浜野氏

3-D立体グラフィックゲーム編:電子ゲームでバーチャル体験

【寺町】
ところで蛍光管の方ですが、こちらはスクランブルの頃が技術的にもピークだったんでしょうか?

【濱野】
いや、もうひとつこの後に、技術的に最高なものをやったんです。両面が見えるようになったんです。エイリアンチェイスですね。この1〜2年後ですね。これも蛍光表示管としては画期的なものになりました。液晶は当然こういうことは考えられない。

ALIENCHASE

エイリアンチェイス
(1983年)

全く同じスクリーンを裏と表から鏡面でのぞむアクションゲーム
2人プレイが主体
宇宙空間にうかぶ異星人を 1人でも多く早く自分の基地に連れ込む
のだが、中央の宇宙船やビーム砲が常に邪魔をする
ほぼ同時期、バンダイからも同じ鏡面FLゲームが発売されている

【寺町】
この原理は?

【濱野】
うん、これはもちろんうちだけじゃなく、電機屋さんの方が相当苦労されたんですが。
後ろ側に通っていた電極のパネルが、今まで銀だったものが透明で印刷できるようになったんです。両側に透けて見えるということで、このままのひっくり返って裏側から覗(のぞ)いた映像になるというわけです。2つ入れているわけじゃないんです。

【寺町】
これも画期的なものですねえ。

【濱野】
画期的というものでは、液晶の方でカラーの後、立体をやったんです。
【寺町】
ああ!あれですね。立体グラフィックシリーズ!

temp

3D立体グラフィックゲーム
「宇宙壮絶戦車戦」(イメージ)
(1983年)

左右に操作ボタンがついた双眼鏡ボディをのぞくと
視差を利用した奥行きのあるゲーム空間が出現する
トロンをイメージしたような「宇宙壮絶戦車戦」や
映画3Dジョーズの公開にあわせた同名ゲームも登場
分解すると地獄を見る(^^;

【寺町】
こちらはやはり、テレビゲームと異なる、あれでは不可能な土壌のものとしての企画が念頭にあったわけなんでしょうか?
【濱野】
ありましたよ。それが当然あったわけですよね、特にポータビリティというところでね。どこにでも持っていって遊べるという面でね。ええと、これは1983年の夏に出していますね。これはオリジナルのもので、こういうものを出してみたいというところからよくできたものだと。

【寺町】
発想の出発点はどこなんでしょう?

【濱野】
ディズニーランドで売っている立体写真が見えるおもちゃがあるんです。円盤をいれてカチャンカチャンと回すと立体の絵が見えるという。この中でなんとかゲームができないものか、といろいろ考えたんです。左右別々の目で見るということは、これ液晶で見せればいいんじゃないかと思いまして。 同じ画面の左右視差を左右同時にコントロールすると立体視できる。なんというんですかね、技術者の研究開発したという成果が盛り込まれたあらわれかと思います。

【寺町】
へええ

【濱野】
液晶ではモノクロ⇒カラー⇒立体と来て、その次にステレオサウンドに取り組んだんです。覗きながら、今度は音の方もステレオにして。画面左から複葉機が消えていくと、頭の後ろを「ブゥーン」という音が通って、その音にあわせて右から出てくるという。今で言うバーチャルリアリティの走りじゃないかと思いますね。

temp

立体グラフィックゲーム・ステレオサウンド3D
(1984年)
DOG FIGHTの概念

複葉機の白い部分の動きは
左右のスピーカーから発せられたSEの
フェードイン←→アウトで 表現されている

【寺町】
うわー!そうですね。
調べていくと、84年から各社、ファミコンにないものを模索したんじゃないのかな?という製品が多かったんです。フィッシングとか、ボディをゆらすスキーですとか。これは、85年からのセガ体感ゲームに連なるものがあるんですね。テレビゲームにないものを、といった部分を模索した結果と言うところで。
ところが、こちらはそれをすっとばして、現在トレンドのバーチャルといったレベルに行ってしまっている!

【濱野】
先取りという感じですよね。

Hint de Pint
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