6月4日 日本被団協第59回定期総会
被爆70年を前に、核兵器の非人道性を明らかにする国際会議が、昨年、ノルウェーのオスロで、今年、メキシコのナジャリットで開かれました。国連加盟193カ国の4分の3にあたる146カ国が参加し、あらゆる側面からの研究・検討が加えられました。ナジャリット会議をまとめた議長は、核兵器がいったん使用されれば、いかなる国家、国際機関も、核兵器爆発に適切に対応し、必要とされる人道援助や防護を提供する能力を持たないし、たとえそのような能力を持とうとしても不可能であろうと結論づけました。核兵器の維持近代化に巨大な資産や資源が費やされており、核兵器の存在そのものが非合理的で、正当性が疑われ、とどのつまり人間の尊厳に反すると言い切りました。そして、ナジャリット会議が、核兵器を廃絶するため、法的拘束力をもつ条約の締結へ、行動を起こすべき時が来たことを示したとまとめました。
1946年から12年間、アメリカの核実験場にされ多くの被害者を出したマーシャル諸島共和国は、この4月、核保有9カ国は核兵器不拡散条約(NPT)が定めた「核軍縮義務」を怠って国際法に違反しており、条約の義務を守れと国際司法裁判所に提訴しました。
5月9日まで国連で開かれた2015年NPT再検討会議第3回準備委員会では、これまで核兵器の非人道性を明らかにすることに背を向けてきた米、英両国が、核兵器の非人道性を受け止める発言をするなど変化を見せています。
第3回核兵器の人道上の影響に関する会議は、今年12月8日、9日にオーストリアのウィーンで開かれることが決まっています。来年の2015年NPT再検討会議の結果を予断することはできませんが、世界の大勢は核保有国に、核兵器廃絶を強く迫っています。
広島、長崎の被爆者は1956年、日本被団協を結成した際、「世界への挨拶」で「私たちの体験をとおして人類の危機を救おう」との決意を表明しました。それ以来、幾多の困難を乗り越え、被爆の実相を国内外にひろげ、核兵器廃絶を訴えてきました。そのことが、いま世界の人々によって、核兵器を一掃する動きに結実しようとしています。被爆者は、心から歓迎し、全世界の人々と連帯し、核兵器のない平和な世界の実現へ力をつくすことを表明します。
全国7裁判所でたたかわれている「ノーモア・ヒバクシャ訴訟」は、原爆症認定集団訴訟とは別に新たに原爆症認定を求める裁判です。
「集団訴訟」は原告勝訴が29回に及び、2009年8月6日、総理大臣と日本被団協が集団訴訟終結にあたっての「確認書」を交わし、「今後、裁判の場で争う必要のないよう、定期協議の場を通じて解決を図る」ことを確認しました。その後も認定申請却下が相次ぎ解決をはかるため起きたのが「ノーモア・ヒバクシャ訴訟」です。
原告は109人に及び2010年3月、裁判が始まり、今年5月9日までに6判決で22人が勝訴。厚労省は相次ぐ敗訴を反省せず4人を控訴する一方、昨年12月改定の認定基準に該当し、国側敗訴が確実な原告を却下処分の「自庁取り消し」で22人を認定、原告40人が認定を勝ち取りました。裁判しなければ却下されたままでした。
69人が裁判を続けています。国側は裁判のなかで、集団訴訟で裁判所に否定され続けてきた主張を蒸し返し、原爆被害を狭い範囲の軽く小さな被害に過ぎないと主張することに懸命です。原告に1件数万円もする病院のカルテ提出を求めるなど財政面からの原告いじめも続けています。
原告と弁護団は、裁判勝利のため全力を挙げています。裁判勝利は、69年経っても続く原爆被害の残酷な実態を明らかにし、核兵器が使われたら、人間に取り返しのつかない傷跡を残すことを、裁判を通じて世界に知らせ、核兵器廃絶の運動を励ますものです。
日本被団協総会は訴訟の勝利を期し、全面的支援を決議します。
日本被団協の運動は大きな節目を迎えています。今年は「基本要求」策定30年、来年は被爆70年。翌年は日本被団協結成60年です。
総会で、核兵器廃絶への世界の流れを確認し、生きているうちに「核なき世界」を見ることができるかもしれない希望を持つことができました。
同時に、日本政治の先行きにこれまでにない危機感を持ちました。
外務大臣が被爆地長崎で、極限の状況で核の使用がありうる考えをのべました。すべての核廃絶を求める私たちは許すことのできない発言です。
安倍総理は「集団的自衛権」の行使を認めようとしています。先の大戦で原爆死没者を含め日本人だけで約300万人もの尊い命が失われた反省のうえにできた憲法9条を骨抜きにすることは絶対に認められません。
福井地裁の「原発差し止め」、横浜地裁の自衛隊機夜間飛行禁止判決に勇気をもらいました。
全国7裁判所の「ノーモア・ヒバクシャ訴訟」で6回も続いた原告・被爆者勝利の判決は昨年12月の新しい基準を超え、司法と行政の乖離が埋められていないことを示しました。日本被団協提言に従った制度の抜本改善が急務です。
原爆死没者への国の償いを求める運動は、被爆70年が目標年です。ぜひ成功させましょう。
被爆者の高齢化、病弱化にともない、切実な相談が寄せられています。日本被団協中央相談所の相談活動を充実し、全国の期待に応えましょう。
二世の健康調査実施、健康診断充実も実現させましょう。
平和で安心・安全な社会をつくることを誓いあって総会決議とします。
定期総会で選出、確認された日本被団協2014年度役員は以下のとおりです。
〈代表委員〉
坪井直 谷口稜曄 岩佐幹三
〈事務局長〉
田中熙巳
〈事務局次長〉
山本英典 木戸季市 児玉三智子 中村雄子 藤森俊希
〈代表理事〉
越智晴子 伊藤宣夫 久保山榮典 大和忠雄 鹿島孝治 森田雅史(新) 松浦秀人 藤田浩(新)
清水弘士(新) 山田拓民 大岩孝平(新)武久熈
〈会計〉
亀井賢伍
〈会計監査〉
家島昌志(新) 大下克典(新)
〈顧問〉
肥田舜太郎
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内閣府 | 全体集会 |
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厚労省 | 外務省 |
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生活の党 | 経産省 |
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社民党 | 維新の会 |
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民主党 | 共産党 |
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自民党 | 公明党 |
日本被団協は6月5日全国の被爆者、被爆二世ほか約85人が参加して中央行動を行ないました。関係省庁、政党(面談要請に返事があった政党)に対し、総会で決定した運動方針に基づき、現行法改正などを要請。地元選出議員への要請にも取り組み、鹿児島3区選出の野間健衆議院議員(無所属)から現行法改正賛同署名を獲得しました。
[内閣府]大臣官房総務課佐野調査役ほかが対応。総理大臣宛に、核兵器廃絶の先頭に立つこと、憲法の解釈変更による集団的自衛権行使容認をやめ、9条を厳守すること、原爆被害への国の償い実現、日本被団協の提言に沿った原爆症認定の在り方の改定、原発の再稼働と新増設、輸出の中止などを要請しました。
[厚労省]榊原被爆者援護対策室長ほかが対応。認定申請について困難な事例などをあげ、日本被団協の提言の受け入れ、大臣と実のある協議の実現などを要請しました。
[外務省]北野軍縮不拡散科学部長ほかが対応。北東アジアは核保有国が存在するため、非核地帯化は難しい、などと述べました。
[経済産業省]資源エネルギー庁担当者が対応。電力の安定供給のためには一定水準の原発の維持が必要、などと説明しました。
[政党]生活の党、維新の会、社民党、共産党、民主党、公明党、自民党議連がそれぞれ党本部などで要請に応じました。
弁護士・島田広(福井市)
福井地方裁判所が5月21日、日本の裁判史上3番目となる原発の運転を禁ずる判決を言い渡しました。
判決は、これまでの原発耐震設計の基準設定に根本的な疑問を示し、ストレステストの想定を超える大地震に襲われる危険や、想定している地震でも原子炉が冷却できなくなる危険があること、使用済み核燃料用プールから放射性物質が漏れる危険があることなどいくつもの危険性を指摘し、人格権は憲法上尊重されるべきもので電力会社の営業上の利益を優先してはならないとして、大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じました。
これまで裁判所は、1992年の伊方原発訴訟の最高裁判決以来、一方では「原子力災害を万が一にも起こしてはならない」との理念を繰り返し述べながら、原発事故の具体的危険性について高度の立証責任を原告側に課し、行政の安全審査の結果を追認する判決を繰り返してきました。今回の福井の判決が、原告の立証のハードルを引き下げた点は、今後の原発訴訟にも大きな影響を与えるでしょう。
判決は、原発停止の経済的コストを主張する電力会社に対し「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失」だと厳しく批判しました。
住民の生命と安全を第一に考えた判決を高裁でも維持させるために、全国の皆さんと力を合わせて闘いたいと思います。是非ご支援をよろしくお願いいたします。
宝塚市原爆被害者の会25周年
宝塚市発行の冊子「いま、語りつぐ平和への願い\」
被爆者と二世が共同作業(長崎)
(6)原爆は絶対悪の兵器
被爆者の要求の原点は原爆被害です。「基本要求」は冒頭で「原爆は、広島・長崎を一瞬にして死の街に変えました」と書き出し、「原爆がもたらしたもの」を簡潔に描いて、原爆被害の実態と核兵器の残虐性を告発しています。
「原爆は、閃光とともに二つの街を壊滅させ、無差別に大量殺傷しました。人類が初めて体験した核戦争の“地獄”でした。/原爆は、今にいたるまで、被爆者のからだ、くらし、こころにわたる被害を及ぼし続けています」
そして、こう訴えています。―― 「核兵器はもともと、“絶滅”だけを目的とした狂気の兵器です。人間として認めることのできない絶対悪の兵器なのです」
岸田文雄外相が今年1月、「万が一の場合」は核兵器の使用が容認される、と語りました。被爆国の外相として許されない発言です。
どのような名目であれ「絶対悪の兵器」は認めない、というのが「基本要求」の宣言です。
記者会見する胎内被爆者たち
5月28日、広島、香川、愛媛の胎内被爆者7人が広島市内で準備会を開き、胎内被爆者の全国連絡会の結成をよびかけました。これは、三村正弘さん(68歳)が被爆者健康手帳を取得した昨夏の新聞報道を機に、同氏と小学校の同級生の好井敏彦さん(68歳)とが連絡をとったことから持ち上がった構想です。
この日の準備会では、被爆者の高齢化が進んでいる中、被爆体験のない胎内被爆者であっても、被爆の実相を国内外に訴えていく活動をどうしたら出来るのかなどを議論しつつ、日本被団協と各県被団協との連携などの方向性を確認。会則(案)や結成総会の次第を決めました。なお、会則(案)によれば、名称を原爆胎内被爆者全国連絡会とし、加入資格は1945年4月2日以降誕生の被爆者となっています。
結成総会は、8月5日午後1時半から広島市中区大手町5の「ゆいポート」で。入場無料。
問い合わせは、準備会事務局の三村正弘さん(電話090-7375-1211)まで。
ノーモア・ヒバクシャ9条の会交流会
ノーモア・ヒバクシャ9条の会(略称・NH9)は6月4日、東京・御茶ノ水のホテルジュラクで、全国交流集会を開きました。集団的自衛権の行使容認をめぐり情勢が緊迫するなか、30人余が「ヒロシマ・ナガサキ体験と9条-いまだからこそ語り伝えたいこと」をテーマに、真剣な討議を行ないました。
里見香世子さん(千葉、胎内被爆)と吉田一人さん(東京、13歳被爆)の問題提起を受け、参加者が次々に発言。憲法9条の原点はヒロシマ・ナガサキの体験にあり、被爆者が戦争と原爆の実相、9条への思いを語っていくことが何より大事であると語られました。
オリジナルポストカード(販売中)を使い身近な人から訴えを広げよう、「はがきアンケート」を実施し世論に訴えようと申し合わせました。
本紙に付録として「はがきアンケート」を同封しています。ご協力ください。
【問】私の知人の被爆者が亡くなられました。知人には身寄りがありません。火葬場で荼毘にふした後、知人の友人たちが集まってお別れの会を開きました。葬祭料は請求できるでしょうか。
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【答】「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」では、葬祭料は、実際に葬祭を行なった人に20万6千円支給されることになっています。葬祭を行なった人であれば、民法上の遺族である必要はありません。また葬祭は宗教儀式に限りませんので、お別れの会や偲ぶ会など、故人を偲ぶ催しも対象になります。
諸外国の国家補償について
市民の戦争被害に対して、諸外国では、国家補償はどうしているのですか。(東京・出版業・55歳)
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