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「いい加減にしてよ!」 物静かな妹が声を荒げたのは、私が今日同じ所を4回も間違った時だった。 「やる気がないなら帰ってよ!邪魔しないで」 妹に怒られたのは、初めてかもしれない。 シーナが気になって、ボロボロに疲れ果てていた私は、言い返すこともなく帰り支度を始めた。 やらなくちゃいけないことはたくさんあるのに、そのどれもが中途半端だった。 帰って、シーナの所に行ってあげなくちゃ。 疲れていた。 ふと、何もかもどうでもいいような気がしてきた。 (一緒に死んじゃおうかな…) 私一人くらいいなくなっても、何も変わらないよね。 シーナの病室で、シーナの頭を撫でながら、ボツリと言った。 「シーナ、一緒に楽になろうか?」 シーナはキョトンと私を見て、それから言った。 「……シーナ、いき、て…うれし……ね」 小さな声で精一杯、私に伝えようとしていた。 『生きてるの。嬉しいの。痛いのやだ』って。 それは、口癖のように毎日言っていた言葉。 もう、 たぶん、 無理だって、 わかってる。 シーナは、 このまま、 治らない。 それでも………。 病室から大きな夕陽を二人で見た。 静かな時が、沈んでいく。 その夜半、急に容態が悪化した。 恐くなった私は、すぐにコウイチに電話した。 シーナの親にも電話したけれど、留守録だったので伝言を残した。 バタバタと医者が走り回る中、私は廊下の椅子で叶わない願いを祈っていた。 (たすけて!) (でも、きっとダメだろう…) コウイチが走って来た。 ふふ、あの時と逆だね。 シーナが倒れた時は、私が走って来たんだっけ。 二人で、閉まったドアを見ていた。 カチカチカチと音が聞こえた。 なんだろうと思ったら、私の体が震えていたんだ。 恐くて。 逃げ出してしまいたい。 家に帰って、布団被って、閉じこもりたいの! ドアが開くのが恐い!! そんな私の心をよそに、静かにドアが開いた。 いつも陽気な看護士がうなだれている。 医者が何か言っているけれど、わかんないよ!聞こえない!! コウイチに促されて、中に入った。 「シーナ…」 私の呼び掛けに、閉じた瞼が開かれたけれど、もう何も見えてないね。 焦点が合わない目で私を探すから、私はシーナの手を握った。 「いるよ、ここに」 そうしたら、シーナは安心したように、ほほ笑んだような気がした。 「ナッツ、シーナが何か言ってる」 小さく口が動いてる。 「……よかった…」 かすかに聞こえたシーナの声。 全ての想いがこもっていた。 それから急にシーナは目を見開いて、窓の外を震える指で差したんだ。 その先には何もなく、真っ暗な空だけなのに。 「あ、ああっ!」 とシーナは信じられないくらい大きな声をだした。 「……あ、あそこ、にっ」 何もないよシーナ。 何を見てるの?シーナ。 「きれ、な、――のむこう、で…、また・ね……」 「え?」 聞き取れなかった。 なんて言ったの?シーナ。 何が見えるの? その答えは、永遠に分からなくなった。 シーナの手がポトリと落ちる。 静かになったシーナ。 シーナは、もう、どこにもいなくなってしまった。 NEXT |
