エポック社・原氏

8.カセットビジョン・第二期カセット編

パクパクモンスター

寺町:これはまあ、パックマンの影響下にあるゲームなんですけれど、これだけパックマンが人気があれば、次はこれか?って流れで出てきたと思うんです。でも、カセットビジョンのハードって、ドットイートがつくりにくいじゃないですか。そのあたり、すごく考えられたと思うんですが。

原:すっごく苦労しましたよ。ドットが大きいし、スプライトの 上限などがありましたし。

古畑:どうしてこれは上向かないんですか?

原:ハード的に向けなかったんじゃないかな。ななめのきり方というのが、すごい苦し紛れにやっていて。

寺町:ただ、僕らにとっては衝撃的でした。こういうパックマン的なゲームが、ついに家のテレビでプレイできるのか!と。

ニューベースボール

寺町:堀江様の初代テレビ野球ゲームの第2作ですよね。

原:これ、ニューって、何がニューなの?

堀江:ん?(命令を)つめたんだよ。ソフトをもう一回全部見直して。そうするとプログラムエリアが空くので。

寺町:バントが出来たり、人がピッチャーマウンドに立ったり、1人用ができるようになったり。

堀江:すごいコンピュータだね(笑)。

原:これはあんまり記憶がないんですよ。

堀江:別のメンバーかな?

原:パッケージとかそういうのはやった記憶があるんですけれど、内容に関しては・・・。それほど大きな変更ではなかったんですね。

モンスターマンション

寺町:モンスターマンションは、堀江様がおっしゃるにモンスターパニックと、僕が考えていたのはドンキーコングで。

原:ドンキーコングですよね。

堀江:そうだねえ。

原:モンスターパニック自身がドンキーコングを参考にしていますものね。

寺町:ただ、おっしゃるように、あれもひとつふたつ加える要素があるわけですよね。最後にガイコツと戦ったり。その前に剣を拾ったり。しかも、そのスリルってのはまた全然質がちがうものです。

原:うん、そうですよね。

寺町:この面構成なんですが。1面目は階段をスルーするだけ、2面目はオブジェクトをゲットしていくという構成、この構成の仕方、ご苦労とか憶えておられますか?

原:そうですね。やることが限界があるので、なるべく見た目ちょっと変えられないかな?ってことでやっていったと思うんですけれど・・・

寺町:このレベルになると、この要素を入れたいけれど入らない、ということもあったんじゃないんでしょうか?

原:横にいくつか並ぶと消えちゃうというのがあったんで、ここで並ぶのが8つになると消えるだとか(*)、そういう画面を作る上での制約が多くなってきたような気がしますね。

寺町: 8つだったんですか?横に消えるというのは?

原:なんかそんなよう感じだった気がします。いくつかだったってのはよくは憶えていないんですけど。制限があって。

寺町:床の直線はスプライトなんですか?

堀江:うーん、忘れちゃったけど、繰り返しが出来るか、それても並べているかどちらかだったと思いますね。

アストロコマンド

古畑:これは、スクランブルですか?

寺町:このアストロコマンドはジュニアと同時発売のカセットなんですけれども。ジュニア用に開発されたものなのですか?

原:ま、そういう部分ってありますよね。ジュニアってのが大体ご想像のとおり

寺町:延命策ですよね?

原:末期症状ですよね。はっきりいって(苦笑)。確か動いてなかったんですよ。ま、あれでも残ってくれればセットでしようかという感じでやってたんです。

寺町:そうですか。でも、ジュニアの価格が5,000円ってのは本当におもいっきり価格ですよね。7,800円とかもうちょっと上の案はなかったんでしょうか。

原:ジュニアって確か・・・(寺町:83年です)・・・ファミコンがもう出ていたんで・・・。

寺町:ちょっと手前かなと思うんですが。

原:もう、その情報は流れていました。それで、やっぱりこのレベルの商品ですと当然価格差をつけないと生き残れないということになりましてね、思い切って勝負に出たんだと思いますよ。

堀江:スーパーカセットビジョンってさ、もう開発入っていたんだよね。このタイミングではね。

寺町:スーパーカセットビジョンが15,000円ですから、それとの差ってのもありますよね。

堀江:しかしほんとうに5,000円ってのは

原:カセットだけで儲ける!っというところですね。

堀江:つくってる方もおどろきだよね。カセットも本体も5,000円(笑)

原:本当にやっていいんですか?ってね。

望月:カセットがさがんないんだよ、どう考えても。カセットが下がると、うち利益無しでボランティアなっちゃう(笑)

寺町:それは上の方も5,000円で行くぞ!と?

原:行くという話で。ちょっと驚きましたけれど。つくってて。

堀江:あと、部品を削減しているんだよね。

寺町:ねえ。遊べないソフトも出てきましたが。

モンスターブロック

寺町:これも原様が?

原:ええ。これもなんかベースがありましたよ。

寺町:ひょっとして・・・ペンゴ?

原:ああ、そうそう、ペンゴ、ペンゴ。

寺町:エポック社さんからも電子ゲームでペンタってのが出てましたっけ。
それで、これはすごいたくさんの遊びの要素がありますよね?それは最初の仕様一発決めだったのですか?

原:いや、これは作っている途中でどんどんアイデアが出てきて、じゃあここもできる?ここもできる?って感じで言ってやっていったような気がしますね。

寺町:これは[1][2][3][4]ブロックが、面クリア後に加算されるというシステムですよね・・・って覚えておられます?

原:いえ。それってペンゴにはない要素だよね?それはどこから引用したのかなあ?

古畑:ペンゴは(ボーナスとなるダイヤモンドブロックが)3つあるんですよね。

寺町:これは1,2,3,4に法則があるんですよね。2つ並べると倍増だとか。

原:こだわっちゃんだ(笑)。ちょっと考えすぎかもしれない。

恐怖のデバッグ

寺町:それで、これが最終作なんですが。エレベーターパニックです。これだけ爆発的な難易度なんですが、やはり当時の難しくなりつつあった風潮にあわせられたのでしょうか。

原:なりつつあったというのがひとつと、順を追ってつくっていますんで、より難しいところに持っていかざるを得なかったってとこがあるんですね。いろんな要素をいれていくと。上から来る奴、横から来る奴、縦から来る奴、そういうやつを入れないと、なんというのかな、これの前の奴と似てるといえば似ているわけじゃないですか、それからどう画面的な変化をつけていくかっていうか、いろいろ出しちゃったんだと思いますよ。

寺町:これをつけてくださいという要望はわかりますが、逆に、やっぱりこれははずしてください、ってこ要望を出されたことはあったんですか?(※つまり、やぱりやめということ)

原:うーん、まれですけれど、ないことはないですね。やってみたけれど、デバッグしている最中、おもしろくないんでやっぱりやめましょうとか。

寺町:そのあたりがすごくやりにくいハードだという気がするんですが。

原:それはありますよね。最終的には動いてみないとわからないんで。
 とにかくこの頃はねえ、デバッグがいよいよ出来ますよっていう時が一番怖いんですよ。それまでは頭の中で、勘の中でしか見ていないじゃないですか。動いてみて、これで本当にゲームになるかな?ってのはね、いっちばん最初に画面をみせてもらうと、そのとおりで、ゲームじゃないんですよ。忘れもしないし、タイミングもバラバラだし。それから始まって、これをどう直していってゲームに仕上るかっていう、そこからがすごい苦労しましたよね。だからデバッグはじまる時、嫌だったんですよ。まず絶望しました(笑)

寺町:エレベータパニックは、かなりタイミングが大変ですねえ。

原:それだけで、ゲームにしている時もありますよね。

寺町:しかもそれが難しいハードですよね。(今あるタイプの)マイコンじゃないんで。

原:場合に寄っては、そこで、プログラマーの横で、もうちょっと早くしてとか、いややっぱりもうちょっと遅くしてとかね、そういう感じで、タイミングをとる。

寺町:ははあー。なるほど、すごいですねえ。これだけ1,000円安いというのは、先ほどおっしゃっていた。

原:そうですね、周りの影響があったと思います。

Hint de Pint
実際には9つ以上横並びしても消えません。バトルベーダーにて、8列インベーダーの横に弾を撃つと、きれいに表示されるのがわかります(笑)。堀江様へのインタビュー(6p)によると、ここは横並びでいくつではなく、画面にいくつ表示されると消える、というものだったとか。
・アストロコマンドについては、以前の同インタビュー(7p)で、今は社内にいない方が手がけられたという証言がありました。この点について再確認をしてみましたが、なにぶん古い話ということで、結局真相は不明でした。原氏以外の方がかかわられていた可能性もありそうです。

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