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それからコウイチは、何かと私に絡んできた。 というか、目立つんだよね、お互い。 だから、手をあげて私を呼ぶなよ。 「コレ、クッキーもらったんだけど。一個やろうか?」 「いらんって。あんたが貰った物でしょ」 「いらないの?すげー美味かったのに」 あの彼女15号さんか。憐れだ、彼女も。 やっぱりこんなの嫌だぞ。 学校ハケたら速攻彼氏ん家に行こう。 この間留守だったんだよね。 なんか、しばらく会ってないし・・・。 「おーい、コウやん。今夜どう?」 「もち、行くっしょ」 コウイチの大勢いる友達の一人が声をかけて来たのを幸いに、私はその場を離れた。 「あ、クッキー。腹へってんだ。1個くれ」 「ヤダね。俺が貰ったんだから。彼女でも作れば〜?」 そんな会話が背後で聞こえた。 …その時はそんなに気にしてなかったんだけど。 あれ?なんか変な会話じゃなかったか? 気のせいかな。きっと気のせいだな。 サラっと記憶は消去しておこう。 放課後、彼氏の家に遊びに行った。 絶対いるって思ったんだけど、またしてもいなかった。 どういうこと!! ポストに新聞がたまってる。 帰ってない? なんだか不安になってきた。 探した方がいいのかな。 号令かければすぐに見つかりそうなんだけどな。 アイツも、私の名前出してかなり派手なことしてるから、この辺離れると逆にヤバイんだよね。 でもまあ、男なんだから自分で何とか切り抜けるだろ。 すっかりヒマになった私は、隣町に出かけた。 今日はレッスン日じゃないけど、いいや。 勝手に使っていいことになってるし。 ダンス教室自体は毎日開放になっている。 ただ、先生が来ないだけで。 案の定、誰もいなかった。 今日は私の貸切だ。 大きな鏡に自分を映して、音楽をかける。 バレエも社交ダンスもジャズもラテンもできるけど、やっぱり最近はヒップホップかなぁ。 大音量で音楽をかけて、一心に踊っていると、汗と一緒に悪いものが出て行くみたい。 最高に気持ちがいい。 狭いシャワー室で汗を流して、さっぱりと教室を後にした。 もう、すっかり夜。 なんだかお腹空いた。 夕ご飯残ってるだろうか・・・。 フラフラしながら駅に向かって歩いてると、ばったりと、ホントにばったりとヤツに出くわしてしまった。 「あれ、こんなトコで何してんの?」 コウイチだよ・・・。 「ちょっとね。そっちこそ夜遊び?」 「俺たちは、コ・レ」 なっと、隣の友人に笑いかけながら肩に背負っていたギターケースを掲げてみせた。 「ギター?弾けるんだ」 「今日もライブの帰り。これから打ち上げなんだ。一緒に行かん?」 お腹空いた。家に食料があるかどうかもわからないこの状況。 「私、お金持ってないよ」 「大丈夫。今日はジュンの奢りだから」 「ちょっと!コウイチくん」 「なんだよ、ジュン。お前が弾くの間違えたんだろ」 そこそ綺麗な顔立ちの男の子が、うなだれている。 見かけない顔だ。たぶんウチの学校の生徒じゃないな。 同じ学校のヤツとは、一緒になりたくないもんね。 「ご一緒しましょ」 私は、にっこり笑った。 打ち上げといっても貧乏学生。 安いラーメン屋だったんだけど、すごく美味しかった。 コウイチとジュンの会話は、漫才のように見事なボケっぷりを披露してくれて、 私はお腹が痛くなるまで笑った。 こんな日も悪くない。 私は、今まで友達を持ったことがない。 手下みたいなのはいっぱいいたけど、対等な友達がいなかった。 上下関係じゃない普通の会話ってものが、こんなに楽しいものだったんだ。 それから3人で、たまに妹も呼んで4人で遊ぶ回数が増えた。 だって、ダンススクールのすぐ裏手がライブハウスだったから。 音楽の話にはみんなコダワリを持っていて、特にコウイチと妹は語りだすと止まらなかった。 私は、そこで初めて、妹がプロのダンサーを目指しているのを聞いた。 ずっと守ってきた妹が、いつの間にか先に大人になってたんだ。 少し嬉しくて、寂しかった。 NEXT |
