定積分の計算2:置換積分・部分積分  : トピック一覧 


置換積分(証明) 
部分積分 


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定理:置換積分の公式(積分の変数変換公式)
           integration by substitution

 cf.原始関数の置換積分2変数関数の積分の変数変換公式、 
 
 f(x)区間Iで連続な関数、ψ(t)を区間J連続微分可能な関数であるとする。
 また、Iψ(J)となっていて、合成関数 f(ψ(t))が考えられるとする。
 α,βJ に対して、a=ψ(α) 、b=ψ(β) となるとする(もちろん、a,bI )。
 とする。
  置換積分の公式(積分の変数変換公式) 
 このとき、次の等式が成立する。
  
 左辺の定積分を右辺の形に表すことを、「積分変数xをtに変換する」といい、
 関数ψを「変換」と呼ぶ。  

 ※なぜ?→証明 

【文献】

 小平『解析入門I』191-2:最良の解説;
 高木『解析概論』111-113;
 神谷浦井『経済学のための数学入門』336.
 吉田栗田戸田『微分・積分』117;
 矢野・田代『社会科学者のための基礎数学』110; ごく簡単に。
 高橋『経済学とファイナンスのための数学』86-7;
 杉浦『解析入門I』236;
 青本『微分と積分1』136.

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(狭義単調増加関数の場合の解釈:座標変換とリーマン和)


[小平『解析入門I』192;高橋『経済学とファイナンスのための数学』85-6.]
区間Jにおいて、x =ψ(t)が連続微分可能な狭義単調増加関数ψ’(t)=0とならないなら、
(すなわち、ψ’ (t) > 0 なら、)
xとtは1対1に対応し、逆関数の連続性に関する定理逆関数の微分に関する定理より、
逆関数t =ψ1(x)も連続微分可能な狭義単調増加関数となる。
この場合、t =ψ1(x)は、座標xから座標tへの座標変換として、解釈可能。

(座標変換とリーマン和に着目した解釈)

 [高橋『経済学とファイナンスのための数学』85-6.]
閉区間 [a, b]におけるf(x)のリーマン和をとる。
このとき、
分割凾ヘ、[a, b]を、小区間I1=[a, x1], I2=[x1, x2],,In=[xn1, b] (a=x0<x1<x2<<xn=b)に分けるものとし、
小区間
Ik (k=1,2,…,n)の各々からとる代表点は、ζkをとったとする。
また、関数x=ψ(t) は、
a=ψ(α) 、b=ψ(β) となるに加えて、
k=1,2,…,nに対して、xk=ψ(tk) 、ζk=ψ(ηk ) となるものとする。
まず、f(x)のリーマン和を、x上の点からではなく、t上の点から表してみる。
R[ f ;;{ζk } ]
   ∵リーマン和の定義
   ∵k=1,2,…,nに対して、xk=ψ(tk) 、ζk=ψ(ηk )
   ∵1=|tktk-1|/|tk+1tk-1|
 
  ∵絶対値の性質|x/y|=|x|/|y| (y≠0)
    …@
次に、f(x)が[a, b]連続、ψ(t)がここで扱う区間で連続微分可能であるという前提のもとで、
分割凾限りなく細かくしてみる。
等式@の最左辺
R [ f ;;{ζk } ]は、
  
に収束する(∵連続性と可積性についての定理よりf(x)は[a, b]連続だから可積分
他方、等式@の最右辺については、

  がt=ηkにおける微分係数ψ'(ηk)となること、
  
(分割凾限りなく細かくすることは、t k1tkとするのと同じ。
   ψ
(t)微分可能という前提のもとで考えているので、微分係数は存在し、
   
t k1tkで{ψ(tk)−ψ(t k1)}/{ tk t k1} は、ψ'(tk)となる。  
   η
ktk1tkに挟まれているので、t k1tkでは、ψ'(tk)=ψ'(ηk )  
・f(x)が[a, b]連続、ψ(t)がここで扱う区間連続微分可能であるという前提のもとでは、
 f(ψ(t)) |ψ'(t) |連続となるから (∵絶対値関数は連続関数連続関数の合成関数も連続関数。) 、
 可積分(∵連続性と可積性についての定理より)となること、
より、 
等式@最右辺は関数f(ψ(t)) |ψ'(t) |リーマン和の、分割を限りなく細かくしたときの、収束先となる。
x=ψ(t)が狭義単調増加関数ならば、α<βで、ψ'(t)>0となるので、等式@最右辺の収束先は、
 
x=ψ(t)が狭義単調減少関数ならば、β<αで、ψ'(t)<0となるので、等式@最右辺の収束先は、
 
           ∵絶対値の定義
            ∵向き付きの積分定義
 
x=ψ(t)が狭義単調増加関数である場合の例:
置換積分
例:x=ψ(t)が狭義単調減少関数である場合
置換積分

例:x=ψ(t)が単調ではない場合
置換積分

(証明)  


準備:
 関数f(x)の原始関数をF(x)と置く。
  すなわち、F(x)=∫f(x)dx    …@
 原始関数の置換積分法より、
 F(x)=F(ψ(t))=∫f(ψ(t)) ψ' (t)dt 
 すなわち、「F(ψ(t))はf (ψ(t))ψ' (t)のtについての原始関数である」 …A

本論:
 
  =F(ψ(β))−F(ψ(α)) ∵解析学の基本定理により、定積分原始関数で計算。
             尚、上式の被積分関数原始関数はAよりF(ψ(t))
  =F(b)−F(a)      ∵a=ψ(α) 、b=ψ(β)という設定なので。
     ∵解析学の基本定理により、@で定義された原始関数から定積分に。

  


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定理:部分積分法の公式integration by parts

  [小平『解析入門I』170:原始関数の部分積分の公式からすぐ;吉田・栗田・戸田『微分・積分』120-21;
   高橋『経済学とファイナンスのための数学』87-8:積の微分公式から。;
   杉浦『解析入門I』239;青本『微分と積分1』137.
   高木『解析概論 改訂第三版』113-118→テイラー展開も;神谷浦井『経済学のための数学入門』335-6.]
 cf.原始関数の部分積分
f(x),g(x)が閉区間[a, b]連続微分可能ならば、
 
あるいは、
f(x)は閉区間[a, b]連続微分可能、g(x)は閉区間[a, b]連続とする。g(x)の原始関数をG(x)とすると、
 
 (証明)  
  

定理:偶関数・奇関数の積分

 
 (証明)  
  
 
 


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(reference)

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、202項積分法(pp.520-525)→リーマン積分。
吉田耕作・栗田稔・戸田宏『平成元年3/31文部省検定済高等学校数学科用 高等学校 微分・積分 新訂版』啓林館、p.117.
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。pp.110-113.
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.82-88.
小平邦彦『解析入門I』 (軽装版)岩波書店、2003年 pp.165-175; 191:積分変数の変換。
高木貞治『解析概論 改訂第三版』岩波書店、1983年、101;111-118.
青本和彦『岩波講座現代数学への入門:微分と積分1』岩波書店、1995年、135-7.
和達三樹『理工系の数学入門コース1・微分積分』岩波書店、1988年、pp.96-7.
矢野健太郎・田代嘉宏『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、p.110-112.
杉浦光夫『解析入門I』岩波書店、1980年、232-239:1変数関数の積分に特殊な性質(基本公式、変数変換公式、部分積分、…)。
高橋陽一郎『岩波講座現代数学への入門:微分と積分2』 岩波書店、1995年、pp.1-11: ルベーク積分の前段階として単関数を用いて定義;pp.115-117。
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、335-6.
小形正男『理工系数学のキーポイント7:多変数の微分積分』岩波書店、1996、95-112.変数変換。1変数関数から多変数関数へ。