エポック社・原氏

3.マーケティイングと僕らがおもしろいと思うもの

原:あえていえば、この頃思っていたのはオリジナリティあるものをつくりたいな、という気はあったかもしれないですね

寺町:ジグザグモンスターしかり。

原:売れなかったんですけれどね(笑)。売れないから逆にこだわったのかもしれない。売れないけど俺はオリジナルだ、みたいな。

寺町:エポック社さんは、流れ的には、あまりアーケードメーカーの直移植ってのはないかもしれません。スペースディフェンダーっと言っても、アーケードのディフェンダーとは別物ですし、パクパクマンにしても・・・、そりゃ、パックマンといえばそうですが、いかにパターンを刻んでHHH(パーフェクト)を出すかが命だったり・・・。

原:(笑)そりゃ商売ですから。ある程度、当時の流れとしては、アーケードにおもしろいものがベースとしてあって、この蛍光/液晶のゲームってのは、アーケードの遊びをいかに家庭に持ち込むかっていうものがあったんで、そこで売れているヒントは当然いただくというかたちのものはあったかと思うんですけれど、その中にいかにね、自分たちのオリジナリティ、そのまま持ってくるんじゃなくて、そこに自分たちの工夫なり何なりをひとつでも二つでも入れていくという部分はみんなあったと思うんですよね

寺町:バンダイさんなんかはアーケードと同時進行という形で、日本物産とフリスキートム(バンダイは電子ゲーム版を発売している)をつくられたり、と。みなさん、それぞれに特色があるんだなあ、という印象です。
ところで、アーケードがヒントになっているというのは、それはこういうゲームを遊ぶ当時の子供たちが、アーケードゲームに熱中していたから、という背景があるんでしょうかね?

原:そうですね・・・そうだと思いますよ。

寺町:例えば、アーケードゲームがですね、サラリーマンとかそういうものをターゲットにしているゲームだとしたら・・・、こういう(エポックゲーム)を買うのって子供ですよね?そういう層とはまた異なると思うんですけれど・・・。私が思ったのは、子供がプレイしているからこそ、エポックゲームはアーケードを手本にしたんじゃないか?というものがあったんです。でも、意外とそうでもないんですかね?単純にアーケードゲームというのが、子供に限定していたとかじゃなくて、広い範囲の層で遊ばれていたから、手本にしようとか、とりいれようとかされたわけですか?

原:ちょっと明確に憶えていないんですけれど、今と明確に違うのは、今はかなりユーザーの考えなりなんなりを意識してやらざるを得ない・・・というかね、(考えて)進んでいるかと思うんですよ。この当時はですね、まだまだどちらかと言えばメーカー主導というか、メーカーがおもしろいと思ったものを与えるというスタイルだったんじゃないかなと思いますね。で、そういう意味で、僕らつくっている立場の人間、遊びをつくっている人間から言えば、その、自分たちが本当におもしろいと思えるものをつくっていくという形があったかと思うんですよ。

寺町:なるほど。

原:今それじゃ通用しないと思うんですよね。

寺町:そうですね。

原:ターゲットを明確にして、その子供たちが今なにを考えているか、どんなものを読んでいるかってところから始まって、いわゆる理論ずくで来るわけですよね。で、それだと、こういう形のゲームになるんだとかね。そこにいかにおもしろさを盛り込むかってスタイルになると思うんですよ。
昔はちがって、まだまだ、そんな子供たちはそんなに物も多くなかったですから、与えられたものが面白ければいいというかんじでしたし。もちろん、面白いものを提供しなきゃいけないし、まず、自分がおもしろいと思えるもの、という形が多かったと思いますね。

寺町:なるほど。それはすごく貴重なご証言かと。

原:その当時、アーケードゲームショーなどがあるんですけれど、子供がどうかってより、自分が楽しめるかってことが大事で僕らは見てましたよね。

寺町:ふむふむ。

原:で、自分がおもしろいと思うものは、絶対子供たちにわかってもらえると思ってましたんで。ま、今から考えると、すごい、思い上がった考えかもしれませんが。

寺町:今は、販売目標数ってのがありまして、そこに到達するにはマーケティングをして、予算も決まってという流れでしょうか。ま、テレビ番組なんかもそうだと思いますけれど。ということは、意外と当時の子供たちに対して、マーケーティング調査なんてことはされなかたった?

原:あまりしてないですね。

寺町:ああ、そうなんだ。そこを今回うかがいたかったんです。

原:あまりというか、ほとんどしていなかったかもしれないです。みんな好き勝手つくってましたよ。

寺町:わはは(笑)

原:そのかわり、そのつくっている人間がおもしろい人が多かったですけれどね。あまり平均的でない。変わった人も多かったですね。オタクっぽい人はいなかったですけれど、普通、サラリーマンに見えないような人ですとかね、会社にきたら横で寝ているとかね(笑)。電子チームじゃないですけれど。

寺町:ああ、いわゆる伝説をつくられるような方ですね。

原:いろいろいましたね。つわものが。わりと自由な発想をして、いろんなおもしろい遊びを提供していたという感じがありますね。今、もうすべて理論づくめ、データづくめで、誰が見てもこうなるよね・・・

寺町:「売れますよね!」とか?

原:逆に売れることを証明しろって言われていますからね(笑)。「これ、どうしてヒットするか、理由はなんなんだ?背景はなんなんだ?」って。(同席スタッフも苦笑)。昔、そんなのありませんから。「面白いとおもいますよ」で通っちゃうわけですから。

寺町:そこまで言われるのは、その理由は、やっぱり余裕がなくなってきたってことなんでしょうか?例えば予算とか。

原:余裕というか・・・今がそういう・・・

寺町:時代だから?

原:時代なんでしょうね。いろんなものがもうすでにあって、その中で勝ち抜かなければいけない。いろんな商品が並んでいる中で、子供たちに手にとってもらわなければならない。昔は1個か2個だったんで、手にとってくれるんですよ。今、20個、30個の中から1個選んでもらわなきゃならないんで、選ばれるためのシステムであるとか、そういうものが必要にならざるをえないんじゃないですかね。

堀江:理論的にはそうなんだけれどね。正直なところは、それを決める人のリスク回避ですよ。こういう理由で決めたんで、という、失敗したときの逃げ。簡単に言うとね。ここまでこういう理由でやったけれど・・・

寺町:ダメだった、という・・・。

堀江:だから理論的になっちゃうんだね。

原:ま、そういう意味では余裕がないってことになるんですかね。もうちょっと余裕があれば、ダメかどうかわかんないけれど出してみようというところが出てくるわけですし。

寺町:たまごっちが復活して、また再ブームを起こしていると聞きましたが、あれも経済誌によると、まあ、ものすごく徹底したリサーチをしたそうですねえ。女子高生・・・女子中学生だったかな?”赤外線通信が楽しい”、って声が高かったそうで、”じゃあこれを取り入れろ!”となったり、徹底的なマーケティングによる勝利だって印象です。正直、そりゃある程度は成功するわな、って思ったんですけれど。

原:うちはうちで、そういう方向性では・・・ないですね。

寺町:今はどうですか?

原:今はもちろん、若干はそういう方向に行かざるを得ないんですけれど、それでも他社と比べると、あまりマーケティングは重視していないかもしれないですね。

寺町:そうですか。

原:だからたまに、ちょっと変わったものが出るのかもしれないし。

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