実n次元数ベクトル空間の線形部分空間・部分ベクトル空間の具体例 〜 数学についてのwebノート |
・Rnの部分ベクトル空間の例:Rn、零部分空間、斉次型連立方程式の解空間、生成された部分ベクトル空間 有限個のベクトルと直交するベクトルの全体 ・R1の部分ベクトル空間、R2の部分ベクトル空間、R3の部分ベクトル空間 |
※ 関連ページ・Rnの部分ベクトル空間:定義/部分空間における線型独立と線型従属/〜に張られた部分ベクトル空間/和・直和分解・補空間/部分空間の基底/部分空間の次元 ・部分ベクトル空間:体上のベクトル空間の部分空間、実ベクトル空間の部分空間 ・実n次元数ベクトル空間:実n次元数ベクトル空間の定義/一次独立・一次従属/線形結合と線形独立・従属の関係/基底/次元 ※線形代数目次・総目次 |
Rnの部分ベクトル空間の具体例1:実n次元数ベクトル空間自体 | ||
設定 |
R :実数体(実数をすべて集めた集合)Rn:実n次元数ベクトル空間 +:実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法 スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法 |
[ 文献]佐武『線形代数学』V§2(p.94); |
本題 |
実n次元数ベクトル空間Rnは、 実n次元数ベクトル空間Rnの部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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なぜ? |
「 Rnの部分集合」は、実ベクトル空間でありさえすれば、Rnの部分ベクトル空間の定義を満たす。Rnは「Rnの部分集合」の一つであり、かつ、Rnは実ベクトル空間である(∵)から、 Rnは、Rnの部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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Rn の部分ベクトル空間の具体例2:零部分空間 |
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設定 |
R :実数体(実数をすべて集めた集合)Rn:実n次元数ベクトル空間 + :実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法 スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの: 実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法 |
[ 文献]佐武『線形代数学』V§2(p.94); ホフマン『線形代数学I』2.2例6a(p.35); |
定義 |
実n次元数ベクトル空間Rnの零部分空間とは、 実n次元数ベクトル空間Rnから、 n次元の零ベクトル0= ( 0, 0, …, 0 ) を 1個取っただけの集合{0}={ ( 0, 0, …, 0 ) }のことをいう。 |
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性質 |
実n次元数ベクトル空間Rnの零部分空間は、 Rnの部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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なぜ? |
実n次元数ベクトル空間Rnの零部分空間{0}={ ( 0, 0, …, 0 ) }は、 Rnの部分ベクトル空間となるための必要十分条件Q1-Q2-Q3を満たす。 Q1:{0}は、「Rnの部分集合」であって、空集合ではない。 Q2:{0}は、「Rnに定められているベクトルの加法」について閉じている。 つまり、{0}に属す任意の実n次元数ベクトルu,v に対して、u+v ∈{0} なぜなら、下記2点より。 ・{0}に属す任意の実n次元数ベクトルといっても、それは、0= ( 0, 0, …, 0 ) しかない。 ・0+0=0 (∵Rnに定められているベクトルの加法の定義と、零ベクトルの定義) Q3:{0}は、「Rnに定められているスカラー乗法」について閉じている。 つまり、{0}に属す限りで任意の実n次元数ベクトルvと、任意のスカラーa∈Rに対して、 au∈{0} なぜなら、下記2点より。 ・{0}に属す任意の実n次元数ベクトルといっても、それは、0= ( 0, 0, …, 0 ) しかない。 ・任意のスカラーa∈Rに対して、a0=0 (∵零ベクトルのスカラー倍) |
→ [トピック一覧:部分ベクトル空間の具体例]→線形代数目次・総目次 |
Rnの部分ベクトル空間の具体例3:斉次型連立一次方程式の解空間solution space | ||
設定 |
R :実数体(実数をすべて集めた集合)Rn:実n次元数ベクトル空間 +:実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法 スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:実n次元数ベクトル空間Rnに定められたスカラー乗法 |
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定義 |
n 個の未知数x1, x2, …, xn∈Rと、次のm個の式からなる斉次連立方程式を考える。 ┌ a11 x1+a12 x2+…+a1n xn =0│ a21 x1+a22 x2+…+a2n xn =0 │ : : : : └ am1 x1+am2 x2+…+amn xn =0 この斉次連立方程式の解 x1, x2, …, xn は、実n次元数ベクトル x = ( x1, x2, …, xn)∈Rn として表せる。 この斉次連立方程式の解x = ( x1, x2, …, xn)は、ただ一つとは限らない。 この斉次連立方程式の解となる実n次元数ベクトルをすべてあつめた集合を、 この斉次連立方程式の解空間という。 |
→ [トピック一覧:部分ベクトル空間の具体例]→線形代数目次・総目次 [ 文献]佐武『線形代数学』V§5(p.111); 草場『線形代数』2.4(pp.39-41)2.7(p.47); ホフマン『線形代数学I』2.2例7(p.36) 斎藤『線形代数入門』2章§5(p.59)4章§4例1斉次型連立方程式の解空間(p.107); 永田『理系のための線形代数の基礎』3.3定理3.3.1(p.96); |
性質 1 |
任意の斉次連立方程式の 解空間には、n次元の零ベクトル0= ( 0, 0, …, 0 ) が含まれる。 ※斉次連立方程式の右辺はすべて0なのだから、 ( x1, x2, …, xn)= ( 0, 0, …, 0 ) が解の一つであるのは当然。 |
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性質 2 |
斉次連立方程式の 解空間は、実n次元数ベクトル空間Rnの部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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なぜ? |
任意の斉次連立方程式の解空間 Wは、Rnの部分ベクトル空間となるための必要十分条件Q1-Q2-Q3を満たす。Q1:解空間Wは、「Rnの部分集合」であって、空集合ではない。 なぜなら、性質1より、0= ( 0, 0, …, 0 ) ∈W Q2:解空間Wは、「Rnに定められているベクトルの加法」について閉じている。 つまり、Wに属す任意の実n次元数ベクトルu,v に対して、u+v ∈W ※なぜ? 1) u∈W 、つまり、u= ( u1, u2, …, un)∈Rn が解ならば、 ┌ a11 u1+a12 u2+…+a1n un =0│ a21 u1+a22 u2+…+a2n un =0 │ : : : : └ am1 u1+am2 u2+…+amn un =0 2) v∈W 、つまり、v= ( v1, v2, …, vn)∈Rn が解ならば、 ┌ a11 v1+a12 v2+…+a1n vn =0│ a21 v1+a22 v2+…+a2n vn =0 │ : : : : └ am1 v1+am2 v2+…+amn vn =0 3) u,v∈W ならば、1) 2)より、 ┌ ( a11 u1+a12 u2+…+a1n un )+( a11 v1+a12 v2+…+a1n vn )=0│ ( a21 u1+a22 u2+…+a2n un )+( a21 v1+a22 v2+…+a2n vn )=0 │ : : : : : : : └ ( am1 u1+am2 u2+…+amn un )+( am1 v1+am2 v2+…+amn vn )=0 実数の加法の結合則と実数の加法乗法の分配則を用いて、これを整理すると、 ┌ a11( u1+v1 )+a12 ( u2+v2 )+…+a1n ( un+vn )=0│ a21( u1+v1 )+a22 ( u2+v2 )+…+a2n ( un+vn )=0 │ : : : : : : : └ am1 ( u1+v1 )+am2 ( u2+v2 )+…+amn ( un+vn )=0 したがって、 u,v∈W ならば、u+v= ( u1+v1, u2+v2, …, un+vn)∈Rn も解となって、u+v∈W Q3:解空間Wは、「Rnに定められているスカラー乗法」について閉じている。 つまり、解空間Wに属す限りで任意の実n次元数ベクトルuと、任意のスカラーk∈Rに対して、 ku∈W ※なぜ? 1) u∈W 、つまり、u= ( u1, u2, …, un)∈Rn が解ならば、 ┌ a11 u1+a12 u2+…+a1n un =0│ a21 u1+a22 u2+…+a2n un =0 │ : : : : └ am1 u1+am2 u2+…+amn un =0 2) u∈W ならば、1)より、任意のk∈Rに対して、 ┌ k (a11 u1+a12 u2+…+a1n un ) =0│ k (a21 u1+a22 u2+…+a2n un ) =0 │ : : : : └ k (am1 u1+am2 u2+…+amn un ) =0 実数の加法乗法の分配則・実数の積の可換則を用いて、これを整理すると、 ┌ a11 ku1+a12 ku2+…+a1n kun =0│ a21 ku1+a22 ku2+…+a2n kun =0 │ : : : : └ am1 ku1+am2 ku2+…+amn kun =0 したがって、 u∈W ならば、ku= ( ku1, ku2, …, kun)∈Rn も解となって、ku∈W |
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Rn の部分ベクトル空間の具体例4:実n次元数ベクトルから生成された部分ベクトル空間 |
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設定 |
R :実数体(実数をすべて集めた集合)Rn:実n次元数ベクトル空間 |
[ 文献]佐武『線形代数学』V§2(p.94); 佐和『回帰分析』2.1.1(p.16); 木村『線形代数』3.1一次独立(p.51); グリーン『計量経済分析I』定義2.7(p.26); |
本題 |
l 個の実n次元数ベクトル v1,v2,…,vl から生成された部分ベクトル空間は、実n次元数ベクトル空間Rnの部分ベクトル空間の定義を満たす。 ※なぜ?→詳細 |
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Rnの部分ベクトル空間の具体例5:有限個のベクトルと直交するベクトルの全体 | ||
設定 |
R :実数体(実数をすべて集めた集合)Rn:実n次元数ベクトル空間であって、ユークリッド空間 ・ :ユークリッド空間Rnに定められた自然な内積 |
[ 文献]佐武『線形代数学』V§2(p.94);斎藤『線形代数入門』4章§4問1(pp.107-8)正解無 |
本題 |
l 個の実n次元数ベクトル v1,v2,…,vl と直交する実n次元数ベクトルをすべて集めた集合は、実n次元数ベクトル空間Rnの部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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注 |
これは、 v1,v2,…,vl から生成された部分ベクトル空間の直交補空間になる。 |
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→ [トピック一覧:部分ベクトル空間の具体例]→線形代数目次・総目次 |
実1次元数ベクトル空間の部分ベクトル空間 | |||
設定 |
R :実数体(実数をすべて集めた集合)R 1:実1次元数ベクトル空間 (実質的には、実数体R) +:実1次元数ベクトル空間R1において定義されているベクトルの加法 (実質的には、実数体Rに定義されている加法) スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの: 実1次元数ベクトル空間R1において定義されているスカラー乗法 (実質的には、実数体Rに定義されている乗法) |
→ [トピック一覧:部分ベクトル空間の具体例]→線形代数目次・総目次 [ 文献]ホフマン『線形代数学I』練習問題6(p.40)a. |
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本題 |
実1次元数ベクトル空間R1の部分ベクトル空間は、 ・実1次元数ベクトル空間R1(実質的には実数体R) ・零部分空間 {0} の二つだけ。 |
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なぜ |
W がR1の部分ベクトル空間であるためには、部分ベクトル空間の定義から、条件T-2-2:Wに零ベクトル(ここでは実質上、実数の0)を入れなければならない 条件T-2-3:あるベクトル(ここでは実質的には実数)をWに入れたら、 その逆ベクトル(ここでは実質的には反数)もWに入れなければならない 条件U-1:あるベクトル(ここでは実質的には実数)をWに入れたら、 その任意のスカラー倍(ここでは実質的には任意実数倍)もWに入れてやらなければならない をすべて満たさなければならない。 ここで、興味深いのは、条件T-2-3・条件U-1。 Wに0以外の実数を一つでも入れようものなら、 条件T-2-3・条件U-1から、その実数の反数・任意実数倍もWに入れなければならないので、 Wにすべての実数を入れることになり、 結局、Wは、実数体R全体になってしまう。 だから、 実1次元数ベクトル空間R1の部分ベクトル空間は、 零部分空間 {0} か、実数体R全体の二つしかありえない。 |
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なぜ は 部分ベクトル空間? |
実1次元数ベクトル空間R1の零部分空間{0}={ 0 }は、 R1の部分ベクトル空間となるための必要十分条件Q1-Q2-Q3を満たす。 Q1:{0}は、0が属しているのだから、空集合ではない「R1の部分集合」。 Q2:{0}は、「R1に定められているベクトルの加法」(つまり実数体Rに定義されている加法)について 閉じている。 つまり、{0}に属す任意の実n次元数ベクトルu,v に対して、u+v ∈{0} なぜなら、下記2点より。 ・{0}に属す任意の実n次元数ベクトルといっても、それは、0=0しかない。 ・0+0=0 ∵「R1に定められているベクトルの加法」は実数体Rに定義されている加法であり、 R1における零ベクトルとは実数0であったから、 0+0=0+0=0=0 Q3:{0}は、「R1に定められているスカラー乗法」(つまり、実数体Rに定義されている乗法)について閉じている。 つまり、{0}に属す限りで任意の実1次元数ベクトルv(実質的には実数)と、任意のスカラーa∈Rに対して、 au∈{0} なぜなら、下記2点より。 ・{0}に属す任意の実1次元数ベクトルといっても、それは、0=0しかない。 ・任意のスカラーa∈Rに対して、a0=a0=0=0 (∵零ベクトルのスカラー倍) |
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なぜ は 部分ベクトル空間? |
「 実1次元数ベクトル空間R1の部分集合」は、実ベクトル空間でありさえすれば、実1次元数ベクトル空間R1の部分ベクトル空間の定義を満たす。 実1次元数ベクトル空間R1は「R1の部分集合」の一つであり、 かつ、 実1次元数ベクトル空間R1は実ベクトル空間である(∵)から、 実1次元数ベクトル空間R1は、実1次元数ベクトル空間R1の部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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→ [トピック一覧:部分ベクトル空間の具体例]→線形代数目次・総目次 |
実2次元数ベクトル空間の部分ベクトル空間 |
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設定 |
R :実数体(実数をすべて集めた集合)R2:実2次元数ベクトル空間 つまり、実2次元数ベクトルの集合R2=R×R={ ( v1 , v2 ) |v1∈Rかつv2∈R }に、 次のベクトルの加法・スカラー乗法を定義したもの。 +:実2次元数ベクトル空間R2に定められたベクトルの加法 (u1 , u2 ) + ( v1 , v2 ) = ( u1+v1 , u2+v2 ) ※右辺の+は、実数体Rに定められている加法を指す。 スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:実2次元数ベクトル空間R2に定められたスカラー乗法 a ( v1 , v2 ) = ( av1 , av2 ) ※右辺のav1, av2 は、実数体Rに定められている乗法を指す。 |
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例 1 |
実2次元数ベクトル空間R2それ自体は、 実2次元数ベクトル空間R2の部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
→ [トピック一覧:部分ベクトル空間の具体例]→線形代数目次・総目次
[ 文献]ホフマン『線形代数学I』練習問題6(p.40)b; 高橋一『経済学とファイナンスのための数学』附録A.1(p.176) |
例 2 |
零部分空間 {0}={ (0,0) }は、 実2次元数ベクトル空間R2の部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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例 3-1 |
実2次元数ベクトル空間R2から、 第2成分が0の実2次元数ベクトルをすべて取り出した集合 { ( v1 , 0 ) |v1∈R } は、実2次元数ベクトル空間R2の部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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例 3-2 |
実2次元数ベクトル空間R2から、 第1成分が0の実2次元数ベクトルをすべて取り出した集合 { ( 0 , v2 ) | v2 ∈R } は、実2次元数ベクトル空間R2の部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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例 4 |
・ 任意の実2次元数ベクトルの任意のスカラー積は、実2次元数ベクトルである。 ・任意の実2次元数ベクトル ( v1 , v2 ) を一つ選んで固定したうえで、 そのあらゆるスカラー積を集めた集合 { a ( v1 , v2 ) | a ∈R } は、 実2次元数ベクトル空間R2の部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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例 5 |
l 個の実2次元数ベクトル v1= ( v11 , v12 ) ,v2= ( v21 , v22 ) ,…, vl= ( vl1 , vl2 ) から生成された部分ベクトル空間は、実2次元数ベクトル空間R2の部分ベクトル空間の定義を満たす。 ※なぜ?→詳細 |
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なぜ? |
「 R2の部分集合」は、実ベクトル空間でありさえすれば、R2の部分ベクトル空間の定義を満たす。R2は「R2の部分集合」の一つであり、かつ、R2は実ベクトル空間である(∵)から、 R2は、R2の部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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なぜ? |
実2次元数ベクトル空間R2の零部分空間{0}={ ( 0, 0 ) }は、 R2の部分ベクトル空間となるための必要十分条件Q1-Q2-Q3を満たす。 Q1:{0}は、「R2の部分集合」であって、空集合ではない。 Q2:{0}は、「R2に定められているベクトルの加法」について閉じている。 つまり、{0}に属す任意の実2次元数ベクトルu,v に対して、u+v ∈{0} なぜなら、下記2点より。 ・{0}に属す任意の実2次元数ベクトルといっても、それは、0= ( 0, 0 ) しかない。 ・0+0=0 (∵R2に定められているベクトルの加法の定義と、零ベクトルの定義) Q3:{0}は、「R2に定められているスカラー乗法」について閉じている。 つまり、{0}に属す限りで任意の実2次元数ベクトルvと、任意のスカラーa∈Rに対して、 av∈{0} なぜなら、下記2点より。 ・{0}に属す任意の実2次元数ベクトルといっても、それは、0= ( 0, 0 ) しかない。 ・任意のスカラーa∈Rに対して、a0=0 (∵零ベクトルのスカラー倍) |
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なぜ? |
実2次元数ベクトル空間R2から、 第2成分が0の実2次元数ベクトルをすべて取り出した集合 W={ ( v , 0 ) |v∈R } は、実2次元数ベクトル空間R2の部分ベクトル空間となるための必要十分条件Q1-Q2-Q3を満たす。 Q1:Wは、「R2の部分集合」であって、空集合ではない。 Q2:Wは、「R2に定められているベクトルの加法」について閉じている。 なぜなら、 Wに属す限りで任意の実2次元数ベクトル ( u1 , 0 ) , ( v1 , 0 ) (もちろんu1, v1 ∈R) に対して、 ( u1 ,0) + ( v1 ,0) = ( u1+v1 ,0) ∵R2に定められているベクトルの加法の定義 ∈W ∵Rの定義(条件A0)より、u1, v1 ∈Rにたいしてu1+v1 ∈R Q3:Wは、「R2に定められているスカラー乗法」について閉じている。 なぜなら、 Wに属す限りで任意の実n次元数ベクトル ( u1 , 0 ) (もちろんu1∈R)と、 任意のスカラーk∈Rに対して、 k ( u1 , 0 ) = ( ku1 , 0 ) ∵R2に定められているスカラー乗法の定義 ∈W ∵Rの定義(条件A0)より、k,u1∈Rにたいしてku1 ∈R 実2次元数ベクトル空間R2から、 第1成分が0の実2次元数ベクトルをすべて取り出した集合 W={ ( 0 , v ) |v∈R } が、実2次元数ベクトル空間R2の部分ベクトル空間となるための必要十分条件Q1-Q2-Q3を満たすことも、 まったく同様に示せる(だから略) |
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なぜ? |
・ 任意の実2次元数ベクトルの任意のスカラー積は、実2次元数ベクトルである。なぜなら、 なお、任意の ( v1 , v2 ) ∈R2(もちろん v1, v2 ∈R)と 任意のa ∈R にたいして、 a ( v1 , v2 ) = ( av1 , av2 ) ∵R2に定められているスカラー乗法の定義 ∈R2 ∵Rの定義(条件A0)より、a, v1, v2 ∈Rにたいして av1 , av2∈R ・任意の実2次元数ベクトル ( v1 , v2 ) を一つ選んで固定したうえで、 そのあらゆるスカラー積を集めた集合 W={ a ( v1 , v2 ) | a ∈R } は、実2次元数ベクトル空間R2の部分ベクトル空間となるための必要十分条件Q1-Q2-Q3を満たす。 Q1:Wは、「R2の部分集合」であって、空集合ではない。 Q2:Wは、「R2に定められているベクトルの加法」について閉じている。 なぜなら、 Wに属す限りで任意の実2次元数ベクトル a ( u1 , u2 ) ,a ( v1 , v2 ) (もちろんa , u1 , u2 , v1, v2 ∈R) に対して、 a ( u1 , u2 ) + a ( v1 , v2 ) = a( ( u1 , u2 ) + ( v1 , v2 ) ) ∵スカラーに関する分配則 = a ( u1+v1 , u2+v2 ) ∵R2に定められているベクトルの加法の定義 ∈W ∵Rの定義(条件A0)より、u1, v1 ,u2, v2 ∈Rにたいしてu1+v1 , u2+v2 ∈R Q3:Wは、「R2に定められているスカラー乗法」について閉じている。 なぜなら、 Wに属す限りで任意の実n次元数ベクトル a ( u1 , u2 ) (もちろんa , u1 , u2 ∈R)と、 任意のスカラーk∈Rに対して、 ka ( u1 , u2 ) ∈W ∵Rの定義(条件A0)より、k,a∈Rにたいしてka∈R |
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実3次元数ベクトル空間の部分ベクトル空間 | ||
設定 |
R :実数体(実数をすべて集めた集合)R3:実3次元数ベクトル空間 つまり、実3次元数ベクトルの集合R3=R×R×R={ ( v1 , v2 , v3 ) |v1∈R かつv2∈R かつv3∈R}に、 次のベクトルの加法・スカラー乗法を定義したもの。 +:実3次元数ベクトル空間R3において定義されたベクトルの加法 (v11 , v12 , v13 ) + (v21 , v22 , v23 )= ( v11+v21 , v12+v22 , v13+v23 ) ※右辺の+は、実数体Rに定められている加法を指す。 スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:実3次元数ベクトル空間R3において定義されたスカラー乗法 a ( v1 , v2 , v3 )= ( av1 , av2 , av3 ) ※右辺のav1, av2 , av3 は、実数体Rに定められている乗法を指す。 |
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例 1 |
実3次元数ベクトル空間R3それ自体は、 実3次元数ベクトル空間R3の部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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[ 文献]ホフマン 『線形代数学I』2.2例6b(p.35); 高橋一 『経済学とファイナンスのための数学』附録A.1(p.176) 布川 『線形代数と凸解析』例2.2(p.35); グリーン 『計量経済分析』2.4.4(p.26); 草場 『線形代数』2.7例2(p.48); 江川 『大学1・2年生のためのすぐわかる数学』Section7問題18(p.171) |
例 2 |
零部分空間 {0}={ (0,0,0) }は、 実3次元数ベクトル空間R3の部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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例 3-1 |
実3次元数ベクトル空間R2から、 第3成分が0の実3次元数ベクトルをすべて取り出した集合 { (v1 , v2 ,0) |v1 , v2 ∈R } は、実3次元数ベクトル空間R3の部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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例 3-2 |
実3次元数ベクトル空間R3から、 第2成分が0の実3次元数ベクトルをすべて取り出した集合 { (v1 ,0, v3 ) |v1 , v3 ∈R } は、実3次元数ベクトル空間R3の部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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例 3-3 |
実3次元数ベクトル空間R3から、 第1成分が0の実3次元数ベクトルをすべて取り出した集合 { (0, v2 , v3 ) | v2 , v3 ∈R } は、実3次元数ベクトル空間R3の部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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例 4 |
・ 任意の実3次元数ベクトルの任意のスカラー積は、実3次元数ベクトルである。 ・任意の実3次元数ベクトル ( v1 , v2 , v3 ) を一つ選んで固定したうえで、 そのあらゆるスカラー積を集めた集合 { a ( v1 , v2 , v3 ) | a ∈R } は、 実3次元数ベクトル空間R3の部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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例 5 |
l 個の実3次元数ベクトル v1=( v11 , v12 , v13 ) ,v2=( v21 , v22 , v23 ) ,…, vl=( vl1 , vl2 , vl3 ) から生成された部分ベクトル空間は、実3次元数ベクトル空間R3の部分ベクトル空間の定義を満たす。 ※なぜ?→詳細 |
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なぜ? |
「 R3の部分集合」は、実ベクトル空間でありさえすれば、R3の部分ベクトル空間の定義を満たす。R3は「R3の部分集合」の一つであり、かつ、R3は実ベクトル空間である(∵)から、 R3は、R3の部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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なぜ? |
実3次元数ベクトル空間R3の零部分空間{0}={ (0,0,0) }は、 R3の部分ベクトル空間となるための必要十分条件Q1-Q2-Q3を満たす。 Q1:{0}は、「R3の部分集合」であって、空集合ではない。 Q2:{0}は、「R3に定められているベクトルの加法」について閉じている。 つまり、{0}に属す任意の実3次元数ベクトルu,v に対して、u+v ∈{0} なぜなら、下記2点より。 ・{0}に属す任意の実2次元数ベクトルといっても、それは、0= (0,0,0) しかない。 ・0+0=0 (∵R3に定められているベクトルの加法の定義と、零ベクトルの定義) Q3:{0}は、「R3に定められているスカラー乗法」について閉じている。 つまり、{0}に属す限りで任意の実3次元数ベクトルvと、任意のスカラーa∈Rに対して、 av∈{0} なぜなら、下記2点より。 ・{0}に属す任意の実2次元数ベクトルといっても、それは、0= (0,0,0) しかない。 ・任意のスカラーa∈Rに対して、a0=0 (∵零ベクトルのスカラー倍) |
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なぜ? |
実3次元数ベクトル空間R2から、 第3成分が0の実3次元数ベクトルをすべて取り出した集合 W={ (v1 , v2 ,0) |v∈R } は、実3次元数ベクトル空間R3の部分ベクトル空間となるための必要十分条件Q1-Q2-Q3を満たす。 Q1:Wは、「R3の部分集合」であって、空集合ではない。 Q2:Wは、「R3に定められているベクトルの加法」について閉じている。 なぜなら、 Wに属す限りで任意の実3次元数ベクトル (u1 , u2 ,0) , (v1 , v2 ,0) (もちろんu1, u2 , v1 , v2 ∈R) に対して、 (u1 , u2 ,0) + (v1 , v2 ,0) = ( u1+v1 , u2+v2 ,0) ∵R2に定められているベクトルの加法の定義 ∈W ∵Rの定義(条件A0)より、u1, u2 , v1 , v2 ∈Rにたいしてu1+v1, u2+v2 ∈R Q3:Wは、「R3に定められているスカラー乗法」について閉じている。 なぜなら、 Wに属す限りで任意の実n次元数ベクトル (u1 , u2 ,0) (もちろんu1 , u2 ∈R)と、 任意のスカラーk∈Rに対して、 k (u1 , u2 ,0) = (k u1 , k u2 ,0) ∵R3に定められているスカラー乗法の定義 ∈W ∵Rの定義(条件A0)より、k ,u1 , u2 ∈Rにたいしてku1 , k u2 ∈R 実3次元数ベクトル空間R3から、 第2成分が0の実3次元数ベクトルをすべて取り出した集合 { (v1 ,0, v3 ) |v1 , v3 ∈R } 実3次元数ベクトル空間R3から、 第1成分が0の実3次元数ベクトルをすべて取り出した集合 { (0, v2 , v3 ) | v2 , v3 ∈R } が、実3次元数ベクトル空間R3の部分ベクトル空間となるための必要十分条件Q1-Q2-Q3を満たすことも、 まったく同様に示せる(だから略) |
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なぜ? |
・ 任意の実3次元数ベクトルの任意のスカラー積は、実3次元数ベクトルである。なぜなら、 なお、任意の ( v1 , v2 , v3 ) ∈R3(もちろん v1, v2 , v3 ∈R)と 任意のa ∈R にたいして、 a ( v1 , v2 , v3 ) = ( av1 , av2 , av3 ) ∵R3に定められているスカラー乗法の定義 ∈R3 ∵Rの定義(条件A0)より、a, v1, v2 , v3 ∈Rにたいして av1 , av2 , av3 ∈R ・任意の実3次元数ベクトル ( v1 , v2 , v3 ) を一つ選んで固定したうえで、 そのあらゆるスカラー積を集めた集合 W={ a ( v1 , v2 , v3 ) | a ∈R } は、実3次元数ベクトル空間R3の部分ベクトル空間となるための必要十分条件Q1-Q2-Q3を満たす。 Q1:Wは、「R3の部分集合」であって、空集合ではない。 Q2:Wは、「R3に定められているベクトルの加法」について閉じている。 なぜなら、 Wに属す限りで任意の実3次元数ベクトル a ( u1 , u2 , u3 ) , a ( v1 , v2 , v3 ) (もちろんa , u1 , u2 , u3 , v1, v2 , v3∈R) に対して、 a ( u1 , u2 , u3 ) + a ( v1 , v2 , v3 ) = a( ( u1 , u2 , u3 ) + ( v1 , v2 , v3 ) ) ∵スカラーに関する分配則 = a ( u1+v1 , u2+v2 , u3+v3 ) ∵R3に定められているベクトルの加法の定義 ∈W ∵Rの定義(条件A0)より、u1 , u2 , u3 , v1, v2 , v3∈Rにたいしてu1+v1 , u2+v2 , u3+v3 ∈R Q3:Wは、「R3に定められているスカラー乗法」について閉じている。 なぜなら、 Wに属す限りで任意の実3次元数ベクトル a ( u1 , u2 , u3 ) (もちろんa , u1 , u2 , u3 ∈R)と、 任意のスカラーk∈Rに対して、 ka ( u1 , u2 , u3 ) ∈W ∵Rの定義(条件A0)より、k,a∈Rにたいしてka∈R |
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