浜野氏

2006年のあとがき

ホームロボットが本当の意味で脚光を浴びるのはAIBO出現の頃だろうか。調べるとこれが1999年。2003年のアトム誕生祭日あたりをピークに、近年は介護や警備など実用的な分野が脚光を浴びている。2005年の愛・地球博のTOYOTA館しかり、今やロボットは次世代産業の最右翼として世界的な注目を浴びているのはご存知の通り。しかし、90年前期という時代は、デジタルもアナログもまったく中途半端だった頃で、当時は濱野氏のこの予想をどう書けば納得してもらえるやら?!と当時は真剣に悩んだものだ。

 もっとも、こうした濱野氏の慧眼は実はそれほど驚くべきことではないかもしれない。ファミコンぴゅう太の正体が最先端のコンピュータだったように、そもそも玩具屋というのは、昔から先端技術をおもちゃに転用してきた歴史を持つのだから。
バンダイスポーツゲーム2種
パワーフィッシング/
ハイパースキー
(バンダイ・1984年)
キー操作から脱皮を試みた
アウトドア思想のLSIゲーム
 この企画を立てた頃は、バーチャルという言葉がにわかに注目されてきていた時代で、私は記事内で、こうした試みも実は玩具業界がとっくの昔から取り組んでいるという仮説を展開しようとしていた。たとえば傾きを感知するハイパースキー(バンダイ・1984年)、リール型の魚つり電子ゲーム・パワーフィッシング(同1984年)。また、LSIゲームではなかったが、1987年のセガ,、ハングオンは、そのペダルセンサーのアイデアが実車でも採用されたらしいという。これらはすべてファミコンの反作用というか、家庭用テレビゲームでは味わえない楽しさを追求している過程に生まれた要素だと言う節につなげようとしていた。反ファミコンも捨てたもんじゃないぜ、と。どう?なかなか屈折しているでしょ?(^^

まあ、体感ゲームはともかく、ブリキロボットに革命的な円運動を取り込みむなど、トミーの新技術開発への取り組みは昔から内外に高い評価を得てきたという。本文の電子ゲームに限らず、ゾイドオムニボットアームトロンから空気圧カーなど、技術が内容をつくっている製品が多いのだ。
その一方、ここに紹介してきた電子ゲーム類が、未だ大した評価を与えられていないのは「技術的ポイントや訴求ポイントがちゃんと伝えられていなかった」(濱野氏)という、ソフトの弱さ、戦略の弱さという点が無視できない。バーチャルボーイが発表された時、3-Dグラフィックゲームとの類似性をうたった記事を見なかったのがその格好の例ではないだろうか。
原 秀則氏や小松左京氏が使ったぴゅう太でパソコンの楽しさを学んだと言う人ってのはいるだろう。「僕の考えたゾイド」をトミーに投稿した小学生の中にはデザイナーの道に進んだ人もいるかもしれない。トミカファン、プラレールファンの話は時折耳に入ってくる。しかし、我々が大人になった今、トミーのLSIゲームに人生を揺さぶられた人間ってのは果たしてどれだけいるものだろうか?当時の濱野氏の投げかけはどれだけ届いたのか・・・インタビューをまとめつつ、考えたのはそんなことだ。そこで、後半のトミー電子ゲーム図鑑には、筆者自身はどんな感銘を受けたのか、という内容も織り交ぜてみた。
考えてみれば、ODYSSEYは過去をいったん経由してふたたび未来へUターンベクトルを描くという趣旨だったはず。インタビューに思いをはせているだけではつまらない。今回かなわなかった濱野氏との面談がもしいつか実現するならば、今度はまず我々世代が、トミーの投げかけに何をつかんだのかを報告することが大切なんじゃないか。そんな風に思うのだ。そういうわけで、トミー電子ゲームに人生を狂わされた、もとい(^^;、おかげでこんな道に進んだという方がおられましたら、ぜひご一報ください。精進したいと思いますので。 。

 

 近年のトミーは、黒ひゲイ危機一髪新世代ZOIDSなどで話題を振りまくも、日経によると2006年3月期の連結経常利益は大きくダウン。少子化の影響がもろ影響しており、ちょっと元気が無い印象。実車チョロQやバウリンガルを生み出したタカラとの合併はさらなるユニークな商品を生む可能性を秘める一方、革新的なアイデアと反比例するような利益率の低さをよく知っているだけに、大丈夫かな?という不安も立つのだ。
 そんな中、WBSでも報じられた2,500円のラジコン飛行機「TOMITECHエアロアールシー」は、久々に心ゆさぶられた快作。聞けばこれ、モーターから電池からすべて独自開発とのこと。TOMITECHのブランドは、かつてのLSIゲームに冠せられたTOMYTRONICSを髣髴させるようでかっこいい。ま、ターゲットが30代〜40代というのは業界全体の傾向であれなんだが、願わくば、これで勢いでもつけて、また大人がしかめっ面するくらいのハイテクおもちゃをガンガンリリースしていただきたい。それは我々世代のようにゲームじゃないかもしれないけれど・・・。

いや、どうせなら究極のゲームつくってくださいな。 トミー魂あふれるとんでもないやつを!


NEXT:Thanks/参考文献NEXT

|目次| | | | | | | | | | | 10|トミーLSIゲーム図鑑| top top Back to ENTRANCE HALL