1999年5月の映画


スピオーネ Spione(スパイ)
ドイツ 1928年 143分
監督 フリッツ・ラング
原作・脚色 テア・フォン・ハルボウ(当時、監督の妻)
撮影 フリッツ・アルノ・ワグナー
セット オットー・フンテ/カール・フォルブレヒト
出演 ルドルフ・クライン=ロッゲ(ハーギ「メトロポリス」のマッドサイエンティスト、「ドクトル・マブゼ」のマブゼ博士)/ゲルダ・マウルス(ソーニャ)/ウィリー・フリッチ(トレメーン)/リエン・ダイヤース(キティ)/ルーブ・ビック(松本博士)
メモ 1999.5.30(日)BS録画
あらすじ
フリッツ・ラング監督ドイツ時代の無声映画。1927年の「メトロポリス」と1931年「M」の間の作品。
英国情報部とロシアのスパイ組織の攻防戦。国際的スパイ組織に英国情報部は翻弄されている。情報部内部にもスパイに潜入され面目丸つぶれ。ついに切り札スパイ329号(トレメーン)をスパイ団の首領の正体をつかむために投入する。スパイ団の首領ハーギは、ロシアの美女ソーニャにトレメーンを誘惑するよう指令をだす。 ところがところが、トレメーンとソーニャは恋に落ちてしまう。
感想
この映画には日本がでてきます。ハーギは日本が英国と交わした条約の密書を狙う。そのため日本国大使の松本博士の同情心を利用し、松本博士はスパイとも知らず薄幸の少女を家に入れてしまう。沈着冷静な博士も少女に誘惑されてとうとう隙をみせ、秘密文書を盗まれる。松本博士は断腸のおもい、おとりになって殺害された部下にも会わせる顔がなく、切腹します。このシーンは、 
「ビッグ・ヒット」に比べ真面目に作られていました。
ラストのピアノを弾く道化師と大きな音符の飾りのセットも秀逸。
ハーギの正体やいかに?のスパイ・サスペンス、そして「情報を握る者が世界を征する」という時代を先取りした映画です。
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デッドマンズxカーブ DEADMAN'S CURVE
米国 1998年 90分
監督・脚本 ダン・ローゼン初監督作品(「最後の晩餐」脚本)
撮影 ジョイ・フォーサイト
音楽 シャーク
音楽スーパーバイザー パジャマ・パーティ・プロダクションズ
  出演 マシュー・リラード(ティム)/マイケル・ヴァルタン(クリス)/ランダル・ベイティンコフ(ランド)/ケリー・ラッセル(エマ)/タマラ・クレイグ・トーマス(ナタリー)/ディナ・デレイニー(アシュレイ「トゥーム・ストーン」)
メモ 1999.5.27(木)シネマアルゴ梅田
あらすじ
公表はされていないが、アメリカの大学で広く行われているというシステム「デッドマンズ・カーブ」。それは、大学生が自殺したら、精神的ショックを考慮してルームメイト全員に無試験でオールAを与えるというものだった。
そのシステムを逆手にとって、ハーバード大学院を目指すティムとクリスは、ルームメイトのランドを自殺に見せかけて殺す。しかし犯罪を犯してしまった後には、崖から川に落とした死体が見つからず不安な日々が待っていた。
男3人、女2人の大学生のグループ、その内の二組が恋人という変則的な仲間。そこに傍観者としてカウンセラーが入る。
感想
後味がイマイチ。好んで見ている私が言うのも変ですが、アメリカは深い所で病んでいるんではなかろかと思えてならない。「アメリカン・ドリームのダークサイドを皮肉に描く」ねぇ。主演男性3人の内2人は、大金持ちの御曹司なわけでしょ。プライドのお化けが、人間の信頼関係をふみちゃちゃくりにするというミステリ・サスペンス映画。ヒッチコック監督の「ロープ」にちょっと似ている。そう思うと映像といい脚本といいよくできては、いる。
「スクリーム」ではスチュアート役だったマシュー・リラード、今回ワンマンショーみたいでした。この役を演じるのは楽しかったんではなかろかと思う。エキセントリックでカリスマ的な役を怪演。頭がいい苦学生、優柔不断野郎かと思ったマイケル・ヴァルタンは、 「スウィンガーズ」で「好みやん」とちょっと注目した人、「ハッピィブルー」にも出てはりました。いつも誰かの友達役だったけれど、一歩抜けた。

しかし今「報道特集」を見ていると、予備校生に東大志望の動機を聞いているシーンがあった。ピックアップして放送しているとしても「頭がいいから」とか「早稲田や慶応は実務に役立つ人間を育てる。僕はそういう人間を管理したいから」というエリート予備軍の返事を聞くと、エリート予備軍をおとしめているこの映画の皮肉も痛快っちゃあ痛快。
おすすめ度★★★
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地球最後の日 WHEN WORLDS COLLDE
米国 1951年 83分
制作 ジョージ・パル
監督 ルドルフ・マテ
原作 エドウィン・バルマー/フィリップ・ウィリー
脚本 シドニー・ボーエム
撮影 ジョン・F・サイツ/W・ハワード・グリーネ
音楽 リース・スティーブンス
SFX ゴードン・ジェニングス/ハリー・バーンドラー
出演 リチャード・デア/バーバラ・ラッシュ
メモ 1999.5.27(木)CS録画
あらすじ
人里離れた山奥の天文台では、ブロンソン博士が沈痛な面もちをしている。運び屋の超軽男ランドールはブロンソン博士に雇われ、著名な科学者ヘンドロン博士とフライ博士に秘密資料を届ける。ブロンソン博士の計算では、惑星ベラスとその周りを回っているザイラが地球めがけてやってきているのだ。再計算しやはり1年後に衝突すると確信した博士達は、世界に公表するが笑い者にされ相手にされない。危機に気づいてからでは遅いと三博士達は、資金をかき集め宇宙船の建造にとりかかる。大口資金提供者の大金持ちスタントンは車椅子の男だった。自分を船に乗せる事を資金提供の条件にしていた。
感想
私と同世代の人はほとんど一度は見てるんじゃないかな。有名なSF映画の古典作品。
「ディープ・インパクト」の原型のような作品です。おそらく小学生の頃にTVで一度見ただけと思うのですが、結構よく覚えていました。
***これから見ようという方、記憶力に自信のある方、ネタバレオンパレードです。***
「ディープ・インパクト」と違い、ザイラは地球をかすめるだけです。ただ大きいので津波や大地震が起き一握りの人間しか生き残る事はできません。そしてその19日後にやってくるベラスは地球の12倍あり、正面衝突の結果地球はこっぱみじんに粉砕されます。宇宙船は現代版ノアの箱船で、乗組員はクジで決められ40人しか乗れません。後のスペースは多彩な動物植物。そしてマイクロフィルム化された文明が乗せられます。そしてどこへ引っ越すかというと、地球をかすめたザイラです。そこに人類が生き残れるかどうかはなんの保証もありませんが、可能性に賭けるのです。
有名なのは、流線型の宇宙船とジェットコースターのような発射台です。発射台を滑り推進力をつけ宇宙に飛び出すシーンは必見。
恋人同士の男女が出てくると「女の人クジにはずれて、ヨヨヨって泣きはるねん」。車椅子を押している男の人を見ると「金持ちの椅子押してはる人、恐いねん」、「車椅子の金持ちは、文句たれはいらんと置いていかれるねん。」とか記憶がよみがえってきてベラベラしゃべり実に楽しかった。
この映画では、高波がおそった町の屋根の煙突に子供がくくりつけられています。親が生存の可能性に賭けたのでしょう。「ディープ・インパクト」でも少女に赤ん坊を託しますが、結果的にはもっと残酷な事になるかもしれず、私にはその勇気はないと思う。

さぼてん男が最後に一言「さすがに特撮は「チープ・インパクト」やったな。」
おすすめ度★★★1/2
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殺人地帯USA UNDERWORLD U.S.A
米国 1961年 98分
制作・監督・脚本 サミュエル・フラー
撮影 ハル・モーア
美術 ロバート・ピーターソン
音楽 ハリー・サックマン
出演 クリフ・ロバートソン(トリー・デブリン「エスケープ・フロム・LAの大統領」)/ドロレス・ドーン(カドルス)/ベアトリス・ケイ(サンディ)/ロバート・エンハート(コナーズ)/リチャード・ラスト(ガス)
メモ 1999.5.25(火)WOWOW録画
あらすじ
14才のトリー・デブリンは、やくざな父親が4人の男に殴り殺されるのを目撃する。その内の一人は顔を知っている男ヴィク・ファラーだった。サツを頼らず一人で復讐する事を誓う。長じて金庫破りになったトニーは捕まり刑務所に送られる。刑務所の病院に入院していた心臓病で瀕死のヴィク・ファラーを脅し、他の三人の名前を聞き出す。ヴィク・ファラーは許しを請いながら死んでいく。5年間服役してシャバに出てきたトリーは、組織の顔役になっている三人、麻薬担当のジーラ、労組担当のガンサー、売春の元締めスミスに復讐するため組織に潜り込む。復讐のため組織撲滅に燃えている検事ドリスコルをも利用する。殺されそうなところを助けた金髪の娼婦カドルスにスミスが女を殺したところを見たと証言させ、スミスは法に捕まる。いっちょうあがり。次はドリスコルと結託して、偽の書類を盗み出したと言って大親分のコナーズに届ける。そこには、ガンサーが密告者と書かれていた。ガンサーはあえなく車ごと燃やされる。二人目もかたずけたトリーは、ドリスコルに内緒で、ジーラをも密告者に仕立て上げる。ジーラを痛めつけ「父親の復讐だッ」と真実をつげ、殺し屋に突き出す。バーンバンバン、ガンサーも殺され復讐は終わり。命を助けた美女カドルスに惚れられたトリーは、組織をぬけ新しい生き方をしようとするが、組織からぬけられない、殺し屋にしたてあげられると悟り、大親分のコナーズを始末しようと単身マフィアの本拠地に乗り込む。
感想
根強い人気があるというサミュエル・フラー監督作品。一見人徳家ぶっているケダモノ、コナーズとの決着をつけるシーンはバイオレンス炸裂。力強いカメラワークに酔ってしまう。
殺し屋ガス役のリチャード・ラストって役者さん、カッコよかった。ケビン・ベーコンをもっと端正にしたルックス。
おすすめ度★★★1/2
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スペードの女王 THE QUEEN OF SPADES
英国 1949年 96分
監督 ソロンド・ディキンソン
原作 アレキサンドル・プーシキン
脚本 ロドニー・アクランド/アーサー・ボーイズ
撮影 オットー・ヘラー
音楽 ジョルジュ・オーリック
出演 アントン・ウォルブルック/エディス・エバンス/イボンヌ・ミッチェル
メモ 1999.5.23(日)ビデオ
あらすじ
砲兵隊の隊長ゲルマンは、庶民の出。尊敬する人物はナポレオン。実力でここまでのし上がってきたが、出世するためにはお金がいる。金が欲しい。貴族出身の近衛兵を見るにつけ、悪魔にでもなんにでも魂を売り渡すほど気持ちが切羽つまっていた。そんなある日、古本屋で一冊の本を手に入れる。そこには昔、悪魔に魂を差し出して賭博に勝つカードを教わったという貴婦人の話が載っていた。老齢ながらその貴婦人は存命だと知ったゲルマンは、その秘密を知ろうと侍女を誘惑する。
感想
白黒の華麗な映像でした。衣装(コスチューム)もすばらしい。映画全体に品があるというのかな。月光のような美しさ。侍女の女の人は若き日の久我美子にちょっと似ているような気がした。
ファンタスティックでミステリアスでロマンチックで、そして皮肉な作品。
おすすめ度★★★1/2
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ディープ・インパクト DEEP INPACT
米国 1998年 分
監督 ミミ・レダー
出演 テオ・リオニ(ジェニー「バッド・ボーイズ」)/イライジャ・ウッド(レオ)/ロバート・デュバル(フィッシュ)/モーガン・フリーマン/バネッサ・レッドグレーブ/マクシミリアン・シェル/ジェームズ・クロムウェル/ラウラ・イネス(ベス)
メモ 1999.5.17(月)ビデオ
あらすじ
天文学者の玉子が彗星らしきものを見つける。プロの天文学者が軌道を計算したところ、顔が蒼白に。「地球とバッティングする・・・。」
感想
「地球にはアメリカしかないの?」ってのはあいもかわらずでしたが、期待していたよりもずっとよかった。言うほどのお涙ちょうだい物では、ない。

 苦悩するアメリカ合衆国大統領(モーガン・フリーマン)
 彗星を発見した少年(イライジャ・ウッド)と幼い恋人
 ニュース・キャスターとその両親(バネッサ・レッドグレープ/マクシミリアン・シェル)
 地球を救うべく飛び立つメサイア号の乗組員達とその家族

”人類滅亡”をテーマにある種グランドホテル形式のように4つのエピソードがほとんど交差することなく淡々と進行します。この淡々さがいい
心と頭がすぅーっと冷えるような絶望的な物語です。どこがって、百万人は助かり他の1億9千9百万人は死に絶えるってとこ(アメリカだけに限って)。選別される事。リストラで恐ろしいのは自分は無用の人間だったのかと思い知らされる事ではないだろうか。わかってはいても、そしてたとえクジであったとしても、地球の将来に必要ではないと烙印を押される絶望感が寂しい。

印象に残った点が2つ。ひとつは大統領がこれからの地球のいく末をTVで国民にちゃんと説明するところ。これは感心した。
もうひとつは、小彗星がヒューンと火の玉になって走ってくるシーン。それをみんなが黙ってただ見つめている(注射する所が恐くて見れない人達は、アメリカにはいないのか?)。
しかし、「アステロイド」といい何故にいつも小彗星の方からぶつかるの?(^^)
幼い女の子のママのニュースキャスター、見たことあるお顔と思っていたら、「ER」のちょっといけずで足の不自由なお医者さんでしたね。
おすすめ度★★★1/2
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ローラーボール ROLLERBALL
米国 1975年 130分
監督 ノーマン・ジュイソン
脚本 ウィリアム・ハリソン
撮影 ダグラス・スローカム
音楽 アンドレ・プレビン
出演 ジェームズ・カーン(ジョナサン)/ジョン・ハウスマン/モード・アダムズ/パメラ・ヘンズリー
メモ 1999.5.16(日)ビデオ
あらすじ
2018年、世界は6つの巨大企業に支配されている。高度管理社会では人間達の闘争本能が、かつてコロセウムで「ライオンと人間の戦い」を見るがごとく、円形トラックでの「金属球の奪い合いバトル」を見る事で満たされていた。選手の中でもヒューストン・チームのスター・プレイヤー、ジョナサンの人気と実力はぬきんでており、ファンの熱狂ぶりから支配者達は不安を覚える。引退を強いるが聞き入れようとしないジョナサンをトラックの中で抹殺しようと「時間無制限、反則なんでもあり」のデス・マッチをセットする。
感想
「バトルランナー」系の映画です。
バッハの「トッカータとフーガ」のバロック音楽が流れるオープニング・シーンがいい。SFにクラシック音楽が使われるというのは当時の流行だったのかな。それとラスト、戦いの後の球技場をひとりすべるジェームズ・カーンのかっこよさ。映画中行われる3ゲームの激しさから千人以上の負傷者が出たとかいう伝説があるそうです。が、いいのはそこまでで、高度管理社会を描く場面はなにやらチープ。高度管理社会に見えない。主人公が悩んでいるようには見えず、内面の葛藤が伝わってこない。「肉体派で頭使うの苦手そう」なんてゲスってしまう(笑)。東京ボンバーズを知っているって向きには、「ローラーゲーム」自体が時代を感じてしまうかも・・・って ワタシの事じゃないですっていったりしたり(はあぁ、虚しい)。
おすすめ度★★1/2
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キラーコンドーム KILLER CONDOM
ドイツ 1996年 104分
監督 マルティン・ヴァルツ
脚本 マルティン・ヴァルツ/ラルフ・ケーニッヒ
撮影 アレグサンダー・ホーニッシュ
SFX ユルグ・ブットゲライト(「ネクロマンティック」)
クリーチャー・デザイン H.R.ギーガー(「エイリアン」)
出演 ウド・ザメール(ルイジ・マカロニ)/ペーター・ローマイヤー(サム・オコネリー)
メモ 1999.5.15(土)扇町ミュージアムスクエア
あらすじ
ニューヨークの夜を悲鳴が引き裂く。いかがわしいホテルの308号室が発生源の悲鳴は、アレがアレをアレしたためだったっ!
感想
思い出すと思わず頬がゆるんでしまうあほらしさ。ぐふふふっ(^^)。心の底から好きやねんなあ、こういう映画。
後半弱いのがまことに残念。
フィリップ・マーロウもどきに「卑しい街」ニューヨークを物憂げに嘆くマカロニ刑事は、男の堅いシリが好き。美青年ビリーとホテルのエレベータで一戦交えた後の、けだるいような満足したようなすっきりしたようなお顔に、いや、まいりましたわ。
「サイコ」や「クルージング」とかのパロディも面白いんやけど、最高なんは「ジョーズ」でしょう。お風呂の泡の隙間から、いやに厚ぼったい黄色がかった半透明の膜を通してキラーコンドームが獲物を狙う!。 何故狙うかは褒美に○○○を貰えるからっていうのが、しょーもないやら可笑しいやら。
キラーコンドームの造形は、ちょっと
「レフトハンド」のよう。恐いねんけどちゃめなん。 原作はラルフ・ケーニッヒという方の同名コミック。なんと18カ国で翻訳されているというから驚き。
満足度★★★★
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影なき狙撃者 −失われた時を求めて− THE MANCHURIAN CANDIDATE
アメリカ 1962年 126分
監督・脚本 ジョン・フランケンハイマー
脚本 ジョージ・アクセルロッド
出演 フランク・シナトラ(マーコ大尉)/ローレンス・ハーベイ(レイモンド・ショー軍曹)/ジャネット・リー/アンジェラ・ランズベリー/ヘンリー・シルバ(
「無頼の群」
メモ 1999.5.10(月)ビデオ
あらすじ
1952年朝鮮戦争で中共軍の捕虜になった6名は、助けだされ祖国アメリカに戻ってくる。レイモンド・ショー軍曹は行方不明となっていた仲間を助け出した功績を称えられ勲章を授与される。戦争は終わり捕虜になっていたマーコ大尉は情報局に勤務していたが、夢をみては毎夜うなされ苦しんでいた。その悪夢とは戦闘で死んだはずの仲間が、レイモンド軍曹に殺されている夢だった。
感想
「ブラック・サンデー」のジョン・フランケンハイマー監督作品。今まで見たフランケンハイマー監督作品のベスト
「洗脳(マインド・コントロール)」された人間が、あるシグナルで行動を起こす。そのシグナルは何か? それは何故なのか? 何故この人物が選ばれたのか? 黒幕は誰か? そして結末は? 戦慄のミステリ・サスペンスです。
必見は、悪夢の回想シーン。満州で洗脳されている捕虜達が、実際は自分達をモルモットにした「実験結果の発表の場」を、「園芸クラブ」のマダム達の退屈な講演と思って聞いているシーン。黒人の兵隊には黒人の婦人達にみえている。

ヘンリー・シルバが韓国人の通訳役。レイモンド・ショー軍曹のママが「ジェシカおばさんの事件簿」のアンジェラ・ランズベリー。「鏡は横にひび割れて」ではミス・マープルだった人。とても失礼なんだけれど(どっちに失礼かはこのさい置いといて)、この方今話題の「サッチー」にちょっと見ぃ似てた(笑)。
おすすめ度★★★★
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殺意の瞬間
仏 1955年 112分
監督・脚本 ジュリアン・デュビビエ(「望郷」「自殺への契約書」「旅路の果て」「舞踏会の手帳」
「我らの仲間」
脚本 モーリス・ベシー
撮影 アルマン・ティラール
出演 ジャン・ギャバン(アンドレ)/ダニエル・ドロルム/ジェラール・ブラン
メモ 1999.5.6(木)ビデオ
あらすじ
所はパリ、人気レストランのオーナーシェフ・アンドレは中年の独身男。市場でアルバイトをしている苦学生を息子のように可愛がっている。ある日、レストランに若い娘が訪ねてきた。大昔に別れた妻・ガブリエラの娘だという。母親が亡くなったためマルセイユからパリに出てきたという事情を聞いたアンドレは、空いている部屋に住むように勧める。
感想
マザコ母親に頭があがら、母親思いのアンドレは、”中年の危機”ど真ん中。料理や世知にはたけているが、一度痛い目にあって女には懲りている。その分やさしくてウブ。母親からは(このお母さんがモウレツにコワイ)ええ年こいて「お前はまだ子供なんだから」と言われている。ええとネタばらしになりますが、思い切って言っちゃおう(^^)。この話は、あんなカワイイ顔してという悪女モノです。
後半鬼気迫るものがあります。若い娘役の女の人好演でした。
「お前なあ、なんであの時もっと頑張らへんかってん。今頃もう遅いわ。」と思いながらも、
この結末のつけ方いい
おすすめ度ラストがよかったモノクロサスペンス★★★1/2
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殺しがが静かにやって来る THE GREAT SILENCE
伊=仏 1968年 105分
監督 セルジオ・コルブッチ
(「続・荒野の用心棒」)
脚本 ヴィットリオ・ペトリーリ/マリオ・アメンドーラ/ブルーノ・コルブッチ/セルジオ・コルブッチ
撮影 シルヴァーノ・イッポリティ
音楽 エンリコ・モリコーネ/ブルーノ・ニコライ
衣装 エンリコ・ジョブ
美術 リッカルド・ドメニチ
出演 ジャン=ルイ・トランティニャン(サイレンス)/クラウス・キンスキー(ロコ)/ポネッタ・マッギー(ポーリン「レポマン」)/フランク・ウォルフ(ギデオン保安官)
メモ 1999.5.5(水)ビデオ
あらすじ
1898年ユタ州スノーヒルの町は、悪徳判事ポリカット(ルイジ・ピスティーリ)が牛耳っていた。町の人達の内、夜盗の汚名を着せられ山に逃げ込み山賊となりはてた一群がいた。おたずね人となった彼らを賞金稼ぎが狙う。ポリカットは賞金稼ぎへ支払う賞金の手数料で肥え太っていたのだ。山にこもった一味は賞金稼ぎに対抗するため、殺し屋サイレンスを雇う。
感想
「へぇ月刊誌なんかあ。月に一回発行する程、毎回書く内容があるんかあ」と思ってパラパラ見ていた雑誌「Gun」の「ガン・ファイター列伝」に載っていた映画。ジャン=ルイ・トランティニャンが主役というのを読んで興味がムクムク湧いてきた・という訳で早速レンタルしました。
19世紀末無法時代のアメリカをイタリアとフランスが映画化したマカロニ・ウエスタン(笑)。アメリカ、英国では未公開だったとか。ラストは2バージョンあるらしいです。
ウエスタンはまったく知識がないのですが、雪の平原が舞台、ヒロインが黒人っていうのは異色作に思います。
もともとはフランコ・ネロの役だったサイレンスをジャン=ルイ・トランティニャンが演じ、いかにもフランスの俳優らしい憂いに満ちた表情にみとれてしまいました。敵役のクラウス・キンスキーはお顔を見る度に思う。「ナスターシャ・キンスキーのママって美しい人だったんだろうな」と。
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5月の7日間 Seven Days in May
米国 1964年 120分
監督 ジョン・フランケンハイマー
原作 フレッチャー・クネイベル/チャールズ・W・ベイリーU世
脚色 ロッド・サーリング(「トワイライト・ゾーン」の?)
撮影 エルスワース・フレデリックス
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
出演 バート・ランカスター(スコット将軍)/カーク・ダグラス(ケイシー大佐)/フレデリック・マーチ(ライマン大統領
「ジキル博士とハイド氏」)/エヴァ・ガードナー(エリー 「渚にて」
メモ 1999.5.2(日)BS録画
あらすじ
1974年、ソ連との核軍縮条約を締結しようとする大統領(フレデリック・マーチ)と議会に対し米国の世論は揺れていた。軍統合参謀本部議長スコット将軍(バート・ランカスター)は、核軍縮によるソ連の優位と米国合衆国存亡の危機を訴え軍の指示を得ていた。そんなある日直属の部下ケイシー大佐(カーク・ダグラス)は軍の暗号解読の専門家から「スコット将軍が色々な地域の将軍に向けて、次の日曜日の競馬に10ドル賭けないかという暗号を発信している。」という情報をキャッチする。あの堅物の将軍がいつから私設馬券屋をはじめたのだ?
感想
「フレンチ・コネクション2」、「RONIN」のジョン・フランケンハイマー監督作品。骨太な近未来ポリティカル・サスペンス。ドラマチックで面白かった。
「核を持つ事が戦争の抑止力になる」と主張するスコット将軍に対し、ライアン大統領は「核を持っている事が核戦争につながる」と主張する。「国民がのぞむ核大国を作れた。国民一人に核一個の国を。(この力をコントロールできずに)いつか必ず核戦争が起きるぞ。私の血圧よりも(核のボタンを押すことのできる私の)正気を心配すべきだ。」と大統領は大きな危機感を持っている。
「私に反対するのなら大統領選挙で闘え」「大統領と上院が決めた事には従うべきだ」という議会制民主主義と憲法を死守しようとする米国の姿勢には学ぶべきものが多い。大統領の演説の「いつか必ずくる。すべての人が圧制のトンネルをぬけ自由を享受する日が」を聞くと、米国はピューリタン精神旺盛で困っている人を助けようという気持ちが強いのは昔も今も変わらないんだなと思う。ただ、助けようとする相手には「米国の価値観を押し付けられているように思う」場合もあるという事を米国はどのように認識しているのだろうか?
おすすめ度★★★1/2
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39 刑法第三十九条
日本 1999年 133分
監督 森田芳光
脚本 大森寿美男
撮影 高橋比呂志
出演 鈴木京香(小川香深)/堤真一(柴田真樹)/杉浦真樹(藤代実行)/岸辺一徳(名越文雄)/山本未来(工藤実可子)/樹木希林(長村時雨)/江守徹(草間道彦)
メモ 1999.5.1(土)松竹梅田
あらすじ
東京で夫婦殺害事件が発生、容疑者として劇団員の柴田真樹が拘留される。柴田は「犯人は自分だと思う。死刑にして欲しい」と主張するが、動機を聞きただすと人格が一変する柴田を見た国選弁護人の長村は、「司法精神鑑定」を請求する。
感想
サイコミステリの体裁をとりつつ、多くの人が割り切れない感情を持っているだろう「刑法第39条」(心神喪失者の行為は之を罰せず。心神耗弱者の行為は其刑を軽減す)を題材として、「精神鑑定に内在する限界」、つまり、精神鑑定は「被験者の精神が正常か否かを客観的に示し得ず、最終的には鑑定人の主観に頼らざるを得ない」という限界を描いている。
また、「39条に基づき罪に問われなかった加害者もまた、人権を侵害されているのではないか」という(私には理解しがたい)主張も加えている。これは罪を償う機会を奪われているという事を指しているのだろうか。それとも加害者の動機や事件を起こすにいたった原因の解明がされないということを言っているのか。
さらに、39条や少年法により加害者が罪に問われなかった事件の被害者やその家族は、その後どう暮らしていけばよいのか? 現行司法制度はその視点を欠いているのではないかという問題提起も行っている。
おどおどした精神鑑定人、薄ら笑いを浮かべた刑事、猫背で暗い再鑑定人、やる気があるのかないのか判別不能の検察官、安易に「司法精神鑑定」を請求する弁護士、楽しかった日々と同じ料理を作り続ける再鑑定人の母……。他人と視線を合わそうとしない精神的バランスを欠いた人物ばかりが登場し、「正義の熱血漢」が誰ひとり登場しない法廷世界。観客に、感情移入抜きで考えさせようという監督の意図が見える。
狙いどおりなのだろうが、明るい日差しをあびた少女の下半身を写し続けるシーンは実に気分が悪く、怒りさえ覚える。
肯定的な意見も否定的な意見も受けて立つという監督の姿勢は立派ではありますが、その自信満々さがまことに鼻につく映画であった。
おすすめ度★★★
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