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シーナが学校を休んだ。 どんなに具合が悪くても、休んだことなんてないのに。 見舞いに行こうかとも思ったんだけど、きっと明日は出てくるだろう……。 コウイチが私のところに来た。 「ナッツ、見舞いに行くだろ?」 「今日はダメ。東京から先生が来るし…。明日行くよ」 コウイチが何か言いかけて、でもあきらめたかのように溜め息をついた。 「俺、行ってくるから」 「そう?よろしくね」 ヒラヒラと私は手を振った。 なんでもないって、どうして思ってしまったんだろう。 その日の練習は、胸に何か重いものが詰まっているような感じで集中できなくて、 何度も先生に叱られた。 一人居残り練習までさせられて、すっかり帰りが遅くなってしまった。 身体中がギシギシして、へたばってしまいそうに痛い。 ゆっくりと一足一足踏み出して、家に帰った。 0時を回っていたと思う。 いつもはとっくに寝ているはずの母親が、玄関先で待っていた。 (え!何?今日は喧嘩してきたんじゃないよ!私は無実だっ) いつものように、”そこに正座しなさい”って怒鳴られるのかと思ってビビル私に、 母親が駆け寄って詰め寄ってきた。 (ヒイッ) 身が竦む。 もうこれは条件反射だ。 けれど、母親から発せられた言葉は、まったく予想もしていなかったものだった。 「早く行きなさい!」 「え?」 「お友達のシイナさん、病院に運ばれたのよ!あなたを待ってるわ」 母親が鞄を奪い取られ、替わりに財布を渡された。 「……っ!!」 一瞬で理解して私は走り出した。 身体の痛みなんて、どこかに消えていた。 通りでタクシーを拾い、全力で急がせて、その間ずっとずっと祈っていた。 どうか、あの子を連れて行かないで!! まだ、見せてあげたい景色があるんだ。 連れて行ってあげたいところが。 涙も出ない。 いや、泣いている場合じゃない! 携帯なんて持ってなかったから、問い合わせることもできなくて、ただ、私はタクシーを急がせた。 「急いで!!……お願い」 胸が…苦しい……。 病院の玄関先に、コウイチが立っていた。 私に気がつくと、すぐに誘導してくれる。 「ずっと調子が悪かったんだ。3時間くらい前に、倒れて…」 狭い部屋にたどり着いた。 シーナがベッドで寝ているだけで、今は他に誰もいない。 「落ち着いてるけど、かなり体力が落ちてるから、しばらく様子をみようって」 シーナは真っ白な顔をしている。 私は、その手を取った。 ねえ、シーナの腕はこんなに細かった? 腕だけじゃない。 どこもかしこも、こんなに小さかった? 「シーナ…」 私は、シーナに声をかけた。 「ナッツ、寝かせてやれよ。やっとさっき眠ったんだから」 「だって…、嘘でしょう。なんでシーナなのよ。何がどうなってるのよ」 叫びそうな私は、コウイチに無理矢理廊下に出された。 「脳に、障害があるのは知ってたか?」 「…………」 「先天性のものらしい。よくわからないけど。いつ、こういうことが起こってもおかしくない体だったって」 「…………」 「シーナは、爆弾抱えて生きてきたんだ」 「それが、何だって言うのよ!今じゃなくたっていいじゃない。50年後でも60年後でもいいじゃない。 まだ何にもやってないのに。どうして今なのよ!」 八つ当たりだって、わかっていても止められなかった。 天を、恨む。 全てに怒りを。 ……私は、バカだ。 ずっと、空を睨んでいた。 NEXT |
