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証明:ユークリッド空間R2上の点列の収束と座標ごとの収束の関係  
 [高木『解析概論p.14:R2; 小平『解析入門I』§1.6-d(p.60) :R2 ;吹田新保『理工系の微分積分学p.155-6;
  矢野『距離空間と位相構造』例1.9(p.12) :Rn; 志賀『位相への30』第13(pp.91-2):Rn;
  神谷浦井『経済学のための数学入門』定理4.3.1(p.138) :n次元;杉浦『解析入門I1章§4定理4.5-1(p.38);:n次元] 
設定) (R2,d) : R2ユークリッド距離を与えてつくったユークリッド空間 
     
P   :  ユークリッド空間 (R2,d)上の ( x ,y )を表すとする。
     {
Pi}iN : ユークリッド空間 (R2,d)上の点列{P1 , P2 , P3 , …}で、
           各
Piはふたつの実数順序対[つまり座標]( xi , yi )を表すとする。
          つまり
点列{P1 , P2 , P3 , …}は、{ (x1 , y1) , (x2 , y2) , (x3 , y3) , }とも書ける。
     {
xi}iN : 点列{Pi}iNの各Pi( xi , yi )xiだけを取り出して並べた数列{ x1 , x2, x3, }  
     {
yi}iN : 点列{Pi}iNの各Pi( xi , yi )yiだけを取り出して並べた数列{ y1 , y2, y3, }   
定理)以下の二つの命題は同値である。
    命題
1: 点列{Pi}iN={ (x1 , y1), (x2 , y2) , (x3 , y3) , }が、P=(x,y)収束する。
         つまり、 
          
   
    命題
2: 数列{xi}iNx収束し、かつ数列{yi}iNy収束する。
          
     

(証明) A.予備的考察/B.命題1⇒命題2の証明/
   C.命題2⇒命題1の証明(その1)/D.命題2⇒命題1の証明(その2)/E.命題2⇒命題1の証明(その3)

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A.予備的考察:ユークリッド距離の性質をここの文脈に適用 
ユークリッド距離の
性質1性質2性質3性質4性質5より、
点列{Pi}iN任意のPi( xi , yi )と、P( x ,y )との間のユークリッド距離 

は、以下の不等式をいつでもみたす。 
任意のiNにたいして、  
      …
(A-1)
              ∵ユークリッド距離の性質1 
任意のiNにたいして、  
      …
(A-2)
              ∵ユークリッド距離の性質2 
任意のiNにたいして、  
     …
(A-3)
     ただし、Max ( |xix| , | yiy | )は、「|xix|| yiy |のうち、大きいほうの値」
    つまり、
(0-3)は、
    
(ケース1) |xix|| yiy |となる点Pi (xi,yi)については、
           …
(A-3-a)
    (ケース2) |xix|| yiy |となる点Pi (xi,yi)については、
           …
(A-3-b)
     ということ。
任意のiNにたいして、  
      …
(A-4)
              ∵ユークリッド距離の性質4  
任意のiNにたいして、  
        …
(A-5)
              ∵ユークリッド距離の性質5  

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B. 命題1⇒命題2の証明
 [志賀『位相への30』第13(pp.91-2):Rnにおいて;矢野『距離空間と位相構造』例1.9(p.12); 吹田新保『理工系の微分積分学pp..155-6; 
  杉浦『
解析入門I1章§4定理4.5-1(p.38):n次元; 神谷浦井『経済学のための数学入門』定理4.3.1(p.138) :n次元;]  
以下、
step1で、
     

を示し、
step2で、
     

を示すことで、
      

を示す。 
[stepI: 命題1⇒命題2前半] 
(概略)
任意のiNにたいして
     …
(A-1)
  が成り立つが、
・命題
1点列{Pi}iN={ (x1 , y1), (x2 , y2) , (x3 , y3) , }が、P=(x,y)収束する」が成り立つならば
  
点列の収束の定義より、
    
  
・よって、
i→∞で、(A-1)右辺が0収束するから、(A-1)左辺も0収束
(詳細)
命題1点列{Pi}iN={ (x1 , y1), (x2 , y2) , (x3 , y3) , }が、P=(x,y)収束する」とは、
    
  
のこと、すなわち、
   
( ε>0 ) (NN) (iN) ( iN) …(B-1)
のことであった(点列の収束の定義より)
(A-1)より任意のiNにたいして
   
が成り立つので、
命題
1すなわち(B-1)が成り立つならば
 
( ε>0 ) (NN) (iN) ( iN) 
が成り立つ。
つまり、
命題
1すなわち(B-1)が成り立つならば
  
( ε>0 ) (NN) (iN) ( iN|xix|<ε) が成り立つ。
数列の収束・極限値の定義を用いて、このことを書きなおすと、
命題
1すなわち(B-1)が成り立つならば、 
  
  
が成り立つ、となる。
[stepII: 命題1⇒命題2後半]  
(要旨)
任意のiNにたいして
     …
(A-2)
  が成り立つが、
・命題
1点列{Pi}iN={ (x1 , y1), (x2 , y2) , (x3 , y3) , }が、P=(x,y)収束する」が成り立つならば、
  
点列の収束の定義より、
    
  
・よって、
i→∞で、(A-2)右辺が0収束するから、(A-2)左辺も0収束
(厳密には)
命題1点列{Pi}iN={ (x1 , y1), (x2 , y2) , (x3 , y3) , }が、P=(x,y)収束する」とは、
  
( ε>0 ) (NN) (iN) ( iN) …(B-2)
のことであった。
(A-2)より任意のiNにたいして
   
が成り立つので、
命題
1すなわち(B-2)が成り立つならば
 
( ε>0 ) (NN) (iN) ( iN) 
が成り立つ。
つまり、
命題
1すなわち(B-2)が成り立つならば
  
( ε>0 ) (NN) (iN) ( iN|yiy|<ε) が成り立つ。
数列の収束・極限値の定義を用いて、このことを書きなおすと、
命題
1すなわち(B-2)が成り立つならば、 
  
  
が成り立つ、となる。

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C. 命題2⇒命題1の証明(その1)  
 [志賀『位相への30』第13(pp.91-2):Rnにおいて;矢野『距離空間と位相構造』例1.9(p.12);]  
(概略)
任意のiNにたいして、  
     …
(A-3)
 が成り立つ。
・命題
2 が成り立つならば、
  
i→∞で、(A-3)右辺が0収束するから、(A-3)左辺も0収束
(A-3)左辺の収束は、命題1点列{Pi}iN={ (x1 , y1), (x2 , y2) , (x3 , y3) , }が、P=(x,y)収束する」の定義にほかならない。
(詳細)
Step1:
点列の点を二つに分類
点列{Pi}iNを構成する各点Pi (xi,yi)は、
  ・
|xix|| yiy |を満たす点Pi(xi,yi) であるか、
  ・
|xix|>| yiy |を満たす点Pi(xi,yi) であるか、
のいずれかである(両方であることもなければ、どちらでもないこともない)。
便宜上、
|xix|| yiy |を満たす点Pi(xi,yi)の添数iをすべてあつめた集合を、Aで表し、
|xix|>| yiy |を満たす点Pi(xi,yi)の添数iをすべてあつめた集合を、Bで表すことにする。
なお、
  
点列{Pi}iNの添数iをすべてあつめた集合は、自然数全体の集合Nであったから、 
  
AN、 BNAB=NAB=φである。  
この添数の集合
Aを用いて、
|xix|| yiy |を満たす点Pi(xi,yi)のみを抜き出した「点列{Pi}iNの部分列」を、{Pi}iAで表し、
|xix|| yiy |を満たす点Pi(xi,yi)xiのみを抜き出した「数列{xi}iN の部分列」を、{xi}iAで表し、
|xix|| yiy |を満たす点Pi(xi,yi)yiのみを抜き出した「数列{yi}iN の部分列」を、{yi}iAで表すことにする。
また、この添数の集合
Bを用いて、
|xix|>| yiy |を満たす点Pi(xi,yi)のみを抜き出した「点列{Pi}iNの部分列」を、{Pi}iBで表し、
|xix|>| yiy |を満たす点Pi(xi,yi)xiのみを抜き出した「数列{xi}iN の部分列」を、{xi}iBで表し、
|xix|>| yiy |を満たす点Pi(xi,yi)yiのみを抜き出した「数列{yi}iN の部分列」を、{yi}iBで表すことにする。
Step2: 点列の点の分類の一方{Pi}iA{xi}iA{yi}iAについて 
ここでは、
{Pi}iA{xi}iA{yi}iAに限定して考える。
数列{
xi}iN、数列{yi}iN について、   
命題
2 
がなりたつ
ならば、数列{xi}iN,{yi}iNの部分列である{xi}iA,{yi}iAもそれぞれx,yに収束する(∵収束する数列の任意の部分列は収束する
数列の極限の定義を用いて正確に言いなおすと、
「命題
2が成り立つならば
  
(ε>0) (N1N) (iAN) ( iN1| xi x|<ε) かつ (ε>0) (N1N) (iAN) ( iN1| yi y|<ε)
    ※ {
Pi}iA{xi}iA{yi}iAは、|xix|| yiy |を満たす点Pi(xi,yi)ばかりを集めた点列・数列だったから、
      「命題
2が成り立つならば
         
(ε>0) (N1N) (iAN) ( iN1| xi x|| yiy |<ε)
      といってもよい。
ここでさしあたり注目したいのは、   
「命題
2が成り立つならば
  
(ε>0) (N1N) (iAN) ( iN1| yi y|<ε) 」…(C-1)
という点だけである。
(A-3-a)より、 |xix|| yiy |となる任意の点Pi (xi,yi)については、
         
であったから、
|xix|| yiy |を満たす点Pi(xi,yi)ばかりを集めた点列{Pi}iB・数列{xi}iB{yi}iBでは、
すべての
iBについて、
         
が満たされる。…
(C-2)
(C-1) (C-2)
を合せて考えると、
「命題
2が成り立つならば
    
(ε>0) (N1N) (iAN) ( iN1| yi y|<ε )   」
となる。 
 上記について、要点以外を省略すると、
 「命題
2がなりたつならば (ε>0) (N1N) (iAN) ( iN1 ) 」  
 となる。 また、これは、以下のようにいってもかわらない。
 「命題
2がなりたつならば(2・ε>0) (N1N) (iAN) ( iN1 ) 」…(C-3)   
Step3: 点列の点の分類の一方{Pi}iB{xi}iB{yi}iBについて 
ここでは、{
Pi}iB{xi}iB{yi}iBに限定して考える。
命題
2 
がなりたつ
ならば、その部分列である{xi}iB{yi}iBもそれぞれx,yに収束する(∵収束する数列の任意の部分列は収束する
数列の極限の定義を用いて正確に言いなおすと、
「命題
2が成り立つならば
  
(ε>0) (N2N) (iBN) ( iN2| xi x|<ε) かつ (ε>0) (N2N) (iBN) ( iN2| yi y|<ε)
    ※ {
Pi}iB{xi}iB{yi}iBは、|xix|>| yiy |を満たす点Pi(xi,yi)ばかりを集めた点列・数列だったから、
      「命題
2が成り立つならば
         
(ε>0) (N2N) (iBN) ( iN2| yiy |<| xi x|<ε)
      といってもよい。
ここでさしあたり注目したいのは、   
「命題
2が成り立つならば
  
(ε>0) (N2N) (iBN) ( iN2| xi x|<ε) 」…(C-4)
という点だけである。
(A-3-b)より、 |xix|| yiy |となる任意の点Pi (xi,yi)については、
         
であったから、
|xix|>| yiy |を満たす点Pi(xi,yi)ばかりを集めた点列{Pi}iB・数列{xi}iB{yi}iBでは、
任意の
iBについて、である。…(C-5)
(C-4) (C-5)
を合せて考えると、
「命題
2が成り立つならば
    
(ε>0) (N2N) (iBN) ( iN2| xi x|<ε )   」
となる。 
 上記について、要点以外を省略すると、
 「命題
2がなりたつならば (ε>0) (N2N) (iBN) ( iN2 ) 」  
 となる。 また、これは、以下のようにいってもかわらない。
 「命題
2がなりたつならば(2・ε>0) (N2N) (iBN) ( iN2 ) 」 …(C-6)  
Step5: 点列の点の各分類についての結果を統合する 
 ここまでの結果
(C-3)(C-6)をあわせると、
「命題
2がなりたつならば
      
(2・ε>0) (N1N) (iAN) ( iN1 )    
   かつ 
(2・ε>0) (N2N) (iBN) ( iN2 ) 」  
すると、
N1N2のうちおおきいほうか、それ以上の自然数をNで表すことにすると、   
「命題
2がなりたつならば
      
(2・ε>0) (N1N) (iAN) ( iNN1 )    
   かつ 
(2・ε>0) (N2N) (iBN) ( iNN2 ) 」  
である。すると、
「命題
2がなりたつならば
      
( 2・ε>0 ) (NN) (iAB= N) ( iN) 
といえる。
つまり、
「命題
2がなりたつならば
      
( ε' >0 ) (NN) (iN) ( iN) 
これは、
命題
1点列{Pi}iN={ (x1 , y1), (x2 , y2) , (x3 , y3) , }が、P=(x,y)収束する
ということであった。∵
ユークリッド平面上の点列の収束の定義 

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D. 命題2⇒命題1の証明(その2)   [杉浦『解析入門I1章§4定理4.5-1(p.38):n次元ユークリッド空間において;]  
(概略)
任意のiNにたいして、  
    …
(A-4)
 が成り立つ。
・命題
2 が成り立つならば
  
i→∞で、(A-4)右辺が0収束するから、(A-4)左辺も0収束
 だから、
   
(A-4)左辺が0収束するならば、0収束する。 
   これは、命題
1点列{Pi}iN={ (x1 , y1), (x2 , y2) , (x3 , y3) , }が、P=(x,y)収束する」の定義にほかならない。
(詳細)
step1:
命題2かつ が成り立つならばかつ 
 なぜなら、
かつ が成り立つならば
    ・
 ∵極限値の和の演算則
           
=xx=0     ∵の仮定下で考えているから。
    
かつ 
    ・
 ∵極限値の和の演算則
           
=yy=0     ∵の仮定下で考えているから。
Step2:
命題2かつ が成り立つならばかつ 
 なぜなら、
    
かつ が成り立つならば
    
step1より、 かつ だから、
    ・
 ∵極限値の積の演算則 
          
=0      かつ 
    ・
 ∵極限値の積の演算則 
          
=0      
Step3:
命題2かつ が成り立つならばかつ 
 なぜなら、   
  ・
step2より、かつ が成り立つならばかつ  
  ・
絶対値の性質 より、(xi-x)2=|xi-x|2  
 ゆえに、 
 
かつが成り立つならばかつ
Step4:
命題2かつ が成り立つならば
 なぜなら、
  
step3より、かつ が成り立つならばかつだから、
  
かつ が成り立つならば
         ∵
極限値の和の演算則 
Step5:
命題2かつ が成り立つならば    
 なぜなら、
   
(A-4)より、いつでも、だから、
   
step4より、かつ が成り立つならば
            
Step6:
命題2かつ が成り立つならば    
 なぜなら、
  ・いつでも、   
  ・
step5より、かつ が成り立つならば 
  以上
2点から、
  
かつ が成り立つならば
       いわゆる
はさみうちの原理が適用されて、
            
Step7:
命題2かつ が成り立つならば、命題1:
  なぜなら、
  ・
step6より、命題2かつ が成り立つならば 
  ・          
    は、命題
1点列{Pi}iN={ (x1 , y1), (x2 , y2) , (x3 , y3) , }が、P=(x,y)収束する」の定義
  したがって、
   命題
2かつ が成り立つならば
   命題1:
  といってよい。   

E. 命題2⇒命題1の証明(その3
      [神谷浦井『経済学のための数学入門』定理4.3.1(p.138) :n次元ユークリッド空間において;
       吹田新保『理工系の微分積分学p.155-6 ]  
(概略)
任意のiNにたいして、  
    …
(A-5)
 が成り立つ。
・命題
2 が成り立つならば
  
i→∞で、(A-5)右辺が0収束するから、(A-5)左辺も0収束
  これは、命題
1点列{Pi}iN={ (x1 , y1), (x2 , y2) , (x3 , y3) , }が、P=(x,y)収束する」の定義にほかならない。
(詳細)
step1:
命題2かつ が成り立つならばかつ …(E-1)
 なぜなら、かつ が成り立つならば
    ・
 ∵極限値の和の演算則
           
=xx=0     ∵の仮定下で考えているから。
    
かつ 
    ・
 ∵極限値の和の演算則
           
=yy=0     ∵の仮定下で考えているから。
Step2:
命題2かつ が成り立つならばかつ 
なぜなら、
 ・
かつ が成り立つならば
  
step1より、 かつ だから、 
    
   ∵極限値の演算則
           
=0 
    
かつ
    
   ∵極限値の演算則
           
=0 
Step3:
命題2かつ が成り立つならばかつ 
なぜなら、
 
かつ が成り立つならば
     ∵
絶対値の定義 
            ∵
step1,step2  
        
=0 
     ∵
絶対値の定義 
            ∵
step1,step2  
        
=0 
Step4:
命題2かつ が成り立つならば 
なぜなら、
 
かつ が成り立つならば
  
step3より、 かつ だから、 
   
  極限値の和の演算則  
             
=0+0=0   
Step5:
命題2かつ が成り立つならば 
なぜなら、
 ・
(A-5)より、いつでも、   
 ・
step4より、かつ が成り立つならば 
  以上
2点から、
  
かつ が成り立つならば
       いわゆる
はさみうちの原理が適用されて、
         
Step6:
命題2かつ が成り立つならば、命題1:
  なぜなら、
  ・
step5より、命題2かつ が成り立つならば 
  ・  
    は、命題
1点列{Pi}iN={ (x1 , y1), (x2 , y2) , (x3 , y3) , }が、P=(x,y)収束する」の定義
  したがって、
   命題
2かつ が成り立つならば
   命題1:
  といってよい。   

    
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