浜野氏

液晶ゲーム編:技術と商売

【寺町】
さて、FLから液晶ゲームに徐々に移行されてこられるわけですが、やっぱり大型液晶と言うのは高価だったと思うんです。

【濱野】
当時は、たいへん高いものだったですね。もうひとつは、液晶の対応スピードが遅いんですよ。今は材質がよくなっていますが、この頃はデューティーがせいぜい1/3くらいが精一杯でしたね。今は1/100くらいですが。それ以上早いスピードで動かすと線の跡を引いちゃって、ゲームとして成り立たなかったというところも苦労しましたねぇ。

【寺町】
(パンフレットを見ながら)あ、スペーツクォーツですね。これは友人が持っていました。

【濱野】
一番ゲーム内容がわかりやすいというのもあるね。シューティング6か、これはつまんなかったな(笑)。無理やり練習モードなんかつけたし。

【寺町】
速度は大きいと思うんですが、その他で、これはFL、これは液晶という区分けはどこでされたのでしょうか?

【濱野】
面展開できるか、線展開できるか・・・。さっきみたいにスクロールできるものはいいんだけれど、なんと言うのか、面と線という考え方でね、面で行かなければならないのが液晶で、線で行くのが蛍光表示管で。なんといってもゲームエリアが小さいんです。これ大きく見えますけれど、実際は60mm×17mm(縦)くらいの小さなサイズで、これをレンズで拡大しているんですね。液晶の方はそうじゃなくて、面積的にはこのサイズのものがとれるわけです。それがひとつ。
あと、カラーで表示しなければわからないものは蛍光表示管です。後の方では液晶でもカラー化が伸びたので、それから後は蛍光表示管ではあまりやっていないんじゃないですかね。


蛍光管と液晶の展開の違い
左・・・見えているのは全体の一部。 ダイナミックにスクロールするトロン
右・・・シミュレーションゲームのように静的な展開、部分的なアニメ
ウォッチマン・ゴルフ


【寺町】
液晶と言えばウォッチマンですが、代名詞と言えばゴルフですね。とても完成度が高かったように思います。

【濱野】
この頃はプログラミングを時計用のICを使って組んでいるんですよ。マイコンを使っていないんですよ。だからその辺りのソフト組みには苦労しましたね。このボーリングなんかはね、実際のゲームに即したようなスコアが出るようにしているんです。いろいろ細かい中に。

【寺町】
この直後、カシオさんなんかもゲーム電卓を発売されたりと。影響を与えたということでは、おもちゃ業界としてはエポックメイキング的なところがあると、先ほどうかがいました。

【濱野】
そういう形で言えば、先ほどの蛍光表示管だって同じように技術貢献しているんですよ。NECなんか自動車の中やビデオデッキの中で蛍光表示管を使っているんですけれども、ほんとうに初期の、カラー化の立ち上がりのところで、おもちゃ、我々がどの程度貢献したかわからないですよ。今は鼻にもかけられない状態になってきていますけれど(笑)。

 液晶もそうですよ。初期の段階では彼らは数字のセグメントを描くのが精一杯だった。キャラクターの細かい線でね、引き回しの線をいかに通して描くかというところで、相当勉強したんじゃないですか。キャラクターを表現するというところで印刷技術だとか。
 先ほどのデューティーの問題でね、軌跡が残ってしまう問題を、対応速度向上でいかに解決していくかという部分でね、材質の研究なんかもね。セブンセグメントでやっている頃には、そういうところはほとんど問題にならなかったんですよね。

【寺町】
うんうん、そうですよね。

【濱野】
それをね、これだけのキャラクターをスムーズに動かしていくという点でね。そうとう勉強されましたよね。

【寺町】
だから、技術的にはそうとうすごいことをやっている・・・

【濱野】
そうです。”その頃”はね(笑)。

【寺町】
技術的にはすごいことをやっていらっしゃっても、値段設定と凝りすぎるってことでうまくいかないということも。

【濱野】
そうそう、そうなんですよ。

【寺町】
ただ、そういったこだわりが後続ゲーム機に引き継がれているというか。

【濱野】
影響を与えているというね。ただ、うちの商売に結びつくかどうかという(笑)。

【寺町】
うーん・・・。

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