「シーナの夏5」
 
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 誰もいない小さな公園で、私はブランコに座った。
 コウイチが入り口近くにあった自動販売機で、コーヒーを買ってきてくれた。
 バッカ、この銘柄は甘いんだよ!と思ったが、文句も言わずに受け取った。
 自分用に、イチゴミルクを買ってきてやがる。
 やはりわからないこの男。
 二人でブランコに並んで、何も言わずに漕いでいた。
 子供用のブランコは足が付きすぎちゃって、不恰好なんだけどね。
 
「なんで何も訊かないの?」
「訊いてほしいのか?」
「別に…」
「ならいいやん」
「…………」
 また無言になる。
 
 キイキイと接続部が音を立てていた。
「なんで追いかけてきたの?」
「追いかけろって、お前の背中が言ってたからな」
 ふっと、私は笑った。
 変な男。
 いつもボケてるくせに、こんな時だけ鋭いの。
 モテるのもわかるね。
 こういう男を好きになればよかったのに。
「なーんて、ね。俺に惚れちゃった?」
 茶化すなバカ。
「惚れないよ。私の好きなタイプは全然違う」
「今なら、2番目が空席なのに」
「やーだよ。もっと一途な人がいいの」
「俺もだ」
「それで、ちょっと小さくて可愛くて」
「目がまん丸で、にこっと笑うんだよな」
「そうそう。いっつも一生懸命で、正直で」
「誰かのために、自分を傷つけたり」
「そんな時は……」
 
『ぎゅって抱きしめて離さない』
 
 ハモってしまった。
「あははははははっ」
 笑ってしまう。
「あんたとライバルなんてイヤだわ」
「俺だってごめんだな」
「で、2番目が空席って、フラれたの?」
「……ぐわあっ。人の傷口をっっっ。男はじっと堪えるもんだ」
「いいじゃん。1番さんがいるんでしょ?見たことないけど、ウチの学校じゃない人?」
「1番は………まだ会ってない」
「はあ?」
「これから会う運命の人のために、空けてあるのさ」
「それって」
 
「一途で、ちょっと小さくて可愛くて、目がまん丸で、にこっと笑う子だ。たぶん」
 
 あははと笑って、コウイチが言った。
 コイツって……、すごいロマンチストだわ。
 遊び人かと思ったら大間違いなのね。
「会えるかな」
「会えるさ。この空の下にいるはずだとも。会えたら紹介してやる」
「いつになることやら」
 そう言いながら、私も信じたいと思った。
 いつか、運命の人に会えるだろうか。
 今は遠い空の下だけれども、私を待っていてくれるだろうか。
 
「1番の人、か」
 
 ふいに、シーナの顔が浮かんだ。
 その時は、明日はどんな髪型にしてあげようか、としか考えてなかった。
 前に言った自分の言葉なんて忘れていたよ。
 
 
 
 
 
『特別っていうのは、
   最初に浮かんだ人のことだ』
 
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