<野球〜ブロック〜ベーダー、そしてカセットTV>

【寺町】 エポック社というとやはり野球盤ですよね。野球盤の会社だから、いい野球テレビゲームをつくろうと。

【堀江】 そうですね。やっぱりこれできたとき面白かったですもんね。他にないんだから。任天堂のレーシングと年末の競争だったんですよね、これにするか、レーシングにするかってことでね。

【寺町】 でもね、この頃はポンテニスがしだいに飽きられてきて、各社在庫を抱えたり、問屋になげ売りしていたとききます。そんななか、たいへんな制作費をかけて・・・よくそれだけ投資されたな、と思いますよ。
結局、このブームの終焉は、あくまでポンテニスの終焉であって、売り手側にしても、ちがうものなら売れるんじゃないかという意識があったのでしょうか。

【堀江】 私個人的にも、(カセットビジョンの4つのパドルを指して)これはみんな同じだったし、おもしろくなかったと思うんですよね。ソフト違えば別ものですし。

【寺町】 次作はテレビブロックです。アタリのチップですよね、これ。

【堀江】 この当時、アタリの石が2タイプあって、それを輸入して回路はこちらで組み立てたんです。

【寺町】 テレビブロック以前に、アタリが発売していたビデオピンボールを、日本のメーカーが輸入販売していたことがありました。でも、これって本体から音が出るんですよ。

【堀江】 音声のモジュレーターがなかったんでしょうね。

【寺町】 ’79年末の主力商品ですよね。

【堀江】 おもしろかったですね。これ見た時びっくりしたんですよ。ボールが放物線の動きするでしょ?これはうちではできなかったんですよ。うちでは直線の動きだけだったもので、これはうわーと思ってびっくりしてしまいました。さすが舶来品だと、日本人にはできぬと(笑)

【寺町】 難しいんですか?

【堀江】 それほどでもないと思うんですけどね。テレビ野球では4x4ドットの固まりが、そのまま次の座標にいっているんです。放物線の動きをさせるには、1ドット=1走査線の動きができないとできないんですが、そこの動きまでコントロールしていたと思うんですね。ま、今は当たり前ですけど。

【寺町】 で、もう片方の石を積んだのが、テレビブロックMBなんですね。

【堀江】 あれは若干出ているんです。量は全然違いますよ。

【寺町】 それと、この時期、システム10がM2として出ています。ただの廉価再販売かと思ったら、サーブのスピードとか違うんですよね。これには驚きました。単なる再版の方がコストが安かったでしょうに、またなぜ?

EPOCH TVGAME 【堀江】 違いましたっけ?変えたかな?忘れちゃいました。でも、そういわれてみれば、サーブの間隔が長いとか、得点がでかくてダサイとかあったんですよ。まあ、最初のやつは数字が大きいのは画期的に大きくていいというのは売りであったんですけど。

【寺町】 次が、アタリVCSです。輸入販売されるんですよね。エポック社さんではカセットTVゲームという名称で発売されましたけど。

【堀江】 VCSは高価でした。

【寺町】 当時はVCSのインベーダーゲームがやりたくてやりたくて仕方なかったんですよ。

【堀江】 VCSのインベーダーはもともと向こうであったんじゃなくて、当社のリクエストで作ったんですよ。あれは画期的なことでしたね。大きいアタリがうちなんかの要望をきいてやってきてくれるとはスゴイことだと思ったんですよ。この石が手元に来たときは感動しましたねえ。

【寺町】 それはすごい話ですね。インベーダーがなければ、実はVCSは死んでいたということをご存知ですか

【堀江】 そうでしょうね。当時見たのはどれも日本じゃ受けないようなゲームばっかりだったから。でも「スーパーマン」はなぜかおもしろかった。

【寺町】 そして’80年のテレビベーダーです。ようやく買えるんですよ(笑)。友達の家にベーダー持って出張したり(笑)。みんな、インベーダーに狂ってました。
時代は切望していたのに、とほうもない開発が必要であったから、どこもテレビベーダーを発売できなかったわけで、ここでようやくエポック社の努力というか、そういうものが実ったという気がします。インベーダーの数こそ8匹ですが。

【堀江】 スプライトの数なんですよ、これ。この時のアーキテクチャーは横並びにいくつというよりも、画面内の個数でいくつ(寺町注:画面のキャラクターをつくるのにスプライトという技術を利用する。このデメリットは、横にいくつか並ぶと消えてしまうということ。ファミコンでは5個以上)、というものだったんです。まあ、苦労しています。
だから、実は透明インベーダーが後ろにひそんでいるという設定だったり(笑)。

【寺町】 あれはねー(笑)。そこが踏ん切りが悪いというか(爆笑)。最初から8匹で攻めてきていて、弾があたれば後退するという設定だったら納得できたのに。子ども心にですよ(笑)。パッケージの裏にわざわざ48匹のインベーダーがイラストで書いてあるのは、あきらめが悪いなと思ってました(笑)。

【堀江】 まあ、ソフトも制約があるわりに、けっこう本質をつかんでいると思うんですよね。表示面はどうしょうもなかったんだけど、UFOの得点がランダムでなく発射数で決められていたり。

【寺町】 堀江さんもやはり、インベーダーにはかなり熱中されましたか。

【堀江】 私はひと月で10万くらいはインベーダーに費やした事がありました。(笑)


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