スクランブル(1982年)
コナミから正式に製造ライセンスを獲たスクランブル。横スクロールゲームの草分けにもなった本作だが、なんといってもすごいのがキャラクターパターンのデザイン。1ブロックにミサイルから防護壁からUFOまで、なんと7種類以上にも及ぶキャラを矛盾無く”美しく”(これ重要!)組み込む構成力には、ガキンチョながら本当に脱帽させられた。
以後、この美しいパターンデータを手本にしたような横スクロールゲームは世の中に数多く出てくるが、美しさと機能性のバランスにおいて、本スクランブルを凌駕するものはなかったと断言しよう。
当時小学生だった自分は、マンガノートに電子ゲームのアイデアを描く時は、いかに美しくバリエーション豊富なパターンを組めるものかを奮闘したものだ。
ミニマリズムの訓練をしていたんだと思いますよ、濱野さん。(^^
ゲームは全5面でアーケードにほぼ忠実な移植。燃料をタイミングよく補給する都市空間、殺られる前に撃つUFO空間、一転じっくり取り組む迷路空間など、面ごとに変わる展開は今もって色あせないすばらしさがある。
もっとも構成の代償として、マイシップは上下のみの操作しかできないず、慣れてしまうと敵になさけをかける余裕ができてしまい、死ぬのは不条理な燃料切れオンリーになってしまうのがこのゲームの限界か。しかし、上下左右動けるスーパーコブラ(学研。同じくコナミよりライセンス許諾)と比べて、どちらが楽しめた? これはもう究極の選択だ。
しかしこの奇跡的な構築美は一体なんだろう。
敵巨大要塞の出現など、アイデアではオリジナルのアーケード版を越えているし、防護壁は憎たらしく再生産されるわ、制限時間は燃料に起因する必然性だわ・・・。
濱野氏はこれらすべてを事前にデザインした上で製作されたのだろうか?いや、ぷよぷよを対戦型にしてみたらゲーム史に残る作品に生まれ変わってしまったように、おそらく天才的なグラフィックパターンを編み出したことによって、いみじくもゲームの真髄とも言うべき扉を開いてしまったのだ。最終面、4つのタンクをすべて破壊しつくして退路を断ってしまうと、そのタンクの後にもう一本の射撃ルートができる、つまり最後のチャンスが生まれる展開なんて、悪魔と契約でも結ばない限り生まれないアイデアじゃないか?!
本ゲームの評価は海外で高く、米electronics games magazineにおいて、1983年度Stand-Alone Game Awardsの候補としても挙げられている。惜しくも大賞は逃したものの、Scramble is without a doubt one of the two or three best stand-alone games ever produced.と最大の賛辞を送られている。
日本でここまでの評価を与えられた記憶はないが、かわりにこんなエピソードを紹介しておこう。当時、工学社版スクランブルとしてATTACKERというソフトがMZ用に発売されていた。この作者のコメントが「マイコンゲームの本4」(工学社/1982年刊)に載っているんだが、作者は最初、2面と3面を逆にしてプログラムを組んでいたそうである。彼はどうしてそんなかんちがいをしたのか? 2面と3面がひっくり返った構成・・・。実はこのトミー版がそうなんだよねえ。