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いつでも自由に使ってくれと、 同じように上京した、地元の友人から渡されていたカギだった。 そう遠くないところにあるマンション。 着替えもそこに置いてある。 せっかく乾いた服は、またびしょ濡れで、 すぐにでもマンションに向かえばいいのに。 どうにも、足が向かなかった。 会ったばかりの、彼のことばかり考えてしまう。
そういうヤツには、見えなかったけれど。 違う、と思った。 あれは、本当の彼ではない、と。
事情が、あるんだろうけど。 声をかけてくれたのは嬉しかった。
ホントは、あのまま 本心を見せないこの街の人間に。 需要と供給。 飛び交う現金。 上辺だけの笑顔も。 誰も彼も、自分の顔も心も厚塗りで。 信じた分だけ、裏切られる。 そんな中。
アイツは、違うと、思う。 「悪い。待ち合わせ中vまた今度」 軽い誘いを、サラリと流す。 今は、遊びたくなかった。金もないし。 それに。 アキの思い出を塗りつぶしたくなかった。 手の傷に、キスした。 今、とても心は穏やかで、 とてもいい気分だから。 この灰色の空の下、もう少しだけ、 空を眺めていたいと思う。 派手なイルミネーションと、喧騒を 最期に、この目に焼き付けておこう。
結構この街も、楽しかった、かな。 NEXT |
