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そんな私の日常が、崩れた日。 あの日も隣町を歩いていた。 レッスンの時間までちょっと間があったから、買い物でもしようかと思ったんだ。 ちょうど某病院の前を通りかかった時だった。 バッタリと、ありえない人物と遭遇した。 それは……。 「マコト…?」 私の彼氏だった。 ありえない。 だって、マコトは隣に女の子を連れていて、出てきたこの病院は、産婦人科だよ、おい!! 「てめえ!何してやがった!?」 久しぶりの再会に、私は早速マコトに詰め寄った。 マコトは真っ青になって、口をパクパクさせている。 「やめて!やめてください」 マコトの隣の女が割り込んできた。 「乱暴しないで、死んじゃう」 これくらいで死ぬわけないだろ。 でも私は手を離してやった。 「お前誰だよ?」 女に向かって訊く。 もう、答えなんてわかってたけれど、この場合訊くしかないだろ。 「ミドリです。マコトさんの彼女です」 この女、可愛い顔して強いんだ。 まっすぐ宣戦布告してきやがった。 「はあ?何言ってんの?お前」 ミドリはガバっとその場にひざまづいて、言った。 「マコトさんをください。赤ちゃんがいるんです。私達結婚するんです!」 ……………。 私はマコトを見た。 腰を抜かしてワタワタしている。 無様な男。 思えばなんでこんなヤツと付き合っていたんだっけ? 誠実のマコト。 嘘つきのマコト。 浮気モノマコト。 小心者のくせに、抱きしめる腕だけ強かったマコト。 「こんな男、幸せになれるわけねーよ」 「私が幸せにします」 …はは、そういや昔マコトに言われたっけ「ナッツを幸せにする」って。 くだらねえ。 世の中、嘘ばっかりだ。 どこにも本当なんてなくて。 みんな騙しながら生きてる。 真面目な顔して、笑ってるんだ。 無性にシーナに会いたくなった。 考えナシのシーナ。 「いいよ。あんたにやる。もういらないや」 「本当ですか!ありがとうございます」 「でも、一発殴らせてよね」 私はにっこり笑って、マコトに前に立った。 「何か言い残すことはある?」 「待て。ナッツ誤解だ。俺は裏切ってなんか……」 慌てて手を振って否定するマコト。 「え?マコちゃん、何言ってるの?」 ミドリの目が、弱さに揺らめく。 こんな茶番はもうたくさん。 お前の弱さは卑怯だ。 言い訳だらけの言葉はもう聞きたくない。 私はマコトに向かって、渾身の力で拳を打ち込んだ。 キラリ+ マコトは星になって飛んで行った。 「マコちゃ〜〜〜ん!!」 ミドリの声を背後に、私は歩き出した。 最初から、信じてなんていなかったさ。 ただ、傍にいたいっていうから置いていただけさ。 私が辛い時、いっつも傍にいてくれないマコト。 私は、あんたの前では泣けなかった。 私もあんたも、ただの遊びだ。 だけど、今。 どうしてこんなに、心が掻きむしられるんだろう。 辛くないはず、なのに。 寂しい。 「おい、ナッツ!」 フラフラと歩いていた私を、コウイチが呼び止めた。 (こんなとこにいるなよ、コウイチ!) 今は会いたくなくて、私は走って逃げた。 そしたらコウイチは、なんと追いかけてきたんだ。 「来るな!」 走りながら私は叫んだ。 それでもコウイチは追いかけてくる。 繁華街を抜けて、寂れた道へ。 日が沈む。 街灯が次々と灯る中を走った。 走って走って、捕まった。 「来るなっていったのに」 さすが現役男子高校生の体力には負ける。 それともコウイチの足が速いのか。 「悪趣味な男だ」 「なんとでも言ってくれ」 ハアハアと息をつきながら、コウイチは私の手を離さなかった。 NEXT |
