実2次元数ベクトル空間における一次結合・線形結合 ― トピック一覧 |
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・定義:一次結合・線形結合/〜から生成された部分ベクトル空間 ・定理:単位ベクトルの一次結合/一次結合の和/一次結合のスカラー倍/互いに一次結合として表せる関係の推移性/一次結合と部分ベクトル空間 |
[関連ページ] ※実2次元数ベクトル空間関連:実2次元数ベクトル空間の定義/一次独立・一次従属/線形結合と線形独立・従属の関係/基底/次元/部分ベクトル空間 ※一次結合関連:実n次元数ベクトル空間における一次結合 一般の体上の数ベクトル空間における一次結合の定義/一般のベクトル空間における一次結合の定義 ※Rnの部分ベクトル空間:定義/具体例/部分空間における線型独立と線型従属/〜に張られた部分ベクトル空間/和・直和/ 部分空間の基底/部分空間の次元 |
定義:実2次元数ベクトルの一次結合・線形結合 linear combination | ||
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設定 |
R:実数体(実数をすべて集めた集合) R2:実2次元数ベクトル空間 +:実2次元数ベクトル空間Rnに定義されているベクトルの加法 スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの: 実2次元数ベクトル空間R2に定められているスカラー乗法 v1,v2,…,vl:l個の実2次元数ベクトル。 具体的に書くと、 v1= ( x1, y1 ) ただし、x1, y1 ∈R v2= ( x2, y2 ) ただし、x2, y2 ∈R : : vl= ( xl, yl ) ただし、xl, yl ∈R したがって、v1 , v2 , …, vl ∈R2 。 なお、個数lが有限個であることに注意。 |
[文献] ・『岩波数学辞典』210線形空間:C線形結合(p.571); ・佐武『線形代数学』T§1(p.4); ・ 永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.10); ・ 二階堂『経済のための線型代数』I§2(p.21) ; ・ 戸田山田『計量経済学の基礎:統計的手法の理論とプログラミング』2.4.2(p.76) ※一般化: ・実n次元数ベクトル空間への一般化 ・一般のベクトル空間への一般化 ・一般の体上の数ベクトル空間への一般化 |
本題1 |
l個の実2次元数ベクトルv1,v2,…,vlの一次結合・線形結合とは、 それらの(R2で定義された)スカラー倍 a1v1, a2v2, …, alvl (a1, a2, …, al ∈R)の(R2で定義された)ベクトル和 a1v1+a2v2+…+alvl ![]() のこと。 なお、R2に定義されているスカラー倍・ベクトル和にしたがって、v1,v2,…,vlの一次結合を具体的に計算してみると、 a1v1+a2v2+…+alvl =( a1x1, a1y1 )+( a2x2, a2y2 )+…+ (alxl,alyl ) =( a1x1+a2x2+…+alxl, a1y1+a2y2+…+alyl ) ※上記の+はR2に定めたベクトルの加法ではなく、実数体Rに定められた加法。 |
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図解 | ||
本題2 |
実2次元数ベクトルv1,v2,…,vlの一次結合・線形結合も、実2次元数ベクトルである。 なぜなら、 実2次元数ベクトルのスカラー倍は、実2次元数ベクトル(∵)。 実2次元数ベクトルのベクトル和は、実2次元数ベクトル(∵)。 だから、実2次元数ベクトルのスカラー倍のベクトル和として定義された一次結合は、 実2次元数ベクトルとなる。 |
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関連 |
一般のベクトル空間における一次結合の定義、一般の体上の数ベクトル空間における一次結合の定義、実n次元数ベクトル空間における一次結合 |
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定理:基本ベクトルの一次結合 | ||
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設定 |
R:実数体(実数をすべて集めた集合) R2:実2次元数ベクトル空間 +:実2次元数ベクトル空間Rnに定義されているベクトルの加法 スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの: 実2次元数ベクトル空間R2に定められているスカラー乗法 v:実2次元数ベクトル。 具体的に書くと、 x, y∈Rとして、v=( x, y ) したがって、v∈R2 。 | ※実n次元数ベクトル空間への一般化 |
定理 | 任意の実2次元数ベクトルは、基本ベクトルe1,e2の一次結合として表せる。 実際、 任意のv=( x, y ) ∈R2は、v = xe1+ye2 と表せる。 |
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関連 | 基本ベクトルの定義、基本ベクトルは一次独立、基本ベクトルは基底をなす |
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定義:一次結合の和 | ||
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設定 |
R:実数体(実数をすべて集めた集合) |
[文献] ・ホフマン『線形代数学I』2.1ベクトル空間(p.32) ※実n次元数ベクトル空間への一般化 |
本題 |
任意の実2次元数ベクトルv1,v2,…,vl∈R2と、 任意のスカラーa1, a2, …, al,b1, b2, …, bl ∈Rにたいして、 (あるいは、任意の実2次元数ベクトルの一次結合」 a1v1+a2v2+…+alvl, b1v1+b2v2+…+blvlにたいして) (a1v1+a2v2+…+alvl)+(b1v1+b2v2+…+blvl)=(a1+b1)v1+(a2+b2)v2+…+(al+bl)vl つまり、 ![]() |
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なぜ? |
(a1v1+a2v2+…+alvl)+(b1v1+b2v2+…+blvl) =(a1v1+b1v1)+(a2v2+b2v2)+…+(alvl+blvl) ∵ベクトル和の結合則・可換則 =(a1+b1)v1+(a2+b2)v2+…+(al+bl)vl ∵スカラー積のスカラーに関する分配則 |
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意義 |
この定理は、以下の点を意味している。
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活用例 |
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定義:一次結合のスカラー倍 | ||
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設定 |
R:実数体(実数をすべて集めた集合) R2:実2次元数ベクトル空間 +:実2次元数ベクトル空間Rnに定義されているベクトルの加法 スカラーに続けてスカラーを並べて書いたもの:実数体Rにおいて定義されている乗法 スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの: 実2次元数ベクトル空間R2に定められているスカラー乗法 v1,v2,…,vl:l個の実2次元数ベクトル。 具体的に書くと、 v1= ( x1, y1 ) ただし、x1, y1 ∈R v2= ( x2, y2 ) ただし、x2, y2 ∈R : : vl= ( xl, yl ) ただし、xl, yl ∈R したがって、v1 , v2 , …, vl ∈R2 。 なお、個数lが有限個であることに注意。 c,a1,a2,…,al :スカラー。c,a1,a2,…,al∈R |
[文献] ホフマン『線形代数学I』2.1ベクトル空間(p.32) ※実n次元数ベクトル空間への一般化 |
本題 |
任意の実2次元数ベクトル v1,v2,…,vl∈R2 と、 任意のスカラーa1, a2, …, al ,b1, b2, …, bl ∈Rにたいして、 (あるいは、任意の実2次元数ベクトルの一次結合」a1v1+a2v2+…+alvlにたいして) c (a1v1+a2v2+…+alvl)=(ca1)v1+(ca2)v2+…+(cal)vl つまり、 ![]() |
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なぜ? |
c (a1v1+a2v2+…+alvl) =c {a1v1+(a2v2+…+alvl)} ∵ベクトル和の結合則 =(ca1)v1+c(a2v2+…+alvl) ∵スカラー積のベクトルに関する分配則 =(ca1)v1+c{a2v2+(a3v3+…+alvl)} ∵ベクトル和の結合則 =(ca1)v1+(ca2)v2+c(a3v3+…+alvl) ∵スカラー積のベクトルに関する分配則 : : =(ca1)v1+(ca2)v2+…+(cal)vl |
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意義 |
この定理が意味しているのは、 実2次元数ベクトルv1,v2,…,vlの任意の一次結合の、任意のスカラー倍も、実2次元数ベクトルv1,v2,…,vlの一次結合となるということ。 ∵実数体Rの定義より、実数体Rの乗法は二項演算だから、c,ai∈Rならば、cai∈R。 したがって、上記右辺は「実2次元数ベクトルの一次結合」の定義を満たす。 |
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活用例 | 実n次元数ベクトルから生成された部分ベクトル空間 |
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定理:数ベクトルの集合間で互いに一次結合として表せる関係の推移性 | ||
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設定 |
R:実数体(実数をすべて集めた集合) R2:実2次元数ベクトル空間 v1,v2,…,vl:l個の実2次元数ベクトル。 具体的に書くと、 v1= ( xv1, yv1 ) ただし、xv1, yv1 ∈R v2= ( xv2, yv2 ) ただし、xv2, yv2 ∈R : : vl= ( xvl, yvl ) ただし、xvl, yvl ∈R したがって、v1 , v2 , …, vl ∈R2 。 なお、個数lが有限個であることに注意。 u1, u2, … , um:m個の実2次元数ベクトル。 具体的に書くと、 u1= ( xu1, yu1 ) ただし、xu1, yu1 ∈R u2= ( xu2, yu2 ) ただし、xu2, yu2 ∈R : : um= ( xum, yum ) ただし、xum, yum ∈R したがって、u1, u2, …, um ∈R2。 なお、個数mが有限個であることに注意。 w1, w2, … , wp:p個の実2次元数ベクトル。 具体的に書くと、 w1= ( xw1, yw1 ) ただし、xw1, yw1 ∈R w2= ( xw2, yw2 ) ただし、xw2, yw2 ∈R : : wp= ( xwp, ywp ) ただし、xwp, ywp ∈R したがって、w1, w2, …, wp ∈R2。 なお、個数pが有限個であることに注意。 |
[文献] ・佐武『線形代数学』V§1補題2(pp.87-8)の証明内; ※実n次元数ベクトル空間への一般化 |
命題 |
条件1:v1 , v2 , …, vlがそれぞれ、u1, u2, … , umの一次結合として表わされる かつ 条件2:u1, u2, … , umがそれぞれ、v1 , v2 , …, vl の一次結合として表わされる かつ 条件3:u1, u2, … , umがそれぞれ、w1, w2, … , wpの一次結合として表わされる かつ 条件4:w1, w2, … , wpがそれぞれ、u1, u2, … , umの一次結合として表わされる ならば、 帰結1:v1 , v2 , …, vlがそれぞれ、w1, w2, … , wpの一次結合として表わされる かつ 帰結2:w1, w2, … , wpがそれぞれ、v1 , v2 , …, vlの一次結合として表わされる |
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対偶 |
上記命題の対偶として、次の命題が得られる。 条件1:v1 , v2 , …, vlのなかに、w1, w2, … , wpの一次結合として表わされないものがある または 条件2:w1, w2, … , wpのなかに、v1 , v2 , …, vlの一次結合として表わされないものがある ならば、 帰結1:v1 , v2 , …, vlのなかに、u1, u2, … , umの一次結合として表わされないものがある または 帰結2:u1, u2, … , umのなかに、v1 , v2 , …, vl の一次結合として表わされないものがある または 帰結3:u1, u2, … , umのなかに、w1, w2, … , wpの一次結合として表わされないものがある または 帰結4:w1, w2, … , wpのなかに、u1, u2, … , umの一次結合として表わされないものがある |
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関連 |
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定義:実2次元数ベクトルから生成された部分ベクトル空間、〜の線形包linear hull | |||
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設定 |
R:実数体(実数をすべて集めた集合) R2:実2次元数ベクトル空間 +:実2次元数ベクトル空間Rnに定義されているベクトルの加法 スカラーに続けてスカラーを並べて書いたもの:実数体Rにおいて定義されている乗法 スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの: 実2次元数ベクトル空間R2に定められているスカラー乗法 v1,v2,…,vl:l個の実2次元数ベクトル。 具体的に書くと、 v1= ( x1, y1 ) ただし、x1, y1 ∈R v2= ( x2, y2 ) ただし、x2, y2 ∈R : : vl= ( xl, yl ) ただし、xl, yl ∈R したがって、v1 , v2 , …, vl ∈R2 。 なお、個数lが有限個であることに注意。 a1,a2,…,al :スカラー。c,a1,a2,…,al∈R |
[文献] |
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定義 |
l個の実2次元数ベクトルv1,v2,…,vlを選び、固定する。 この、固定した実2次元数ベクトルv1,v2,…,vlにたいして、 その一次結合a1v1+a2v2+…+alvl(a1,a2,…,al ∈R)は、a1,a2,…,alの選び方に応じて、多様である。 実2次元数ベクトルv1,v2,…,vlの一次結合をすべてあつめた集合 { a1v1+a2v2+…+alvl | a1,a2,…,al ∈R } を、v1,v2,…,vlから生成された部分ベクトル空間、v1,v2,…,vlの線形包とよび、 記号〈 v1,v2,…,vl 〉等で表す。 ※〈 v1,v2,…,vl 〉の定義では、v1,v2,…,vlが一次独立であることは要求されていない。 { v1,v2,…,vl }が一次独立ならば、v1,v2,…,vlは〈 v1,v2,…,vl 〉の基底の定義を満たす。 |
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性質1 |
v1,v2,…,vlから生成された部分ベクトル空間〈 v1,v2,…,vl 〉は、 R2の部分ベクトル空間の定義を満たす。 |
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なぜ? |
v1,v2,…,vlから生成された部分ベクトル空間〈 v1,v2,…,vl 〉は、 R2の部分ベクトル空間となるための必要十分条件Q1-Q2-Q3を満たす。 Q1:〈 v1,v2,…,vl 〉は、「R2の部分集合」であって、空集合ではない。 ※なぜ? ・〈 v1,v2,…,vl 〉は、実2次元数ベクトルv1,v2,…,vlの一次結合の集合 ∵〈 v1,v2,…,vl 〉の定義 ・実2次元数ベクトルv1,v2,…,vlの一次結合は、どれも、実2次元数ベクトル。(∵) ・上記2点より、〈 v1,v2,…,vl 〉は、実2次元数ベクトルの集合 つまり、空集合ではない「R2の部分集合」 であるといえる。 Q2:〈 v1,v2,…,vl 〉は、「R2に定められているベクトルの加法」について閉じている。 つまり、〈 v1,v2,…,vl 〉に属す任意の実2次元数ベクトルu,u' に対して、u+u' ∈〈 v1,v2,…,vl 〉 ※なぜ? 次の3点による。 ・〈 v1,v2,…,vl 〉に属す任意のu,u'とは、v1,v2,…,vl の任意の二つの一次結合のこと。 ∵〈 v1,v2,…,vl 〉の定義 ・定理より、v1,v2,…,vl の任意の二つの一次結合のベクトル和も、v1,v2,…,vl の一次結合となる。 ・「v1,v2,…,vl の一次結合」は、「〈 v1,v2,…,vl 〉の元」と言換えてよい。∵〈 v1,v2,…,vl 〉の定義 Q3:〈 v1,v2,…,vl 〉は、「R2に定められているスカラー乗法」について閉じている。 つまり、〈 v1,v2,…,vl 〉に属す限りで任意の実2次元数ベクトルuと、任意のスカラーk∈Rに対して、 ku∈〈 v1,v2,…,vl 〉 ※なぜ? 次の3点による。 ・〈 v1,v2,…,vl 〉に属す任意のuとは、v1,v2,…,vlの任意の一次結合のこと。 ∵〈 v1,v2,…,vl 〉の定義 ・定理より、v1,v2,…,vlの任意の一次結合の、任意のスカラー倍も、v1,v2,…,vlの一次結合となる。 ・「v1,v2,…,vlの一次結合」は、「〈 v1,v2,…,vl 〉の元」と言換えてよい。∵〈 v1,v2,…,vl 〉の定義 |
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性質2 |
v1,v2,…,vlから生成された部分ベクトル空間〈 v1,v2,…,vl 〉は、 { v1,v2,…,vl }を含む最小の「R2の部分ベクトル空間」となる。 |
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性質3 |
「{ v1,v2,…,vl }を含む最小の「R2の部分ベクトル空間」」は、 「{ v1,v2,…,vl }が張る部分空間」《v1,v2,…,vl》と一致するから(→理由)、 「v1,v2,…,vlから生成された部分ベクトル空間」〈v1,v2,…,vl〉は、 「{ v1,v2,…,vl }が張る部分空間」《v1,v2,…,vl》と一致する。 |
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性質4 |
{ v1,v2,…,vl }が一次独立ならば、v1,v2,…,vlは〈 v1,v2,…,vl 〉の基底となる。 →詳細 |
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性質5 |
・「v1,v2,…,vlから生成された部分ベクトル空間」〈v1,v2,…,vl〉における一次独立なベクトルの最大個数は、l個と等しいか、l個未満であって、決してl個をこえることはない。 ・「v1,v2,…,vlから生成された部分ベクトル空間」〈v1,v2,…,vl〉における一次独立なベクトルの最大個数がl個となる場合は、{ v1,v2,…,vl }が一次独立であって、〈 v1,v2,…,vl 〉の基底となる場合。 |
佐武『線形代数学』V§2(pp.95-6); |
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関連 |
Rnの無限集合から生成された部分ベクトル空間も定義できるが、この点については、以下参照。 →実ベクトル空間一般における生成された部分ベクトル空間 →ベクトル空間一般における生成された部分空間 |
→[トピック一覧:一次結合] |
→[トピック一覧:一次結合] →線形代数目次・総目次 |
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