聴いた、観た、買った ---淡々と音喰らう日々。

1999.10.01-15

>10.16-31
<09.16-30
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★は借りた新着、☆は新規購入。


10/1 雨合羽と傘をカバンに詰め込んだら、DISCMANを入れる余裕がなくなった。...雨合羽? そう、この時点では東海村の事故で放出された放射能がいかほどのものか、まるで確信が持てていない。実は被曝で一番怖いのは雨なので、雨合羽は必須なのであった。背に腹は代えられぬ、というわけで、何も聴かずに出勤・帰宅。...やっぱ、むなしいよなあ、この時間なにもしないと。考えごとに充てるとしたところで、メモも取れないのでは同じ考えが堂々巡りするだけ。

10/2 連れ合いの髪結いついでに、子連れで代官山。何年ぶりだろう。雑貨屋に置かれたフライヤーや、歩道橋に貼られたイベント告知などを眺めつつ、情報の回路と自分の現在位置について考える。あ、この日の午後、アッサンブラージュの外階段のど真ん中に突っ伏して泣いてる子供と少し離れて冷たく見守る両親を見かけてたら、それが私らです。はい。

10/3 矢野顕子『ウィウィ』
パット・メセニー『シークレット・ストーリー』

困ったことに、出だしの軽快さに比べて後半でえらく深刻になるのだ。ライル・メイズとの共同作業でははっきりしないが、実は彼自身は愚直で不器用なロマンチストにしてストーリーテラーであることが、このソロ盤からは浮かんでくる。というわけで、家事モードに切り替えるべくこれは中断。

『ビッグ・ヒッツ・オブ・ソウル Vol. 2, 3』
家事しながらなのでほとんど聴いていなかったり。あ、でもサム&デイヴが良かった。1曲くらいしか知らなかったけど("Hold On, I'm Coming")。

友人夫妻(夫妻とも友人)が久々に来訪。民法改正が遅々として進まない中、結婚3周年を機に婚姻届を出すそうで、署名を頼まれる。とても光栄、嬉しい。というわけで宴会に突入。ハイポジ『身体と歌だけの関係』なんかをお聴かせしながらビール、買って来たオードブル、自家製インドカレー(妻よ有難う、ワシにはでけん)。

彼らには沖縄宮廷音楽のCDなど色々持ってきてもらう。いやあ有り難いっす。沖縄の宮廷音楽は、とある古書店のおやじさんに「沖縄民謡もこれが基本」と奨められたものだそうだが、実践として民謡とはそもそも別のものなんだから(交流とか相互影響はあるにせよ)、そんなふうに本質主義的に語らんでもなあ、などと思いながら、雅楽に通ずるゆったりとしたリズムにしばし身を委ねる。

キッド・ロコ『グランド・ラヴ・ストーリー』(1998)★
これは友人(妻)がフランスで仕入れてきたディープ・ハウス、というがアンビエント系からラウンジっぽいものから色々混じっている。どことなくUFO的な雑食性を思わせなくもないが、それがへなへなフランス趣味和音を奏でるシンセ音によって奇妙な統一感を与えられている、といった感じ。ええと、日本でも知られてるんでしょうか、これ。

『ラフ・ガイド ザ・ミュージック・オヴ・ジャパン』
これも友人(夫)の持ち寄り。リスペクトから出ているコンピレーションだが、「ラフ・ガイド」シリーズの元締めはペンギン・ブックスである模様。民謡や大道芸などに触発された、現在形の日本の大衆音楽、という「偏った」(笑)選曲で、林英哲からソウル・フラワー・モノノケ・サミットまで。どうもこういう「インパクション」周辺の人の好きそうなものってちょっと引いてしまうが、でもやっぱり聴くと面白いんだよなあ。この盤は、手始めのカタログにも、あるいは単に聞き流すにも好適な1枚。河内屋菊水丸の「カーキン音頭」の基本リズムが実はレゲエだったりして意外、新鮮。

こういう長丁場の大宴会だったもんだから、一人カヤの外だった息子がそのあと拗ねるの拗ねないのって。いやー、大人が思う存分飲み食い語らいたいのであれば、子連れ同士でやって、子供同士で遊ばせとくのが一番ではある。

10/4 矢野顕子『ゴー・ガール』
『フィアー・オヴ・ポップ ボリューム1』
(1998)☆
ベン・フォールズのソロ・プロジェクト。第2弾もそのうちやるのか?という命名だがどうなんだろう。いわゆる歌ものやピアノトリオ編成は一切なし。チープなシンセ音にディストーションかかったギター、ドラムマシン。ベン叫ぶ。ある種オルタナっぽくもあるんだけど、バカラック的コーラスやコードパターンの執拗なリフレインなどが絡んで、何だかちょっと違う方へ落としどころを持っていく。なので、すごく虚をつかれたような感じがして、おさまりが悪いのだ。それが不快感につながる訳じゃないけれど。デビュー盤で注目を集めてこのかた執拗に「ピアノトリオ」だの「ポップソング」だのと括られてきたのに対してキレたかのような、それらへの陰画。やっぱりBF5名義の次作『ラインホルト・メスナーの肖像』とセットで聴くべきものかも。

プロコフィエフ『ピーターと狼』ウィリアムズ/ボストン・ポップス
息子がとうとう飽きずに最後まで聴いた。集中力の航続距離がだんだん長くなっていく様は、そのまま、時間の経過を「物語」として把握する能力の成長なんだろうか。

チャーリー・ヘイデン&パット・メセニー『ミズーリの空高く』(1997)
パット・メセニー・グループ『オフランプ』(1982)
アルバム全体としては過渡期的な凡作と言わざるを得ないのだが、フリーフォームっぽいタイトル曲とその次の"James"の西海岸ボサっぽいテイストの落差が面白い。そして両極端のこの2トラックが上出来だったりする。

チック・コリア『チルドレンズ・ソングス』
また変な咳が出て、就寝にあたって息子からの隔離を命じられる(命じたのは、息子じゃなくて連れ合いですね、当然)。ステレオの前に一人寝転がって、子守唄がわりに聴いたが、ところどころ結構激しいのでなかなか眠れない。選曲ミス。

10/5 『フィアー・オヴ・ポップ ボリューム1』

マスダさん東下り記念「男・マスダ 男責めの刑」の集い@渋谷。まつずしさんアレンジ多謝。直接お目に掛かる男・マスダは、目尻の笑い皺におおらかな人柄のにじみ出る好漢でありました。また、この会に集ったメンツの凄いこと。私はただ聞き役に回るのみでしたが、実にパワーを頂いた感じ。深謝。

DJクラッシュ『迷走』

帰宅してまつずしさんミックステープを聴きながらパソコンに向かい、ぼおっとしているうちに洗濯が上がっていたではないか。さあ一仕事。

10/6 ベン・フォールズ・ファイヴ『ラインホルト・メスナーの肖像』
レニーニ&スザーノ『魚眼』

10/7 電気グルーヴ『A(エース)』
ハイポジ『ハウス』
やっぱこれダメ。ダメすぎる。プロデュース信藤三雄ってのがいけないのかなーなどと思う。この人、「スガシカオ&Misia同日発売デザイン使い回し事件」以来、「うまいことやる人」以上の評価ができなくなっている。ハイポジのこれ以降の盤に手を出すのがちょっと怖くなってきた。どうなんでしょう、誰かご存じの方...。

10/8 矢野顕子『ゴー・ガール』

ビル・エヴァンス『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』(1981/録音77)『ポートレイト・イン・ジャズ』(1959)
セロニアス・モンク『ザ・ユニーク・セロニアス・モンク』(1956)
突然、ピアノトリオものを聴きたくなって3連発。しかしまあ実にいい加減なラインアップだなあ。ジャズ好きの人に聞けば、エヴァンスとモンクは対極にあるとも言うし。でも単なるピアノの虫であるワタクシには馬耳東風なのである。

10/9 amazon.comとCD NOWが一気に到着。計9枚。いやー、お気楽極楽。泥沼の予感。でも、というか、だから敢えてすぐには新着を掛けないのである。

ベン・フォールズ・ファイヴ(1995)
ハイポジ『かなしいことなんかじゃない』 R指定外のみ抜粋。
プロコフィエフ『ピーターと狼』ウィリアムズ/ボストン・ポップス
ミルトン・ナシメント『出会いと別れ』
ディック・リー「シャナナナナナ」

10/10 アース・ウィンド&ファイヤー『グレイテスト・ヒッツ Vol. 1』
ディック・リー「シャナナナナナ」

ようやく、新着分よりまず ボカ・リヴリ"Dancando Pelas Sombras" (1992)☆を。入手したのは1995年発売の米国盤。タイトルは「影の中を踊る」というような意味らしい。ブラジルのベテラン4人組ボーカルグループ。イヴァン・リンスやトニーニョ・オルタへの客演でそのハーモニーの美しさは知っていたが、このリーダー作はそうした一面的イメージを強烈にひっくり返す。各人、楽器(ギター、ベース、フルートなど)を兼任というのがそれだけで驚きだったのだが、たった3人のゲスト(キーボード1+パーカッション2)と紡ぎ出す音の多彩さと言ったらない。自作はもちろんミルトン・ナシメント、ロー・ボルジスなどを中心とした選曲の妙といい、その構成の絶妙な流れといい、MPBの一番いい部分を凝縮したような1枚。この盤に関しては、メセニー=メイズの「ファースト・サークル」をカヴァーしたのが話題になったらしいが、他のトラックが凄いので却って影が薄いくらい。ただ、むしろ他のトラックのインスト部分にメセニー=メイズの影響が出ているとは言えるかも。とにかく細部まで余りに行き届いた作りに溜め息が出てしまう。

息子を神田の交通博物館に連れて行く。模型から本物からゴマンとあって、予想以上に見応え十分。帰りがけ秋葉原で外付けHDDを仕入れる。しかしまあ秋葉原という街は二度と子連れでは行くまいと思った。どんな街よりも歩行者が不注意、おまけに喫煙率が高いから危ないことこの上なし。それに、JRの改札のすぐそばで明らかにヤバそうな客引きが通行人に「絡んでいる」(としか表現しようがないんだな、もう暴力バーみたい)なんて、ここくらいのもんじゃないの? 何でかね本当に。

10/12 そんなわけで、寝ても覚めてもボカ・リヴリの3日間が過ぎる。

10/13 保育園の運動会。父母の綱引きで大いに体を痛める。

10/14 エグベルト・ジスモンチ『輝く水(Danca Das Cabecas)』(1977)☆
多分、ECMから出ているブラジルのミュージシャン、という言い方が、良くも悪くも一番通りが良さそうなジスモンチの初リーダー作。8弦ギターとピアノを中心に各種楽器をこなし、これにナナ・ヴァスコンセロスのパーカッションが丁々発止の絡みを見せる。予想以上にクラシック色濃厚だったので驚いたが、同時にその未消化な部分も見え隠れ。確か、彼はパリでナディア・ブーランジェに師事して、それからポピュラーに戻って来た人だったはず。ブーランジェは、かのピアソラに「タンゴの道に戻りなさい」と言った人でもあり、作曲家としてはともかく、何か妙なところで面白い仕事してるよなあ。

ミルトン・ナシメント『アンジェルス』
HMVあたりに買いに行ったら3000円近くもしていたので思わず買い控えていた1枚。それがamazon.comなら$13+送料なんだから、「絶対買い」のアイテムを街で探すなんてバカバカしくなる。

10/15 更に明けても暮れてもボカ・リヴリな日々が続くのである。



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