デューク・エリントン・バレエ(牧阿佐美バレエ団)

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03年8月31日(日)

オーチャードホール

 

演出・振付:ローラン・プティ

音楽:デューク・エリントン

装置:ジャン=ミッシェル・ヴィルモット

衣装:森英恵, ゼニア・スポーツ(ゼニア・ジャパン株式会社), アルビエロ・マルティニ

 

01年に続く2度目の上演。

ゲストは立派(というか知名度のあるダンサー)になりましたが,舞台が狭くなったため迫力や面白さが減った感があり,残念でした。まあ,「オーチャード・バレエ」だからしかたないことですけれど。

個人的には,初演のときのほうが楽しかったです。もちろん小嶋直也の降板というコトもありますが,他にもダンサーの退団や休演が相次ぎ,「ダンサーの個性を生かしていてうまいわ〜」という初演のときの魅力が多少失われたせいもあると思います。

どういう感じの踊りなのかは,初演のときの感想からの流用が多いです。

 

《第1幕》

1 The Opener

ジェレミー・ベランガール

初演で小嶋直也が踊ったときはですねー,「軽くてキレのいいテクニックとリズム感を見せながら,おちゃらけた動きもあるダンス」だと思いました。

で,その刷込みは強烈で,今回は「走るのが遅いっ(←冒頭で舞台奥から前面まで走ってくる)」に始まって,「脚をもっとちゃんと伸ばしてっ」,「動きがヌルいっ」,「なぜココで跳ばないっ(←振付を難しすぎないものに変えたのだと思われます)」,「くにゃくにゃ歩くなっ。しゃきっとせいっ」等々と,踊っている間中悪態つきまくり。拒絶反応出まくり。
ああ,もう,とってもとってもイライラしたわぁ。

が,しかし,音楽の表現(ジャズっぽく踊る)という意味では,今回のベランガールの,完全にパを崩した踊り方のほうが優れているのかもしれません。

 

2 In a Sentimental Mood / Mr. Gentle and Mr. Cool

金澤千稲, 坂西麻美, 平塚由紀子, 佐藤朱実, 橋本尚美, 館野若葉, 橘るみ, 吉岡まな美, 山井絵里奈, 小橋美矢子, 笠井裕子, 柄本奈美, 加藤裕美, 坂梨仁美, 山中真紀子, 青山季可

菊地研

相羽源氏, 逸見智彦, 塚田渉, 秋山聡, 保坂アントン慶, 伊藤隆仁, 京當侑一籠, 武藤顕三, 徳永太一, 今勇也, 阿南誠, 中島哲也, 高橋章, 中村一哉, 芝崎健太, 和泉沢信行

16組のカップルによる場面。女性はピンク(桃色)のミニドレス。男性は,白のTシャツに縦縞のチョッキ,縦縞のスボン。

えー,最初で盛り下がったせいか,全然乗れませんでした。
全体に,おしゃれな感じが足りなかったような。

初演のときは,途中で小嶋直也が,最後に菊地研が短いソロを踊りましたが,今回は両方を菊地が担当。

 

3 Don’t Get Around Much Anymore

ルシア・ラカッラ, バンジャマン・ペッシュ

ちょっとおしゃれで,リズミカルで,なかなか楽しいパ・ド・ドゥ。

・・・だと初演のときは思いましたし,今回もそうでないとは言いませんが,ほほー,踊る人が変わると印象が変わるものですねえ。
今回は,ラカッラのプロポーションと柔軟性が印象に残りました。もしかすると,多少振付を変えたのかしら?
ペッシュは,サポートが上手ですねー。しかし,流し目は効果的でないからやめたほうがいいのではないでしょーか?

全体の感じとしては,私は,初演のタルボット/佐藤のほうがユーモア感覚があって好きかな。

 

4 Solitude

上野水香

相羽源氏, 逸見智彦, 秋山聡, 保坂アントン慶, 伊藤隆仁, 京當侑一籠, 武藤顕三, 徳永太一, 今勇也, 菊地研, 阿南誠, 中島哲也, 高橋章, 中村一哉, 芝崎健太, 和泉沢信行

バレエのレッスン場のバーを思わせる長い棒を縦横に動かす男性コールドとともに,白系の総タイツで踊るソロ。

上野水香は,初演のときほど魅力的には見えませんでした。
2週連続の公演で疲れていたのかもしれませんが・・・たぶん,初演のときはプロポーションとか清楚でコケティッシュという「素材の魅力」だけでこちらが感心していて,しかし,今回は素材ではより上のラカッラがいるので・・・というコトなのかなー,と思います。

踊り自体は,ただ踊るのではなく何かを表現しようとしていて,でも,まだそれに成功していない・・・そういう感じを受けました。
今後に期待。

 

5 Happy Go Lucky Local

ルイジ・ボニーノ, 塚田渉

ボクサー姿の2人の短い踊り。大きいダンサーとチャップリン・メイクで小柄なボニーノの対比が楽しい1曲。

塚田渉は,ボクサーというより関取のように見えなくもなかったですが(失礼ですみませんー),それが奏効して「悠揚迫らざる大人物」のような味わいがあり,ちょこまかしたボニーノとの対比になっていたのがよかったです。でも,初演の正木亮羽のほうが面白かったとは思うなー。

 

6 Come Sunday

ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス, ファビオ・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ, クリス・ジョブソン

哀調を帯びた音楽の中,「前世紀初頭,黒人たちは休息と自由を夢見る」というダンス。後ろの幕に3人の影が映るのですが,これが,踊りと同時進行だったり,違っていたりするのが,ちょっと幻想的。
ダンサーは,初演のときと一人変わりました。

黒人霊歌みたいな音楽で踊りもテーマをよく現していて感動的♪

 

7 Afrobossa

ルシア・ラカッラ, ジェレミー・ベランガール, バンジャマン・ペッシュ

今回の新たに加わった踊り。せっかく参加してもらったからこの3人にも一つ振り付けてみましょう,という感じでしょうか。軽い感じのダンスでした。
ラカッラは青(紫だったかも)の超〜ミニのワンピース。男性2人は黒の半そでTシャツに黒の短パン。

ラカッラはコケティッシュで美しくはあるのですが,ううむ,なんか・・・バービー人形みたいで私の好みではない感じでした。(いきいきとしてないというか・・・)
ベランガールとペッシュは,動きも軽く,テクニックも見せて,魅力的だったと思います。
ところで,プティ風のちょっとした動きはペッシュのほうが上手に見えるのに,全体としてはベランガールのほうがチャーミングに見えるのはなぜだろう?? いや,ペッシュも笑顔がかわいいんですけれど。

 

8 Hi-Fi Fo Foms  

アルタンフヤグ・ドゥガラー

相羽源氏, 逸見智彦, 塚田渉, 秋山聡, 保坂アントン慶, 京當侑一籠, 今勇也, 菊地研, 中島哲也, 和泉沢信行

アホくさくも楽しい「器械体操の場」

いや〜,ドゥガラーはかっこいいねえ♪

細身の身体だし,動きはきれいだし,やっぱり私の好みだわ〜。
小嶋直也の「面白くなさそうにやる」アプローチと違って,「張り切ってやる」風なのも若々しさが感じられて好もしく,しかも,コール・ドの中央に陣取る先輩ダンサーたちは今回も「面白くなさそう」風を通しているので,その対比も楽しかったです。

 

《第2幕》

9 Mood indigo / Dancers in love

ジェレミー・ベランガール

うううむ・・・初演のペパリーニに比べると全然つまらない・・・というか,たぶん踊れていないんじゃないかな・・・。

ベランガールは敢闘賞というか努力賞というか・・・。首を横に大きく突き出す振付などもこなしていて器用だなーと思いましたし,ピルエットで顔をつける角度をずらしていく技もアクセントをつけながら上手に見せていました。客席も沸いていましたが・・・でも,なんか物足りないのよ・・・。

ペパリーニが来られないのならカットしたほうがよかったんじゃないかなー?

 

10 Sophisticated Lady : Chelsea Bridge / Satin doll

ルシア・ラカッラ

ファビオ・ライムンド・デ・アルメイド・アラガオ, 塚田渉, 菊地研

すばらしかったです〜♪

そうかー,プティはこういう風に踊ってほしかったのね〜。いや,もしかすると(初演のタルボットには失礼ながら)ラカッラを頭に置いて振り付けたんじゃないのかしら〜,とさえ思いました。
それくらいはまっていたのよ。

最初の倦怠感溢れるソロも,タキシードの男性3人との恋の駆け引きも,3人とも振られて去ったあとにお酒をあおる孤独感がありながらユーモラスな場面も,初演のときはちょっと冗長かなー,と思いながら見たのが自分でも信じられないわ。
大人の女性の艶があって,しかも愛らしさがあるから全体のトーンが重くなりすぎなくて,それはもう見事。
う〜ん,堪能しました〜。

なお,菊地研は,歩き方を研究するように。気取って歩いているつもりなのでしょうが,チンピラみたいに見えるわよぉ。

 

11 Telecasters

バンジャマン・ペッシュ

初演のときは「Shakespeare」の中のパックの踊りとして上演されましたが,今回は,衣裳を肌色のタイツだけに変えて独立したソロとして踊られました。

ペッシュは上手できれいですが,私は菊地研のほうが好きです。特に,バレエ団の地方公演のときにソロとして踊られたときはとてもよかった。(感想はこちら
いくらゲストだとはいえ,あれだけ魅力的に踊れるダンサーがいるのに,なんだって他のダンサーに踊らせたんですかねえ?

 

12 It don’t mean a thing

ジェレミー・ベランガール

ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス, ファビオ・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ, クリス・ジョブソン, 相羽源氏, 逸見智彦, 塚田渉, 秋山聡, 保坂アントン慶, 伊藤隆仁, 京當侑一籠, 徳永太一, 今勇也, 菊地研, 中島哲也, 芝崎健太, 和泉沢信行

ダンサーが,歌いながら踊るという場。

珍しいから楽しいし,かっこいいから好きです。

 

13 Caravan

ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス, ファビオ・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ, クリス・ジョブソン, 相羽源氏, 逸見智彦, 塚田渉, 保坂アントン慶, 京當侑一籠, 徳永太一, 今勇也, 菊地研, 中島哲也, 高橋章, 和泉沢信行

男性ダンサーが,列を作ったり,円陣になって床に伏せたりする踊り。

これも好きです。
途中で短いソロを踊る逸見智彦が何かの技の最後にぐらつきましたが,そういうコトもこういう作品ならアクセントだわね〜,と思えます。

 

14  Cotton Tail 

上野水香,ルイジ・ボニーノ

楽しくチャーミングなパ・ド・ドゥ.黒のユニタードとチャップリン・メイク。

よかったです。

初演のときは,振付が,上野水香のかわいらしさ(こどもっぽさ)を強調しすぎているように思えて,好きになれませんでした。今回は,こどもっぽいのではなくて,チャーミングに見せているのだなー,とわかりましたし,そういう表現は上達していると思います。プティ独特の動きなども上手でよかったです。
ボニーノはもちろんうまい。

 

15 Ad Lib on Nippon 

草刈民代, アルタンフヤグ・ドゥガラー

相羽源氏, 逸見智彦, 塚田渉, 秋山聡, 保坂アントン慶, 武藤顕三, 徳永太一, 今勇也, 菊地研, 高橋章, 中島哲也, 芝崎健太, 和泉沢信行

これもたいへんよかったです。

赤い衣裳の草刈民代は美しいですし,貫禄もありました。初演からずっと踊っているから見せ方もうまく,楽しめました。最初はコール・ドにかしずかれながら踊るのですが,こういうときの女王様ぶりは彼女ならではだなー,と改めて感心。

途中からドゥガラーが登場してパートナーになりましたが,彼も非常によかった。
サポートが上手ですし,合間に一人でちょっと踊るところもきれいで伸びやか。(初演の正木亮羽に劣るのはお顔だけではないか,と)

最後にまたコール・ドが加わるのですが,側転やバック転を披露するダンサーもおり,そういうところも楽しかったです。

 

16 Kinda Dukish Rockin in Rhythm

ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス, ファビオ・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ, クリス・ジョブソン 

陽気な踊り。いかにもブラックピープルが踊るジャズだなー,という感じかな。

目先が変わって楽しめました。

 

17 Take the “A” Train  

ルシア・ラカッラ, 草刈民代, 上野水香

ルイジ・ボニーノ, ジェレミー・ベランガール, バンジャマン・ペッシュ, アルタンフヤグ・ドゥガラー

ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス, ファビオ・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ, クリス・ジョブソン

金澤千稲, 坂西麻美, 平塚由紀子, 佐藤朱実, 橋本尚美, 吉岡まな美, 小橋美矢子, 笠井裕子, 坂梨仁美, 青山季可

相羽源氏, 逸見智彦, 塚田渉, 保坂アントン慶, 京當侑一籠, 徳永太一, 今勇也, 菊地研, 中村一哉, 和泉沢信行, 

舞台の奥の赤いろうと状(?)のセットから自分をアピールしながらすべりおりる革(のような)上下の男性コール・ド。黒のミニのドレスに黒ストッキングの女性ダンサーが加わりひとしきり踊った後,中央奥からソリスト陣が加わってフィナーレ。

ダンサーが楽しそうに踊り,こちらも楽しくなれるダンス。

カーテンコールに続いてアンコールとしても踊られたのち,プティや三谷芸術監督も登場。さらに2回踊られました。最終日だから,特にサービスしてくれたのかしらん。
日本人ダンサーの中には「身体が歌っていない」というか,踊り自体は今ひとつノリがよくない方々もいましたし,それにつけても,なぜ日本のバレエ団にジャズを使った作品を作ったのか不審には思いますが・・・でも,楽しかったからいいわね。

 

(03.8.31)

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