・Hofheim-Instruments RD-400DX  その1
究極のドブソニアンを目ざして

  公開:2018年10月22日〜
更新:2018年12月11日 *赤緯軸のエンコーダー 結果 を追加

 写真:Hofheim-Instrumentsのsiteより

What's Next ?

 Obsession 18UCは凄かった。本当に素晴らしい望遠鏡だった。数々の銀河や散光星雲は、私をしばし宇宙旅行へ誘ってくれた。国内遠征には良いのだが、海外遠征に持って行くには、やはり大掛り過ぎだし、家でちょっと大口径で見たい、という場合には、組み立ては大変。そこで、次の一手を打つ事にし、Obsession 18UCは若者の所へ旅立ったのだった。

 コンセプト、目標は、
  1. Obsession 18"に見劣りしない光学性能
  2. 家ですぐに稼働できる望遠鏡
  3. 海外遠征もこなせる望遠鏡

 何と言っても空がものをいう。こんなに晴れない日本なら、海外で一気に観望した方が効率が良いかもしれない。いろいろな ”究極” があるけれど、今の私にとっては、この3つの条件を満たすのが最高の望遠鏡だ。散々考えた結果、Hofheim-InstrumentsのRD-400DXを選択した。 この望遠鏡は本体が本当に軽いので、ミラーが無い状態で一体化して運べ、ミラーを載せればすぐに観望できる。

 以前、同社のRD-300DXを使用していた時も あったが、私は30cm反射なら双眼望遠鏡を選択するようになり、BORG 125SD-Binoに替わった。しかし、海外遠征をしていく内に、40cm以上の口径が必要だという思いに到り、再び同夜の製品を選ぶ事となった。決め手は、細部に至るまでの丁寧な作りと軽さ、そして 収納がコンパクトな事である。そして、18" UCに劣らない見え味となると、口径5cmのハンデをものともしない優秀なミラーに置換すれば可能かもしれない。18"UCのミラーは優秀だったので、このハードルは高い。


蒸着中の私の16"ミラー

 ミラーは何ら迷うことなくZambutoにお願いした。どの世界も職人、名人の作品は別物だし、残念なことに、いずれ姿を消してしまう。彼は親切に相談に乗ってくれた。ミラーはクオーツとすれば、オリジナルのミラー厚44mm、12.8sから34mm、9Kgに減量できるのがわかった、温度順応も迅速となる。ミラー厚が減った分、焦点距離を伸ばしてもらった。彼は自在に私のリクエストに応えてくれる。主鏡の蒸着は、できれば銀にしたいところだが、ミラーのストレル・レシオ、反射率について問い合わせたら、「以前は測定値を公表したが、ネットで単純比較されて、大いに迷惑した。ミラーの性能は、そんな一部の数値だけで評価されるほど単純ではない。これを見よ! 私は長年の経験上、最も良いと思われる方法でミラーを製作している。」と。

 その通りだと思う。ネットでは怪しい測定値のミラーも多数売られているし、何と言っても優れた技術者の経験に勝る物は無い。全面的に信頼し、ミラーを託した。 納期は順調に予想通り遅れたが、当然 「遅れても良いから最高のミラーを送ってくれ」 と返事し、待つこと約1年。それはそれは見事なミラーが届いた。箱を開けてビックリ。マスクと手術用手袋が入っていたのだ。コーティングして6ヶ月は表面が柔らかいので、「絶対に触らない、指紋を付けない。唾液を付着させないように」の注意書きが。ミラーを実際に持ってみてると、12.8sと9sとでは大分違う 。約4sの差は極めて大きい。
 最近、Zambutoミラーが大幅な値上げをしたので、ラッキーだった。

 ところで購入当初、販売元の笠井さんにもミラー置換のことで相談したが、「製品供給側の立場としては、ミラーの置換は決してお勧めできません」との事。当然である。 これから報告する事柄は、全て私の自己責任で行った改造の上でのことなので、念のため。
 

エンコーダーの装着



 

 エンコーダーを装着し、SkySafariで導入した方が断然効率が良い。ただし本機の場合、パーツを重ねて収納するようになっているので、干渉しないよう工夫して装着する必要がある。水平エンコーダーは、 東急ハンズで見つけた薄い板とアルミ・アングルで装着。エンコーダーは両面テープで接着。当然ながら、エンコーダーの軸は円の中央を射貫かなければならない。 ケーブルは、ビニールテープで固定。ここを硬く固定すると、何らかの事情でケーブルが引っ張られた時に断線する。

 垂直エンコーダーは装着が大変なので、傾斜センサーを採用。最初耳軸にヴェルクロ(マジックテープ)で装着したが誤差が大きかったので、両面テープでファインダーにしっかり接着した。
 

ミラー・シュラウド


*環の後方は弧状にカット(装着は、カット面が下)

 標準仕様ではミラーが丸出しで恐ろしいし、迷光対策も必要。という訳で、いつものように東急ハンズの0985Pセーム0.38L BK 12213で制作。この製品は一側がつや消しになっているので、遮光紙を貼る必要が無い。ケース収納とするため、3分割+ヴェルクロにした。また、望遠鏡の倒れ込む方向の 下側は弧状にカットしないと、干渉する。
 

足台

 ネットで見つけた折りたたみ式 \980。これで天頂を見る時もOK。

トラスポール・ケース

海外遠征中でも、滞在中は一度組み上げたトラス・ポールはそのままの状態で運搬するので必要。ネットでmont-bell の適当なものを見つけた。ピッタリ。

クーリング・ファン

USB電源で動くPC用ファン。これをミラーの下に忍ばせる。風力は12Vのに比べて弱いが、本体に付いていないので、振動フリー。観望中だってずっと回しておける。

 Obsession 18"UCで使用していた錘を使用。最初、本体のネジにぶら下げていたが、地面に着くと錘の役目が失われるし、外れることもある。そこで、ネジに引っかけた後、錘を回転させて紐の弛みを取った後、ヴェルクロ結束ベルトで固定することにした。2個(2s)で釣り合う。

 
転倒事故

 本体は、ミラーを置かなくても起立する。ところが傾斜センサーを取り付けるとそれだけでバランスが崩れ、倒れてしまう。当初、お宝ミラーを保護し過ぎて、つまりは出さない/置かないでいろいろやっていた為、転倒させてしまった。倒れた方向が悪く、トラス・ポールやトップリングの金具を痛めてしまった。以来、ちょっとした場合でも、しっかり錘の配備や、ミラーを置くなど、注意するようになった。
 

収納ケース

 ご覧のパーツが見事に作り上げたケースに収納される。ただ、海外遠征では、いくらFRAGILE ! とか、この面を上に、とか箱に書いておいても、コンベアーから逆さにどかん、と落ちてくる場合もざら。ケースの板は薄めなので、割られてしまう可能性も高い。という訳で、いつものようにアドトランクへ依頼。パーツを収納するボードは大変良く出来ているので、これを囲む形で作ってもらった。
 ボードへの収納はご覧の通り。見事としかいいようがない。トラスポールやトップリングの収納の対応の細かさはアド・トランクの真骨頂。こちらも相変わらず流石だ。



 

 ミラーは手持ちとしたいところだが、仮に持ち込めても途中で預けろ、と言われたら一巻の終わり。お宝ミラーなので、クッション材はZambutoから送られてきたものをそのまま使って、これもアドトランクへ依頼。下にはキャスターを付けてもらって、 一緒にゴロゴロと移動できるようにした。

 結局出来上がったケースのサイズは、本体69×77×34cm(総計180cm)、総重量24.3Kg。ミラーは55×61×20cm(総計136cm)、総重量17.2Kgとなった。
 

組み立て

 慣れないと、取説を見ながらで無いと組み上げられない。慣れれば何ということはない。RD-300DXより進化している。

 ベースを置く。iPhoneのアプリ:Clinometerで水平を出す。補正には、三角形のドア・ストッパーが便利
 写真の白い円形の板は、現地の傾斜がドア・ストッパーでは補正しきれなかったので廃材を流用。
 ミラー・ボックスを載せる。

 トラス・ポールを入れて、トップリングの位置に合わせる。
 遠征の時は、トラス・ポールのジョイント部分に養生テープを巻いておくと強度が上がる。
 ネジは当然ながら締め上げない。
 ミラーの収納は、蒸着面が下面になるように入れる。海外遠征で税関でミラーを触られないようにするため。
 幸い背面は透明なガラスなので、蓋を開けて見てチェックされても触られる心配が無い。

 ミラーを載せる。当初、ミラーがお宝なので、錘を装着して全部組み上げ、最後にミラーを載せていたが、転倒し、ポールを痛めた事があった。

 ミラー・シュラウドを置く。

 ミラーをカバー(今はシリコン・クロスを使用)。

  クーリング・ファンは、USB電源のPCファン(今は、もう一回り大きい物を使用)。

  これをミラーの下に忍ばせる。この方式の利点は、汎用のUSB電源が使え、ミラーに振動が伝わらないので、観望中もファンを回せる。

 トップ・リングを装着。上下のネジを少しずつ確実に交互に締めていく。途中、鏡筒を上下に動かしてからネジを締め上げる。斜鏡カヴァーは、靴下。
 ファインダーを装着(写真は傾斜センサーも装着)。

 トラス・ポールの頭の球がトップリングの窪みにきちんと入っていないと、後でガタンと光軸がずれる。

  遮光板を装着。取説では付属の錘で固定するように書いてあるがネジ径が合わず、また、ミラーが軽くなったので、ベースに装着する足 (機材収納固定として4個あり。足に3個使用。残りの1個を使用)で装着。

 副鏡の光軸を合わせた後、主鏡の光軸調整。
 主鏡の底側から斜鏡に映るフォーカサーを見て、LASERドットが中心になるように主鏡の光軸を調整(これを知らない人がけっこういる)。 

 確認!

 

 

アイピースと本機スペック

 主鏡の焦点距離は、私が愛用しているアイピースの焦点位置から逆算し、オーダーした結果のもの。

  口径 f 焦点距離 倍率 実視界 見掛視界 アイ・レリーフ 射出瞳径 備考
RD-400DX Zambuto+Paracorr 2 407mm 5.2 2118mm ×1.15          
Masuyama     32mm 66 1.3° 85° 20mm 6.2mm  

Leica Zoom ASPH. 17.8 - 8.9mm

    17.8mm 119 0.5° 60° 18mm 3.4mm  
      8.9mm 238 0.34° 80° 18mm 1.7mm  
RD-400DX Zambuto 407mm 4.53 1842mm            
TeleVue Powermate 2×     8.9mm 205 0.29° 60° 18mm 2.0mm  
      4.45mm 414 0.19° 80° 18mm 1mm  
 
     

つまりは、

66×、 約120〜240〜414    
                   

  基本トラベル・ドブなので、アイピースは極力減らしたいところ。厳選したトラベル用アイピースは、Masuyama 32mm、Leica Zoom、それと2×パワーメイト(or Zeiss Abbe Barlow)。
最低倍率は66×で、ライカ・ズームで約120〜240×。それ以上はパラコアを外し、×パワーメイト(or Zeiss Abbe Barlow)で414倍までカヴァー。それ以上の倍率では何を使うかまだ未定。
 

パラコア

 ミラーが約4sも軽くなったので、アイピースはできるだけ軽くしたい。パラコア2は像が向上するが重い。そこで、以前購入し、Masuyama 32mmに使っていたBaader MPCC MK III を試した。アイピースの絞り環位置から57.5mm±1mmにMPCCを装着しなければならない。付属のリングは14mm、28mmなので、あとは笠井のM48延長筒セットとの組み合わせで調整する。

 Masuyama 32mmの絞り環は、バレルと本体との境目との事だったので、本体のバレル34mmに14mm+10mmの延長筒を付ければ58mmとなりOKだ。重さは、アイピース+パラコア2が825gに対して、アイピース+延長筒+MPCCで540gと285gのダイエットになる。
 Leica Zoomの絞り環の位置は、本体から4.5mm内側との事だが、笠井の2”スリーブ延長筒DX 35mmを装着し、MPCCをねじ込むと、55.5mmとなり1mm足りない。 しかし、パラコア2の場合は57mm+2-4mmとマイナス側に許容範囲が広い。パラコアはマイナス側には緩いかもしれない、と勝手に解釈して-1mmでもいいか、と妥協。重さは、アイピース+パラコア2が865gに対して、アイピース+延長筒+MPCCで641gと224gのダイエットになる。
 この条件で見比べたが、パラコア2の圧勝だった。少々重くなるが、これは外せない、
 

見え方

 超高性能な屈折望遠鏡で低倍で見る、きりりと引き締まった刺すような点状の恒星。同じく低倍で見る、月面の恐ろしくシャープでコントラストが高い像。これをそのまま倍率と明るさを口径分だけ増やしたような素晴らしい像。パラコア2を入れると、もう驚喜! こんな反射ミラーがあったなんて.... 
 

マウナロア遠征 (2018年10月)


ワイコロアのロッジ近くには美しいビーチがある

 今年の10月の連休は新月期にかかるタイミングなので、マウナロアに遠征してきた。いろいろな所に遠征したけれど、北半球で最高なのは、マウナケア/マウナロアだ。先住民との騒動は一段落しつつあるようだが、今回はマウナケアへは行かず、マウナロア:高度3361m1本に絞った。また、3361mはちょっときつい時もあり、途中の高度2517mの地点でのオールナイト観望も考えつつ、当日の状況での判断に委ねる事にした。前回は、クイーンズ/キングスマーケットのあるワイコロアのロッジを借りたけれど、今度はさらにマウナロアにアクセスの良い、内陸のパニオロ・グリーン・リゾートの1部屋を借りた。最大6名泊まれ、シェアする分安くなる。

 コナ直行便が復活したのはありがたい。ホノルル経由だと、荷物をかかえて隣のビルまで乗り継ぎしなければならないし、いつも税関で、「何だその荷物は?」と30分はすったもんだする。コナは、自転車やサーフボード、沢山の荷物を持ち込む人も多く、「これ何?」、「望遠鏡」、「OK」で終わり。「おれも望遠鏡で見てるぜ。」と天文談義になったり。

観測所に続く溶岩路(ここは直線)

 前回はレンタカーはマウナケア/マウナロアの道でも唯一保険が利くハーパーで借りたが、価格が高いこと、マウナロアの観測所までは全て舗装道路なので、普通のレンター(Avis)で大きなバン・タイプを借りた。ただし、マウナロア観測所までの道は舗装道路といえどアップ・ダウンがもの凄く、登り切った所で道が急に曲がっていたりしていて、見通しが悪い。道路の幅は車1台分しかなく、下手をすると対向車と正面衝突する可能性があり、また自転車(欧米では砂漠やありえない所を自転車で走破する人が少なからずいる)とも正面衝突する可能性もある。また、舗装路から外れるとそこは溶岩で、鋭く尖った断面がむき出しになっている。タイヤの横を切れば動けなくなる。そして冒頭に書いた通り、保険は利かない。ここを運転するなら「運転に自信のある人」ではダメで(過信は事故に繋がる)、慎重で先が見通せる人が適任だ。

 過去3回の遠征、計7日は全て快晴で「歩く高気圧」の面目躍如だったが、今回は半分は曇り〜雨で神通力は発揮できず。それでも1日、最後まで完璧に快晴で、シーイングもこれまでに無い素晴らしい日があった。ここマウナロアはいつもそうだけれど、恒星は全く揺らがないし、金星の三日月の、まあシャープなこと。水平線近くの大気も高度3361mでは全く観望には影響しないようで、高度が低いDSOもきっちり見える訳だ。普段、いかに相当量の大気を通過して光を見ているのか痛感する。

 まだ薄明の中、とりあえず火星を見てみたが、こんなに模様がくっきりと見えた火星は今まで見たことがない。アジア〜アフリカ大陸のような大シルチス〜シメリアがくっきり見える。今までは、ずっと見続けてシーイングの良い時にクッと見える、といった感じだったが、最も素晴らしい像が継続する。見ていて飽きない。

 次に土星。これが驚愕! 驚嘆!、空前絶後!! こんなシャープな土星は今まで見たことが無いし、こんな像は写真でしか見られないと思っていた。環、特にA環は濃い筋が無数に見え、土星表面には2本帯が見える。何が凄いかって、ここではその帯の淡い細かい所のグラデーションがしっかり見えることだ。写真では飛んでしまっている部分で、写真よりも遙かに見える! 釘付けで、DSO観望に移れない。沢山の衛星を伴っていて、こんなのは宇宙旅行で至近距離でしか見られないような土星ではないか。オーストラリアの90cmの反射より断然凄い。空が良いとはいえ、恐るべしZambuto鏡! 以上、アイピースはLeica Zoom 238〜414倍。


曇って星が見えず、逆に普段見えない地上風景が見えていた日に撮影。何と雲越しに星が無数に写っていた!

 今回の遠征は、この間出版した「DSO観望ガイドブック」の検証も兼ね、片っ端から見ていこうと意気込んでいた。しかし、メジャーの天体の見え方が全く違っていて、また、これがとんでもなくもの凄いので、結局メジャー天体巡りになってしまった。空もミラーも格別だったせいか、歴代最高の体験。

 何と言っても淡いグラデーションが素晴らしく見えるので、全く新しい天体を見るような新鮮さだった。写真ではコントラストで強調されて飛んでしまっている部分が、実に美しいのだ。だから、フィルターを付けてコントラストを上げるより、フィルター無しがいい。M17やM8、M20の散光星雲は写真より遙かに広がっていて、その先の徐々に薄くなって消えていく部分、そして刷毛で掃いたような繊細な切れ込み、M42-43からランニング・マンにかけての青みがかった淡い星雲、アンドロメダの暗黒帯とわずかな星々の幾重にも重なった儚くもある淡い光、網/絹状星雲の、普通ならもう見えなくなっているであろう、かすかな光、、、 ため息の連続。

 *前回の遠征での幸運の女神となったゲッコウ。今回もこれを見た夜は最高だった。

 銀河も、その雄大さが圧巻。NGC253の暗黒帯の切れ込み、中心のバルジを見ていると、これまた宇宙旅行。いつもならオマケのようなM110だって立派な銀河として見える。M57の横のIC1296も、2本の腕が手裏剣のように見えた。この銀河は15.3等だから本来16”では見えるはずが無いのだが、前回同様(18”)見えている。等級が間違っているのだろうか? この銀河、以外と大きくM57より一回り小さい位の大きさに見えるのだ。有名天体の隣といえば、M13の隣、NGC6207も米粒を潰したようないびつな形の銀河としてしっかり見える。

 これだけ淡い光が見える、ということは、暗黒星雲も見え易く、たて座のCB158-7、B116、CB160-1の真っ黒に抜けた感じは見事。沖田さんの60cmで見る馬頭は、見た瞬間、誰でもその形がはっきり認識できる程。わし座は惑星状星雲の宝庫だけれど、肥大した恒星状の中の濃淡が認識できる。圧巻だったのは、沖田さんの60cmで見るクレオパトラの瞳NGC1535。まず中心星と青い環が2つ見えるのだが、さらに幾重にも環が重なっていて、こんなに複雑な内部構造が見えたのは初体験。エスキモーも同様。NGC6781の環の濃淡もいい。

快晴を確信して機材を広げたら、雨に見舞われた日もあった。

 アルビレオ、アルマク、ラスアルゲティ等の美しい二重星は、明らかに色のコントラストと輝きが1ランク上だし、シリウスBが余裕で分離する空だから、わし座の23番星の青い伴星だって美しい。ここでいつも虜になるのは、APQ100/640 + プラノキュラー30mm、見掛け視界88°、21倍で見るM45すばる。私のガイドブックでは、青い散光星雲が10個識別するように書いてあるのだが、それぞれのベールが、まあ美しいのなんのって。そして、アルシオーネから流れるように続く星の起始部の儚く淡い恒星のいとおしい感じは、写真では絶対に表現できない世界。ここは、写真より遙かに見える。

ホテルの前はゴルフ場のグリーン。七面鳥がいた。

 天候不良の時も、一つでも天体を見るよう貪欲にアプローチをした。毎日マウナロアに行っていたらみるみる体が高地順応し、初日には頭痛があったのに、4日後には早く歩いても全く息切れもしなくなった。マウナロアが曇って晴れる見込みが無くなったら、途中のマウナケア州立公園(1987m)でも観望したし、ホテルの部屋の前のグリーン(278m)でも度々観望した。ホテルの前といえど、M33は肉眼で綺麗に見えるし、明け方にはバーナード・ループの一部 (HR2113の右上辺り)を双眼鏡で確認できる程の空。双眼鏡WXが大活躍。ただ、23時頃にゲリラ的にスプリンクラーが稼働し、友人達の望遠鏡は濡れてしまった。時々動作するようで、要注意。

 最終日はマウナロアもマウナケアも天気が見込めなかったので、急遽天気予報を総動員して観望場所を検索。北が晴れそうだ、とコハラ山を登って向かったら、途中に空き地(個人の所有では無い)を見つけ、ここで観望した。高度780m。先には風力発電のプロペラが並んでいるし、樹がご覧の通りだから風は強い。しかし予報通り、0時頃には無風となった。

 シーイングは今一だったが、それでも十分楽しめた。双眼鏡WXは大活躍。双眼鏡と言うより、双眼望遠鏡と言った方が良い。私はもともと高品位な超広角双眼鏡での極上の空の散歩を知っている。この愛機を手放したのは、WXが10倍視野9°だから。我が愛機は8倍9°で、このスペックは実現できなかった。10倍9°が、どれ程凄い像を届けてくれるか、それを知っていた。例えば、南に向けると、M16、M17とSagittarius Star Cloud M24が同一視野で、その美しさは特筆もの。ぎょしゃ座のM38、M36とアステリズム:Cheshire Catが同一視野で乙だ。
 さて、写真奥に見える棚は?

 ホームセンターで購入した掃除用具立て、$20。これが実に観望に役立ったのである。アイピースもそくっと入って落ちない丁度良い大きさ。 日本に持って帰りたかったなあ。ホームセンターは、ワイメアにACE Hardwareがあり、近くには有名なレストラン:メリマンズや大人気のヴィレッジ・バーガーがある。さらに大きなホームセンターは、コナ市にLowe'sがある。Lowe'sは、日本ではお目にかかれない巨大なグリル、工具箱などがズラリと並び、壮観。


ACE Hardwareには、ネジも揃っている
 


なにもかも巨大なアメリカ。ゴミ箱も巨大なのがあった。ゴミいっぱい入れたら、人の力では持ち上がらない。


 ←冷凍庫(シュールだなあ)
傑作なのは、ハロウィンのディスプレイ。音付きで動くのもあって本格的。

 観望が終わって帰路につく時、励みともなり心のより所となったのが、FM 105.3MHz。70年代の懐メロオンパレードで、久々に聴いた曲多数。「アイウォンチューウウ、ショメーザウェーイ」とか、嬉しくなっちゃって、ずっと頭から離れなかった。


コハラ山での観望
 

問題点 その1 (2018年10月)

 遠征して2つの問題点が明らかになった。斜鏡がスプリング固定なのだが、組み立てる時にトップリングを持ち上げるだけで、斜鏡が盛大にずれる。これはおそらく収納時に斜鏡部分が当たってスパイダー等を痛めないようにするための「にげ」と思われるが、オリジナル・ケースと違い特注ケースではそのリスクが無いので、ここはもう少し何とかしたい。

 で、私の取った対策がこちら。

  模型用6mmアルミ・スペーサーを斜鏡光軸ネジに入れて、これをアラルダイドで固定。つまりは、アルミ・スペーサーがガイド円筒となり、ズレを防ぐという寸法。これで光軸調整が大幅に楽になる。

 また、光軸調整には、小型アクリルミラーがあると便利。これでフォーカサー内側を反射させて見れば、主鏡の下から覗き込まなくても主鏡の光軸調整が出来る。


問題点 その2 (2018年10月)

 傾斜センサーは、遠征前にチェックした時には大丈夫だったのだが、遠征では動作したのは最初の1時間だけで、あとは四六時中接続が切れ、また誤差も大きく使えなかった。ドット・ファインダーはあるものの、通常のファインダーは無いので、導入したことのない天体をいきなり66×、実視界1.3°に導入するには時間を要した。傾斜センサーは修理に出したが、今後確実に動作させたい希望があるので、 赤緯軸のエンコーダーを取り付ける事にした。
 

フィルターBOX (2018年11月9日)

 フィルターの着脱は面倒だ。双眼ならなおさらで、ちょっとフィルターを付けて見てみようか? とか、フィルターを換えたらどうなるだろう? と気軽なフィルター・ワークはどんどん遠のいてしまう。そこで、私の双眼望遠鏡双眼鏡ドブソニアンなどは、全てBORGのフィルターBOXを入れて、瞬時にフィルターの着脱を可能にした。

 ところが本機では見事な絞りが付いていて、この先にフィルターBOXは装着できない。では、フォーカサーと絞りの間のスペースはどうか? 借りに入れることができても、フィルター着脱のツマミがフォーカサーと絞りの取り付けの四角の板に隠れてしまう形となり、操作中にフィルターが主鏡に落下する可能性がある。という訳で、本機の場合は、当分毎回ねじ込みと相成った。
 

フィルターBOX (2018年11月25日)

 でも、やっぱり他の望遠鏡と統一したい。何たって手軽なフィルター・ワークは便利。そこで、絞りが付いているプレートを交換してフィルターBOXを取り付ける事にした。プレートは、私のドラえもん、松本さんに作ってもらった。ねじ込んで固定したフィルター交換つまみの位置は、プレートが正方形なので、90°ずつ好きな位置が選べる。まるで純正品のようにうまく収まった!
 

主鏡おさえ (2018年11月29日)

 ミラーが薄くなった分、押さえのスペースが空き過ぎとなった。
 黒色の消しゴムをカットして両面テープで接着して対応。

乾燥ポンプ (2018年11月29日)

 めっぽう夜露が酷い所用に乾燥ポンプを製作してみた。乾電池式のエアーポンプ Hapyson YH-739Cとシリカゲル 500g のボトルを組み合わせたもの。ホースの固定はアラルダイド。最初、空気を入れるホースをボトルの底に入れたが、それだとポンプの圧力が足りなくて空気が出てこなかった。今は全部ボトルの上部。シリコン・ホースは、外径5mmが主鏡用で3mmが斜鏡用。

 これをべたつかない紙テープで固定。空気はあまり出てこないので、これでミラーが曇らないのか全く自信が無い。春までにはテストしよう。
 

トラス棒の補強 (2018年12月5日)

  トラス棒は2〜3分割だが、強度は実用範囲内だと思う。しかし、一度転倒させてトラス棒を痛めて修理し、気持ちの上で強度が今一。そこで、本機を家・近郊で使う際には一体型 のトラス棒を使用し、海外遠征用には従来通りの分割型を使う事とした。

 どうやって一体型とするか? 普通ならジョイント部に円筒を被せて接着だけれど、丁度良い大きさの円筒の調達、その円筒の最低6カット等が面倒だ。一番簡単なのは、強度あるテープを巻き付けること。そこで、Nitto アルミテープ 0.08mmを1ジョイントに30cmほど巻き上げて補強した。基本同色とし、1つだけ長いポールにアクセントとしてブロンズ色とした。
 

赤緯軸のエンコーダー (2018年12月9日)

 傾斜センサーは修理に出し頻繁に接続が切れる事は無くなったが、やはり誤差は出る。

 そこで、やはり赤緯軸のエンコーダーを装着することにした。使用したパーツは、下の写真のものとL字アングルを組み合わせて、いきあたりばったりの思いつき製作。

 

 赤緯軸(垂直軸・高度軸)のエンコーダーは、片方はしっかり固定、もう一方は緩めに固定する。完全に円軌道にはならないので、アソビが無いと軸がスリップして誤差が出る。という訳で、片方はスプリング・ワッシャーで浮かせてネジ固定、もう片方/垂直・エンコーダー保持の方はヴェルクロ固定。

 NEXUS IIは、後ろの小袋に収納。

 で、動作確認は? 毎日曇りであと数日も曇り? せっかくの新月期なのに遠征へも行けない。

  (2018年12月11日追記)
    昨夜、確認できた。バシバシ星が真ん中に導入。バッチり!
    

  内容追加中。続く.....

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