基本行列elementary matrixの性質
[永田『理系のための線形代数の基礎』1.7(p.39);藤原『線形代数』2-3(pp.37-46);
斎藤『線形代数入門』2章§4(pp.46-47);ホフマン・クンツェ『線形代数学I』1.3(pp.6-7)。]
(舞台設定)
R:実数をすべて集めた集合(実数体)
A:実行列
Pn ( i, j, ci,j ):実数体R上のn次基本行列type 1
・j<i である場合の基本行列Pn ( i, j, ci,j )の例
・i<j である場合の基本行列Pn ( i, j, ci,j )の例
(本題1)
(m,n)型実行列Aに、右からn次基本行列type 1: Pn ( i, j, ci,j )をかけると、
(m,n)型実行列Aに列基本変形type1を施したことになる。
※この点は、「体上のn次基本行列type 1」一般についても成り立つ。→詳細
※なぜ?
・j<i である場合
であるから、
A Pn ( i, j, cij )
∵行列積の定義
・i<j である場合
であるから、
A Pn ( i, j, cij )
∵行列積の定義
(本題2)
(m,n)型実行列Aに、左からm次基本行列type 1:Pm ( i, j, ci,j )をかけると、
(m,n)型実行列Aに行基本変形type1を施したことになる。
※この点は、「体上のn次基本行列type 1」一般についても成り立つ。→詳細
※なぜ?
・j<i である場合
であるから、
Pm ( i, j, cij ) A
∵行列積の定義
・i<j である場合
であるから、
Pm ( i, j, cij ) A
∵行列積の定義
(本題3)
n次基本行列type 1:Pn ( i, j, ci,j )は正則行列。その逆行列は、n次基本行列type 1:Pn ( i, j,−ci,j )。
※この点は、「体上のn次基本行列type 1」一般についても成り立つ。→詳細
※本当?
Pn ( i, j, ci,j )の左からPn ( i, j,−ci,j )をかけても、Pn ( i, j, ci,j )の右からPn ( i, j,−ci,j )をかけても、
単位行列となることを示す。
・j<i である場合
Pn ( i, j, −ci,j )Pn ( i, j, ci,j )
∵行列積の定義
=In ∵実数の性質より、-cij+cij=0
Pn ( i, j, ci,j ) Pn ( i, j, −ci,j )
∵行列積の定義
=In ∵実数の性質より、cij-cij=0
・i<j である場合
Pn ( i, j, −ci,j ) Pn ( i, j, ci,j )
∵行列積の定義
=In ∵実数の性質より、cij-cij=0
Pn ( i, j, ci,j ) Pn ( i, j, −ci,j )
∵行列積の定義
=In ∵実数の性質より、-cij+cij=0