1997年8月

賭はなされた

1947年 仏
監督・脚本 ジョン・ドラノワ
原作 ジャン・ポール・サルトル
出演 ミシェール・プレール/マルセル・パリエロ
メモ 1997.8.2 CS
あらすじ
革命運動の指導者の男は、裏切り者に射殺される。お金持ちの女は、財産目当ての夫に毒殺される。あの世であったふたりは、現世で恋に陥るはずだったのに手違いで来てしまったため(結構あるんやね)現世に戻される。
感想
ふうがわりな映画でした。サルトルが原作なのできっと象徴的な意味合いがあるのだと思います。
ただ、難解で忍耐を要するような映画ではなく、ドラマティックな大人の映画でした。同じ風景なのに、この世から見るのと、あの世から見るのでは微妙に違っているのがとても印象的です。
おすすめ度:★★★
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さらば愛しき女よ(さらばいとしきひとよ)(Farewell, My Lovely)

1975年 米
監督 ディック・リチャーズ
脚本 デビッド・ゼラグ・グッドマン
撮影 ジョン・A・アロンゾ
音楽 デビッド・シャイア
原作 レイモンド・チャンドラー「さらば愛しき女よ」
出演 ロバート・ミッチャム(フィリップ・マーロウ)/シャーロット・ランプリング(ヘレン)/ジャック・オハローラン(ムース大鹿)/シルビア・マイルズ(ジェシー)/ジョン・アイアランド(ナッティ)/シルベスター・スタローン/ハリー・ディーン・スタントン
メモ 1997.8.3 BS録画
あらすじ
1941年ロサンゼルス。ヤンキースのジョー・ディマジオが連続試合安打の記録を伸ばしていた時代。マーロウは、誰かに命を狙われている大男から仕事を依頼された。
感想
シャーロット・ランプリングのグリーングレイの瞳には、さぼてんも「ゾクッ」としました。一見の価値大いにありです。「愛の嵐」とはまた違った迫力です。「スリーピング・アイ」のR.ミッチャムは疲れた、そしてとぼけた味わいがありました。
アル中のジェシーのウィスキーの飲みっぷり「お酒ならいくらでも飲めるの」・・少し羨ましい。
おすすめ度:★★★★1/2
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ゴリラは真昼に、入浴す(GORILLA BATHES AT NOON)

1993年 セルビア=ドイツ
監督 ドウシャン・マカヴェイエフ
出演 スベトザル・ツベトコヴィチ/アニタ・マンキック
メモ 1997.8.10 TV録画
あらすじ
ソ連機甲部隊の少佐だったヴィクトル・ラズーツキンは、東ドイツ・ベルリンに駐屯中、病院に入っている間に「ベルリンの壁」は崩壊してしまい、ベルリンに置き去りになってしまった。
感想
淡々としたユーモアただよう変わった映画でした。映画の中でソ連映画「ベルリン陥落」がドキュメンタリータッチで挿入され、40数年前ソ連軍によって陥落したベルリンと、「壁」崩壊後レーニン像が解体される現在のベルリンの様子が対比されます。
普通の人は、大きな歴史の波に翻弄され、絶対的な価値観を持ち得ないのかな>>さぼてんがわかったような事を書いているのも、住んでいる国が平和で安定しているからなんだろう
おすすめ度:★★★1/2
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猫の息子

1997年 日本 105分
監督・脚本 柏原寛司
原作 花村萬月
出演 宇崎竜童/藤竜也(猫)/青木伸輔(猫の息子)/四方堂亘/吉村美紀/麻生久美子
メモ 1997.8.11 大阪・天六 ホクテンザ2
あらすじ
元刑事で、働いているようには見えない私立探偵(猫)は、高校生の息子タケの稼ぎで暮らしているが、若い愛人冴子が家に居着いている。
感想
痛快な映画でした。特に鷲尾(宇崎竜童)の舎弟、富士丸(四方堂亘)がよかった。家族がテーマで、若い男と中年の渋い男と若い女しか出てこない映画でした。たぶんこの映画を観る層なんだろうな。
若い女の子が、中年男の世話をかいがいしくやくのは、最近の流行なんだろうか。「誘拐」もそうだった。「世話をしたくなるほど」いい男って事なんだろうが、う〜ん、いささか甘ったれてみえる。
おすすめ度:★★★★
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フランスの思い出

1987年 仏
監督・脚本 ジャン・ルー・ユベール
撮影 クロード・ルコント
美術 ティエリー・フラマン
音楽 ジョルジュ・グラニエ
出演 アネモーヌ(マルセル)/アントワーヌ・ユベール(ルイ・監督の息子)/バネッサ・グジ(マルティーヌ)/リシャール・ボーランジェ(ペロ)
メモ 1997.8.12 BS録画
あらすじ
大都会パリ育ちの9才のルイは、ママに赤ちゃんが生まれるため、ママの友達で田舎に住んでいるマルセルの家でひと夏を過ごす。お隣には情報通でおませな10才のマルティーヌがいた。
感想
マルセルの夫で、無愛想な飲んだくれの大工役リシャール・ボーランジェが実によかった。”愛する者を失った喪失感を癒す”と言葉で書くと簡単だけど、長い長い時間がかかるんだな。ちょっぴり涙がでた(本当はもうちょっとでた)。愛憎がないまぜになったマルセル夫婦の描き方が秀逸。
「アリスの恋」「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」と同じくオクテの少年の成長には、おませな女の子がかかせないみたい。自然児マルティーヌもよかった。
ドン・ジョンソンとメラニー・グリフィスの夫婦共演「愛に翼を」はこの作品のリメイクだったのか。
おすすめ度:★★★★1/2
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ロスト・ワールド (THE LOST WORLD)

1997年 アメリカ
監督 スティーブン・スピルバーグ
原作 マイケル・クライトン
音楽 ジョン・ウィリアムズ
出演 ジェフ・ゴールドブラム(イアン・マルカム)/ジュリア・ムーア(サラ・ハーディング「妹の恋人」「ルームメイト」)/ピート・ポスルスウェイト(「ラスト・オブ・モヒカン」のヒューロン?)/アーリス・ハワード/リチャード・アッテンボロー/ピーター・ストーメア(「ファーゴ」)
メモ 1997.8.16 千日前セントラル
あらすじ
あらすじって、そうねえ・・・・恐竜がいっぱいでてきます。いっぱい人が襲われます。
感想
制作者は「恐竜のわんさかでてくる、すんごい特撮を撮りたかった」と思うので、特撮は超A級です。特に、弱るのをまたれてコンピーにわんさか襲われるのは恐いです。あれなら、Tレックスにひと思いに真ぷたつのほうがマシー・・なわけないけど。前作の「ジュラシック・パーク」では、なんやかや理由をつけて登場しなかったプテラノドンが、やっとでてきたのもすごかった。(少しだけやけど)
ストーリーは恐竜様ご出場のためにとってつけた話です。ジェフ・ゴールドブラムも変なサングラス無しの普通の人でした。じわじわした怖さとか、残虐シーンもあまりなく夏休み子供向けです。
前作「ジュラシック・パーク」は、原作が「カオス理論」とかでてきて、じわじわ破滅へと向かうのに比べかなりはしょっていましたが、「ロスト・ワールド」はそれ以上に理論なし。原作はどうなんだろ。
文句いっぱい書いたけど、結構おもしろかった。でも、最後のアッテンボローの話はいただけない。恐竜の自然保護も結構だけど、罪も無く殺された人たちはどうなんの?
まだ書き足らなかった。恐竜の色はわかってないそうですね。サイケな色の恐竜も登場してほしかったなー(漫画になるか)
おすすめ度:★★★
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アメリカの友人

1977年 西独=仏
監督・脚本 ヴィム・ベンダース
原作 パトリシア・ハイスミス(「アメリカの友人」「太陽がいっぱい」「見知らぬ乗客」)
撮影 ロビー・ミューラー
音楽 ユルゲン・クニーパー
出演 デニス・ホッパー/ブルーノ・ガンツ/ジェラール・ブラン/ダニエル・シュミット
メモ 1997.8.16 TV録画
あらすじ
白血病で「死の不安」を感じている額縁職人のヨナタンに、贋作づくりの詐欺師トム・リプリーは「アメリカの友人」として近づき、殺し屋の世界に引きづり込んでしまう。
感想
「太陽がいっぱい」ではアラン・ドロンが演じたトム・リプリー役を、この映画ではデニス・ホッパーが演じているのがおもしろい。パトリシア・ハイスミスは未読なのです。「ふくろうの叫び」とか読んでみたい。
パトリシア・ハイスミスは、「確固としたアイデンティティ喪失の不安を描く」との事ですが、この映画の音楽も不安を掻き立てます。カルトな映画でした。
映画監督ニコラス・レイ、サミュエル・フラー、ダニエル・シュミット、ジャン・ユスターシュが出演しているそうですが、さぼてんは修行がたりずサミュエル・フラーしかわかりません。(白状すると、他の監督さんは名前も???です)
追加:ニコラス・レイは、ジェームス・ディーンの「理由なき反抗」の監督さんだと判明いたしました。
おすすめ度:★★★★
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スクリーム

1996年 米
監督 ウェス・クレイヴン
脚本 ケヴィン・ウィリアムスン
撮影 マーク・アーウィン
音楽 マルコ・ベルトラミ
出演 ネーブ・キャンベル(シドニー)/ドリュー・バリモア(ケイシー)/デイヴィッド・アークェット(デューイ)/コートニー・コックス(ゲイル)/スキート・ウーリッチ(ビリー)/ジェイミー・ケネディ(ランディ)/マシュー・リラード(スチュアート)/ローズ・マッゴーワン(テイタム)
メモ 1997.8.26 大阪梅田 東映パラス
感想
いい評判を聞くのですが、期待しすぎるとまたコケたりするので、あんまり前知識をもたないようにして、期待度半分で見にいったら、面白かった。恐いやらおかしいやら、おちゃらけた映画です。出てくる人みんな怪しげ。私には「セブン」や「12モンキーズ」よりも「フロム・ダスク・ティル・ドーン」や「スクリーム」の方が面白い。
おすすめ度:好きな人にだけおすすめします。★★★★
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心の指紋

1996年 米 123分
監督 マイケル・チミノ
脚本 チャールズ・レアヴィット
撮影 ダグ・ミルサム「フルメタル・ジャケット」
音楽 モーリス・ジャール「アラビアのロレンス」
出演 ウディ・ハレルソン(医師マイケル・レイノルズ)/ジョン・セダ(ブランドン(ブルー)・モンロー)/アン・バンクロフト/アレクサンドラ・ティディングス
メモ 1997.8.29 大阪梅田 シネマアルゴ
あらすじ
16才のブルーは継父殺しも含め前科6犯、末期ガンであと一ヶ月の命と知り、エリート医師マイケルを人質に逃亡する。めざすは、ナバホ族の聖なる山。
感想
すっごく感動する事はありませんでした。が、2人の生い立ちがしみじみと哀しい。ブルーは、「欲望の翼」とはまた違うのですが、レスリー・チャンの「最後まで目を開けているんだ」風にがんばります。このジョン・セダという人は今の若手俳優にいないタイプで、なかなかよかったです。
今まで「死」を正視できなかった医師マイケルは、今度は最後まで見届けようと迷いながらも粘ります。ウディ・ハレルソンの上品そうな役は初めて見ました。演技派ですね。
アリゾナの風景とか、裸馬に乗って疾走するシーンがとてもきれいです。わりと変わった効果音、音楽が使われていました。
おすすめ度:西部の大自然の風景がおすすめ★★★
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トゥー・カップス

1994年 韓国
監督 カン・ウソク
出演 アン・ソンギ/パク・ジュンフン
メモ 1997.8.31 大阪動物園前 シネフェスタ
あらすじ
アン・ソンギのせこいエーかげんな刑事、パク・ジュンフンの石部金吉刑事コンビのポリスコメディです。ルックス(お顔)と正反対の役柄でした。
感想
面白かった!笑った!5本くらいしか韓国映画を観ていないのです(お恥ずかしい)。「小さなボール」でアン・ソンギを「追われし者の挽歌」でパク・ジュンフンのシリアスな役を見た事があったのですが、コメディもうまい!話も中だるみなく、よーできてました。
中国、韓国、日本は、ご近所とはいえ大陸、半島、島国とそれぞれ環境が違い、長男(中国)、次男(韓国)、三男(日本)と例えられているのを読んだことがあります。上と下にはさまれた次男の国は、パワフルな国という印象が強いです。
おすすめ度:★★★★
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英国庭園の謎

有栖川有栖(ありすがわありす)作 講談社ノベルズ 239ページ 1997年
あらすじ
犯罪社会学者の火村英生と、推理作家の有栖川有栖がコンビの6編からなる短編集
感想
この作者の著書を読むのはほんとひさしぶり。「月光ゲーム」「孤島パズル」とかおもしろかったな。エラリー・クィーンに傾倒している作家で、あんまり個性が全面にでる人じゃないと思ってたんだけど、そのなんとなくボンヤリした所が個性なんですね。
「ジャバウォッキー」が面白かった。こういう話は作者の一人合点になりがちだけど、これはうまくできてたよ。舞台が大阪でさぼてんには土地勘があるからね。島田荘司の「糸ノコとジグザグ」を目指したと書いてあった。読まなくては・・。
「有栖川有栖」というペンネームは87分署シリーズの「マイヤー・マイヤー刑事」みたいなのにしたかったとありました。
おすすめ度:★★★
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わたしにもできる銀行強盗

ジーン・リューリック作 ハヤカワ・ミステリ文庫 316ページ 1997年
あらすじ
天が落ちてくるような出来事が重なり、理不尽にも60才のキャサリンは3万5千ドルがなければ家をとりあげられてしまう事態となった。「銀行強盗でもやってやろうじゃないの」。彼女は果敢にも戦いを宣言した!
感想
「ミス・メルヴィル」シリーズが超ドライなのとは違い、少しウェットでほのぼのしたユーモアサスペンスです。前半銀行強盗をするまではスピーディです。後半は出演者がどっと増えドタバタです。生きが良くて品のいいおば様にバンザイ!
おすすめ度:★★★★
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嗤う伊右衛門(わらういえもん)

京極夏彦作 中央公論社 385ページ 1997年
あらすじ
伊右衛門殿は、お江戸で大工の真似事をしながら浪人生活をしていた。お岩様は、同心の民谷家の一人娘であり、評判の美人であったが、病のため顔に痕が残ってしまった。伊右衛門殿は縁あって民谷家へ婿入りする。
感想
怪談は恐いからあまり好きではありません。(恐くない怪談はもっと好きではありません)好きじゃないのに夢中で読んでしまいました。そうさせる何かがこの本にはあります。「姑獲鳥の夏」に比べ読みやすかったせいかもしれません。
恐いのか恐くないのか、面白いのか面白くないのか、判断がつきません。変わった語り口の本です。
おすすめ度:????
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斉藤家の核弾頭(THE NUCLEAR WARHEAD OF SAITO FAMIRY)

篠田節子作 朝日新聞社 299ページ 1997年
あらすじ
20世紀末からの、大地震、病の大流行、経済政治の大混乱、超円安、食料・物不足をへて2075年の日本国は超管理国家となっていた。斉藤家は超高層ビルに囲まれ、江戸初期より先祖代々30坪の土地に住み着いていたが、「高度土地利用法」を振りかざす日本国により、住処を追われ、東京ベイシティに移り住む。その後、様々な事態がおこり、汚い日本国のやり口に斉藤家の家長・総一郎は怒り心頭に発し、家族を守るため日本国に戦いを挑む(ハメに陥る)。
感想
復活した家父長制度の元、超エリートであり、ずば抜けた頭脳、知識の持ち主でありながら、どこかずれている家長・総一郎が旗を振り振り突き進む中、ともすればバラバラになりそうな家族を何とかまとめて子供達の手を引き、明日の食事を考えながら妻・美和子がついていく風でとても面白かった。ブラックユーモア満載です。ひ弱なエリート風でありながら、斉藤家の面々はしぶとかった。
おすすめ度:★★★★★
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動機は問わない

藤田宜永(ふじたよしなが)作 徳間書店 207ページ 1996年
あらすじ
私立探偵・相良治郎のハードボイルト連作集
感想
「理由はいらない」がおもしろかったので、期待したんだけど・・色々工夫はされてるんだけどなあ。人間長い事してるわりには、あんまり世なれてないさぼてんから見ても、世間知らずのボンボンが数多く登場して、感情移入ができない。
おすすめ度:2時間で読めたけど・・・・読まずに死ねるぜ★★
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誘惑の巣

ウィリアム・ヘファナン作 ハヤカワ・ミステリ文庫 465ページ 1997年
1996年度アメリカ探偵作家クラブ最優秀ペイパーバック賞
あらすじ
一人の刑事がマンハッタンの自室で、凄惨な死体となって発見された。ひとりで秘密の捜査を行っていたらしい。刑事の父親は上院議員であり、市長直属の警視ポール・デヴリンはスキャンダラスな事件の解明にあたる。
感想
マフィアあり、政治家あり、秘密クラブあり、国連まで出てきて、登場人物も多く過激なシーンも随所にはさまれサービス満点のクライム・ノベルでした。主役のデヴリン警視にいまひとつ魅力がないのが残念。レズビアン刑事シャロン・レヴィーは存在感があり好感がもてます。
ポーラ・ゴズリング作「モンキー・パズル」のジャック・ストライカー警部補を越える魅力ある警察官はまだ登場しない。
おすすめ度:★★★
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プレゼント

若竹七海(わかたけななみ)作 中央公論社 261ページ 1996年
あらすじ
何故か望まぬトラブルがすり寄ってきてしまうフリーターの葉村晶。ピンクの子供用自転車にのって現場にいそぐ小林舜太郎警部補。2人がかわりべんたに出てくるの8作の連作短編集
感想
「殺人工作」と「プレゼント」がうまい!。「プレゼント」は1年前の殺人事件当時の関係者を、再度集めるというよくある話だけど(こういう話はゾクゾクするね)面白かった。
昨年あまり評判にならなかったのが不思議です。折原一の「ファンレター」や東野圭吾の「悪意」もあまり評判にならなかったし。本格物、冒険小説、ハードボイルド、ホラーにジャンルわけできないミステリは評価されにくいのでしょうか?
ついでながら、表紙の絵も意味ありげでいいです。
おすすめ度:★★★★
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吠える男 (The Roaring Boy)

エドワード・マーストン作 ハヤカワポケットミステリ 273ページ 1995年
あらすじ
16世紀末エリザベス朝のロンドン、劇団の舞台進行係(現代の演出家ね)ニコラスは、匿名の脚本を受け取る。その脚本には、先日愛人と共謀して夫を殺害し世間を騒がせた事件の真相がほのめかされていた。
感想
劇団内のドタバタかなと思って読み始めたのですが、時代冒険活劇物でした。しかし、あの結末では殺された男は浮かばれんと思う。
おすすめ度:★★★
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マーチ博士の四人の息子

ブリジット・オベール作 ハヤカワ文庫 315ページ 1992年作 掘茂樹・藤本優子訳
あらすじ
雪深いアメリカの田舎町に住むマーチ家。家族は、医者のパパと心臓を患っているママ、そして18才になるハンサムな四人の息子達。新しく住み込みのお手伝いとなったジニーは、こっそりと奥様の毛皮を試着しているうちに、偶然、密かに隠してある日記を見つけてしまった。その日記は、殺人者の手記だったのだ!。裕福なこの家のだれかが殺人狂らしい。
感想
NOBODYさんが、「SALOON」の「森の死神」の中で書かれていたので、読みたくなりました。
全編、殺人犯の日記とジニーの日記が交互にでてくるだけなのに、ぐいぐい引き込まれます。”むさぼり”読んでしまった!。ない頭しぼって色々考えたんですが、ネオンサイン付きのヒントがあったにもかかわらずー、読み切れなかったあーー。異色の叙述ミステリ(ジョジュツミステリ:作者が読者を騙すミステリ)です。
おすすめ度:読み終わるとみんな、「なんだなんだ」と思うみたいやけど・・・完敗ですわ★★★★
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偽りの街 (March Violets 3月の菫)

フィリップ・カー作 新潮文庫 379ページ 1989年 東江一紀訳
あらすじ
舞台はナチス統治下のベルリン。時代は、1936年。レニ・リーフェンシュタール監督の「民族の祭典(オリンピア)」で有名なベルリン・オリンピックが開かれた年です。元刑事のベルンハルト・グンターは、私立探偵となり頻繁に起こる行方不明者の捜索を主な仕事としていた。
感想
一級の娯楽ハードボイルドでした。どこが一級かというと、滞り無くストーリーが続き、どこで次々鍵を掴んでいったのかを忘れさせてくれます。(←わかりにくいですね。文章力が無いなあ。不自然じゃないと言う事がいいたいのでした) 暗く不安なドイツの雰囲気を味わいました。恐いです。
訳者の東野一紀(あがりえかずき)さんは、「鮫とジュース」「二役は大変!」「ストリート・キッズ」と続けて読んでいます。かなり、くだけた訳が多いです。そのぶん読みやすい。
おすすめ度:気分が消えない内に、ベルリン三部作の残りを読みたい★★★★1/2
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パラレルワールド・ラブストーリー

東野圭吾作 中央公論社 345ページ 1995年
あらすじ
総合コンピューターメーカーでリアリティ工学を研究している敦賀崇史は、最近、日々の生活に違和感を覚えるようになった。中学時代からの親友を急に思い出したり(何故忘れていたんだろう)、思い出しても、その親友と最後にあったのは何時だったのか思い出せない。自分はいったい、どうしたんだろう・・・
感想
帯に”青春ミステリー”と書かれてあるように、ラブストーリー、友情物語なのですが、それ以上の作者の思いがあると感じます。
誰かにいじめられた事があったり、事故や病気で大切な人を失った時、生きていくのは大変苦しい。悲しみを通して、人の苦しみがわかるようになったという人もいると思う。でも、押しつぶされてしまう人も多い。そういう人をなんとか、という作者の「やさしさ」が屈折して書かれています。ストレートな「やさしさ」が書かれていると「自己満足ちゃうか」と思ったりしてしまうのですが、この作者は実にうまいのです。
おすすめ度:★★★★1/2
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スタバトマーテル

近藤史恵作 中央公論社 236ページ 1996年
あらすじ
足立りり子は、将来を嘱望された声楽家の卵であったが、「コンサートで声がでなくなる」体質のため挫折し中途半端な日々を送っていた。そのりり子の前に、精悍な銅版画家の瀧本大地が現れた。
感想
「スタバトマーテル」とは、キリスト教聖歌のひとつだそうです。面白かったのですが(4時間で読んだからね)、「母物」・・・ちゃうちゃう「母性がテーマ」の話はちょっとばかし苦手です。でも、男女の腐れ縁の描き方はうまかったよ。この作者は歌舞伎が題材の「ねむりねずみ」が一番好き。
おすすめ度:★★★
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パワー・オフ

井上夢人(いのうえ・ゆめひと)作 集英社 372ページ 1996年
あらすじ
コンピュータ・ウィルスの話です。
感想
文中主人公の一人の言葉「ウィルスを作るヤツは、自分の事を天才プログラマーと思っているかもしれないけれど、ウィルスを作るのは割と簡単なんだ。というのも、利用者の大多数に、使い勝手がいいと思ってもらう工夫なんてなんにもしないんだから」は、印象に残る言葉でした。
前半のコンピュータ・ウィルス騒ぎは面白かった。後半は勝手にプログラムを書き換えていく人工生命プログラムが出てきて、それが生物の進化に例えられたり、なんだかヘェーという感じ。

−−−だいぶ長めの感想−−−
コンピュータの世界は、日々進んでいるように思えます。すごいです。本のような研究も実際進められているらしい。
反面、8月の初めに東京証券取引所の株式売買システムが半日止まったと新聞記事にありました。 記事を読む限り、終わりのない処理にはまり込んだみたい。(計算した結果が0以上になったら終わりですとなっている場合、計算すればするほど0未満になるデータが入ってしまうと100万年かかっても、終わらない)。
新聞記事を読んでも、よくわからないんだけど(3度読んでもわからない時は自分の頭を棚にあげて、書いている人もわかってないんだと思う事にしています)、想定外のデータが入ったみたい。
あらゆる場合を考えて、プログラムを作るといいんだろうけど、プログラムが大きくなってしまうし処理も遅くなる。だいたいあらゆる場合って考えられる?
ながながと書いたけど、東証のような世界に影響を与えるコンピュータのプログラムでも、誰かがコツコツ作っているような気がする。というような現状で、夢物語のような気がしました。
おすすめ度:★★★1/2
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砕かれた夜 (THE PALE CRIMINAL)

フィリップ・カー作 新潮文庫 412ページ 1990年 東江一紀訳
あらすじ
ベルニー・グンター・シリーズ2作目。ユダヤ人への弾圧が過酷さを増す1938年のベルリン。グンターは、刑事警察に脅迫され、アーリア人少女連続誘拐殺人事件の捜査に巻き込まれる。
感想
映画「日の名残り」にも描かれていた英国、仏の「紳士的な態度」言い換えれば「弱腰」がナチスドイツのチェコ、ポーランド蹂躙を許し、ヨーロッパを戦争に突入させた時期が背景になっています。 前作「偽りの街」は、探偵小説でしたが、本作は刑事小説です。グンターは、さらに絶望的な状況になっているベルリンで、権力者たちの様々な思惑や闘争の下、困難な捜査に立ち向かいます。
おすすめ度:★★★★1/2
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今月はたくさん本が読めて「極楽園」しました。