エポック社・原氏

5.”快感”ゲーム

 ここより、ゲーム・トイ事業部の古畑 扇氏に合流をしていただく。古畑氏は現在のエポック社体感ゲームシリーズ(近作は、トラックボールコントローラーでボールを転がしてプレイする「スーパーダッシュボール」)の製作者で、原氏はそのマネジメントを掌(つかさど)る。つまりこれは、新旧エポック社のゲームデザイナーが同じ席につくということだ。しかも、古畑氏は原氏がデザインを手がけたきこりの与作のファンで、このオデッセィもご存知(!)だという。新旧の魂を併せ持つ現役選手なのだ。(笑)

古畑:今年のものをちょっとかすめてきました。おみやげにどうぞ!(と、スーパーダッシュボールを差し出される)。


スーパーダッシュボール
(2004年)

ボールを転がしてゴールを目指す等
6種類のゲームモード搭載
もっとも熱いのがおにごっこな
”タッチボール”

寺町:うわー、ありがとうございます。かすめてきたとは、さすがおもしろい方ですね(笑)。

原:ある意味、また(そういう昔ながらの気質というのが)戻ってきましたけれど。

寺町:それはいい傾向ですね(笑)。このお話も、今時のコアな話題でして、任天堂の岩田社長がおっしゃっているように、グラフィック機能や容量が高機能になった結果、内容が複雑になり、プレイヤーが限られてしまい、一般人がついていけなくなっている、と。それで誰でも遊べるベーシックなゲームが重要だ、とおっしゃっています。

原:そうですよね。DSなんかも、その線上にありますよね。

寺町:それで、ちょうど今団塊ジュニアが消費の中心にいるということで、この世代のテレビゲームが見直されている時期だと思うんですね、はい。

望月:そういったとこで、エキサイトスタジアムなんですけれど、あれは本当は”快汗ゲーム”だったんですよ。エキサイトスタジアムで言えば、ボールが真芯に当たる快汗、エキサイトテニスですと、ネットのちょうど芯に当たった時に、手ごたえが・・・あるんですよ。衝撃は無いんだけど、その快感の手ごたえはあるんですよ。その感覚のようにボールはそのはねていくという。

寺町:あれですかね?3Dの物体が飛んできたときに、思わず身体を傾けてよけてしまうという、あの体感感覚?

望月:うん、それもあるんですけれど、気持ちがいいっていうんですね。テレビゲームをやっていて気持ちがいいってのはなかなかないんだけれど。初期の体感ゲームのあれは、ファミコンくらいの計算能力しかないのかな?表現能力は?そのレベルで快汗を味わうにはどうしたらいいか?ってんで、あれはそこをつきつめているんです。エキサイトピンポンもそうなんです。僕、あんなすごいスマッシュなんか打てないんだけれども・・・

寺町:ははは(笑)

望月:まさに打てるような快感をテレビの中で疑似体験したってわけなんですね。

原:ピンポンテニスしかり、あとエキサイトサッカーもそうですね。

望月:でも、快感って言葉はあまり言い言葉じゃないんです。

寺町:うんうん、ちょっと誤解されやすいですよね(笑)。

原:野球で言うと、普通はボールがバットにあたったその雰囲気が無いと、体感といっても、実感が得られないんじゃないか、という気がしていたんですけれど、あれやってみればわかるように、音とそのボールが飛んでいく軌跡で、なんか打ったような気になってくるんですよね。あれ不思議なことにね。どこかで錯覚を起こすんでしょうね。

寺町:僕はあれやって、テレビをラケットでぶったたいてしまったんです(笑)。それってありますよね?

望月:ありますあります。どんどん前に出て行っちゃうんですよね。

原:あれ、一番最初に役員にプレゼンした時、うちの専務もおもいっきりたたいていましたよ。

寺町:(笑)やはりみなさん。

原:テレビ壊すかと思いましたよ。最初に注意して、ですよ?!

寺町:バーチャル体験の素があって、そうさせるのかもしれませんね?

望月:そのバーチャル体験の、ほんの1点、気持ちいいという部分を追及しているんですよ。

原:(ヒソヒソと)あのボールの飛び方にはすごいノウハウがあると思いますよ。(笑)

寺町:あはは(笑)。そこが他社さんにはない、エポック社ならではのこだわりなんでしょうね。

原:あまり、目立たない部分ではありますけれど。

寺町:古畑さんも、やっぱり追及されておられます?(笑)

古畑:そうですねー、野球(エキサイトスタジアム)なんかはすごくこだわりを持ってつくっているところがありますよねー。うちのエキサイトスタジアムをやっている開発陣も、今のプレステのゲームをやっていないかといえば、そうではないんですよ。もちろん、おもしろいと思ってやっている中で、おもちゃの方から、あえてテレビの中で野球をやるんじゃなくて、バットの部分を少しテレビから外に出して、実際の物をもってゲームをやる、という部分で。レトロブームと新しい商品がまざった部分では、うちが最初にやったんじゃないかな、と。

寺町:このシリーズは各どれくらい売れているんですか?おおよそで結構なんですが。

望月:初年度で30万台くらいです。で、これは3年くらいやったのかな?

原:スタジアムで3年間くらい・・・。DXってのも出しましたし。

寺町:親子が競いあえるってのは、ちょっと感激したというか。今のメインストリームからこぼれていた部分だと思います。それをまた、原様のようなテレビゲーム制作第一世代の方が手がけておられて、かつ成功されているところがうれしいですね。

堀江:間口が広いんですよ。

望月:やっぱりこれはファミリーができるゲームだよなってね。

寺町:いい話を聞かせていただきました。

望月:本当は快感ゲームなんですよ。(笑)

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