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遺棄毒ガスに関する裁判外の支援活動

被害者の現状と課題

 毒ガスは「敵を殺すための武器」ですので、被害にあったときの治療法はほとんど研究されていません。当初、毒ガスの被害は呼吸器疾患と皮膚疾患と言われていました。しかし中国の毒ガス被害者を診察した日本の医師によれば、多くの被害者に、呼吸器疾患・皮膚疾患に加えて、視覚障害・視野狭窄や、自律神経の障害や高次脳機能障害の症状がみられます。

 また、生活を維持し社会生活を営むのも困難になっている方が多いことがわかりました。手に力が入らないため仕事ができなくなったり、記憶力の低下で対人関係に支障をきたしている例もあります。免疫力の低下で風邪をひきやすくなっていますし、ガンのリスクもあります。

 事故から10年以上経過しても、この状態は改善されていません。

 このような現状が分かったのは、日本の医師が内科ばかりでなく神経内科・小児内科にも範囲を広げて診察した結果です。この事実は国際医学会で発表され、国際的に注目されています。

遺棄毒ガス・細菌戦被害者の支援をおこなう「日中平和友好基金」が設立されました

 遺棄毒ガス被害事件では、どの被害者も事件後数十年が経過しても健康回復はおろか、生活の立て直しもできないまま放置されています。そこで日本の医師が細々と検診を続けてきました(これまでに6回実施されました)が、継続的・組織的な医療支援が必要です。

 本来、それは日本政府の責任ですが、裁判で日本政府の責任が認められなかったこともあって、まったく見通しが立っていません。日本政府に対する責任追及は引き続き進めていきますが、被害者の健康と生活を考えると、支援は待ったなしです。

 そのような背景のもと、2014年10月に、日本の遺棄毒ガス事件弁護団と、中国の人権発展基金会との間で、中国の遺棄毒ガス事件被害者の医療支援を目的とした基金の設立に向けた合意が成立しました。

 2015年8月14日、その基金が正式に発足しました。東京では中国人権発展基金会の代表者と弁護団の南典男代表が記者会見をし、ハルピンでは弁護団の山田勝彦弁護士が中国側代表者と記者会見をしました。

 発足した基金は、日本軍の遺棄毒ガスによる被害者の健康支援に加えて、細菌戦の被害者の健康支援も目的に加えられました。

 すでに中国では一定額の基金が集まっています。日本側でも早急に資金を集める努力をしていきます。

 

  
   
 <募金の振込先>
ゆうちょ銀行 10190−62285401
化学兵器被害者支援平和基金設立準備会
 

 

 


合 意 書

 旧日本軍が遺棄した毒ガス兵器によって、戦後、罪のない中国の多くの市民や子どもたちに被害が生じている。毒ガス(イペリットとルイサイトの混合剤)被害は、皮膚の糜爛はもちろん、呼吸器、内臓、神経など全身に症状が及び、治癒することが難しく時を経ると疾患の進行或いは遅発性の疾患がみられ、深刻な事態に至ることが多い。その結果、働けない、就学・就職・結婚ができないなど、生活が困難になり、被害者はもとより、家族の人生にも重大な影響をもたらしている。

 日本の市民・弁護士は、1996年から被害者支援の裁判を20年近くにわたり行い、さらに、旧日本軍遺棄化学兵器被害者の生命と健康のために、5回にわたって日中共同検診のとりくみを行った。しかし、被害者たちは今もなお、生きることに大きな困難を抱えているばかりか、年を経るに従い、健康被害が悪化しており、緊急に被害者のための医療・生活支援が必要となっている。

 中国人権発展基金会と毒ガス被害弁護団連絡会議は、被害者たちの人権と正義の実現、日本と中国の平和と友好に寄与することを願い、人道的見地から、中国の民間と日本の民間が協力して「毒ガス被害者支援平和基金」の設立に向け、努力することを誓い、ここに合意書を締結する。

 中国人権発展基金会(以下「中国側」という)と毒ガス被害弁護団連絡会議(いか「日本側」という)は、この合意書について、日本語による文書と中国語による文書を各2通作成し、中国側と日本側で各1通を保有することとする。

 

1 中国側は、年内を目途に「毒ガス被害者支援平和基金」設立の許可を得ることとする。同時に寄付の募集を起動する。

2 日本側は、「毒ガス被害者支援平和基金」設立のためにあらゆる協力を行うとともに、同基金設立後に行われた募金活動の実績をもとに日本政府、関係企業、民間団体に対し、同基金に寄付などの支援を行うよう働きかけることとする。

3 「毒ガス被害者支援平和基金」の活動内容及び運営については、中国側と日本側が協議して定めることとする。中国側は731部隊罪証陳列館、医師グループ、ハルビン弁護士協会などの意見を、日本側は、医師グループ、ケアみらい基金などの意見を反映させるよう努力する

 

  2014年10月28日

 中国人権発展基金会 王恵林

 毒ガス被害弁護団連絡会議 共同代表 南典男

 


◇「日中友好写真パネル展」が開催されました

 上記の基金の発足に伴い、東京で、中国の化学兵器と細菌戦の被害者の支援をすすめるための「写真展」が開催され(2015年8月15〜18日、大田区の産業プラザ)、約300人が参加しました。

 展示会のオープニングでは、中国人権発展基金会から副理事長が挨拶しました。またこの写真展の開催に協力していただいた写真家3名(樋口健二さん、嶋村大志さん、豊田直巳さん)の講演も行われました。

◇この基金を運用するNPO法人が設立されました

 2016年3月、上記の基金を運用するNPO法人「化学兵器被害者支援日中未来平和基金」が設立され、東京都から認証されました。

「公害総行動」に合流して対政府交渉を行いました

 「公害総行動」は、水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく、薬害、カネミ油症、基地騒音、そちえ原発の放射線被害などの公害被害者が6月はじめの「世界環境デー」に合わせて環境省を中心とした各省庁・企業へ要請行動を行う大規模な市民活動です。2014年から私たちもこの行動に加わり、環境省や外務省と交渉をもちました。

 2015年は、遺棄化学兵器の被害の責任を明らかにし、被害救済を求めて交渉しました。

 日本政府は、遺棄化学兵器処理事業にこれまで1300億円の税金を使ってきましたが、現在でも中国各地(広州・ハルビン・南京・浙江省・天津・太原など)で大量の毒ガス砲弾が発見されています。同じような事件が繰り返されないよう、今後も政府に対応を求めていきます。

「遺棄毒ガス中国人被害者を支援する会」が結成されました

 これまでチチハル事件の被害者を支援してきた「チチハル8・4被害者を支援する会」と、敦化事件の被害者を支援してきた「周くん劉くんを応援する会」が合同して、2016年4月から「遺棄毒ガス中国人被害者を支援する会」として再出発することになりました。

 2つの会は、それぞれ個別の裁判支援をしてきました。裁判は終わりましたが、被害者を支援し、事故が起きた責任を日本政府に追わせる運動団体としての役目はまだ残っているからです。今後ともご支援よろしくお願いします。

 

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