1997年7月

乱気流 タービュランス 

1997年 米国
監督 ロバート・バトラー
脚本 ジョナサン・ブレッド
出演 ローレン・ホリー(「ジム・キャリーはMr.ダマー」「潜望鏡を上げろ」)/レイ・リオッタ(「コリーナ・コリーナ」)/ヘクター・エリゾンド
メモ 1997.7.2 肥後橋リサイタルホール 試写会
あらすじ
クリスマスイブ、10名ほどの乗客乗務員、凶悪犯2人、護送するFBI4人が乗ったジャンボ・ジェット機がニューヨークからロサンジェルスへと飛行する。凶悪犯の一人の悪あがきから、機内での銃撃戦となる。
感想
うん、ストレートで面白かった!大スケールの空のパニック・スペクタクルに加えて、ポルター・ガイストが大発生しているような密室でのサスペンス風味付けでした。私ならまちがいなく発狂している状況下で、ローレン・ホリーはパンダのようになりながら頑張っていました。レイ・リオッタ声といい目といい、適役です。
蛇足ながら、映画紹介の中でホリーはジム・キャリーと別れたらしいとの最新情報あり(古い?)。
またまた追加、ジャンボ・ジェットって丈夫なんだ!昔観たモノクロ映画「大空港(だっけ?)」では、つくりかけの建物にぶつかっただけで大事故っちゃうのがあった。
さらに追加、機内の映画はクリスマス・イブということで、「素晴らしき哉、人生!」でした。
おすすめ度:観るなら大画面★★★1/2
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瀬戸内ムーンライト・セレナーデ 

1997年 日本 117分
監督 篠田正浩
脚本 成瀬活雄
音楽 池辺晋一郎
原作 阿久 悠 講談社文庫「飢餓旅行」
出演 (恩田一家)長塚京三/岩下志麻/鳥羽潤/笹原秀幸/河内沙友里
   フランキー堺/西村雅彦/竹中直人/高田純次/火野正平/河原崎長一郎/吉川ひなの/永澤俊矢/羽田美智子
メモ 1997.7.4 梅田松竹
あらすじ
昭和21年の春、淡路島の駐在、恩田一家(父・幸吉、母・ふじ、次男・光司(18歳)、三男・圭太(10歳)、末っ子の秀子(5歳))は、戦死した長男忠夫の遺骨を、父の故郷宮崎に納骨するため、船を乗り継いで長い旅をする。
感想
やさしい映画です。恩田一家がそれぞれとてもいい味でした。19歳の息子を機雷で失なった瀬戸内海(ひうち灘?)で船の上から合掌するシーンでは、泣けないお父さんを見ていると泣けてきました。お父さんが棒っきれで愚連隊をおっぱらう所もよかった。剣道は気迫がこもっていて格好いい。音楽といいちょっと甘いかなあと思いつつ泣いたり笑ったり、阪神大震災で被害を受けた人々へエールをおくっていました。
劇中映画は、「カサブランカ」板東妻三郎の「無法松の一生」とたぶん「雄呂血(おろち)」。
おすすめ度:10年、20年後に観たらもっと高いと思う★★★★
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テロリストを撃て! A SHOW OF FORCE 

1989年 米国
監督 ブルーノ・バレット
原作 アン・ネルソン
脚本 エバン・ジョーンズ
撮影 ジェームズ・グレナン
出演 エイミー・アービング/ルー・ダイヤモンド・フィリップス/ロバート・デュバル/ケビン・スペイシー/アンディ・ガルシア
メモ 1997.7.8 サンTV
あらすじ
1978年プエルトリコでは、米国の51番目の州になるか、独立するかで国内が混迷していた。知事選挙を前に、独立運動のテロリストがテレビ塔を爆破しようとして、警官に射殺される事件が起こった。
感想
社会派の映画でした。実話を元にしているみたい。あの丸顔の人だれだっけ?と思っていたら、ケビン・スペイシーやないの!ビックリしたな。ルー・ダイヤモンド・フィリップスは「ヤングガン」のシャベスしか見たことがなかったのですが、いい役者さんですね。解説の山城新伍さんもえらいほめてはりました。
おすすめ度:地味やったけどなかなかよかった★★★
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スケッチ・オブ・Peking 

1996年 中国
監督 ニン・イン
メモ 1997.7.9 BS
あらすじ
1994年の中国の大都会北京、お巡りさんのクオ(国力)は毎日毎日、人を襲う野犬の捕獲、チンケな賭博の取り調べ、橋の下での猥褻画販売、痴漢(ストーカー)、地域住民との交流(大事なおばあちゃんたちからの情報収集)など雑多な仕事に追われ、超過勤務の毎日。家では奥さんから「母子家庭よね」と言われ、豊かな人たちからは見下されもうヘトヘト。
感想
昨年の秋、「北京で生まれ育った女流監督が、本職の警察官を用いて撮った映画」というのを読んで、観に行きたかったのに、アッという間に終わってしまった(ように思った)映画です。「お父さん虎は、お母さん虎の手伝いを何もしません。家では疲れたといっては寝てばかりです。」と奥さんが子供にお話を聞かせるのには笑った。どっこの国もおんなじ。賭博の取り調べもユーモアたっぷり。 猥褻画販売取り調べには「猥褻か芸術か」論争付き。
でも、最後には、生まれてくるのに、親を選べないけど、(良くも悪くも)国も選べないんだなあと訳のわからない事を考えてしまいました。
おすすめ度:中国人って10億みんな論客、そしておいしそうな煙草のみでした★★★★
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フランキー・ザ・フライ 

1996年 米国 96分
監督 ピーター・マークル
脚本 デイトン・キャリー
撮影 フィル・バーメット
音楽 ジョージ・S・クリントン
出演 デニス・ホッパー/キーファー・サザーランド/ダリル・ハンナ/マイケル・マドセン/デイトン・キャリー
メモ 1997.7.10 テアトル梅田
あらすじ
ロサンジェルスの裏町、チンピラのフランキーは、ボスのサルに「フライ(蠅)」と軽んじられ、使い走り、雑用係、道化役の日々だった。ポルノ女優のマーガレットに純な思いを寄せ、彼女を本当の女優にするため恐ろしいボスの目を盗んで映画を撮ろうとする。
感想
もうはじめっから、不穏な空気にドキドキドキ。最後までどきどきどきの映画でした。頭の切れる男の計画ではなく、お人好しでどちらかというとドンな男が、きちんとした性格そのままに、じっくりアイデアを練り考え考え勝負に出る話が好き。「いとこのビニー」を思い出したよ。キーファー・サザーランドの競馬狂いのアホな映画監督もグー。
おすすめ度:★★★★
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ルイーズとケリー(Two Friends) 

1986年 オーストラリア
監督 ジェーン・カンピオン(「ピアノ・レッスン」「エンジェル・アット・マイ・テーブル」) 
メモ 1997.7.12 ドーンセンター
あらすじ
ルイーズとケリー、15才の女の子2人の10ヶ月の出来事。
感想
映画は、ルイーズの両親が、麻薬の事故で亡くなった女の子のお葬式に出かけるシーンから始まる。その頃、ケリーは、学校をやめ、家を出て、パンクファッションに身をつつみ好きな男の子と暮らしたりしている。映画は、6ヶ月前、その1ヶ月前と順々に過去へとさかのぼり、10ヶ月前、大親友のルイーズとケリーが同じ高校に受かって抱き合って喜ぶシーンで突然終わる。
楽しいとか面白いとかいう映画ではなく、厳しい内容の映画でした。ストーリー構成のすばらしさが光ります。
「風と共に去りぬ」を見て2人で泣くシーン(「風と共に去りぬ」は、画面に写らない。タラのテーマが流れているだけ)。卒業式かな?女の子たちが「今生の別れ」とばかりに、抱き合って泣いているのを見て男の子が「毎日あっているのに、あれは何してるんだ?」というシーン。15才という大人でも子供でもない頃の女の子の描き方に共感してしまった。
家出したケリーがママの誕生日にプレゼントを買って帰ってきたら、親は「ありがとう」ではなく、「どうしてるんだ。心配してるんだぞ」と言ってしまうシーン。親の気持ちも残念ながらわかる。
「ピアノ・レッスン」の原題が「THE PIANO」だというのを初めて知りました。原題と日本語の題名では、ずいぶん意味が違うように思う。
おすすめ度:★★★★
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バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲 

1997年 米国 124分
監督 ジョエル・シューマッカー(「依頼人」「評決の時」)
視覚効果 ジョン・ダイクストラ,A.S.C
美術 バーバラ・リング
脚本 アキバ・ゴールズマン
撮影 スティーブン・ゴールドブラット,A.S.C
音楽 エリオット・ゴールデンサル
出演 アーノルド・シュワルツネッガー/ジョージ・クルーニー/クリス・オドネル/ユマ・サーマン/アリシア・シルバーストーン
メモ 1997.7.15 試写会
あらすじ
ノーベル賞学者のMr.フリーズ(シュワルツネッガー)は凍結液に落っこちる事故にあい、どこかがたくさん切れて、心も体も氷人間になってしまう。植物学者のユマ・サーマンは同僚に毒薬をかけられ「植物至上主義」の魔性の美女ポイズン・アイビーになってしまう。
感想
お金かけた映画やなーというのが全編通じての感想です。こりにこった色使いの映像でした。眠りの森の美女のように、街中の人たちがフリーズされていく様が面白い。スキンヘッドのシュワルツネッガーとユマ・サーマンの映画です。
クルーニーはかなりアダルトなバットマンでした。最後に、アリシア・シルバーストーンってあんなにぽっちゃり目だったっけ?
おすすめ度:★★★1/2
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サムライ(Le Samourai) 

1967年 仏
監督 ジャン=ピエール・メルヴィル
原作 ゴアン・マクレオ
撮影 アンリ・ドカエ
音楽 フランソワ・ド・ルーベ
出演 アラン・ドロン/フランソワ・ペリエ/ナタリー・ドロン
メモ 1997.7.18 BS
あらすじ
一匹狼の殺し屋ジェフ。クラブでの殺しの仕事の後、ピアニストに顔をみられてしまう。フィルム・ノワールの代表作
感想
ミーハーです。アラン・ドロンはとてもステキです。あらすじはイマイチよくわかんなかったけれど、アラン・ドロンがステキです。孤独で虚無的でクールで、小鳥とガラーンとした部屋でストイックに暮らしている。出かける時には必ず鏡を見て、ソフト帽のかぶり具合を直す。スタイリッシュな映画でした。
おすすめ度:★★★★
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ローレル&ハーディ 極楽シリーズ 

メモ 1997.7.11 7.18 BS
妻の陰謀
絵描きの夫の愛情を試そうと、妻が求愛者がいるお芝居をする。見所→ローレルの一人芝居。
愛人騒動
社長の愛人が乗り込んできた。なんとか、妻にばれないように社員と社長が奮闘する。見所→社長の奥さんの怒った所。
娘たちは水夫がお好き
水夫に奪われた婚約者を取り戻そうとする。見所→ローレルの女装。
極楽新兵
ローレルの新兵、ハーディの古参兵。ローレルのしでかした事が全部ハーディのせいになる。見所→池で水遊びしている間に軍服が煙草の火で焼けてしまい、みんなでデミル監督の映画の看板で体を隠して兵舎に帰る所。
おすすめ度:★★★★
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セイント 

1997年 米国 116分
監督 フィリップ・ノイス(「パトリオット・ゲーム」)
脚本 ジョナサン・ヘンズレイ/ウエズリー・ストリック
撮影 フィル・ミュークネス
音楽 グレーメ・レベル
視覚効果 ロバート・グラスモア
出演 ヴァル・キルマー(サイモン・テンプラー)/エリザベス・シュー(エマ・ラッセル博士)/レード・セルベッジア(イワン・トレティアック)/バレリー・ニコラエフ(イリア)
メモ 1997.7.20 梅田東映
あらすじ
サイモン・テンプラーはハイテク怪盗。孤児として育ったサイモンは大金持ちになることを夢み、変装と12聖人の名を使って、謎の怪盗として暗躍していた。
感想
ヴァル・キルマーのふてぶてしさ子供がとまどったようなないまぜになった表情が大好き。 この持ち味と、サイモンが人を殺さない事と重なって、アクション映画なのに、ホンワカした雰囲気が残った。この映画の変装でおじちゃんになっても、じいちゃんになっても性格俳優としてやっていける事が証明されたよ。髪の毛は短くてツンツンしてる方が似合う。
エリザベス・シューは「ジュニア」のエマ・トンプソンのような、ロマンチックな夢見る夢子ちゃん(超古)の雰囲気がとてもよかった。かわいらしい。
イリア役のバレリー・ニコラエフという人は動きがシャープと思っていたらダンサーでもあるんですね。サイモンのまるっこい雰囲気と好対照ですっごく光っていた。悪役が魅力的だととても映画に奥行きがでる。成功したね。
**ネタバレあります。注意!***
ラストも「また、会えるかしら」で終わったのが所帯じみていなくてセンスがいい。「末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」風なラストだと、倦怠期になって、だんだんわがままが目について、文句が多くなってというのが目に浮かんでしまうから。・・(所帯じみているのは書いているさぼてんの方か)
おすすめ度:★★★★1/2
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スパイナルタップ (THIS IS SPINAL TAP) 

1984年 米国 83分
監督・脚本・音楽 ロブ・ライナー
撮影 ピーター・スモーク
出演 クリストファー・ゲスト/ロブ・ライナー(インタビュアー)/マイケル・マッキーン/ビリー・クリスタル/アンジェリカ・ヒューストン
メモ 1997.7.20 CS
あらすじ
架空のロックバンド”スパイナルタップ”の全米ツアーのドキュメンタリー。
感想
面白かった。夜中にガハハと笑ってしまった。音楽に疎くても、とても楽しめた。前に大槻ケンヂが紹介していたので見たかったのです。イカレたロック・ミュージシャンが大まじめに、色んな事に挑戦している様子がユーモアたっぷりに描かれている。トホホのエピソード連続で笑える!
おすすめ度:★★★★
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サンダーボルト (THUNDERBOLT ANT LIGTFOOT) 

1974年 米国 115分
監督・脚本 マイケル・チミノ
撮影 フランク・スタンリー
音楽 ポール・ウィリアムズ
出演 クリント・イーストウッド(サンダーボルト)/ジェフ・ブリッジス(ライトフット)/アーサー・ケネディ(レッド)/ジェフリー・ルイス(グディ)
メモ 1997.7.29 サンテレビ
あらすじ
米国中西部、若い風来坊のライトフットは、偶然知り合ったサンダーボルトが元凄腕の強盗と知り、同じ銀行を同じ方法で襲おうと持ち掛ける。
感想
面白かったというのかな、もの哀しくもある内容でした。よく練れた見事な脚本と思う。ジェフ・ブリッジスは、出過ぎでも控えめでもなく若さが光る演技です。女装がよく似合うねんよ。
「ダーティハリー2」で脚本を書いたマイケル・チミノをイーストウッドが見そめて、監督に抜擢したと、山城新伍解説あり。
忘れてた。アーサー・ケネディの相棒をしていたジェフリー・ルイスって人はジュリエット・ルイスのパパじゃないかなあ。違うかなあ。
おすすめ度:★★★★1/2
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愛さずにはいられない (FOOLS RUSH IN) 

1997年 米国 109分
監督 アンディ・テナント
ストーリー ジョンアン・テイラー/キャサリン・リバック
脚本 キャサリン・リバック
撮影 ロビー・グリーンバーグ、ASC
音楽 アラン・シルベストリ
出演 マシュー・ペリー(アレックス)/サルマ・ハエック(イザベル)(「デスペラード」)/ジョン・デニー/カルロス・ゴメス/トマス・ミリアン/シオバン・ファロン/ジョン・ベネット・ペリー/ジル・クレイヴァーク/スザンヌ・スナイダー
メモ 1997.7.30 梅田東映パラス2
あらすじ
ニューヨーカーのアレックスは、仕事でラスベガスに来て偶然知り合ったイザベルとその夜の内に意気投合しベットイン。翌朝イザベルは消えていた。3ヶ月後、突然イザベルがやってきて、「あなたの赤ちゃんができたの。でも一人で育てるわ。知ってて欲しかっただけ(ほんまかいな)」と爆弾を落とした!
感想
ここ3年くらい映画館で見たラブコメの中では一番面白かったし、映像もきれい。脇役もとても好演でした。でも、内容は結婚前の騒動が結婚後に移っただけで、目新しくはないな。「ザ・エージェント」でも思ったけど、あんな事くらいで「家出だ!離婚だ!」って騒動なら、うちなんか100回くらい離婚してるゾ。結婚に期待し過ぎちゃうか。でも考えてみれば、「本当の運命の出会いがまたあるだろう」可能性大の人と「次は絶対ないな」の違いか・・・
原題「FOOLS RUSH IN」(恐いモン知らずかな)が「愛さずにはいられない」はちょっとなあ。
おすすめ度:★★★
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瞬間移動死体

西澤保彦作 講談社ノベルズ 310ページ 1997年作 
あらすじ
中島和義31歳、職業は「主夫」。縦のものを横にもしない自称超ナマケモノ。怠けるためなら額に汗して涙ぐましい努力をするという愛すべき人物であり、テレポーションができるという特異体質(またでた!ほらでた!)の持ち主。
感想
またまた荒唐無稽なシュチエーションですが、今回謎解きもよくできていました。テレポートできるのは身ひとつ(つまりすっぽんぽん)だの、燃料はアルコールだの、自分がテレポートする代わりにジャンプ先の物がひとつやってくる(ちょうど数が合うための”バランスウェイト”)だの納得できるような、できないような理論が展開されています。
この「がんばらない」はずの主人公のキャラいいです。
それから、またまた関西弁が使われてる〜。作者は関西の女の人にフラれたことがあるのかも(笑)
おすすめ度:★★★★
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消えた装身具

コリン・デクスター作 ハヤカワ文庫 392ページ 1997年
あらすじ
英国のオックスフォードで、<英国”歴史の都”ツアー>のアメリカ人観光客の一人がホテルで急死する。彼女が博物館に寄贈するはずだった「10世紀頃の高価な留め具」が入っていたハンドバッグが、室からなくなっていた。モース警部は、他殺ではないかと疑う。
感想
マーガレット・ドラブルの「碾臼(ひきうす)」という小説を読んだ時から、英国は学究者に実に寛大な国だと思っています。英国ミステリには、学者でなくても学究肌の人たちがよくでてきます。アメリカのミステリに貧しい中から身を起こして財をなした人がよくでてくるのと、好対照です。
中途では一時「睡眠薬入りか、この本は」と思うほど睡魔が襲いましたが、やはりプロットがよくできていました。本格物です。
おすすめ度:★★★1/2
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私が殺した少女

原渚 早川書房 273ページ 1989年
あらすじ
私立探偵の沢崎は、天才少女バイオリニストの身代金誘拐事件に、不運にも巻き込まれてしまう。
感想
最後までサスペンスが持続し、2日で読めました。ハードボイルト探偵のこだわりが所々みられます。腐れ縁の新宿署の錦織(にしごり)警部は無口でコワソーで、好きです。
おすすめ度:★★★★
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ストリート・キッズ

ドン・ウィンズロウ作 創元推理文庫 508ページ 1993年
あらすじ
N.Y コロンビア大学院の学生ニール・ケアリーは元ストリート・キッズ。11才の時ジョー・グレアムという探偵の財布を盗もうとして捕っつかまり、探偵稼業をみっちり仕込まれた。「次期副大統領候補一家の幸福なお写真」を撮るために、家出した上院議員の17才の娘を連れ戻しに、ロンドンへ行かされる羽目となる。
感想
全編、元ストリート・キッズのへらず口が楽しめます。「ヤク中の売春婦」で行方不明の母親をもち、世の中の裏も表も知り尽くしていますが、ナイーブな心も持ち続けている主人公の成長物語でもあります。
ただ、上流階級で育ち、麻薬に溺れ、ロンドンで売春婦になっているにもかかわらす、金髪でとても美しい17才の美少女(17才は少女なのか)アリスンは、イメージがわかない。「きれいやったら何でも許されるんかい」(許されるんだなこれが)と少しひがんでしまった。ロンドンでのパンク仲間でブスで、恋人のために頑張るヴァネッサの方がタフで生き生きしてたな。
おすすめ度:★★★★
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エヴァン・スコットの戦争

ミッチェル・スミス作 新潮文庫 614ページ 1997年
あらすじ
よき夫、よき父、有能な建築家でありながら、魂をベトナムのジャングルに置いてきてしまったエヴァン・スコットは、建設中の超高層ビルから若い女性が墜落するのを偶然目撃してしまう。そのためにインド系の秘密結社に執拗に命を狙われる。
感想
前作「エリー・クラインの収穫」「ストーン・シティ」に比べるとかなりノーマルです。でも、相変わらず丁寧な丁寧な描写が続きます。米国のオールドマネー(初期米国で鉄道、鉄鋼などで大儲けをした一族)の底力、ニューヨークの現状、異なる世界観との接触、誇りある人たちの生き方等がてんこもりです。
色々な建築物が随所に出てきて面白かった。建築中の超高層ビルでの不気味な殺し屋との死闘はリアルです。
おすすめ度:★★★1/2
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鮫とジュース(JUICE)

ロバート・キャンベル作 文春文庫 420ページ 1989年
あらすじ
”鮫”は、不法金融、つまり高利貸し。”ジュース”は高利貸しが吸う甘い汁。ギャンブル狂のタクシー運転手、弁護士、馬券屋、刑事達のお金を巡る懲りない話。
感想
『高利貸しの子分はカーミンという名前ではなく、「サムの家来」と呼ばれている。何故なら、体重100キロほどのサムという犬を飼っていて、いつもその犬に引きずり回されているから。』
全編こんな調子で、本気か冗談かわからない会話が続きます。
おすすめ度:★★★★
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黄昏にマックの店で(Twilight at Mac's Place)

ロス・トーマス作 ハヤカワミステリアス・プレス 490ページ 1990年
あらすじ
得体の知れない仕事を長年していた父が急死。息子の元刑事グランビィル・ヘインズは、CIAの協力者だったらしい父から回想録を残された。その回想録を巡って事件が起こる。暴露されては困る人がいるらしい。
感想
このなんともいえず洒落た題が、本のすべてを表していると思う。人物描写が抜群にうまい。スピーディな展開よりも、本をじっくり味わいたい人向きです。
おすすめ度:★★★★
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