被団協新聞

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「被団協」新聞2021年2月号(505号)

2021年2月号 主な内容
1面 1月22日 核兵器禁止条約発効 人類史上銘記される日 被団協が集会
2面 核なき世界へスタート
「発効は被爆者の皆さまにささげられる」「皆さまのご偉業にお祝いと感謝」
  1月22日 中満泉国連事務次長メッセージ

各地で条約発効行事
談話 署名最終集約を終えて
非核水夫の海上通信(198)
3面 32年ぶりに再編、完成 岩佐さんの話を聞き小学生が描いた紙芝居 石川
『生まれた時から被爆者』 2冊目の体験集発行 胎内被爆者の会
条約参加の後押しを自民党議連に申し入れ 広島県被団協
コロナ禍の中、被爆者の語り部続く 北海道
被爆75年/基本懇答申40年シンポジウム 被爆者運動の足跡に向き合う
ノーベル平和賞に日本被団協を推薦、今年も
核実験抗議
4面 相談のまど
  有料老人ホーム入所後、介護認定うけ負担増に

 

1月22日 核兵器禁止条約発効 人類史上銘記される日 被団協が集会

ヒバクシャ国際署名最終集約 13,702,345人分国連に提出
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あいさつする田中代表委員 外務省と政党代表

 昨年10月24日に批准・加入国が50カ国に達していた核兵器禁止条約が、90日後の2021年1月22日、発効しました。日本被団協はこの日、衆議院議員会館で「核兵器禁止条約の発効を記念し日本政府に署名、批准を求める被団協集会」を開催。外務省と各政党に国会での議論開始を迫りました。
 またこれに先立つ1月8日、ヒバクシャ国際署名の最終集約数をまとめ、1370万2345人分の目録を国連に提出しました(代表談話2面)。


 外務省から本清耕造軍縮不拡散・科学部長ら2人が出席。各政党からは自民・平口洋衆院議員、公明・谷合正明参院議員、立民・近藤昭一衆院議員、国民・西岡秀子衆院議員、共産・笠井亮衆院議員、社民、福島みずほ党首、日本維新・足立康史衆院議員、れいわ・辻村ちひろ衆院東京8区総支部長の各氏が出席しました。被団協側からは首都圏と日本被団協事務局役員、弁護士ほか19人が参加しました。集会の様子はインターネットでライブ配信しました。

核兵器廃絶まで道半ば

 田中熙巳代表委員が「2021年1月22日は人類史上銘記される日になるでしょう。たくさんの仲間が亡くなっているのは残念ですが、核兵器廃絶まで半分成し遂げたよ、と伝えたい」とあいさつしました。
 次に、中満泉国連事務次長からの動画メッセージを上映(全文2面)。
 木戸季市事務局長が、外務省と各政党に対し「速やかな核兵器禁止条約の署名、批准」「国会で核兵器禁止条約について審議すること」「国会審議の場で被爆者が意見陳述すること」の3点を求めました。

「日本政府は署名しない」

 外務省の本清部長は、「条約が目指す核廃絶というゴールは共有している。核兵器がない世界を本当に実現するには、核兵器を有している国を巻き込んで軍縮を進めて行くことが不可欠だ。核抑止の維持強化を含め、現実の安全保障上の脅威に適切に対処しながら確実に核軍縮を進める道を追及していくことが適切である。こうした我が国の立場にてらし、核兵器禁止条約に署名する考えはない。立場の異なる国々の橋渡しにつとめ、核軍縮の進展に向けた国際的議論に積極的に貢献していく考えである」と述べました。

各党から

 各政党の発言は次のとおり(受け付け順)。
 れいわ新選組=一日も早く批准すべきだ。原子力発電の面でも多くの被ばく者を生んでしまったことを考えても、即刻に批准すべきと考える。
 公明党=今日、山口代表の名前で「声明」を出した。日本が核兵器国と非核兵器国との間に真の橋渡し役としての責務を果たしていくためには、立場の違いを超えて核抑止を巡る建設的な議論を促すことが欠かせない。日本が締約国会議にオブザーバー参加すべきであることを提言している。
 社会民主党=今日発効した条約で核兵器は違法であり無効であることがはっきりした。今後銀行などが核兵器に対する投資をやらないとなれば、核産業はなりたたなくなる。北東アジア安全保障構想を含めて、力強くやっていく。
 立憲民主党=唯一の被爆国と言いながら、日本が批准してリードして取り組んでこなかったことを残念に思う。オブザーバー参加して条約に批准していくべきと考える。核兵器は非人道的であり、戦争によって平和は創っていけない。
 日本共産党=核保有国とそこに頼る国に、あなた方は国際法違反だと言える時代が始まった。核兵器のない世界に向け行動するときだ。NPT再検討会議、締約国会議で成果を出して前進を勝ち取るために、力を合わせて頑張っていきたい。
 国民民主党=日本が核兵器禁止条約に背を向けていることは許せない。締約国会議にオブザーバーとして参加すべきだ。条約の6条に被爆者の救済また環境回復の項目がある。唯一の被爆国である日本の経験、被爆者の経験が生かされる。締約国会議を被爆地で開くよう取り組みたい。
 自由民主党=いろいろな活動を進めておられる日本被団協の皆さまに敬意を表したい。ただ、一転して現実の安全保障の状況をみてみると、北朝鮮をはじめとして難しい問題がある。先ほど、外務省の部長が縷々申し上げた通りだ。
 日本維新の会=締約国会議でのオブザーバー参加はするべきだ。国際的な場に出て議論し、国会でもしっかり議論していく。今日は、私たち政党の代表者が本格的な議論を始める日にしたい。

国会で議論を

 これらの発言を受け木戸事務局長が「核兵器禁止条約とは何か、国会で議論していただきたい。今年は被団協結成65年。かつて野党と被団協が話し合い、国家補償の被爆者援護法案をつくってきた。参議院では可決し、最終的には実現しなかったが、協働して我々の願いを実現することを積み重ねてきた。話し合いをして、意見を詰めていけばできる。特に被爆者を招いて意見を聞いてほしい」と述べました。
 出席議員から、外務委員会や厚生労働委員会で議論ができるのではという声があり、木戸事務局長が「議論できる場を作りましょう。被団協と皆さんとの合意事項として進めて行くことでいかがでしょう」と呼びかけ、拍手で確認されました。
 なおこの集会は、マスク着用やアルコール消毒など新型コロナ感染予防対策を講じ、参加人数を制限して開催しました。


核なき世界へスタート

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核兵器禁止条約発効記念イベント 東京・広島・長崎

 核兵器禁止条約が発効したことを祝って1月23日、東京、広島、長崎をオンラインで結んだイベントが開催されました。
 冒頭、中満泉国連事務次長、エレイン・ホワイトコスタリカ大使、ペーター・マウラー赤十字国際委員会総裁、ベアトリス・フィンICAN事務局長、被爆者のサーロー節子さんの動画メッセージを紹介。ヒバクシャ国際署名連絡会の田中熙巳代表があいさつし、条約発効の喜びと、日本政府不参加の悔しさを述べ、今後も核兵器廃絶へ進み続けようと語りました。
 田部知江子日本反核法律家協会理事が、イベントの主催団体であるヒバクシャ国際署名連絡会と核兵器廃絶日本NGO連絡会の取り組みを報告。
 広島からは、湯崎英彦知事、松井一實市長、箕牧智之県団協理事長代行、佐久間邦彦理事長が発言。被爆者のバトンを受け継ぐ若者の取り組みとして、大学院生、大学生、高校生が発言し、大学生はNPOのインターンを通じた平和についての学びを、高校生は演劇と絵画を通じて一歩を踏み出すことの大事さを訴えました。
 長崎からは、長崎大学核兵器廃絶研究センターの中村桂子さん、田上富久長崎市長、ジャパネットたかた創業者の髙田明氏のトークセッション。核兵器禁止条約はまだ生まれたばかりの赤ちゃん、これから育てていかなければ。二度と被爆者をつくらない、戦争を起さないを原点に、世界中の人に平和の大切さを伝えていかなければならない。伝え方については思い切って発想を変えていくことが必要ではないかと訴えました。


「発効は被爆者の皆さまにささげられる」「皆さまのご偉業にお祝いと感謝」
 1月22日 中満泉国連事務次長メッセージ

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 このメッセージを日本被団協および勇気ある被爆者の皆さまにお送りできることを光栄に存じます。
 本日、核兵器禁止条約の50カ国目の批准書の寄託から90日が経過し、この条約が発効する運びとなりました。
 核兵器禁止条約の発効に伴い、この条約の締約国になることを選択した国は、核兵器の保有、使用、そして使用の威嚇といった行為を禁じられます。国際社会の大多数が核兵器禁止条約を支持していることは、核兵器が呈する、受け入れがたい、そしてますます増大しつつある危険を真っ向から拒否することを表しています。それは、核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道的および環境的影響に対する正当な懸念を反映するものです。
 この条約の発効は、多国間核軍縮への支援を実証するものです。核兵器禁止条約は、急速に進化する国際環境のさまざまな課題に立ち向かうために必要な包括的な多国間主義の一例です。
 核兵器禁止条約の発効は、被爆者の皆さまにまずささげられるものです。被爆者の方々の証言は、核兵器禁止条約の背後にある道徳的な原動力となってきました。皆さまお一人おひとりの言語を絶する被爆の体験は、核抑止の冷徹な論理に人間の顔を映しつづけます。皆さまに共有していただいた記憶は、核戦争がもたらす人類の恐怖を呼び起こします。皆さま方の経験を将来の世代に伝承することは、すべての人にとって最優先事項であるべきです。
 この条約は、核兵器廃絶を追求する皆さま方の決意の証です。それは時にはどうしようもないように見える障壁に直面した際、皆さま方の不屈の積極的行動主義を思い起こすものです。
 2020年は画期的な年でした。広島と長崎が焦土と化してから75周年を迎えた同じ年の国連デーに核兵器禁止条約の50カ国目の批准がなされました。本日、その発効をもって、核兵器禁止条約は、ノーモアヒロシマ、ノーモアナガサキ、広島と長崎の悲劇を決して繰り返さないという新たな決意の象徴となります。
 皆さまのご偉業にたいし、心からお祝いとそして感謝を申し上げます。


各地で条約発効行事

宮城

 1月22日、核兵器禁止条約が発効する歴史的な記念日に、ヒバクシャ国際署名連絡会宮城として最後のイベントを行ない70人が集いました。
 開会のあいさつで木村緋紗子会長は、1300万を超える署名が集められたことへの感謝と、ようやく条約が発効したことの喜びを語り、「これはあくまでもスタート、日本政府が批准しないことは本当に悔しい。核兵器が廃絶されるまで、皆さんと一緒に頑張っていきたい」と述べました。
 第1部は、環境活動家の武本匡弘さんのオンライン講演「海も空も青いままで未来へつなごう~気候変動も核兵器もない世界へ~」。豊富な写真資料を示してのお話に、参加者は「とてもいいお話を聞けてよかった」と感想を述べていました。
 第2部は、まずシンガーソングライターの伊東洋平さんのライブ。そして、毎年「原爆死没者追悼平和式典」で演奏してくださる塚野淳一さんのチェロ演奏でした。
 終わりに、事務局の遠藤さん(生協労組委員長)から、連絡会のこれまでの取り組みの報告と、新たに「核兵器廃絶ネットワークみやぎ(略称 核廃絶ネット)」として引き続き活動していくこと、当面、被団協の日本政府に条約批准を求める署名行動に取り組むことが発表されました。
(署名連絡会宮城)

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木村緋紗子さん 塚野淳一さん
岐阜

 核兵器禁止条約発効を記念して1月23日、「被爆者の願いを継承する岐阜県民の会」が主催して核兵器禁止条約の学習会を行ないました。講師は日本被団協事務局長の木戸季市さん(写真)。
 「核戦争がこれまで起こらなかったのは、被爆者の訴えとそれを支持した世界の人々の声によるものです。解決できない問題はありません。なぜなら解決しないと人間は生き残れないからです。核兵器禁止条約はその道筋を示しました。一度、核戦争が起きたら、誰も救済できません。そのためにも、核兵器禁止条約は必要なのです。これからは、核兵器に関する常識の変換をしなければなりません。核保有国は、なぜ核兵器を使って国を守るか説明しなければならなくなるのです」。
 木戸さんのお話は、私たち参加者にこれからの活動を示唆するものでした。
 会場では新型コロナ感染予防対策をしっかりとり、人数も絞って(27人参加)開催しました。
(赤塚さとみ)

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岐阜 学習会

談話 署名最終集約を終えて

ヒバクシャ国際署名連絡会代表 田中 煕巳

 2016年4月、世界の被爆者の呼びかけによって「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名(通称:ヒバクシャ国際署名)」が始まりました。
 それから5年。2020年末に行なった最終集約では、累計署名数が1370万2345人にのぼりました。国内外でこれだけ多く方に署名いただいたこと、感無量の思いです。
 この署名は被爆者の訴えに賛同した方々の主体的な活動によって支えられてきました。特に、全国各地で地域連絡会がうまれ、様々な立場の人々が数年にわたり活動をともにできたことは、運動を新たな段階へと高めました。
 1月22日、ついに核兵器禁止条約が発効します。私たちも、条約交渉段階から今日まで、毎年の国連総会や禁止条約交渉会議、核兵器不拡散条約再検討会議準備委員会など、複数回にわたって署名目録を提出してきました。署名は国連で歓迎され、条約を推進する各国の政府代表を励ます役割を果たしました。
 核兵器の廃絶までの道の半分までやってきました。残りの半分もまた、険しい道のりになりますが、まずここまで私たちのこの間の成果が実ったことをみなさんと喜びたいと思います。
 条約の発効は核兵器廃絶に向けた新たなスタートラインです。この署名活動を通じて生まれた国内外のネットワークを活かしながら、これからもともに歩みをすすめましょう。


32年ぶりに再編、完成
 岩佐さんの話を聞き小学生が描いた紙芝居 石川

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 1988年、金沢市立十一屋小学校6年1組(故・金森俊朗学級)の児童は、5時間に及ぶ授業で故・岩佐幹三氏のお話を聞き取り、48枚の紙芝居を制作しました。その紙芝居を元に、石川県内の有志「平和の子ら」委員会で、昨年11月に26枚に再編し完成させたのが紙芝居「戦いはまだ終わらない」です。
 この「戦い」には、原爆等被害者の心や体の傷とのたたかい、今なお続く核兵器や差別とのたたかい、そして世界中の人々の平和を求めるたたかいの意味があり、それははまだ終わらない、今も未来も終わらせてはいけない、という思いが込められています。
 この紙芝居は、岩佐幹三氏の壮絶な被爆体験と戦後の被爆者運動を、次代に継承するものとなっています。全国の被団協関係者の皆さんにもご購入、ご活用いただければ幸いです。
 「被爆体験編」17枚と「戦後・被爆者運動編」9枚をセットで2000円(送料別)。問い合わせは電話090―2374―8784「平和の子ら」委員会事務局長川崎正美まで。(大田健志)


『生まれた時から被爆者』
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 2冊目の体験集発行 胎内被爆者の会

 原爆投下時、母親の胎内で被爆した人たちの組織である胎内被爆者の会(原爆胎内被爆者全国連絡会・20都府県83人)は、被爆75年という節目に2冊目の体験集『生まれた時から被爆者~胎内被爆者の想い、次世代に託すもの』(A5判、243㌻)を発行しました。
 15都府県の42人が、原爆投下直後の家族の体験や苦悩、病気や生活、差別に苦しんだ自身の半生や、核廃絶に向けた活動などを率直に綴っています。また、胎内被爆の影響で生まれつき頭囲が小さく、知的発達障害のある原爆小頭症被爆者の母親の被爆記など、支援者のレポート5編も掲載。表紙と挿絵は原爆小頭症被爆者の川下ヒロエさんからの提供です。
 広島市原爆死没者慰霊等事業補助を受け1000部印刷し、全国の図書館や大学、被爆者団体などに寄贈しました。問い合わせは、電話090―7375―1211三村まで。(三村正弘)


条約参加の後押しを自民党議連に申し入れ
 広島県被団協

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 広島県原爆被害者団体協議会は1月10日、核兵器禁止条約への参加を政府に要請するよう自民党被爆者援護・核兵器廃絶議員連盟に申し入れました。箕牧智之理事長代行らが、同議連事務局長の平口洋衆院議員の広島市事務所を訪れ、要望書を手渡しました(写真)。
 要望の骨子は、①今すぐに批准できない政治的理由があるとしても、せめて条約の趣旨に賛同を表明するよう政府に要請し、国会決議をする ②批准できる環境づくりを目指して国会審議を深める ③政府に「橋渡し」の具体策の提示と実行を求める―などです。平口議員は努力を重ねる意思を示しました。
 同様の趣旨の要望書は、広島県内の各政党組織と衆参両院議員にも送り、文書での回答を求めています。(田中聰司)


コロナ禍の中、被爆者の語り部続く
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 北海道

 札幌市は平和都市宣言に伴う平和事業として市内の学校への被爆者派遣事業を行なっています。コロナ禍の中ですが、今年度は市内12の小中学校が実施し、合計約1450人の児童・生徒が被爆者の話に耳を傾けました(写真)。
 感想文に「戦争がどれだけ怖くて悲しかったのかがよく分かりました」「原爆の被害は、その時だけでなく、あとにもつづいて苦しい思いをしたのだと知った」「“原爆は他人事ではない”、その言葉が強く心に残っています」等々と書かれていて、それぞれ自分事としてうけとめようとしていることがわかります。
 このほか、自主学習でノーモア・ヒバクシャ会館(北海道被爆者協会)を訪れた中学生、被爆者の証言ビデオを借りて学年で見た中学校、修学旅行の事前学習で証言ビデオ活用した高校もありました。(北明邦雄)

大使館に絵本

 ヒバクシャ国際署名を進める北海道民の会は、核禁条約発効の1月22日記者会見を開いてアピールを発表、知事に要望書を提出し政府に条約批准の要請電を打ちました。
 北海道被爆者協会は、156の在日大使館と4つの在札幌領事館に、「条約を批准して下さい」のメッセージとともに昨年発行した絵本『北の里から平和の祈り』を届けることにしました。メッセージの英訳を二世プラスの会の3人の高校教師が、スペイン語訳をスペイン在住の被爆三世が担当。NPT再検討会議への代表派遣のために寄せられた募金をこの費用に使わせていただくことにしました。(北明邦雄)


被爆75年/基本懇答申40年シンポジウム
 被爆者運動の足跡に向き合う

― 日本被団協資料の意義と活用の可能性 ― 継承する会・日本被団協

 2020年は被爆75年、そして12月は、厚生大臣の私的諮問機関である原爆被爆者対策基本問題懇談会(「基本懇」)が戦争犠牲受忍論を打ち出し原爆被害者援護法の制定を拒む「意見」を答申してから40年。この節目にあたる12月12日、日本被団協は継承する会と共催して、シンポジウムを開催しました。コロナ禍のもとオンラインでの実施でしたが、長崎、広島、奈良など遠隔地も含め約90人が参加しました。
 第1部では、被団協運動資料を用いた2つの報告がありました。
 報告1は昭和女子大学の「歴史学と被爆者運動史料との出会い―戦後史プロジェクトの取り組み―」。松田忍准教授と3人の学生が、被爆者運動史料を残す意味などを生き生きと語りました。
 報告2は「被爆者調査の資料が語るもの―調査・教育・継承―」。根本雅也さん(松山大学准教授)が、2019年度に一橋大学での大学院授業「平和の思想」をつうじて、資料活用の可能性を、また、2つの原爆被害者調査(1995年と2015年)から被爆者運動の調査資料が語るものについて報告し3人の受講生が発言しました。
 第2部は、ブルガリアからの留学生(広島大学大学院博士課程)ヴァシレヴァ・ブラディサヤ・ビラノヴァさんの特別報告、継承する会事務局の栗原淑江さんから「所蔵資料の概要」の報告、 日本被団協から木戸季市事務局長が「被爆者運動の中継ぎ手として」をテーマに発言しました。
 参加者からは、「継承したいという被爆者と、残していきたいという次世代の思い、どちらも不可欠。歴史資料としての研究がもっと続いていってほしい」などの感想が寄せられました。


ノーベル平和賞に日本被団協を推薦、今年も

 国際平和ビューロー(IPB)とアメリカン大学のピーター・カズニック教授が、日本被団協をノーベル平和賞に推薦したことがわかりました。同賞の推薦は、国会議員や大学教授、同賞受賞者等が行なうことができ、1月末が締め切りです。
 カズニック教授は毎年日本被団協を推薦。今年の推薦文は、「他にふさわしい団体や個人はありません。日本被団協のメンバーは60年以上にわたり、核戦争を防ぐために闘ってきました。彼らは世界の良心であり、生きた記憶でもあります」「世界から核兵器をなくそうとする被団協の闘いは、不屈で英雄的そして必要なものなのです」などと述べられています。


核実験抗議

 昨年11月に米トランプ政権が未臨界核実験を行なっていたことに対し、日本被団協は1月20日、抗議文を駐日米国大使館に送りました。
 抗議文は「米トランプ政権の暴挙に強く抗議する」とし、核兵器禁止条約の発効にも触れて「条約第1条で実験も禁止されており、加盟、未加盟の如何を問わず違法行為であることはもはや免れない」と指摘。「米国は本日、新しい大統領が就任する。それを機に、米国が核兵器の禁止・廃絶を求める世界の要請に一刻も早く応え、その先頭に立つことを強く要請」しています。(ホームページに全文)


相談のまど
 有料老人ホーム入所後、介護認定うけ負担増に

 【問】被爆者である母はひとり暮らしが難しくなり、有料老人ホームに入所しました。入所当時は自分で身の回りのことも何とか出来、外出したりしてホームでの生活を楽しんでいましたが、昨年春ごろから自室で過ごすことが多くなり介護が必要になりました。ホームの方で介護保険の介護認定の手続きをしてくれて「要支援2」となりました。
 「要支援2」となったら、これまで納めていた毎月の費用の他に介護保険の利用料が請求されました。有料老人ホーム入所の場合、被爆者健康手帳による助成はないのでしょうか。

*  *  *

 【答】有料老人ホームには、介護付き施設と外付けの介護サービスを利用する施設があり、ほとんどが「介護付き」と銘打っています。
 有料老人ホームは一定の基準を満たしていれば介護保険の対象となり「特定施設入居者生活介護」「介護予防特定施設入居者生活介護」として介護保険のサービスが受けられますが、その費用は毎月の入居料とは別に請求されます。お母さんの場合も「要支援2」となったため「介護予防特定施設入居者生活介護」という名目の費用請求がされたのだと思います。在宅の場合はヘルパーサービスを受けたからいくらという請求ですが、施設入居の場合はそれとは違って介護度によって定額で請求されます。
 介護付き有料老人ホーム入所者に対する被爆者援護による助成は行なわれていません。また、介護手当も請求が認められていません。
 「介護付き」でなく外付けサービスを利用する有料老人ホームでは、ケアマネジャーも必要なサービスもすべて外部の事業者と契約することになるので、被爆者健康手帳による医療系・福祉系サービスへの助成が受けられますし、介護手当も請求できます。