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次の日、私がフられたことは、全校生徒の知るところとなっていた。 目撃者がいたとは不覚だった。 でも、なんか気が抜けた…。 張り詰めていた糸が切れたみたいで。 いつものようにじゃれ付いて来るシーナも、なんだかどうでもよくて。 無視してるつもりはなかったんだけど。 コウイチがシーナを呼んだ。 「こっち来いよシーナ。俺が髪梳かしてやる」 クラス中がざわついた。 私が登校してきたザワメキよりも、大きいよ。 モテ男の自覚がないコウイチが、シーナをせっせと磨いている。 「ふーん。あんたがそんなマメな男だとは知らなかったわ」 イヤミの一つも言ってやる。 「誰かさんが相手してやらないからだろ」 「何、コウイチ。シーナが好きなの?」 口に出してから、失敗したと思った。 そんな事言うつもりはなかったのに。 コウイチは「はあぁ〜〜」とわざとらしい溜め息をついて、シーナの手を握った。 「意地悪だなあ、ナッツは」 それで私は、一気にムカついてしまったんだ。 「それなら、コウイチが面倒みてあげればいいじゃない!」 そして逃げるように、私は家に帰った。 逃げるようにじゃない。 逃げたんだ。 それからシーナは、コウイチとばかりいるようになった。 「コウイチぃ」 独特の舌ったらずの声で、コウイチを呼ぶ。 コウイチも、嫌がらずに世話してたっけ。 むしろ嬉しそうだった。 「そんなにシーナが好き?」 一度だけ聞いてみた。 「可愛いじゃん。それに……気を使わなくてすむ」 ひねくれた回答だった。 しっくりと二人は馴染んでいた。 私は、そんな二人を見ないように、ダンスに打ち込んでいた。 自分一人が、取り残されていた。 妹が、私に合わせて手を抜いた時には、容赦なく叱りとばしたっけ。 目の前にあるはずのものに、手が届かないもどかしさに、涙が出そうだ。 けれど、同情なんていらない。 毎日毎日無心にレッスンに通って、やっと私は妹の隣りに立っても大丈夫なくらいになった。 良かった。 私は、何もかも失ったわけではなかった。 まだ、胸を張って自慢できるものがある。 ダンスだけが、惨めな私を救ってくれた。 久しぶりに、軽くなった心でコウイチとシーナを見た。 二人は幸せそうに見える。 今度、シーナと一緒にコウイチのライブにでも行こうか。 そんなことを考えていた。 突然二人で行って、うろたえるコウイチを見るのは楽しそうだと思った。 今日もレッスンのため早目に帰ろうとした時、私は担任に引き止められた。 「ちょっと待てナッツ、話がある」 「私はないよ」 「待て待て待て。俺はお前の担任だぞ」 いつもビビってる先生が、必死に勇気を出しているのがわかったから、 私は素直に進路室まで行って向かい合って座った。 初めて来たよ、こんなとこ。 「で、何?私忙しいんだけど」 「ここでする話は1つしかないだろう。進路希望用紙をお前だけ提出してないんだよ」 進路希望?そんなものあったかな? 「卒業後、どうするつもりだ?」 以前の私なら、なるようになると答えたかもしれない。 でも今は違う。 私にも小さな夢がある。 「東京に行く」 「は?東京の大学か?お前の成績だと……」 「違うよ。進学はしない。東京でダンサーになる」 「なっ!!」 絶句した先生のアホ面は、かなり面白かった。 「そんなもん、なれるわけないだろう」 マヌケ面のまま、先生が即答した。 ……器の小さい男だ。 「先生は、私の何を知ってんの?」 何も知らない大人が、口を出してくることほど白けることはない。 私が、どんな思いで戦って来たか…。 私だって、最初から強かったわけじゃない。 強くならなきゃ生きていけなかった!! 誰も、助けてなんてくれなかったじゃないかっ。 睨み付ける私の視線を受けて、担任の手が恐怖で震える。 アンタも可哀想だよね。 新米のくせに、こんな役押しつけられてさ。 私は立ち上がった。 「ま、まだ話が…」 もう話しても無駄だと思った。 私は無言で退室した。 これ以上話したら、殴ってしまいそうだったから。 NEXT |
