「シーナの夏12」
 
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 シーナの葬式には、たくさんの人が来ていた。
 
 担任がクラスのヤツラを連れてきていたんだけど、この中の何人が本当に悲しんでいるんだろう。
「終わったらドコ行く〜?」
 そんな声が聞こえた。
 初めて見たシーナの両親は想像よりずっと若くて、とても子を持つ親とは思えなかった。
 涙ぐみながら弔辞を読み上げる父親。
「こんなにたくさんの人に支えられて、あの子は、幸せです…」
 
 ……シーナは、お前に支えて欲しかったはずだ。
 
 私は葬列を離れた。
 空は青く、遠い。
 タバコを取り出して吸ってみたけど、あまりの不味さにゴミ箱に捨てた。
 私は泣けなかった。
 もう一人、泣けないやつがここにいた。
 
「サボリ?」
 私は、同じように空を見上げていたコウイチに声をかけた。
「アイツさ、最後に何て言った?」
 コウイチが訊いて来た。
「あの、【綺麗な虹の向こうで、またね】って聞こえたんだけど、自信ないや」
「そっか、俺は【綺麗な星の向こう】って聞こえた。……どっちみち、空には違いないな」
「うん」
 
 あの空に、シーナがいるんだ。
 
 
 それから。
 私はダンスを最初から打ち込みなおし、次のコンクールで妹とペア優勝することができた。
 学年があがり3年になっても、コウイチとの奇妙な友情は続いていた。
 周りは付き合ってるんだと誤解したままだったけど、面倒だったのでそのままにしといた。
 
 その冬、違う県の高校生が事故った話を噂で聞いたり。
 何かあるごとに、コウイチは空を見上げるようになったり。
 あ、もう一つ変わったこと見つけた。
 シーナがいなくなってから、コウイチは自分のことを【コウイチ】と呼ばせなくなった。
「コウちゃんと呼んでくれ」
「……コウちゃん??」
 みんな戸惑ったけど、ヤツの好きにさせてやった。
 コウイチ……じゃなくて、コウちゃんはコウちゃんなりに感じたこともあったんだろう。
 理由は聞かない。
 きっと、こっちが恥ずかしくなるようなことを言うに決まってるから。
 
 そして、私は、やはりこの町を離れようと思う。
 都会で妹と二人生きて行くんだ。
 反対する父親を母が説得してくれた。
『二度と暴力をふるわないこと』を条件に、春から東京で暮らす。
 新しい私になるんだ。
 旅立ちの日、駅までコウちゃんが見送りに来てくれた。
 いろんなことがあったね。
 私達は、シーナの話はあの時以来していない。
 私にとってもコウちゃんにとっても、シーナは特別な人だった。
 もうちょっと一緒にいられたら、二人で本気で取り合ってたかもね。
 認めたくないけど、私とコウちゃんの趣味は似てるようだ。
「じゃあ、ね。たまには帰ってくるから。コウちゃんも元気でね」
「ん?ああ。またな」
 そう行って別れた。
 
 はずなのに……。
 
 ばったり新宿で、コウちゃんと再会しちゃうんだから!!
 もう!!
「なんであんたがここにいるのよ!」
「またなって言ったじゃん」
「バカ〜!私は生まれ変わるのよ!昔のことばらしたら、ただじゃおかねえからなっ」
「【天使のナッツ】って呼ばれてんだって?ナッツ。プププっ」
 笑うコウちゃんの首をキュっと締め上げた。
 
 
 そして、今日まで本当に奇妙な友情は、続いていたりする。
 
END
 

 

コウちゃんとナッツの高校生時代でした。byかるび