「シーナの夏2」
 
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 それからコウイチは、何かと私に絡んできた。
 というか、目立つんだよね、お互い。
 だから、手をあげて私を呼ぶなよ。
 
「コレ、クッキーもらったんだけど。一個やろうか?」
「いらんって。あんたが貰った物でしょ」
「いらないの?すげー美味かったのに」
 あの彼女15号さんか。憐れだ、彼女も。
 やっぱりこんなの嫌だぞ。
 学校ハケたら速攻彼氏ん家に行こう。
 この間留守だったんだよね。
 なんか、しばらく会ってないし・・・。
 
「おーい、コウやん。今夜どう?」
「もち、行くっしょ」
 コウイチの大勢いる友達の一人が声をかけて来たのを幸いに、私はその場を離れた。
「あ、クッキー。腹へってんだ。1個くれ」
「ヤダね。俺が貰ったんだから。彼女でも作れば〜?」
 そんな会話が背後で聞こえた。
 …その時はそんなに気にしてなかったんだけど。
 あれ?なんか変な会話じゃなかったか?
 気のせいかな。きっと気のせいだな。
 サラっと記憶は消去しておこう。
 
 放課後、彼氏の家に遊びに行った。
 絶対いるって思ったんだけど、またしてもいなかった。
 どういうこと!!
 ポストに新聞がたまってる。
 帰ってない?
 なんだか不安になってきた。
 探した方がいいのかな。
 号令かければすぐに見つかりそうなんだけどな。
 アイツも、私の名前出してかなり派手なことしてるから、この辺離れると逆にヤバイんだよね。
 でもまあ、男なんだから自分で何とか切り抜けるだろ。
 すっかりヒマになった私は、隣町に出かけた。
 今日はレッスン日じゃないけど、いいや。
 勝手に使っていいことになってるし。
 ダンス教室自体は毎日開放になっている。
 ただ、先生が来ないだけで。
 
 案の定、誰もいなかった。
 今日は私の貸切だ。
 大きな鏡に自分を映して、音楽をかける。
 バレエも社交ダンスもジャズもラテンもできるけど、やっぱり最近はヒップホップかなぁ。
 大音量で音楽をかけて、一心に踊っていると、汗と一緒に悪いものが出て行くみたい。
 最高に気持ちがいい。
 狭いシャワー室で汗を流して、さっぱりと教室を後にした。
 
 もう、すっかり夜。
 なんだかお腹空いた。
 夕ご飯残ってるだろうか・・・。
 フラフラしながら駅に向かって歩いてると、ばったりと、ホントにばったりとヤツに出くわしてしまった。
「あれ、こんなトコで何してんの?」
 コウイチだよ・・・。
「ちょっとね。そっちこそ夜遊び?」
「俺たちは、コ・レ」
 なっと、隣の友人に笑いかけながら肩に背負っていたギターケースを掲げてみせた。
「ギター?弾けるんだ」
「今日もライブの帰り。これから打ち上げなんだ。一緒に行かん?」
 お腹空いた。家に食料があるかどうかもわからないこの状況。
「私、お金持ってないよ」
「大丈夫。今日はジュンの奢りだから」
「ちょっと!コウイチくん」
「なんだよ、ジュン。お前が弾くの間違えたんだろ」
 そこそ綺麗な顔立ちの男の子が、うなだれている。
 見かけない顔だ。たぶんウチの学校の生徒じゃないな。
 同じ学校のヤツとは、一緒になりたくないもんね。
  「ご一緒しましょ」
 私は、にっこり笑った。
 
 打ち上げといっても貧乏学生。
 安いラーメン屋だったんだけど、すごく美味しかった。
 コウイチとジュンの会話は、漫才のように見事なボケっぷりを披露してくれて、 私はお腹が痛くなるまで笑った。
 こんな日も悪くない。
 私は、今まで友達を持ったことがない。
 手下みたいなのはいっぱいいたけど、対等な友達がいなかった。
 上下関係じゃない普通の会話ってものが、こんなに楽しいものだったんだ。
 それから3人で、たまに妹も呼んで4人で遊ぶ回数が増えた。
 だって、ダンススクールのすぐ裏手がライブハウスだったから。
 音楽の話にはみんなコダワリを持っていて、特にコウイチと妹は語りだすと止まらなかった。
 私は、そこで初めて、妹がプロのダンサーを目指しているのを聞いた。
 ずっと守ってきた妹が、いつの間にか先に大人になってたんだ。
 少し嬉しくて、寂しかった。
 
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