|
誰もいない小さな公園で、私はブランコに座った。 コウイチが入り口近くにあった自動販売機で、コーヒーを買ってきてくれた。 バッカ、この銘柄は甘いんだよ!と思ったが、文句も言わずに受け取った。 自分用に、イチゴミルクを買ってきてやがる。 やはりわからないこの男。 二人でブランコに並んで、何も言わずに漕いでいた。 子供用のブランコは足が付きすぎちゃって、不恰好なんだけどね。 「なんで何も訊かないの?」 「訊いてほしいのか?」 「別に…」 「ならいいやん」 「…………」 また無言になる。 キイキイと接続部が音を立てていた。 「なんで追いかけてきたの?」 「追いかけろって、お前の背中が言ってたからな」 ふっと、私は笑った。 変な男。 いつもボケてるくせに、こんな時だけ鋭いの。 モテるのもわかるね。 こういう男を好きになればよかったのに。 「なーんて、ね。俺に惚れちゃった?」 茶化すなバカ。 「惚れないよ。私の好きなタイプは全然違う」 「今なら、2番目が空席なのに」 「やーだよ。もっと一途な人がいいの」 「俺もだ」 「それで、ちょっと小さくて可愛くて」 「目がまん丸で、にこっと笑うんだよな」 「そうそう。いっつも一生懸命で、正直で」 「誰かのために、自分を傷つけたり」 「そんな時は……」 『ぎゅって抱きしめて離さない』 ハモってしまった。 「あははははははっ」 笑ってしまう。 「あんたとライバルなんてイヤだわ」 「俺だってごめんだな」 「で、2番目が空席って、フラれたの?」 「……ぐわあっ。人の傷口をっっっ。男はじっと堪えるもんだ」 「いいじゃん。1番さんがいるんでしょ?見たことないけど、ウチの学校じゃない人?」 「1番は………まだ会ってない」 「はあ?」 「これから会う運命の人のために、空けてあるのさ」 「それって」 「一途で、ちょっと小さくて可愛くて、目がまん丸で、にこっと笑う子だ。たぶん」 あははと笑って、コウイチが言った。 コイツって……、すごいロマンチストだわ。 遊び人かと思ったら大間違いなのね。 「会えるかな」 「会えるさ。この空の下にいるはずだとも。会えたら紹介してやる」 「いつになることやら」 そう言いながら、私も信じたいと思った。 いつか、運命の人に会えるだろうか。 今は遠い空の下だけれども、私を待っていてくれるだろうか。 「1番の人、か」 ふいに、シーナの顔が浮かんだ。 その時は、明日はどんな髪型にしてあげようか、としか考えてなかった。 前に言った自分の言葉なんて忘れていたよ。 『特別っていうのは、 最初に浮かんだ人のことだ』 NEXT |
