「シーナの夏8」
 
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 私たちは遊びまくった。
 
 コウイチのチケットの手売りを手伝ったり、私のレッスンを見学させたり、 映画を観たり、買い物に付き合わせて……。
 夏休みも毎日のように、シーナと一緒にいた。
 考えられる全てのところに連れて行って、誰よりも同じ時間を過ごした。
 今、一緒にいたいと思ったから。
 今しかないって、感じていたんだと思う。
 
 楽しかった夏。
 
 それは二学期が始まって、冬の気配を感じはじめた頃だった。
 シーナが変な咳をしていた。
「なんだよシーナ、風邪ひいたのか?」
 私は保健室から薬を取ってきて、苦味に顔をしかめるシーナに無理やり飲ませた。
「帰って寝てろよ」
 咳の止まらないまま、いつものように私のレッスンに付いて来ようとするシーナを咎めた。
「ヘーキ、だから」
 シーナが私の服を掴んで離さない。
「シーナ!帰れ」
 数日後に、あるコンクールに出ることになっていた私には時間が欲しかった。
 そこで上位に入れば、卒業後すぐに雇うと言っている店があったから。
 東京に出てプロになる!
 これが私と妹の、夢への一歩になるはずだから。
「俺が送るよ」
 コウイチが、やんわりシーナを引きはがした。
「俺と一緒に帰ろう、シーナ」
「うん」
 シーナは、安心したように笑った。
 少し、甘やかしすぎたのかもしれない。
 最近のシーナは、必ず私かコウイチに引っ付いている。
 
 少し待っててよ、シーナ。
 来月のコンクールが終わるまで。
 あと少しだから。
 いくら練習しても付き纏う黒い闇に、私は潰れそうだったんだ。
 
 そんな私の状態に気付いたのか、次の日からシーナはおとなしくなった。
 無理に引っ付いてくることもない。
 帰りは、コウイチが送って行っている。
 学校の休み時間も、私は練習していたから。
 そのことを、私はずっと先まで悔やむことになる。
 
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