被団協新聞

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「被団協」新聞2021年3月号(506号)

2021年3月号 主な内容
1面 核兵器禁止条約 政党・国会議員アンケート 各党の姿勢、明確に 日本被団協が12月実施
2面 田中熙巳代表委員、怒りのコメント
  NGO連絡会主催国会議員討論会

活動ふり返り次のステップへ
雨の色、雨の有無にかかわらず検証
日本政府に条約参加求める署名運動開始
「お願い」を送付 兵庫
非核水夫の海上通信(199)
3面 核兵器禁止条約発効(1月22日) 各地で記念イベント
4面 相談のまど
  高齢の夫婦二人ぐらし
  介護保険の活用を

新たに実現 グループホーム等利用料への助成、「被爆二世健康記録簿」の発行

 

核兵器禁止条約 政党・国会議員アンケート 各党の姿勢、明確に
 日本被団協が12月実施

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 日本被団協は昨年12月すべての政党と国会議員に対し、核兵器禁止条約に関するアンケートを実施しました。
 政党では自由民主党を除く各党から回答がありました。問1の「核兵器禁止条約が発効することを貴党の国会議員は知っていますか」に対してはどの党も「すべての議員が知っている」との回答でした。問2と自由記述は表1のとおりでした。
 国会議員は12月時点で703人のうち109人から回答がありました。「条約に参加しない日本政府の態度をどう思うか」の問いの選択肢「①もっともだ ②条約に参加すべき ③わからない」の回答は表2のとおり。自民党の2人と公明党の1人は無回答でした。
 詳細は日本被団協ホームページに掲載します。


田中熙巳代表委員、怒りのコメント
 NGO連絡会主催国会議員討論会

 2月12日に核兵器廃絶日本NGO連絡会が開催した国会議員討論会で、核兵器禁止条約と核廃絶に対する各党の考えが更に明らかになりました。
 テーマは①核兵器禁止条約に締約国会議へのオブザーバー参加を含めての対応について ②8月のNPT再検討会議への取り組みについて。全党ともオブザーバー参加はすべきと述べながら、核抑止論をはっきり否定したのは、共産・志位和夫委員長と社民・福島みずほ党首だけでした。
 立憲民主・岡田克也常任顧問は、米国の核抑止に頼らざるを得ない現実があり、加盟できない、と述べました。自民・寺田稔副幹事長は、「衛星コンステレーション」など通常兵器の範疇での防衛システムを開発中で、完成すれば核抑止がいらなくなる、などと述べました。
 出席した田中熙巳日本被団協代表委員は、「核兵器は存在させること自体あってはならないこと。守るべきものが何であるのか。核兵器を使えないようにするには、またどうやったらなくせるかの議論を政治家として考えてほしい」と怒りのコメントを述べました。


活動ふり返り次のステップへ

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ヒバクシャ国際署名連絡会

 ヒバクシャ国際署名連絡会は2月5日、「核兵器禁止条約発効へ貢献・被爆者がはじめた署名の力」をテーマに、2016年からの活動を振り返るオンライン集会を開きました。
 中央団体からは、全日本民主医療機関連合会、日本反核法律家協会、新日本婦人の会、創価学会平和委員会、原水爆禁止日本協議会の各団体が活動報告。国内外の幅広い人々に広がった署名活動が報告されました。
 地域からは、岐阜、千葉、北海道、宮城の各県連絡会の活動が報告されました。各地域では、ヒバクシャ国際署名に取り組む中で得られたつながりを今後も継続するため「核兵器廃絶ネットワークみやぎ」や「被爆者の願いを継承する岐阜県民の会」などに改組して、新たな活動に踏み出しています。日本被団協の「日本政府に核兵器禁止条約に署名、批准を求める」署名への取り組み開始も報告されました。
 ヒバクシャ国際署名のキャンペーンリーダーを務めた林田光弘さんはまとめの発言で「ひとりひとりの署名を積み上げたこの運動が、世界の指導者の心を動かし、核兵器禁止条約実現の後押しとなった。このような歴史的転換点に核兵器廃絶をしたいという市民の声を可視化する大変大きな役割をみなさんと一緒に果たせたことを誇らしく思う。連絡会は閉じるが、私たちのつながりが切れるわけではない」などと述べました。
 ヒバクシャ国際署名連絡会は3月17日の最終会合と、同日のIPBによるショーン・マクブライド平和賞授賞式(いずれもオンライン)で活動を終えます。


雨の色、雨の有無にかかわらず検証

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「黒い雨」第2回検討会

 広島の「黒い雨」訴訟を受けて昨年11月に発足した厚生労働省の「第一種健康診断特例区域等の検証に関する検討会」第2回会合が、2月18日東京都内で開かれました。
 冒頭、厚労省事務局から「前回の指摘事項について」のまとめがあり、「本検討会の検証については、雨の色にかかわらず、またそもそも雨の有無にかかわらず、塵(ちり)としての沈着も含めた検証(気象シミュレーション等)を検討」することが確認されました。
 構成員として出席した日本被団協の木戸季市事務局長と、気象学者の増田善信さんが発言。木戸事務局長は、「本検討会の基本的考え方で、原子爆弾被爆者対策基本問題懇談会(基本懇)意見に基づくとしていることについて、厚生相の私的諮問機関である基本懇ではなく法律に基づくべきではないか。核兵器禁止条約が発効した今、広島・長崎の原爆被害者に対する援護はこの新しい国際法に則り行われるべき時を迎えたのではないか」と述べました。
 増田さんは、①被爆者の体験記を電子化し、検索機能によって原爆由来の雨、チリの降下範囲、および原爆由来の歯ぐきからの出血、下痢、嘔吐など急性疾患の発現範囲の推定に関する調査を行なうこと ②米占領軍が1945~50年に雨樋などの堆積物から採取した残留放射線の測定値を公表させること、の2点を提案しました。


日本政府に条約参加求める署名運動開始

日本被団協

 私たち被爆者の長年の願いであった、核兵器禁止条約が1月22日に発効しました。「ふたたび被爆者をつくらない」ことを保証する核兵器の廃絶を目指すこの国際法は、世界の新しい規範となりました。
 国内外各地で新たな出発を決意する集会が開かれ、多くの喜びが発信されました。広島・長崎を体験した被爆者と多くの日本国民も、条約の発効を心から喜び歓迎しています。
 しかし、日本政府は条約に署名も批准もしないという方針を繰返すばかりです。「唯一の戦争被爆国」を自称する政府としては許せない、恥ずかしい態度です。
 被爆者は黙っていることはできません。
 日本被団協は、「日本政府に核兵器禁止条約に署名、批准を求める署名」を開始しました。日本政府の態度を変えることを求めて、被爆者がすべての日本国民に訴える署名です。
 条約の締約国会議が今年12月か来年1月に開かれることが予想されるため、その前の11月末を第一次集約とします。
 この署名を大きく広げてください。皆さまのご協力を、心からお願いいたします。
 署名用紙は、日本被団協のホームページからダウンロードできます。また、オンライン署名もできます。


「お願い」を送付 兵庫

 兵庫県被団協では、核兵器禁止条約への日本の参加を求める署名運動のスタートにあたって、理事長はじめ県下の被爆者連名の「お願い」を作成しました。
 ヒバクシャ国際署名で県下の全自治体首長の署名がいただけた成果を活かす内容にと考え、国際署名が「核兵器を禁止し廃絶する条約を結ぶこと」を求めていたことに触れて、「国際署名が『核兵器禁止条約』に実ったこと」への感謝を述べ、「日本政府には、条約に参加し、核兵器の禁止から廃絶へ世界をリードするよう求める署名運動に取り組みます」と書きました。
 2月8日に「お願い」を、全自治体首長さんや宗教団体、国際署名で賛同、支援いただいた方々などに送付したところ、さっそく毎日のように署名が届いています。
(副島圀義)


核兵器禁止条約発効(1月22日) 各地で記念イベント


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岩手
 核兵器禁止条約が発効となった1月22日を中心に、全国で発効を記念する取り組みが行なわれました。本紙2月号で、国会内での被団協集会、オンラインの「核なき世界へスタート」イベント、宮城、岐阜、北海道の集会やアピール発表などを報告しましたが、今号ではそのほか各地から寄せられた取り組みを紹介します。

【岩手】
 ヒバクシャ国際署名をすすめる岩手の会は、1月22日岩手県庁前で街頭宣伝を最後の取り組みとして行ないました。被爆者をはじめ各団体から70人が参加しました。また同日、県内8自治体の14カ所でスタンディングが行なわれました。釜石市では21日と22日の2日間、花巻市では17日3カ所、22日7カ所で行ない、市内の大きな話題になりました。
【秋田】
 秋田県被団協は1月22日、条約発効にあたっての声明を発表。朝日、読売、地元紙など各紙に取り上げられました。
【新潟】
 ヒバクシャ国際署名新潟県連絡会は1月22日、新潟市古町十字路で約70人の参加で街頭宣伝を行ないました。各団体の代表によるスピーチ、チラシ配布と、日本政府に条約への参加を求める署名を集めました。
【長野】
 1月22日、長野駅前でヒバクシャ国際署名長野県推進連絡会の32人が街頭宣伝を行ないました。県原爆被害者の会の被爆者や被爆二世も参加し、核兵器禁止条約が発効したことで歴史上初めて核兵器が違法化されたことなどを報告しました。
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新潟 長野
【千葉】
 千葉県署名推進連絡会は1月22日、千葉県内9ヵ所で署名・宣伝行動をしました。281人が参加し日本政府に条約への参加を求める署名209人分を集めました。
【石川】
 県原爆被災者友の会ほか7団体が1月22日、金沢市内で街頭宣伝を行ない、「条約に署名、批准せよの声を日本政府突きつけよう」などと訴えました。
【福井】
 1月22日、県被団協など7団体18人が参加してJR福井西口駅前通りで街頭宣伝、署名行動を行ないました。
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福井 千葉
【富山】
 1月22日、県庁で記者会見のあとJR富山駅前で、県被爆者協議会など4団体共同の街頭宣伝を行ないました。
【静岡】
 2月20日、県教育会館で「日本政府に核兵器禁止条約の批准を求める署名推進静岡県連絡会」結成総会と記念講演をオンラインで行ないました。
【愛知】
 ヒバクシャ国際署名をすすめる愛知県民の会は1月22日にオンラインで記者会見を行ない、声明を発表しました。23日に核兵器禁止条約の発効を祝って県平和委員会青年学生部がオンラインで「被爆体験を聞く会」を開催しました。
【三重】
 1月22日に鳥羽市内で集会を、23日はヒバクシャ国際署名三重県民の会ほかの主催で条約発効記念のつどいを県総合文化センターで開きました。
【鳥取】
 1月19日、県政記者室で記者会見しました。鳥取県被爆協が日本被団協の取り組む署名活動を開始することを発表、ヒバクシャ国際署名の結果報告を兼ねました。
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鳥取 愛知
【愛媛】
 1月22日に声明を発表し、23日に禁・協などの支援で県原爆被害者の会主催の街頭での署名・宣伝行動を行ないました。被爆者と支援者で40人を超す参加がありました。この行動とインタビュー記事などが、愛媛・毎日・朝日の各紙に掲載されました。
【広島】
 核兵器禁止条約の発効の1月22日夜、原爆ドーム前から「核のない未来を」の文字を表したキャンドルメッセージを世界へ発信しました。23日は広島―東京―長崎をオンラインで結んだ「核なき世界へスタート!」。県被団協の箕牧智之理事長代行が「このうれしさをすべての原爆犠牲者に味わってもらえたら…」と声を詰まらせ、もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長とともに、政府に批准を求める活動を強めようと呼びかけました。
 条約発効前の1月中旬に、県被団協が被爆地の各政党組織、国会議員に核兵器禁止条約に関する要望書を提出。これまでに3件の回答が文書で寄せられています。
 また2月2日には西本願寺主催で浄土真宗広島別院から、核兵器禁止条約発効についてオンラインで全国の門徒に発信、箕牧智之理事長代行が「念仏者からの叫び」として思いを語りました。
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箕牧さん(広島) 愛媛
【福岡】
 1月26日、ヒバクシャ国際署名推進福岡県連絡会が学習会「ともに考える核兵器廃絶~核兵器禁止条約の発効をふまえて」を行ないました。
【長崎】
 ヒバクシャ国際署名をすすめる長崎県民の会が1月22日、平和祈念像前で「核なき世界へスタート」のつどいを開き約100人が集まりました。原爆投時刻の11時2分には浦上天主堂のアンジェラスの鐘、県原爆手帳友の会の平和の鐘、お寺の鐘などが鳴らされ、長崎市の「千羽鶴」、長崎被災協の「原爆を許すまじ」のチャイムが響く中、黙とうを行ないました。そのあと、世界に現存する約1万4千発の核弾頭に見立てた黄色の風船140個を、1つ1つしぼませていきました。最後の1個をしぼませたときには全員で大きな拍手となりました。

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広島(1月23日) 長崎(1月22日)

相談のまど
 高齢の夫婦二人ぐらし
 介護保険の活用を

 【問】高齢の両親が夫婦ふたり暮らしをしています。父は被爆者で病気を抱え、足腰も弱ってきています。母が転倒し腰椎圧迫骨折の診断を受けました。布団から起き上がるのもやっとで痛みがあり辛そうです。認知機能もちょっと混乱してきていますし、食も細くなり近くのコンビニで買ってくる小さなお弁当を昼・夕食に分けて食べている状況です。
 今は父が頑張って介護していますが、このままでは共倒れになりそうです。どういう手立てがありますか。

*  *  *

 【答】これまでおふたりで頑張ってこられたのですね。まずは介護保険の要介護認定を受ける手続きをしてください。お母さんの方が介護度は高いと思います。お父さんは要支援という結果がでるかもしれませんが、おふたりとも受けてください。訪問調査時にはあなたが同席して、認知機能の状態や排せつにかかわることをきちんと、話しづらければメモで調査員に伝えてください。お母さんが布団からの起き上がりができないことを伝えておくと、要介護1でも介護用ベッドが借りられます。今のままでは介助しているお父さんと一緒に転倒の危険もありますし、お母さんも起きることが不安になって寝たきりになりかねません。
 介護保険サービスの内容はケアマネジャーと相談してということになりますが、福祉用具や訪問リハビリまたは訪問看護サービスを利用することをお勧めします。幸い主治医の先生が長年のお付き合いとのこと、よく相談してご両親に必要なサービスを決めていけばいいと思います。特に訪問看護を受けていると不安な思いにも丁寧に相談にのってもらえます。
 高齢になっても「自分はまだ大丈夫」と、なかなか介護申請をしないものです。この機会にぜひ手続きをお勧めします。
 入院したり体の具合が悪くなったとき、骨折、腰・膝や足首を痛めて歩行や動きが困難になった時が、介護認定を受けるいい機会です。介護保険は医療保険と違って保険証を持っていけばすぐにサービス開始とはなりません。認定調査など介護度が出るまで1か月くらいかかります。
 ただし、お母さんのようにすぐに必要な場合、申請後に暫定で介護サービスが利用できます。


新たに実現 グループホーム等利用料への助成、「被爆二世健康記録簿」の発行

 この4月から介護保険サービスのうち「認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)」と「介護予防認知症対応型生活介護」が被爆者健康手帳による助成の対象になります。それぞれ短期入所(ショートステイ)も対象に含まれます。これは2017年中央相談所東北ブロック講習会で、青森から要求が出されたのを機に、日本被団協が厚労省に要請、交渉を重ねて実現したもの。認知症グループホームは「認知症」との診断を受けていれば「要支援2」から対象になります。
 また、長年要求してきた「希望する2世に手帳を」が実現しました。厚労省は「被爆2世であることを証明するものではない」としており医療助成にはつながっていませんが、「被爆二世健康記録簿」として希望者に届けられることになりました。昨年秋に厚労省から日本被団協に内容に関する打診があり、二世委員会を中心にやり取りを重ね、単に健康診断の記録だけでなく親の被爆状況や健康状況・兄弟等についても記載できるものとなりました。
 これからも被爆者から寄せられた要望を日本被団協・中央相談所に寄せてください。被爆者の声として厚労省に粘り強く要請していきます。