリーニョス率いるチンバラーダが登場するよりはるかに前のことなのだ。バイーアのリズムに徹してくれ、という方が無理なのかも知れない。それでもオロドゥンが客演したT-1や、テクノ的なリフも交えてジルベルト・ジルをカバーしたT-5が冴える。とりあえず2作目も探してみようか。

1/19 イヴァン・リンス Ivan Lins "20 Anos" (Som Livre, 1990)

1/20 ミルトン・ナシメント『クルーナー』 Milton Nascimento: "Crooner" (Warner, 1999)★
「クルーナー・スタイル」とうのは、ナット・キング・コールやフランク・シナトラのように、抑えた歌唱でクールに聴かせる1950年代前後のボーカル・スタイルを指すらしい。(crooner: 低く押し殺して歌う人---新英和大辞典より)。ミルトンは10代の頃、アメリカのスタンダード・ナンバーなどに夢中になっており、そうした音楽を演奏するグループすら組んでいたそうで、すなわち「クルーナー」は彼の原点を振り返る意味をもつ言葉ということになる。で、この盤はほぼ全曲カバーで、アメリカのみならず、ブラジルやスペイン語圏の「スタンダード」曲が大半を占める選曲。久々に彼と組んだヴァギネル・チゾのアレンジもそれ故か、彼らしい激しい表現はむしろ陰をひそめ、流麗にたなびくよう。
でも、こういうミルトンは、個人的には今一つなじめない。もっとも、これが彼の原点を示すものには違いないし、何かというとミルトンを「ブラジルの神秘」みたいに扱う向きに対して、彼がポップシンガーであることを雄弁に語る1枚ではあるのだが。T-3「オンリー・ユー」あたりでは、何もこういう曲を歌わなくてもいいじゃないか、と思うが、そのあと「マシュ・ケ・ナダ」、そしてラテンの名曲「情熱 Frenesi」へと流れるとようやくチゾのアレンジも本領を発揮し、ひねった和音や管の活躍で立体感を増していくのが聴きどころ。また、マイケル・ジャクソン「ビート・イット」のサンバヘギ(Samba reggae)風ビートによるカバーは一聴の価値あり。これを聴くためだけにでも皆さん借りましょう。

1/21 ミルトン・ナシメント&ロー・ボルジス Milton Naschimento / Lo Borges: "Clube da Esquina" (EMI-Odeon Brasil, 1972/World Pacific, 1995)

1/22 息子を遊園地に連れていく約束だったが、あまりの寒さに断念、行先を東京都児童会館に変更。親たちとしては、音楽室で楽器でも、という目論見があったが息子がすぐに飽きてしまい肩透かし。渋谷西武にて久々に普段着のワードローブ計画を前進させる。

1/23 で、遊園地はこの日にしたのだが...天気予報がずれて寒いのなんの。

1/24 ウェス・モンゴメリー『インクレディブル・ジャズ・ギター』 Wes Montgomery: The Incredible Jazz Guitar of... (Prestige, 1960)★
ウェスの音である「オクターブ奏法」の音自体は耳に刻まれているにもかかわらず、ちゃんと聴くのはこれが初めて。そういう意味では先入観を取り払うための一聴か。何気なく聴いていると、ああ気持ちいい、で流してしまいそうだけど、イヤホンつけて耳元で鳴らすと、いや何て凄いんだろうかオクターブ奏法もコードプレイも。とても流してなどいられぬスリル。

1/25 Milton Nascimento: "Crooner"
Wes Montgomery: The Incredible Jazz Guitar of...

1/28 Milton Naschimento / Lo Borges: "Clube da Esquina"
イヴァン・リンス『アウア・イオ〜魂への賛歌』 Ivan Lins: "Awa Yio"
(Reprise, 1991)

1/29 イヴァン・リンス「ノーヴォ・テンポ」
Ivan Lins: "Novo Tempo" (EMI-Odeon Brasil, 1980)のタイトル・チューンだが、ここのところ連れ合いにも人気が出て来た。歌詞カード見せながら聴かせたら目を潤ませていた。いやーそこまで感動してもらえるとは。確かに、これほど「希望を持つこと」について力強くも美しく書いた歌詞というのはなかなかないとは思うのだが、予想を上回る反響。助かる助かる。今後イヴァンが掛けやすいし(笑)。

"Sevillanas de Oro (The Best of Sevillanas)" (HISPAVOX-EMI, 1989)
セビジャーナスというのは文字通りセビージャ発の踊りのリズム/形式で、春祭りなんかで踊られるんじゃなかったか。原則として群舞(2人が組になったり、4人で輪になったり)だし、厳密な意味では「フラメンコ」に入らないんだと思う。実は私自身は、このタイプの踊り/曲はそんなに好きではない。連れ合いの好みである。

Ivan Lins "20 Anos"
Carlinhos Brown: "Omelete Man"
ボカ・リヴリ Boca Livre: "Dancando Pelas Sombras"
(MP,B, 1992/Xenophile, 1995)
Milton Naschimento / Lo Borges: "Clube da Esquina"
Manolo Sanlucar: "Tauromagia"
フラメンコのギタリストで聴いたことあるのは、古今の有名どころ10数名くらいだろうが、その中でやはりこの人、この盤が最高にゾクッと来る。以前、一度彼の他の盤を探した時は、バルセロナ五輪後にスペインブームが急速に収縮している最中だったせいか、全く見当たらなかった。でもその後、弟子筋のビセンテ・アミーゴとか、トマティートのような、クロスオーバーな試みで関心を集める若手も出ているのだから、マノロ再評価でまた出始めているといいのだが。今度見てみよう。

1/30 ジプシー・キングス『ジョビ・ジョバ』 Gipsykings: "Djobi, Djoba" (Phonogram, 1982-1983/Philips, 1988)
グラナダの洞窟フラメンコで生で味わってきた、ざわめきから湧き起こりざわめきへと還る音楽の流れをそのまま(といっても、そういう感じに構成している訳だけど)聴かせてくれるこれは、やはり秀逸。

『インナー・シティ・ブルース〜マーヴィン・ゲイ・トリビュート』 "Inner City Blues" The Music of Marvin Gaye (Motown, 1995)

1/31 マッシヴ・アタック『メザニーン』 Massive Attack: "Mezzanine" (Circa,1998)☆

ミルトン・ナシメント『ミルトンス』 Milton Nascimento: "Miltons" (CBS, 1989)☆
以前借りて来て聴いたときも「サン・ビセンチ San Vicente」は印象に残らなくて、彼の代表曲というのが不思議だったけど、そのオリジナル録音になる "Clube da Esquina"での素晴らしい出来を聴いてから改めて『ミルトンス』を聴くと、言ってはナンだがこれはひどすぎる。ハンコックの失敗プレイって初めて聴いた気がする。といっても彼のはリーダー作ほとんど聴かずに、客演ばかり聴いて喜んでたんだけど。

ここのところTFJさんと、「モダニズム的」という言葉と三宅一生のデザインにについて延々とやりとりしてきたが、互いの立場の違いが明確になって一段落。いや、つい成り行き上議論してしまったが、知識も思考もずっと高いレベルの人と議論するのはパワー的にもきついし、お手間を取らせてしまったみたいで申し訳ないことしきり。自分にとっては意義はあったのだけれど。
互いの立場が鮮明になったとはいえ、それでも自分としてはモダニズム的諸概念について「モダニズム」という言葉に関連づけて評価することに違和感は残る。むしろ、その中で今後も有効性を持つと思われる概念(個人という最小単位とか、人権概念とか)それぞれについて、如何にモダニズム的コノテーションから自由な文脈で読み解いていけるか。そういうことを考えたい、いずれ機会がまたあれば。



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