浜野氏

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パックマン・トミーFL濱野氏インタビュー付録:トミーLSIゲームスカタログ

ミサイル遊撃作戦

 知られざるエミックス

bambino 1980年代初頭、いかにも海外産バリバリという電子ゲームブランドがアメリカから上陸した。その名はBAMBINO(バンビーノ)。「子ども」という社名のわりに内容はどれも難しく、CFのキャラが(当時の)亀有の両さんだったりと、お子様が寄り付きにくい高い雰囲気を漂わせていた。
 だもんで、友達の家では遊んだものの、自分自身は敬遠しがちだったバンビーノ。時が過ぎ、浅草のおもちゃ屋でRACE'N"CHASEと再会。説明書に住所は相模原とあってひっくり返ったが、近年、BAMBINOとはただのブランド名で(社名でもあったのだが)、その実はエミックス株式会社という、あのトミーのミサイル遊撃作戦を下請けで作ったメーカーだと知ったときは、さすがに全身しびれる感銘に打ち震えてしまった。超傑作スペースレーザーファイトとミサイル遊撃作戦。昔ODYSSEYにメーカーが違うけれど、どちらも美しいフォルムを持つ傑作と書いていた2作が本当の兄弟だったなんて!

バンビーノ電子ゲームの特徴は、そのドリーミーな流線型ボディ。造形大の魚住教授が手がけたと言うそのデザインは、SF映画に出てくるような色彩にあふれ(ていうか、M/600などのミニコンが本当にこういう色だったのだ)。だけど、スタジアムを想起させるワイドなバスケットボールなど、遊び心を併せ持たせたボディは現在のデザイン家電などと比べても遜色が無い。

こういう意識の高いデザイン性というものが当時のTEGスペースアタック、ひいてはトミーの全電子ゲームには欠けていたわけだ。

トミーはFLパックマンでも営業がデザインにぶーたれていたというから(⇒本文4p)、子供の夢というものを本当に理解できていなかったんだと呆れてしまう。もっともこれがウォッチマンデジプロ(1982年頃)からひれ伏してしまうほどクールになっちゃうんだけどね。(^^

LEDなんて安いものは使わない。蛍光管のプロだったエミックス社のディスプレイはもちろん精細なFL。チップも従来の電卓LSIの流用ではなく、エミックスブランドのカスタムマイコン(その名もEMIX-501!!)が搭載されており、音も動きもじつに艶やか。さらに説明書には製品ごとのパテントまで表記されていたのだが、そういう仕様はコストもかさむ。価格はどれも1万円にとどくようなものばかり。電子ゲームが完全に子供のおもちゃになり、低価格機が主軸になると、バンビーノは市場から姿を消すこととなる。

その後、エミックス社は、本業のデジトロン応用製品に回帰したか、これはまったくの予想なんだけど・・・、ひょっとして学研電子ゲームのOEMを受けて、LSIインベーダー/1000/2000あたりを作っていたんじゃないかと思う。オレンジが際立つインベーダー2000のとんがり具合、あれ、どうみてもバンビーノソウルだと思うんだけどなあ?

最後にもうひとつ。このミサイル遊撃作戦は、海外ではUFO MASTER BLASTERとして発売され、CESなどで絶賛を浴びたそうだが、降下するUFOを遊撃するというそのゲーム内容は、実はそれより1年ほど前に発売された、MATTELE社のSPACE ALERTとほぼ同じだったりする。つまり内容は既製品のマネだったりするんだけど、より洗練された製品を開発し乗っ取っちゃう、というのは、日本人お得意の加工貿易を体現するようでおもしろい。DNAというか、こういう黎明期の電子ゲームにもそういう脈々としたものを見ることができるわけだ。
とはいえ、”本当はどっちが先か?”と突き詰めていくと、PONGODYSSEYの関係のように、あんがい微妙なものだったりするかもしれないんだけれど。

 

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