1999年8月の映画


バッファロー'66 Buffalo'66
アメリカ 1998年 113分
監督・音楽・脚本・主演 ヴィンセント・ギャロ(
「パルーカヴィル」)
脚本 アリソン・バグナル
撮影 ランス・アコード
音楽 キング・クリムゾン「ムーンチャイルド」
出演 ヴィンセント・ギャロ(ビリー・ブラウン)/クリスティーナ・リッチ(レイラ)/アンジェリカ・ヒューストン(ママ・ジャネット・ブラウン)/ベン・ギャザラ(パパ・ジミー・ブラウン)/ケビン・コーリガン(親友グーン「トゥリーズ・ラウンジ」)/ロザンナ・アークェット(ウェンディ)/ミッキー・ローク(ブッキー)/ジャン=マイケル・ヴィンセント(ボーリング場のソニー)
メモ 1999.8.27(金)心斎橋ビッグステップ パラダイス・シネマ
あらすじ
刑務所を出ていく男がひとり。寒空の下ベンチに座り身を縮めてバスを待っている。と、刑務所に戻っていく。トイレに行きたいと言う。門番は「一度出たら入れない。最終バスがもうすぐくるぞ。」と告げる。我慢してバスに乗り込む男は、無実の罪で5年間食らっていたビリー・ブラウンだった。今から親の家に顔を見せに行くのだ。
感想
いやはや・・・いやはや・・・
見終わった後、ずりずり椅子からお尻が滑り落ちる。
うじうじした退屈な話のようでもあり、引き込まれる話でもあり、生き急いでいるようなパラノイア男・ヴィンセント・ギャロは、この一作品を作っただけでも生まれてきたかいがあったと思えるのではなかろか。
クリスティーナ・リッチは、何もかもあるがままに受け入れてくれる女神(マリア)様のようであった。みごと。

音楽にはまったく疎いさぼてんでも聞き覚えのある曲。家に帰りさぼてん男をせっついて1枚しかない「YES」のレコードを聴く。「HEART OF THE SUNRISE」という曲なんですね。いいです。大槻ケンヂの言うようにプログレッシブ・ロックファンは思わず号泣(かも)。
満足度★★★★
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ウォーターボーイ THE WATERBOY
アメリカ 1998年 113分
監督 フランク・コラチ
脚本 ティム・ハーリヒ/アダム・サンドラー
撮影 スティーブン・バーンスタイン
音楽 アラン・パスカ
出演 アダム・サンドラー(ボビー・ブーシェ)/キャシー・ベイツ(ママ・ブーシェ)/フエルザ・パルク(ヴィッキー・バレンコート「ガス・フード・ロジング」)/ヘンリー・ウィンクラー(クライン・コーチ)/ジェリー・リード(レッド・コーチ)/ラリー・ギリアード・Jr.(初めての友達デレク・ウォレス)/ブレイク・クラーク(○△□×のファーマー・フラン)
メモ 1999.8.27(金)OS劇場C.A.P
あらすじ
所はアメリカ南部ルイジアナ州。31才のボビーはフットボール大学チャンピオン・チーム、クーガーズのウォーターボーイ(吸水係)。この道18年の彼を、見飽きためざわりだと監督がクビにする。しょぼくれて沼地のほとりの家に帰ってくるボビー。もうボーイという年ではないが、ママにとってはいつまでもかわゆいボーイ。「誰にいじめられたんだいっ!」と殺気立つママ。おいしい水を作る事はボビーの天職だ。負けてばっかりでチアガールも愛想つかせて飲んだくれているマッド・ドッグズに雇って欲しいと売り込みに行く。
感想
フットボールの事は何ひとつ知りませんが、要するに格闘技なわけだな(笑)。
振替休日の金曜日の朝イチ世のしがらみを忘れ、お得なレディースディ1300円でお気楽映画を楽しむ(^^)。
キャシー・ベイツ演じるママ・ブーシェに笑う。特に所在なげに、ペットのロバ・スティーブとテニスをしているシーンがうまい。子供が巣立った後のママの姿だ。飲んだくれているチームマスコットやらチア・ガールやらも可笑しい。
アメリカ人にはなじみのコーチ、スポーツ・キャスターが出演しているそうです。これもアメリカでヒットした理由なんだな。コメディというのは作られた国の文化や時代にネタがある場合も多いので万国共通とはなかなかいかないんだな。
アダム・サンドラー演じるボビーはなんとなくジェリー・ルイスのキャラに似ているように感じた。ジェリー・ルイスの出演している映画は、ずっと以前に少し見ただけなのでぜんぜん違うかもしれません。
フランチ・コラチ監督がボビーのパパ役で出演。ボビーに何故あれほどの破壊力があるかの謎が明らかになるのだ(期待しないでください)。
満足度★★★1/2
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生きない
日本 1998年 101分 オフィス北野
監督 清水 浩(初監督作品)
脚本 ダンカン ロカルノ国際映画祭脚本賞
原案 中原文夫「不定期バスの客」
撮影 柳島克己
出演 ダンカン(新垣)/大河内奈々子 (美つき)/尾美としのり(木村)/村野武範 (伊藤)/小倉一郎(神田)/左右田一平 (小沢)/温水洋一 (八代)/グレート義太夫(能勢)/岸 博之(望月)/三橋貴志(小松)/研丘光男(田口)/春木みさよ(福田)/石田太郎(野ロ)
メモ 1999.8.23(月)WOWOW
あらすじ
暮れもおしつまった12月30日の那覇空港。観光バスが一台、お客を待っている。最後の客がやってきた。入院した叔父の代わりに無駄にするのはもったいないとやってきた20才の美つき。とまどいながらも、美つきを乗せてしまう添乗員の新垣。2泊3日のツアーの実態は借金でにっちもさっちもいかなくなった者達の保険金目当ての事故を装った”自殺ツアー”だったのだ。
感想
ホラーだな、この映画。
前半は、”事故”のはずなのに乗客達がそれぞれ「遺書」を持っていて添乗員の死神・新垣(ダンカン)に「何考えているんですか」と怒られたりのブラックユーモア、笑える。が、後半暗いとゆうか前半に比べ普通というか。結末もああしかないんだろうな。「缶けり」の映像で表現されているシュールさが後半も続けばある種の「不条理物」として完成されたかも。少しなまぐさく感じた。
しかし、「沖縄」、「崖から集団自殺」ってこういう題材にしていいんだろうか。頭古いんかな、私。「みんな一緒に死ぬんです」という死神・ダンカンの訳のわからない迫力が後半伸び悩み、こういう思いを吹き飛ばしてしまうにはいたらなかった。

 
「SF サムライ・フィクション」「鮫肌男と桃尻女」といい日本の若手監督の才気は感じるんやけれど、若手監督が「八月のクリスマス」を撮った韓国と比べると、日本の社会は成熟しきってしまったと思えてならない。
おすすめ度★★★1/2
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豚が井戸に落ちた日 The Day a Pig Fell into the Well
  1996年バンクーバー国勢映画祭グランプリ、1997年ロッテルダム国際映画祭最優秀作品賞
韓国 1996年 117分
制作 イ・ウソク
監督・脚本 ホン・サンス(長編第一作)
脚本 ホン・サンス/チョン・デソン/ヨ・ヘヨン/キム・アラ/ソ・シネ
音楽 オク・キルソ
原作 ク・ヒョソ
撮影 チョ・ドングアン
出演 キム・ウィソン/バグ・ジンシン/イ・ウンギョン/チョ・ウンスク
メモ 1999.8.22(日)CS録画
あらすじ
売れない小説家ヒョソプは38才。最近は創作も生活も荒れていて仲間達からもつまはじきだ。が、不思議な事に女にはもてる。全身で愛しているのは人妻ポギョン。そしてもうひとり小遣いをせしめるのに便利な若い女ミンジェがいた。
感想
「自分以外の人を愛するいう事も自己愛の変形に過ぎない。」 「セックスは排泄行為のひとつに過ぎない。」と解ったような言葉を思い浮かべてしまう寒々とした映画だった。
暗示的な「夢」のシーンがいいです。
腐れ縁というのかな、登場人物それぞれ「人生を賭けてきた作家を辞められない。」「二年越しの不誠実な恋人をおもい切れない。」「どうしようもなくなっている結婚生活を解消できない。」という行き詰まりの中で右往左往している。映画冒頭ヒョソプが植木鉢の虫に通せんぼをしていたが、あのシーンが映画全体を象徴しているのだ、と思う。
都会の孤独という点で、台湾の映画
「愛情萬歳」を思い出す。同時期にアジアで”愛と孤独”をテーマにした作品が作られたんだな。
おすすめ度★★★1/2
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SF サムライ・フィクション
日本 1998年 112分
監督・脚本 中野裕之
脚本 斉藤ひろし
音楽 布袋寅泰
撮影 矢島佑裕次郎
出演 布袋寅泰(風祭蘭之助)/風間杜男(溝口)/吹越満(犬飼平四郎)/内藤武敏/緒川たまき/夏木マリ/谷啓/藤井フミヤ/藤井尚之
メモ 1999.8.20(金)WOWOW録画
あらすじ
時は1696年太平の世の中、剣の腕前をかわれて召し抱えられた「遅く生まれてきた男」風祭蘭之助は、ふとした事から人を斬り幕府からの御拝領の刀を盗って行方をくらます。藩の城代家老のバカ息子・犬飼平四郎は父親が止めるのも振り切って取りもどさんと駆けていく〜。
感想
斬新だったな、音が。
映像もお話も楽しめたし、感性若いのかも(笑)。が、若者のギャグは幾分上滑りのように感じ、内藤武敏、谷啓の方に笑えてしまうというのが限界か。
「月、雲、水、風」といったキーワードで日本人の感性をくすぐるように作られていたと思う。特に風の音は印象的だった。

映画冒頭、藩の三バカが「ワーワー」と意味もなくわめきながら走るシーンを見てちびさぼてんが言う。「このへんでも、あんな小学生よー見るわ。」
今時どこでロケしたのかと思う昔の風景がたくさんでてきました。映画の題名から「昔のサムライが現代にやってくるタイム・トリップ物」と思いこんでいた私ってあほですな。。
おすすめ度★★★★
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バタフライ・キス Butterfly Kiss
英国 1995年 89分
監督 マイケル・ウィンターボトム(長編デビュー作)
脚本 フランク・コトレル・ボイス
撮影 シェイマス マクガーヴェイ
音楽 ジョン・ハール
出演 アマンダ・プラマー(ユーニス「パルプ・フィクション」)/サスキア・リーブス(ミリアム)/カティ・ジィミソン
メモ 1999.8.18(水)WOWOW
あらすじ
ガソリンスタンドに入っていく女がひとり。絶えず体を動かしている。「あんた、ジュディス?」と店員に聞く。ジュディスを捜しているのだ。
感想
刺激的ではあるが、見ていて気持ちいいという映画では決してない。だんだん顔が険しくなってくるのが自分でもわかる。反社会的で精神的に何かが欠落した病んだ人間と、狭い世界に生きてきて幼い人間のロードムービーに過ぎないという見方もできる。しかし、「何故この世に生を受けたのかわからない。」という憤りをたぎらせているユーニスに共感もできるのだ。「終わりにしたい」という渇望が痛い。現世というのはあの世(天国か地獄か)への通過点に過ぎないのか。

誰かと語り合いたいという作品ではないと感じた。どう生きてこようと、死というのは一度で済むんだな。最後のユーニスの姿は全ての人間の罪を背負っていったキリストとだぶる。

おすすめ度★★★★1/2
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ピカチュウたんけんたい (by さぼてん男)
日本 1999年 東宝
メモ 1999.8.14(土) 南街劇場
あらすじ
野原でサトシたちが昼寝している間にトゲピーが下り坂を転がり落ちて穴の中に! 後を追ったピカチュウたちがやってきたのは野生のポケモンたちの谷だった。トゲピーを求めてピカチュウたちの探検が始まる。
感想
キレイハナを始めとするポケモン総出演の踊りあり(昔のミュージカル時代劇を連想)、踊りついでのピッピたちの指振り攻撃あり(ピッピが指を振ると何が起きるか分からないというシュールさ)、嵐の中のタマタマの巣救出作戦あり(カビゴンの意外な活躍)という盛沢山かつノーテンキな内容。
優しげなオネエサンのナレーションに導かれて、次は絶対にこうなるという予想を裏切らない展開は、すれっからしの映画を見過ぎて凝った肩をほぐす効果あり。 ただし、ポケモンに関する最低の予備知識(例えばポケモンは進化するとか)がなければ理解不能に陥る。
隣に座った子連れのオッサンが「あのタマゴはなんや?(タマタマのこと、正確にはタマゴではなく種子に近い)」「今、何が起きたんや?(ピッピのダンスで指振り攻撃が暴発し、ピカチュウたちが吹き飛ばされた)」と子供に質問を連発。幼稚園児が理解できる映画に、いいトシしたオッサンが困惑していた。まあ、完全に理解できるオッサン(ワシの事じゃが)もヘンと言えばヘンかもしれん。
サトシたちが昼寝から目覚めるまでのピカチュウたちの探検という、こじんまりした案外の佳作であった。
おすすめ度
アホらしくも楽しいコミカル時代劇が好きな人には受けるかもしれない。★★1/2
なお、同時上映というか、本編であるところの「ルギア爆誕」は、CG使用などで頑張っているものの、前作「ミュウツーの逆襲」同様、肩に力が入り過ぎて観る者を赤面させる。
ルギアの描き方について、予告編ではミュウツーに近いが、本編ではむしろガメラに近い(意味が分かってもらえるかな?)。予告編と本編とで違いがあり過ぎるのはいかがなものか? というわけで減点。★1/2
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ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ
     LOCK,STOCK AND TWO SMOKING BARRELS

英国 1998年 108分
監督・脚本 ガイ・リッチー
音楽 デビッド・A・ヒューズ&ジョン・マーフィー
撮影 ティム・モーリス・ジョーンズ
美術 イアン・アンドリュース/イブ・マブラキス
衣装 ステファニー・コリー
出演 ニック・モーラン(サクラのエディ)/ジェイソン・フレミング(故買屋トム)/デクスター・フレッチャー(ご清潔シェフ・ソープ)/ジェイソン・ステイサム(宝石のタタキ売りベーコン)/P・H・モリアーティ(ポルノ界の帝王・ハチェット・ハリー)/レニー・マクリーン(洗礼者・バリー・ザ・パプティスト)/スティーブン・マッキントッシュ(パブリックスクール出身大麻製造者ウィンストン)/フランク・ハーパー(隣人ドッグ)/ヴィニー・ジョーンズ(汚ねえ言葉が嫌いなビッグ・クリス)/なんとスティング(トムの親父JD)
メモ 1999.8.14(土)梅田ガーデンシネマ
あらすじ
勝負師エディは、仲間3人と10万ポンドを用意し、ポルノ界の帝王ハチェット・ハリーにカードゲームを挑む。しかし、十万枚も上手だったハリーの罠にかかり50万ポンド負けてしまう。一週間で返せないと一日一本指をもらう。仲間全員の指で足らなくなった後はエディの親父JD(スティング)のパブを取り上げるといいわたされる。エディの世界がぐわんぐわんぐわん
感想
勘定してみると七つどもえの話なん。大物3グループ、素人さんグループ、幼なじみグループ、親子ペアの専門家グループ、チンケな専門家グループが巻き起こすランダムシーソーゲーム。
この映画を見ながら、ちょっと似てるなあと思っていた映画が何かと言うと・・・ええっと・・・あのその(汗)・・・「マダムと泥棒」。   撮影所の名前を取って「イーリング・コメディ」と言われた映画群の代表とされる英国発ブラック・コメディ。「ロック・・・」の方がずっとずっと現代的でテンポがいいのですが(アセアセ)。
人を選ぶ映画と思います。私は面白かった。 英国の俳優さんには疎いので、ギョロ目シェフ・ソープは、ティム・カリーに似てるなあとか、故買屋トムの声はマイケル・ルーカー(「ヘンリー」)みたいとか、隣のギャング・ドッグはトム・サイズモア(「ヒート」「レリック」)やんとかの連想も楽しい。

「混んでますか?」と梅田ガーデンシネマに問い合わせる前に練習練習。「ロックストックアンドトウースモーキング・・・」とソラで十回繰り返す。よしっ、電話。「梅田ガーデンシネマでございます。」「ろ、ろ、ろっ(でない)・・・英国映画、こんでますぅ?」(情けないヤツ)
 
「キラーコンドーム」をはじめとしてヘンテコなパンフは最近お目にかかるけれど、文字が読めないっってのは今回初めて(**)。
「千円の、パンフ懲りすぎ、カッコだけ」「千円の、パンフ半分、なんにもない」(おそまつ)。
満足度★★★★1/2
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彌次喜多道中記
日本 1938年 日活京都
監督 マキノ正博
脚本・原作 小國英雄
撮影 石本秀雄 音楽 古賀政男/テイチク管弦楽団
作詞 時雨音羽
出演 片岡千恵蔵(遠山金四郎)/杉狂兒(鼠小僧次郎吉)/楠木繁夫(彌弥次郎兵衛)/ディック・ミネ(喜多八)/美ち奴(お園)/悦ちゃん(三郎)/近松里子(お蔦)/香川良介(遠山河内守)/瀬川路三郎(目明かし傳七)/尾上華丈(千太)/河部五郎(村雨藤五郎)/志村喬(文太夫)/団徳麿(手品師)/中野かほる(お銀)/比良多恵子(お雪)/小松みどり(峠の茶屋)
メモ 1999.8.14(土)BS録画
あらすじ
夜のお江戸に、目明かしの吹く呼子の音がピーピー鳴り響く。屋根瓦の上を走る怪盗鼠小僧次郎吉(杉狂兒)。
と、一軒のお茶屋では「飲む打つ買う」と三拍子そろった遠山家の若様(片岡千恵蔵)・長男の甚六殿がひょっとこのお面をかぶり踊っていた。軒に隠れていた鼠小僧を一喝する遠山金四郎に、ほっかむりをした鼠小僧は自分には心願がある、この場は見逃して欲しいと頼む。自分の名を騙る偽鼠小僧が江戸を荒らし回っている。偽物を暴きたいというのだ。「俺は役人じゃねぇ。」と見逃す金四郎。家に帰ってきた鼠小僧は、つきが落ちているのを感じしばらく江戸を離れる決心をする。一方金四郎は酔っぱらって屋敷に帰る。金四郎には複雑ないわゆる家庭の事情がありワザと荒れていたのだ。母とはなさぬ仲であり、継母は「できそこないの長男」ではなく、自分の子である次男を跡継ぎにしたいと、遠山河内守にせまっていた。優しく気弱な河内守は「家庭が波風たたないよう」妻のいいなりになっていたが、こればかりは容認できず、不憫な長男のため跡目を金四郎に譲る決心をする。しかし、その決心を聞いた翌日金四郎は家を出て旅にでる。

感想
峠の茶屋で本物の彌弥さん喜多さん(楠木繁夫とディック・ミネ)の笠と間違ってしまい、宿屋でお連れさんだと勘違いされたふたり(片岡千恵蔵と杉狂兒)は、お互い本名を名乗らず彌弥さん(片岡千恵蔵)喜多さん(杉狂兒)として、ふたり旅を続ける事にする。ところがさっそくのトラブル、胡麻の灰のお銀に胴乱(どうらん)を盗られてしまう。無一文になり腹を空かせて困り果てたふたりは、通りがかりの旅役者の女座長(美ち奴)に助けられなんとか飯にありつく。そして新入りの仕事をするわけだが、これがなんと馬の足であった。(コラ、まだあらすじ書いてるな^^)
新派劇のような「親子の情」を縦糸に、ミュージカルあり、珍騒動あり、活劇あり、意外な犯人までありの工夫を凝らした映画。ラストのノーテンキな歌声とのびやかな映像が時代を超えて心を掴む。
<見所シーン>
 本物の彌弥さん喜多さん(楠木繁夫とディック・ミネ)が巻き起こす騒動「饅頭食い競争」 「五右衛門風呂の底を抜く」 「からかった大原女から逆襲を受ける」もミュージカル仕立てで本筋とは別に見る側を楽しませる。特に、自分たちの笠を踏んづけた目明かし傳七に文句を言って、逆に十手をふりかざされ凄ごまれたふたりが「ぱぴぷぺ♪ぱぴぷぺ♪ぱぴぷぺぽ♪〜 ふん〜だはずではなかったにぃ♪〜」とごまかして逃げるシーンに思わず頬がゆるむ。

 芝居で「あお」に扮した前足(片岡千恵蔵)と後足(杉狂兒)が、客席に目明かし傳七を見つけ、「そっちに行くのはイヤイヤ」と舞台をぶちこわす。

 地回りの目明かしに睨まれ客がこない一座を助けるため馬になりきった(なってない、なってない)二人は旅人を運ぶ事にする。が、やっと見つかった客は相撲取りであった・・・の「・・・」シーン必見

 捉えられていたお蔦とお雪を救うため、天狗に化けての活劇シーン。素晴らしい動きです。

マルクス兄弟の映画を見ていて、急に見たくなった作品。世界的な超有名作品に引けを取らない。お薦め。
おすすめ度★★★★
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謎の要人悠々逃亡 VERY IMPORTANT PERSON
英国 1961年 99分
監督 ケン・アナキン
脚本 ジャック・デイビス
撮影 アーネスト・スチュアート
出演 ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス/スタンリー・バクスター/レズリー・フィリップス/エリック・サイクス
メモ 1999.8.12(木)CSスターチャンネル
あらすじ
第二次世界大戦下、英国きっての頭脳・応用航空科学研究所の所長アーネスト・ビーズは戦時内閣の特務命令で、ドイツ上空を飛ぶ。対空砲火をくらい穴の開いた飛行機から落ちたビーズは独軍の捕虜となってしまった。
感想
英国流ユーモア満載のたるい異色脱獄物。ニコリともしない尊大なビーズ卿は、人を喰ったアイデアで脱獄を果たす。
捕虜収容所内のラインダンス必見。 
「フル・モンティ」の原点がここにあると見た!。(嘘です。本気にしないでください)
おすすめ度★★★★
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パラサイト
米国 1998年 104分< br> 監督 ロバート・ロドリゲス(「エル・マリアッチ」「フロム・ダスク・ティル・ドーン」)
脚本 ケビン・ウィリアムソン(「スクリーム」)
撮影 エンリケ・シャディアック
音楽 マルコ・ベルトラミ
美術 ケリー・ホワイト
出演 ジョシュ・ハートネット(ジーク)/ジョーダナ・ブリュースター(デライラ)/イライジャ・ウッド(ケイシー 
「ディープ・インパクト」)/アッシャー・レイモンド(ゲイブ)/クレア・デュバル(SFマニア・ストークリー)/ローラ・ハリス(メアリーベス)/ロバート・パトリック(「T2])/パイパー・ローリー(「ハスラー」「キャリー」)
メモ 1999.8.10(火)梅田ピカデリー
あらすじ
いじめっ子もいじめられっ子もいながら、結構健全なハイスクール。ある日、いじめられっ子のケイシー(イライジャ・ウッド)はグランドでへんな物を見つける。生物教室に持ち込んだソレは、水をかけるとピクンと動いた。
感想
気持ち悪い映画大好きな人に付き合って見てきました。映画が始まる前に館内に流れていた音楽を聴いて、さぼてん男が言う「ピンク・フロイドやん」。
「スクリーム」+ジョン・カーペンター監督作品「物体X」)÷2ってな感じの映画。若手の演技合戦も映像も凝っているけれど、幾分ちんまりそつなくまとまっているのが残念。でも考えてみると「エル・マリアッチ」も内容に比べ静かな映画だったな。
SFマニアのストークリーにもっとオタクっぽい話をさせてもよかったかも。ロバート・A・ハインライン(「スターシップ・トゥルーパーズ」)の『パペット・マスター(人形使い)』が話に出てきました。小説は読んでいませんが、。ロジャー・コーマン監督作品「THE BRAIN EATERS(脳を喰う怪物)1958年」(未見)で映画化されているようです。最近では、ドナルド・サザーランド主演で1994年に「ブレイン・スナッッチャー/恐怖の洗脳生物」で映画化されていました。
「ロビンソン・クルーソー」の話を前ふりに持ってくるのはうまかってんけど、「未知の生命体」に乗っ取られたら「表情がなくなる」っていいながら、あのフェロモンむちむちになった先生はどーなってんの(笑)。乗っ取られた人間みんな、深層心理や願望が全面に出てきてハチャメチャになってもよかったんとちゃうかな。未知の生命体というより、魔法使いの魔法にかかってたんだな、みんな。
アメリカの青春映画を見ると、層の厚さと「ここから目立ってやるんだ。」というハングリーさを羨ましいと思う。
おすすめ度★★★
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学校の怪談4
日本 1999年 99分 東宝
監督 平山秀幸(「学校の怪談」「学校の怪談2」「愛を乞うひと」)
脚本 奥寺佐渡子
撮影 柴崎幸三
音楽 宇崎竜童
美術 中澤克己
視覚効果 橋本満明
挿入歌 吉田拓郎(「蒼い夏」)
出演 豊田眞唯(弥恵・やえ)/広瀬斗史輝(亘・こう)/笑福亭松之助(幸一)/原田美枝子/根岸季衣
メモ 1999.8.10(火)難波・松竹会館
あらすじ
真夏の小学校の校庭で遊ぶ5人の子供たち。かくれんぼをはじめた。「もういいかい」という声とともに鬼は校舎の中を探しはじめる。
と、半鐘を打つ「カンカンカンカン」という音が聞こえてくる。とともに、ドドドドドッというお腹に響くような地鳴りが始まる・・・・・。
感想
ツキアイで仕方なく見に行ったのですが・・・・・よくできていた。映像もお話も音楽も。

今までのお化け屋敷映画から一変し、「神隠し」を題材にした昔と今のこどもの世界のお話です。 その”こどもの世界”にただひとり、取り残された元子供が絡む。これが笑福亭松之助師匠。地かとみまごうばかりの演技で(地だな)とぼけてはりました。
やはり、原田美枝子が言う「死んだ人の魂は恐くないのよ。」がテーマなんだな。ノスタルジックな映像、小さな子供の視線の高さで追いかけていくカメラ、水の流れと共に現れる霊魂、クスクス笑える所もあり、そして哀しいお話でもあります。

東京から親戚の家にやってきた弥恵を「ここらへんの子と違うな」と見抜く松之助師匠を、川の側の文房具屋にしてある脚本にうまさを感じる。
最後流れる曲、「拓郎やん(**)」  嬉しかったな。

尋常小学校の時代も服に名前を書いていたのであろうか? ほんのちょっと疑問。
おすすめ度★★★1/2
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白い砂 HEAVEN KNOWS,MR.ALLISON
米国 1957年 105分 
監督・脚本 ジョン・ヒューストン(
「秘密殺人計画書」
原作 チャールズ・ショー(「肉と魂」)
脚本 ジョン・リー・メーヒン
撮影 オズワルド・モリス
音楽 ジョルジュ・オーリック
出演 ロバート・ミッチャム/デボラ・カー
メモ 1999.8.8(日)CSスターチャンネル録画
あらすじ
ゴムボートが一艘ゆらゆら波間に揺れている。島に漂着したゴムボートから男がひとりヨタヨタ島にあがっていく。ナイフを持ち敵を警戒しながら島を探索する男の前に突如現れたのは、箒をもって掃除をしている白衣の聖女であった。
感想
男にとっては天国なんかな?、地獄なんかな? 清楚な美女と孤島でふたりっきりっていうのは。
   ただ問題なのは、その美女がシスターだという事だけ。

敵に囲まれた極限状態ながら、自然が輝いている南太平洋の島が舞台の、異色ロマンチックファンタジー
孤児院育ちで体ひとつで生きていた海兵隊員と、修道院育ちでうぶな(多少とうのたったところがまたイイ)乙女との秘めた恋。いいです(^^)。ロマンチストの方々、必見。

「生魚、食べられヘン」という姫のために、食料を求めて日本軍の陣地に忍び込むロバート・ミッチャム。切なくて涙がでるよ(嘘)。
「一緒に暮らしたい。」と、とうとう心の内をうち明けるミッチャム。
   >「非常時の恋は長続きせーへんらしいよ」と即座にチャチャいれする私。
「神と結婚するんです。」と答えるデボラ・カーに「尼になるなら年とってからなれ。(若い身空でなんともったいない)」という。
   >「そう、瀬戸内寂聴さんみたいに、したい事全部してからなったらえーやん」と応援するアタシ。
しかし、成寿しなかった恋は美しい想い出のままなんだ。それも幸せのひとつかも(実感)。
  
この時代の映画としては、本を読み、碁をたしなみ、酒をきこしめす日本軍は比較的人間的に描かれていたと思う。ジャップといわずにジャパニーズと言われていた。
しかし、虎の子の砲台を守るのに日本軍は見張りも置かないものであろうか? そういっちゃあ、ご都合主義のかたまりみたいな映画なんだけれどね。ウミガメを見つけたときにはボートの側にオールになるような椰子の葉が”使って”とばかり”偶然”にあるし。陸ならともかく、大海原で泳ぐウミガメがあんなもんで捕まえられるのであろうか? 

昔TVで見た時は、手作りの櫛をプレゼントされたデボラ・カーが「髪が短いのです。」という所で、「向こうの尼さんも頭剃っているんだ。」と思いこみ、髪の毛が見えた時には「あれ、髪の毛あるやん」と驚いた。
1944年太平洋戦争末期が舞台のこの映画を、父親はどういう思いで見ていたのであろうか。 生魚を食べるシーンでは「刺身うまいのに。」と言っていたノーテンキ男は何も考えていなかったであろう。
おすすめ度★★★1/2
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黒猫 
米国 1934年 67分 
監督 エドガー・G・ウルマー
原作 エドガー・アラン・ポー
脚本 ピーター・ルーリック
撮影 ジョン・トスコール
音楽 ハインツ・ロームフィールド
出演 ボリス・カーロフ(パールシグ)/ベラ・ルゴシ(ヴィータス・バーディガス)/ディビット・マナース(ピーター・アリスン)
メモ 1999.8.1(日)CS
あらすじ
アメリカ人ミステリー作家ピーター・アリスン夫妻はヨーロッパ旅行中、列車の中でドクター・ヴィータス(ベラ・ルゴシ)と名乗る男と同室になる。男は古い知り合いを訪ねていく途中だという。オーストリアのその地は第一次世界大戦の激戦地であり、収容所があった。収容所の所長に村ごとロシアに引き渡され、殺戮の限りを尽くされたという。ヴィータスも長い間収容所にいたがようやく解放され、戦争中に死んだと言われた妻と娘を捜し続けていた。絶世の美女だった妻カレンは、収容所の所長だったパールシグと逃げ、ようやく居所を突き止めたという。
駅に着くと、作家にはホテルから迎えの車が来ていた。途中まで同乗させて欲しいとヴィータスが頼み車に乗り込む。雷を伴った嵐の中、車は道が崩れ転落し運転手は死んでしまう。雨の降る中、けがをした若妻をヴィータスの従僕が運び、4人は収容所の元所長パールシグ(ボリス・カーロフ)の屋敷にたどり着く。
ヴィータスがパールシグに妻カレンの事を問いただすと、戦後2年で亡くなり、亡骸は今もまだ生前のまま美しく保存されていた。「娘はどこだ?」と聞くヴィータスに、パールシグは娘の方も死んだと言う。しかし、実は美しく成人して母親と同じカレンという名前で呼ばれ、パールシグの妻となっていた。
作家の夫婦は、元収容所の後に建てられた屋敷を不気味に感じ出ていこうとするが、閉じこめられてしまう。パールシグは悪魔崇拝者であり、若夫婦の妻を悪魔への生け贄にしようと考えていたのだ。悪魔崇拝の儀式が始まったところで、ヴィータスと従僕は、括りつけられていた若妻を助け出す。若妻から、娘が生きていた事を聞かされたヴィータスは地下室におりていくが、もはやそこには冷たくなった娘が横たわっていた。嘆き悲しむヴィータス。従僕はピストルで撃たれながらもヴィータスと共に、パールシグを手錠で柱にくくりつける。従僕が死んだ後、ヴィータスはパールシグの生皮をはぎ復讐を始める。そこに、なんとか抜け出してきた作家のピーターが、ヴィータスを悪と間違え撃ってしまう。瀕死のヴィータスが「はやく行け」といい、ふたりは屋敷を逃げ出す。ヴィータスは屋敷中に仕掛けられていた爆弾を爆発させる。夜空に閃光が走り屋敷は燃え落ちた。
感想
えっ? ポーの「黒猫」と全然ちゃうやん。 ストーリーも雰囲気もまったく違っていました。ポーはお墓の中でひっくりかえってるんとちゃうかな。
黒猫が出てきて、ヴィータス(ベラ・ルゴシ)が怖がるんですが、それは「動物が嫌い。中でも猫が嫌い」ってのが理由。

しかし、映像的には楽しめました。螺旋階段がよかったです。”生前のまま美しく保存されている亡骸”は、 
「バットマン&ロビン」と似てました。 引き戸を多用した”未来的で無機質な家の創り”は、この時代としては健闘していると思う。
おすすめ度★★★
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