浜野氏

FLゲーム編:一番気合が入った「スクランブル」

【寺町】
トミーさんのゲームというのは、他社もいろいろ出していた中、ちゃんと移植物にしても版権をとられていたりするわけですが、どうでしょう、他社に比べてこれはこだわっていた、抜きに出ていたということなどありましたでしょうか?

【濱野】
ひとつはカラー化に関してはかなり早くから手がけていましたね。NECの蛍光表示管、工場が九州にあるんですが、そちらの方に出張しましてね、初期の段階から、NEC自身がカラー化していない時から我々といっしょに研究していました。だから色の発色についてはそうとうやってましたよ。

【寺町】
うんうん、美しいですよねえ。

【濱野】
それだけに、色をどう活かしていくかというビジュアル的な面がひとつですね。
それと、やはりゲームはやっていて面白くなければいけないんでね、そのあたりのストーリー性ですね。

【寺町】
ああ、その具現化がまさにFLスクランブルかと。トミーゲーム図鑑へ

このスクランブルというのは、まずスクロールを蛍光管で実現していること、多色表示で、オリジナルに近い内容やサウンド、また重ねあわせが出来ないFLで実に巧みなパターンでそれを実現し、さらにとどめと言わんばかりに、トミー独自のボスキャラの設定ということで、私は当時からすごいなあと思っていました。

【濱野】
そうですね。状況設定をいろいろですね。せっかく版権をとってやるからには、できるだけスクランブル本物に近いものをやりたかったし。それと限られた画素数の中でいかに変化にとんだ画面を出すかと言う点については、これが一番うまくいったんじゃないかな。

スクランブル

スクランブル
(1982年)

グラディウスの原点としても知られる
コナミの横スクロールシューティングゲーム
アーケード版ではただの的に過ぎないBASEが
トミー版では巨大要塞として立ちはだかる

【寺町】
これを皮切りに横スクロールFLゲームはたくさんでてくるんですけれど、個人的には、完成度でこのスクランブルを超えたものはないんじゃないかと思います。

【濱野】
たしかにいろいろありますけれど、僕も一番傑作だと思いますね。ストーリーから画面構成、基本的にパターンだとか絵柄だとかすべてやりましたね。一番気合が入っていた頃じゃないかな。売上も多かったしね。

【寺町】
逆に、当時問屋さん側から、巷のゲームではなく、もっとオリジナルのものを出してくれといったリクエストなどはなかったでしょうか?

というのはですね、ファミコンが発売される際に問屋筋から、”ゲームセンターで50円、100円で遊べる物をわざわざ家庭で出すことはないだろう”、といった話を小耳にはさんだことがあるんです。

【濱野】
それはなかったですね。
ただ、うちの方が逆に版権だとかロイヤリティを払うのからいって、できるだけオリジナルなものを入れていきたい、ということでチャレンジはしましたけれどね。 おもちゃ屋の方はその方が操作手順を店頭で説明しなくていいんですよ。子ども達がみんな知っているということで。全然知らないオリジナルだと、遊び方から一応説明してあげなくちゃならないわずらしさがありますからね。宣伝しなくても売れるし。

Hint de Pint
NEXT:あのゲームのこんな裏話NEXT

|目次| | | | | | | | | | | 10|トミーLSIゲーム図鑑| top top Back to ENTRANCE HALL