「優しい雨の降る夜に7」
 
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
『忘れることは、許さない』と。
 
 
「い、やだぁあああっ!」
絶叫が、発せられた。
アキが、無茶苦茶に暴れまくる。
「……おいっ!」
それをコウイチが、力づくで押さえつけた。

このままじゃ……。

壊れてしまう。
 
壊してしまう。
 
離してっ!
解放してっ!
もう、自由にしてっ!!
助けてっ……。
暴れるアキを、胸の中に抱き込んで、
これ以上ないくらいの強さで抱きしめる。

怯えないでくれ。
壊れないでくれ。
俺が無力なのは、わかっているから。

アキの爪が、コウイチの手を引っかいた。
「つっ!……」
ガリという音がして、血が流れる。
それでも、コウイチはアキを抱きしめ続けた。
それしかできなかった。
何より大事な手を、傷つけても構わないと思った。

今度は、助ける。
頼むから、もう、
壊れる魂を見せ付けないでくれ。

心が……痛い……。
許してはくれないの?
僕を、
どうしたら……。
「離してぇ」
「嫌だっ!!」
コウイチがより大きな声で叫んだ。
 
「離さない!お前は俺のもんだ!!」
 
その剣幕に、アキが一瞬怯んだ。
弱さに揺らめく瞳が涙を湛えている。

あいつと同じ目を…するな

コウイチはアキの頬を両手で押さえて、
深く口づけた。
息も、心も、魂も、
燃やし尽くしてしまいそうなほどに、
深く深く、想いを注ぎ込んだ。
「………んっ」
閉じたアキの瞼から、涙が零れ落ちる。
温かい。
ううん、熱い。
コウイチは、アキの最後の息を吸い尽くすまで
離さなかった。
 
NEXT


アキちゃんとコウちゃんの出会い編です。