マノン(新国立劇場バレエ団)

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振付: サー・ケネス・マクミラン
演出: モニカ・パーカー, パトリシア・ルアンヌ
監修: デボラ・マクミラン

音楽: ジュール・マスネ
編曲: レイトン・ルーカス, ヒルダ・ゴーント

指揮: バリー・ワーズワース
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団

舞台美術・衣裳: ニコラス・ジョージアディス
照明デザイン: 沢田祐二

  1日 2日・3日
マノン 酒井はな クレールマリ・オスタ
デ・グリュー ドミニク・ウォルシュ デニス・マトヴィエンコ
レスコー ロバート・テューズリー 小嶋直也
ムッシューG.M. ゲンナーディ・イリイン
レスコーの恋人 湯川麻美子
娼家のマダム 大塚礼子 豊川美恵子
看守 山本隆之 イルギス・ガリムーリン
物乞いのリーダー 吉本泰久
高級娼婦(1幕) 厚木三杏,西山裕子,大森結城,楠元郁子 厚木三杏,西山裕子,寺島ひろみ,真忠久美子
高級娼婦(2幕) 厚木三杏,西山裕子,大森結城,寺島ひろみ,楠元郁子 厚木三杏,西山裕子,大森結城,寺島ひろみ,真忠久美子
女優 西川貴子,鹿野沙絵子,真忠久美子,寺島ひろみ(1幕のみ) 西川貴子,鹿野沙絵子,楠元郁子,大森結城(1幕のみ)
娼婦 さいとう美帆,高橋有里,本島美和,岡村未央,沖田美延,工藤千枝,下拂桃子,杉崎泉,千歳美香子,中島郁美,難波美保,深沢祥子,大和雅美
紳士 奥田慎也/冨川祐樹/マイレン・トレウバエフ
イルギス・ガリムーリン,石井四郎,小笠原一真,市川透,貝川鐵夫 山本隆之,石井四郎,小笠原一真,市川透,貝川鐵夫
物乞いの少年・少女たち 江本拓,佐々木淳史,高木裕次,冨川直樹,中村 誠,西梶 勝,グリゴリー・バリノフ
今村恵,岸川章子,葛岡絵美,佐藤絵理,田中若子,キミホ・ハルバート
老紳士 内藤博
宿の女将 堀岡美香
ねすみ捕りの男 井口裕之
街の女たち 遠藤睦子,前田新奈,川村真樹,鶴谷美穂,丸尾孝子
兵士 市川透,奥田慎也,陳 秀介,マイレン・トレウバエフ,貝川鐵夫,佐々木淳史,澤田展生,高木裕次

 

03年11月1日(土)

新国立劇場

 

最終的には「まずまずよかったわね」と思いましたが,途中までは「うううむ・・・」と唸りっぱなしの舞台。

バレエ団が総力を上げた舞台なのはよくわかりました。
「この方がこれだけしか出演しないの?」があるのも,おそらく何人かがレスコーの恋人や乞食のリーダーなどを踊る準備をしていた中で一番いいキャストで通すことにしたからでしょうし,日によってガリムーリンか山本隆之が演技とサポートしかしない役で出演しているのもすごい気合だなー,と。

その結果,舞台全体としてはよかったと思います。踊りはもちろんですし,舞台のどこにいるダンサーも役に応じた場にふさわしい芝居をしていました。

でも・・・やはり雰囲気が出せていない,という感じはしました。
1幕と3幕は悪くなかったですが,2幕1場は・・・「高級娼家でのパーティー」には見えませんでした。乱痴気騒ぎになってないんだもの。全然猥雑じゃないんだもの。男性は,金持ちや身分の高い人々が破目を外して女を買いにきたようには見えない(日本人ダンサーだけでなく,ガリムーリンもトレウバエフも同じ印象)。女性は,娼婦に見えない。レスコーの愛人や高級娼婦の5人はともかく,大量のコール・ドが奥から走り出てきたときは,女子高の運動会かと思っちゃったわよ。(とほほ)

 

それでも,似合わないカツラをかぶらなければならないという不利の中で「よくぞここまで」とは感動しました。

特によかったのは,山本隆之の看守。端正な顔でうっすら笑うのがすごーく酷薄な印象。全然好色そうに見えないから,「女囚に奉仕させるのは職務上しなければならないこと」とでも心得ているふうで,うう,怖かったですー。
それから,彼の場合,「誰が見てもこんなおじさんはイヤっっ」ではないわけです,全然。流刑地の女囚の立場からすれば金も力もある色男なわけですから,以前のマノンであれば,喜んで靡いていたことでしょう。それをあれだけ拒絶するとはマノンもすっかり変わったのだなー,と思わせることができるわけで,優れたキャスティングですねー。

レスコーの恋人役の湯川麻美子も,とてもよかったです。大人の色気があって,享楽的でありながら,実はしっかりものの印象。(レスコーに貢いでいるばかりではなくて,ちゃんと貯金もしているに違いない)
芝居は上手でしたし,踊りも魅力的でした。
えー,ところで話がそれますが,「恋人」という訳には笑ってしまいましたよ。この役は,どう見ても「情婦」とか「愛人」ですよねえ。もっとも,この日の場合,馬車で到着した直後の10秒も続いたような気がするキスは恋人のように見えなくもなかったですが。

ムッシューGMのイリインは敢闘賞でしょうか。品格が足りないので表の世界(?)では権力者であろう人の怖さがなかったとは思いますが,かなり異常な趣味の好色なおじさんとしては実に見事でした〜。
(以前は,失礼ながら「この程度しか踊れなくても外国人ならソリストになれるのか」などと思ったこともありましたが)この方がこのバレエ団にいてよかったなー,と心から思います。演技も上達していると思いますし,存在感が出ましたわ。

幕での厚木三杏と西山裕子のけんかしながらの踊りなども楽しめましたし,全体としては,もし主役3人がいい踊りを見せてくれれば「周りもよかったしー」と喜べたと思います。

 

で,その主役ですが・・・

酒井はなは動きもポーズもきれいで,柔らかさもあり,踊り自体はとてもよかったです。登場シーンで舞台が明るくなるような華もありましたし,初演の大作の真ん中を踊って舞台を引っ張っていく力もありました。
ただ・・・きれいに踊っているだけで,マノンという人を表現できていなかったのではないかなー,とは思いました。

彼女はそもそも元気のよさが魅力的なバレリーナだと思いますから,妖艶とかコケティッシュではないだろうと予想していました。だから,自分の個性を打ち出したマノンを見せてくれれば,私は納得したと思います。でも,彼女は「妖艶」に果敢に挑戦して・・・そしてその挑戦は失敗に終わった・・・というのが私の印象です。

特に残念だったのは1幕。なんというか・・・女性らしさを出そうと意識しすぎて,一生懸命表情を出そうとしていて,そのために,普段の彼女ならもっと魅力的であったろう「恋の歓び」の2つのパ・ド・ドゥが無味乾燥なものになってしまった感じ。(もちろん,パートナーの急な交代のせいもあったとは思いますが)

3幕はよかったです。看守の餌食になるシーンは痛々しかったですし,そのあとうろたえるデ・グリューを引っ張るようにして決然と走り去るところは,これぞ彼女の真骨頂。沼地のパ・ド・ドゥは切迫感があり,ウォルシュの名演もあって,感動しました。(だから,終わったときはよい印象が残った)

 

デ・グリューのウォルシュはですねー,第一印象が非常に悪かったです。最初のソロが上手でなかったし,なんか世慣れた感じでまじめな神学生に見えなくて・・・。なので,そもそもレスコー役で招いたゲストだから(以前から踊っているとはいえ)デ・グリュー向きではないのだろうなー,しかたないわね,代役引き受けてくれたの感謝しなくちゃね,小柄なのに4日連続で踊って,これだけ上手にサポートしてくれてありがとう・・・と考えることにしました。

ずっとそういう気分で見ていたのですが・・・最後の沼地の場面がすばらしかったです。あれだけ難しそうなリフトの連続の中であれだけ悲痛な表現を見せてくれるなんて〜。すごい演技派だわ〜。と評価急上昇。カーテンコールでは熱い拍手を送りました。

 

一方最後まで「うううむ・・・」だったのがレスコー役のテューズリー。
踊りは下手ではないですが上手でもきれいでもないですし,サポートもあまりうまいとは思えない。芝居は「ま,初役だそうだからねえ」という感じ。雰囲気的には「一心に妹を思いやる兄」みたいで,うーむ,なんか違うと思うんですけどー?

4日連続かつ役替りの出演で大変だったのだろうとは思いますが,彼の場合ウォルシュと違って,最初からそのスケジュールで仕事を受けているわけですから,同情する気は起きません。
まあ,正直に言えば,(小嶋直也以外の)劇場のダンサーがこれくらいの舞台を見せてくれれば「まずまずよかった」と誉めそうな気もするのですが・・・でも,ゲストだと思うとねえ・・・。

あ,風采はよいと思いました。

 

というわけで,主役というのはこれほど舞台全体の印象を左右するのだなー,という当然のことを再認識し,また,ゲストはもっと慎重に選定して,その役で定評のある方を呼んでほしいものだなー,と改めて思った舞台でした。

(03.11.3)

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マノン(新国立劇場バレエ団)

03年11月2日(日)・3日(祝)

新国立劇場

 

よかったです〜。感動しました〜♪♪♪

よかったと思えた理由の第一は,マトヴィエンコのデ・グリュー。

何がよかったかというと,まず容姿がよかった。
細身の身体,長くて細い脚,金髪,そして少々情けないお顔立ち。必死になればなるほど情けない印象が強まって(←誉めてます),母性本能をたいへん刺激され,若くて一途で愚かな恋を応援したい気持ちになりました。
デ・グリューは田舎出の垢抜けない青年なんだから,(ダウエルを見てもわかるように)あまり美丈夫ではいかんのだよなー,マトヴィエンコの少々頼りない雰囲気は実にこの役にふさわしいなー,としみじみ感心したことでした。

もちろん容姿だけでなく,踊りも表現もよかったです。
デ・グリュー役については,ガラなどで見る寝室のパ・ド・ドゥや沼地のパ・ド・ドゥの印象からサポートがたいへんな役だと思い込んでいましたが,前日の舞台を見て,実はソロのほうが難物らしい,と思い至りました。そしてマトヴィエンコには,それを踊れるだけのテクニックがありました。
アラベスクを初めとするバランス技も回転も跳躍も,すべてマノンや自分たちをとりまく状況への想いを表すためにあるわけで,彼が踊ればデ・グリューの心情がそのまま観客に伝わってくるし,マノンにも伝わっただろうと思えます。

特にすばらしかったのは,2幕1場のパーティーでマノンと二人きりになったところで踊られたソロ。美しい動きがそのまま切羽詰ったデ・グリューの心情やマノンへの溢れる想いになっていて・・・贅沢な生活を謳歌して満足しきっているように見えたオスタのマノンが「やっぱりこの人を捨てられない」と思い直してしまうのにたいへん説得力がありました。(マノンも母性本能を刺激されたのかもしれませんねー)

それから,3幕で兵士たちに連れ去られたマノンを追っていく場面。跳躍しての回転に続くアラベスクが絶望と焦慮を表し,そして直後のシェネの勢い! 2日の日は(初役で体力配分に失敗したのでしょうか)ここでちょっとつまずいたのですが,それさえも,デ・グリューの必死さの表現になっているように感じられ,いっそう舞台に引き込まれました。

演技はひたすら情熱的。なにしろ,駆け落ちするとき,馬車に乗り込むやいなやマノンを抱きしめて覆い被さっちゃうんだからさー。(・o・)
場面が進むにつれて変化(デ・グリューの人間的成長というか・・・)があったほうが本当はもっといいのかもしれませんが・・・いえ,やっぱりそうは思わない。
ひたむきで,周りが全く見えなくなっている恋。たぶん,彼にとって最初で最後の恋。たぶん,生命を賭けた恋。だからこそ感動的。そう思います。

この一途で情熱的な雰囲気は,もしかすると,マトヴィエンコがまだ若く,今回が初役だったことから来たものだったのかもしれません。たぶん本当に貴重な舞台だったわけで,見られて幸運だったなー,と思います。
(まあ,同時に,これだけやれるんだから,初役以外の新国立の舞台ももう少し身を入れて準備してほしいもんだ,とも思いましたが)

 

マノンのオスタは,踊りはさほどきれいでなかったような気はしますが,演技がうまいし,可憐な容姿が役にぴったり。小柄なこともあってでしょうか,登場した瞬間「うわっ,かわいい」と思いました。

そして,彼女のマノンは,最初から自分の魅力,自分が男たちに引き起こすことができる反応を知っているように見えました。(たしか原作ではマノンは素行不良が原因で修道院に入れられる直前だったはず。その辺りを踏まえての役作りなのかしらん?)

だから,1幕2場でムッシューG.M.から豪華な毛皮のコートや輝く首飾りを与えられたときの反応も,そのモノ自体に夢中になるというよりは,「自分は男からこれだけの物質的利益を得られる」ということを実感して,その道を自分で選んだ感じ。
オスタは1幕1場でもこの場面の最初でも,かなりはっきりとG.M.を嫌がっている演技をしていたと思うのですが,だからこそ,レスコーも加えてのパ・ド・トロワで兄の指嗾を受けながら(それとも,兄と共謀しながら?)G.M.を誘惑し,じらしている様子が印象的でした。そして,部屋を出る前にはベッドに頭をもたせかけたりして,デ・グリューへの想いもちゃんと見せるのよね〜。

本来のマノンは,もっと単純で無邪気な人かもしれませんが・・・デ・グリューを愛していながらお金のために他の男に身を任せるという,こういうのもいいよねえ。

パーティーでのソロと客たちに囲まれての踊りは「これぞ妖婦」という輝きでしたし,間に出てくるデ・グリューへの「聞き分けがなくて困った人だわ」的な困惑もなるほどー。二人きりになったときも,最初はつれなくて,それなのに,デ・グリューの真情にほだされて彼を選んでしまったのね〜,それが最大の失敗だったのよね〜,と思いました。
(いや,「失敗」というのもなんですが・・・でも,そこまで見せてきた彼女のマノンを前提にしてみれば,やっぱりアレは失敗だよねえ。デ・グリューがイカサマもうまくできないような生活能力の欠如したお坊ちゃんでなくて,G.M.の留守中に密会するような生活に満足できるヒトだと丸くおさまったのになー,なんて思っちゃいましたよ)

3幕は,ちょっと元気がよすきたような気がします。看守の死体に対して唾を吐いたりする演技はやりすぎのような気もしたし・・・沼地のパ・ド・ドゥでの走り方が・・・。たぶん,切迫感を出すために,バレエ的でない動きをしていたのだとは思いますが・・・うーん・・・きれいではなかったなー。

でも,マトヴィエンコともども泣き笑いのような表情で踊っていて,ただ悲痛なだけでなくて「もう離れない」という気持ちが感じられて,感動しました。
(マトヴィエンコのリフトはもしかすると振付どおりできていないのかなー,なんて思いましたが,でも,それも感動的だったわ〜。なんというか・・・ここで,ガラのギエム/ル・リッシュみたいに力強く見事にパ・ド・ドゥ踊られたら,ちょっと違うような気がするわけよ)

 

小嶋直也のレスコーはですね・・・かわいらしくて少々困惑してしまいましたよ。
まあ,レスコーというのは,パーティーでの泥酔ぶりや死に際の情けなさからしてそんなに徹底した悪人ではないでしょうが,でも,凄みのあるゴロツキではあるとは思っていたわけです。
で,妖気漂うフロロの印象が新しいことでもあり,そのセンを期待していたら・・・いや〜ん,なんでこんなにかわいいの〜♪ というレスコーが登場したので,「果たしてこれでいいのだろーか?」とかなり悩んでしまいました。

特に2日は,1幕は悪事を企むそのそばからなんとも幸せそうな笑顔になるし,2幕は飲みすぎでふらふら〜,へらへら〜となっちゃって(←実にうまかった。デ・グリューが必死に訴えかけているのに,「全くモノの役に立たん」状態のところなんか名演だと思う),要するに,軽薄な馬鹿にしか見えない。
いや,それはもうチャーミングで,私としては「マノンよりよっぽど小悪魔だわ〜♪」などと埒もないことを思いつくくらい極上の気分にしてもらいましたが,客観的に見た場合どうなのか・・・と一応は考えるわけです。(こうして感想書かなくちゃならないしー)

で,結論としては,よいのだろうと思います。
彼は端正さと動きの軽さを身上とするダンサーなわけだから,芝居があまりやさぐれていては踊る場面との断絶が大きくなるばかり。今回のレスコーは踊りの端正さとのミスマッチはあったような気はしますが,踊りの軽さには実に合っていましたから。

3日は多少は悪そうな笑い方をするようになって,小悪党くらいにはなっていたかな。2幕での飲みっぷりも(芝居の基調は同じだと思うのですが)「これだけ無茶な飲み方をするのにはそれだけの背景があるのかも」という印象を与えるものになっていましたし,やはり2回踊ると違うものですね〜。

私としては,この日,マノンが登場した場面で,ざわめく周りの反応をよそに一人でテーブルのところにすわったままの姿に心打たれました。
終始手から離さなかったグラスもこのときだけはなくて,肩を落としてなんだか淋しげ。愛人が「ほら,あんたの妹さんが来てるわよ」と教えると,一瞬だけ振り向いて目をやって,すぐもとの姿勢に戻ってしまう。その姿は,自分がしたことは間違っていなかったと自分に言い聞かせているよう・・・。
うん,そうだよね,ただの軽薄な馬鹿ではないのよね,愚かではあっても,この人なりに自分もマノンも幸せになるために知恵を絞っていたのよね,と(また母性本能を刺激されて)涙が出そうなほど同情しました。

全体的には,芝居が上手になったのよね〜,という印象。3人の紳士の踊りに乱入するところなど,芝居と踊りの接ぎ目がない感じなのがすごいと思いますわ〜♪
難しそうなサポートもミスなくこなしていましたし,踊りは(2日の最初のソロを除いては)見事の一語。酔っ払っての踊りの見せ方(崩し方?)や恋人とのベタベタぶりなどに足りないところもあったとは思いますが,存在感もあって,初役の水準以上のレスコーだったのではないでしょうか。

 

そのほかのダンサーについては,(なにしろレスコーが2幕までほとんど終始舞台の上にいるので),あまり見ていなかったというのが正直なところなのですが・・・

湯川麻美子は連日の出演で余裕が出たのでしょうか,いっそう表情が自然な感じになって魅力的でした。
ただ,3日間見た印象として,リフトされているときに身体がもう少し伸びるともっときれいじゃないかなー,という気はしたのですが・・・まあ,テューズリーと小嶋直也のリフト技術のほうに問題があったのかもしれないですわね。

他の娼婦や紳士・客たちも自分の役を楽しんでいる感じがあってよかったです。(こちらが見慣れたせいもあるのかもしれませんが)最終日には違和感がほとんどなくて素直に舞台に集中することができました。

特筆すべきはこの両日は客(の一人)を踊った山本隆之でしょうか。
白いカツラが(似合うとまでは言わないが)おかしくないのがすばらしいですー。男装の娼婦(男娼?)を買ってお尻をなでるシーンなどもちゃんとそれらしい雰囲気があって感心しました。

看守のガリムーリンは・・・頬に綿を詰めていたのでしょうか,その努力の甲斐あっていつもほど「いい人」には見えませんでしたし,マノンを強姦するシーンは生々しさがあってよかったと思いますが,(小さな世界とはいえ女囚の生殺与奪の権利を握っているという)権力者の怖さみたいな感じが足りなかったかも。

そうそう,3幕の冒頭で登場する街の女たちは,踊れるバレリーナを揃えただけあって,とてもよかったです。船から下りてくる娼婦たちとの対比という意味でも,バレエらしいきちんとした踊り方が効果的でした。(←娼婦たちの踊りがバレエとしてよくないと言っているわけではないです。念のため)

それから,1幕の老紳士を踊った内藤博について
えーと・・・この役はマノンの最初の戦果(?)なわけで,かなり重要な役ではないかと思います。それで,見にいく前にキャストを知ってこの方が踊ると知ったときには,正直言って「?」と思いました。(石井四郎が踊るのだろうと思っていたし,それ以上に,そう言えばコール・ドにこういう名前があったなー,くらいの認識しかなかった)
実際に舞台で見た結果,特にうまいと思ったわけではないですが,特に問題もなくこの役を演じておりました。
だからどうした,と言われると困るのですが,せっかく初めて認識した方なので(よくわからないけれど,もしかすると初めての大役かもしれないし)一応書き留めておこうかなー,と。

 

全体としては,(おそらく)今回のレスコー役に向けて最近の出演をセーブしてきた小嶋直也がその甲斐あったと思える舞台を見せてくれて「♪」,さらにマトヴィエンコが感動的なデ・グリューだったので「♪♪」,オスタと周りもよかったので「♪♪♪」という感じ。

うん,私にとって長く印象に残るであろう舞台でしたわ〜。

(03.11.14)

 

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マノン

英国ロイヤルバレエ,ペニー,ダウエル,ウォール

※本家ロイヤルによる全幕映像。装置・衣裳は新国立と同じです。(というか,新国立がロイヤルから借りて上演)

Massenet: Manon

Massenet: Manon

Covent Garden Royal Opera House Orchestra Jules Massenet Richard Bonynge

※バレエ全曲のCD

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