2003年の印象的な舞台 

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今年は,大バレエ団が来日すると仕事が忙しくなる年でした。おかげでパリ・オペラ座もキーロフ・バレエも1回ずつしか見られませんでしたが・・・世間の評判からすると,これを見逃したら大損というほどではなかったようなので,口惜しがるほどではなかったかな。

見た舞台は43回。毎年のことながら,新国立劇場バレエ団を16回というのは多すぎるとは思いますが・・・でも,そうなっちゃうんだもんね。あはは。
そうなっちゃう原因の小嶋直也は,学校公演のパートナーで出たようなモノまで合わせると15回。ルジマトフは7回見ました。

 

心に残る舞台ベスト5

マノン 11月3日 新国立劇場バレエ団 オスタ,マトヴィエンコ,小嶋 この日のレスコーのことは,たぶんずっと忘れないと思います。
海賊 2月1日 レニングラード国立バレエ ペレン,シェミウノフ,ルジマトフ,クチュルク,ミハリョフ うん,やっぱり,ルジマトフのアリは特別だし,アリを踊るルジマトフは特別なのよ。
『スペードの女王』より 4月12日 「ローラン・プティ・グラン・ガラ」 リエパ,ツィスカリーゼ この二人でなければ踊れない作品だと思いました。全幕で是非見たい。
『ジゼル』第2幕より 2月
15・16日
「バレエの美神」 ハート,ルジマトフ 愛が溢れてアルブレヒトを包み込むジゼル。至芸と言うべきではないでしょうか。
ジゼル 5月3日 松山バレエ団 森下,清水 優しさが心の中に染み込んでくるジゼル。これもまた至芸ではないか,と。

初めて見た作品で印象に残るのは,なんといっても上記の『スペードの女王』。それから,世界バレエフェステュバルで見たノイマイヤー版『シルヴィア』とキリアンの『優しい嘘』。いずれも抜粋でなく全部見たいわ〜,と思いました。
全幕作品では「おお♪」はなかったですが・・・そもそも初めて見た作品というのがあまりなかったせいもあるかもしれません。

と考えているうちに思ったのですが・・・今年はガラの年だったような気もします。
世界バレエフェスティバルは例によって玉石混交の顔見世興行でしたが,「玉がけっこうある」という意味ではやはり楽しめる公演でした。そもそも,顔見世興行という行事自体に意味がありますもんね。で,違う招聘元の顔見世興行が「バレエの美神」。こちらのほうがプログラムが単一で得意演目が並んだ分ハズレが少なくてよかったような気がしますが・・・まあ,ルジマトフが出ていたからそう思えるだけかもしれませんねー。
公演として面白かったのは,ローラン・プティ・グラン・ガラとヌレエフ・フェスティバル。コンセプトがしっかりしていて興味深く見ることができました。
あ,そう言えば,一番盛り下がった公演も新国立劇場のガラ「THE CHIC」でありました。(だいたいアレを「ガラ」と呼んでいいのかは疑問ですわ。「バレエ・コンサート」くらいにしておいたほうが・・・)

見逃して残念だったのは,まず宮内/小嶋の『パキータ』。それから,パリ・オペラ座『ラ・バヤデール』とキーロフ『ロミオとジュリエット』。マラーホフの『くるみ割り人形』もできれば見てみたかったです。
別な意味で見てみたかったのは,パヴレンコ/コルスンツェフの『白鳥の湖』。二転三転したキャストはさておき,パヴレンコってあちこちのサイトや掲示板でおっそろしく評価が低いですよね。海外のサイトを見ているとザハロワやヴィシニョーワよりいいという方もけっこういる感じで,『ラ・バヤデール』で英ロイヤル客演までしているのに不思議だなー? と気になってしかたありませんのです。

 

印象的だったダンサーについて

主演
(女性)
ディアナ・
ヴィシニョーワ
バレエの美神『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』は今まで見たバレリーナの中で最高と思えて,興奮しました。世界バレエフェスティバル(Aプロ)の『マノン』寝室のパ・ド・ドゥも,「是非全幕で」と思えるもの。キーロフでのジュリエットも見たかったなー。

次点は,三つの愛の物語『三人姉妹』のシルヴィ・ギエム

主演
(男性)
ニコライ・
ツィスカリーゼ
ローラン・プティ・グラン・ガラ『スペードの女王』の迫力。すごかった。すばらしかった。また見たい。是非見たい。

次点は,ヌレエフ・フェスティバル『アポロ』のローラン・イレール

助演
(女性)
坂西麻美 牧阿佐美バレエ団『眠れる森の美女』でのリラの精がとてもすてきでした。今まで見た日本人バレリーナのリラの中で一番好き。

次点は,レニングラード国立バレエ『ドン・キホーテ』森の女王のオクサーナ・シェスタコワ

助演
(男性)
アンソニー・
ダウエル
三つの愛の物語『三人姉妹』クルイギンと『マルグリットとアルマン』でのアルマンの父。これはもう,ご覧になった方はきっと皆さん同感してくださいますよね。

次点は,ヌレエフ・フェスティバル『ムーア人のパヴァーヌ』のシャルル・ジュド(イアーゴ)

新人
(女性)
ナターリア・
ソログープ
キーロフ・バレエ『シンデレラ』での柔らかで伸びやかな踊りが印象的。もうちょっと華が出るととってもすてきなプリマになるんじゃないかなー。

次点は,牧阿佐美バレエ団の橘るみ(『眠れる森の美女』のダイアモンドの精

新人
(男性)
アルタンフヤグ・
ドゥガラー
『デューク・エリントン・バレエ』で惚れました。(ココとかココとか) 初演で小嶋直也が踊ったパートなのに「いいねえ♪」と思えたというのは,私の場合異例でしょ? 

次点は,レニングラード国立バレエのアルチョム・プハチョフ(『白鳥の湖』主演)

 

ファルフ・ルジマトフについて

レニングラード国立との『海賊』,「バレエの美神」でのハートとの『ジゼル』,ヌレエフ・フェスティバルでの『ムーア人のパヴァーヌ』,レニングラード国立『ドン・キホーテ』と見ましたが・・・私にとっては,『海賊』が断然印象に残ります。

見にいくまでは「今さらアリを踊らなくてもよかろうに・・・」と首を傾げ,「仕事とはいえ気の毒に・・・」とさえ思っていたのですが,いやいや,たいへん失礼をいたしました。彼が成算なしの舞台を見せるはずがないですよね。はい,それはもうすばらしかったです。
テクニック自慢の若いダンサーがガラで披露するためにあるようなこの役に,精神性や官能性を持ち込んでああいう風に踊れるダンサーは彼しかいないと思いますし,それをまた見たいと観客が思うのは当然だし,それに応えて若いころとまた趣の違った美しい舞台姿を見せることができる・・・。スゴイ人だなー,と改めて思いました。

キーロフ公演への不参加は残念というか心配でしたが,実は私,仕事の関係で,彼がキャスティングされていた日は全部無理だったの。だから,傷は浅いというか,ほとんどショックはないというか・・・。(ほかのファンの方には,なんとなく申し訳ない)

 

小嶋直也について

最初の『ラ・バヤデール』こそ挨拶に窮するような「ありゃりゃ」続出の舞台でしたが,あとは全部よかったです。
再演の全幕作品を見る度に「おお,前回より演技が上達しているな〜」と感心。(この点ではソロル役も例外ではない)
私は彼が日本人だから応援しているというようなことではなくて(そもそも,ファンがダンサーを「応援する」という発想自体に違和感がある。いや,「じゃあ応援していないのか?」と問い詰められると困るけどー),気に入ったダンサーがたまたま日本で踊っている人だったのですが・・・近所(?)で踊っているダンサーのファンになって幸せだったな〜,だんだん立派になっていくのを目の当たりにできるものね〜,という思いに浸った年ではありました。

一番印象に残るのは,『マノン』での初役のレスコー。
なにしろ上演すると知った瞬間から勝手にキャスティングしてあれこれ妄想していたのです。実際に舞台の上に現れたレスコーは期待していたものとは全然違いましたし,「もうちょっと・・・」の部分もあるとは思うのですが,でも,「いとおしい」という種類の感情をかきたてられてしまって・・・とうてい忘れられそうにありません。
公演前は新国立劇場バレエ団が『マノン』を上演すること自体について懐疑的でしたし,公演が成功を収めた今でも手放しで絶賛して再演を望む心境ではないのですが(だって,再演のときもゲストをたくさん呼ばなきゃいい上演にならないと思うもん。特にデ・グリューに関してはすごく悲観的),最終日のレスコーを思い出すたびに,とにかく上演してくれてありがとうっ,なんとかまた彼のレスコーを見せてねっっ,と意見を翻したくなってしまいますよ。

最近は突如として休演するのが玉に瑕ですが,まあ,そろそろベテランの入り口くらいに来てますもんね。膝を大事にして長く踊ってくださいね〜。

(04.1.2)

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