「優しい雨の降る夜に1」
 
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
止めろと、どこかで声がしていた。
けれども僕は……。
 
そう、あの日
僕から声をかけたんだ。
 
静かな雨が降っていた。
 
 
駅前の片隅には、毎日のように
ストリートミュージシャンがたむろっていて、
でも、
『あの辺は治安があまりよくないよ』
みんなが、口を揃えて言っていた。
『そういう商売とか、してる人いるし』
つまり、身体だったり薬だったりの話。
そんなの知ってた。
だけど……。
 

本当は、もう、ずっと前から知っていた。
 
何度も見たことがある。
俯いて、足早に立ち去る姿を。
いつも無表情で、暗い目をしていた。
その足が俺のところで
止まることはないんだろうな、と思っていた。
俺は遊び過ぎていたし。
今更、何も失うものなんてなかった。
 
みんな、他人だろ?
 
利用出来なくなったら捨てればいいだけだろ?
 

一人の時間が長すぎて、
何も信じられなくなっていたから。
 
 
 
どうでもよかったんだ。
僕は、もう、どうなってもいいって思ってた。
だけど、偶然耳に入ってきたギターの音が、
悲しくて悲しくて悲しくて、悲しくて……。
何度も引き寄せられてしまう。
でも、立ち止まってなんかあげない。
絶対に!
僕は、足を止めない!
 
 
誰にも、心に触れさせない。
そう、決めていた。
 
NEXT

 

アキちゃんとコウちゃんの出会い編です。