猫が「ゴハン」と言うとき
我が家の飼い猫は言葉を話す?
当家の猫は言葉を話す。ただ一言だけど「ゴハン」という。「ご飯」だ。ほかにもムニャムニャと猫語らしからぬ念仏を唱えたりするが、なんと言っているのやらわからない。 |
シンハラ語QA No-116 2018-Sep-27 Thursday
日本語チャンクでシンハラ語を生み出す①猫が「ゴハン」と言うとき当家の猫は言葉を話す。ただ一言だけど「ゴハン」という。「ご飯」のことだ。ほかにもムニャムニャと猫語らしからぬ念仏を唱えもするが、なんと言っているのやら、わからない。 彼女は夜中に主のベッドの脇にやってきて耳元でゴハン」をささやく。主が起きないと音量を上げる。「ゴハン、ゴハン」と二度も繰り返す。「ゴハン」に真夜中、起こされる。よく猫が言葉を話すと聞くがそれは本当のようだ。 「ゴハン」のゴの音は猫特有の鼻に詰まる音。ニャアと啼くとき力が入るとンニャアとなるけど、あのときの口をあけたまま鼻を詰まらせる音だ。でも、常には軽く「オハン」となることが此の頃は多い。 「ゴハン」のハは口を開けて息を出すだけの音だから猫は容易に発音する。日本語の音声の発達を解くP音考ではH音はP音進化論最終段階の音となるようだけど、猫はその逆で、むしろ猫語ではP音が言えない。彼女にとってP音こそは発声進化の最終段階に位置するだろう。 なぜ猫が「ゴハン」と言うようになったかなぜ当家の猫が「ゴハン」と言うようになったか。彼女にこの言葉を教えたからだ。猫飯をやりながら「ご飯、ご飯」と毎回、彼女に囁いた。「ご飯、旨いね、ご飯、ご飯」って。彼女は猫飯の缶詰やら乾き飯を旨そうに舐めたりガリガリ噛んだり。「ご飯、ご飯」と繰り返して話しかけたから食欲と脳を結ぶ条件反射に刷り込まれたか。彼女は「ご飯」と聞けば口を小さく開けて舌をちょこんと出すしぐさをするようになった。そして、あろうことか、ご飯が欲しくなるとミャアと鳴く代わりに自ら「ゴハン」と言うようになった。挙句、さすが猫族は夜行性だ、丑三つ時に耳元にやってきて小声で、 「ゴハン」 それで飼い主が起きなきゃ大声で 、 「ゴハン、ゴハン」 食事をせがむようになった。 さて、ここで飼い主は考えた。彼女が言う「ゴハン」は本当にご飯を意味する言葉だろうか。発声された音は日本語の言葉の意味を持っているだろうか。 「ご飯」は名詞だ。でも、彼女が言う「ゴハン」は名詞かどうか。 彼女はご飯が欲しいときに「ゴハン」と言ってカリカリ食べる市販の猫飯をせがむ。それは「私はゴハンが欲しいわ」、「私はゴハンを食べるのよ」という標しだ。名詞の「ゴハン」が動詞的モダリティ「ゴハン(食べたい)」に変化しているという文法解釈が成り立つか。彼女は「ゴハン」を「なまえ」ではなく、行為や状態を表す「はたらき」と理解していて、空腹のサインをこちらへ音声信号で送って来るのだ。 ゴハンの位置付け彼女が人の化身だったとして、人に戻って「ご飯」と言ったら、それは名詞だろうか、動詞だろうか。「ゴハン」がご飯そのものを表す「なまえ」として使われたなら明白に名詞だけど、そんな明快な、学力テストみたいな品詞分類は意味を成さない。現代文法の静的な品詞解析は「ゴハン」の音声が伝達する意味を阻害する。察するに当家の猫の「ゴハン」は、まず、「食事をしたい」という伝達のモダリティ、「食べる」という動詞的状況を表現するために生じた。この場合、「ご飯」は動詞のカテゴリーだ。猫の「ゴハン」でそう気づいたとき、これってチャンキングで覚える外国語の学習法と同じぢゃないかと感じた。名詞とか動詞とかの文法学習は、まだ、要らない。発声された言葉の一塊をチャンクに丸めて覚えてしまう。4歳の子供が数字を覚えるときに「生成文法的」に学習を試みたというあのやり方だ。 ニューヨーク・タイムスにchunkと題する記事が載ったことがある。 うちのやんちゃな4歳になる息子は「セブン」が好きで、繰り返して聴いているものだから歌詞を覚えてしまった、と始まる気軽な言語学エッセイだ。参考1 「セブン」は「1,2,3がやって来る」という幼児のための数字教育アルバムの中の1曲。数字の7達が一人づつ家を訪ねてくる。 “Oh,there's the doorbell. Let's see who's out there. Oh, it's a seven. Hello, Seven. Won't you come in, Seven? Make yourself at home.” という歌詞が歌われて参考2、その、 “Won't you come in?” “Make yourself at home.” このウォンチュカミン、メイカセゥファッホゥム、の言い回しが大好きになってやんちゃな坊やはフレーズを覚えてしまった。チャンクして安々と。 子供はセブンの曲に気分が乗っているから、チャンクした歌詞を簡単に覚えてしまう。ここなのだ。ここが肝心。 チャンキングだけど、もうひとつ英語の例を。 例えば、amazon music で歌を聴くときモニターに歌詞が表示される。あの、歌詞の文句の一行の並びがチャンク。 たとえば、ノラ・ジョーンズのthose sweet wordsをまわして画面表示されている「歌詞」をタップすると歌の流れにシンクロして歌詞が一纏まりづつ表示される。あの一行一行がそれぞれチャンク。この歌で、 スポクンライカメェロデ と聴こえるノラの歌は歌詞チャンクを見ると、 spoken like a melody となっている。 このチャンク、3語に分かれるけどそんな風に単語を分けないで。3語をチャンクしてスポクンライカメェロデの1語然と耳に叩き込む。そう、チャンキングはこの歌詞のように「メロディのように語る」、ジャズっぽく。流れるように。 こうして言葉を覚えるといいんだよというサジェスチョンはあちこちから聴こえる。 日本語とシンハラ語の相性はこのチャンキングにきわまる。 【参考】 1 Chunking the Hew York Times Magazin / Ben Zimmer / Sep-16 2010 https://www.nytimes.com/2010/09/19/magazine/19FOB-OnLanguage-Zimmer.html 2 Seven releases Here Come The 123s, Podcast 32A year2008 https://www.youtube.com/watch?v=XEVFeMlpW1Q&index=9&list=PLCA5A48FEDC89C472&t=0s →チャンキングで丸々覚える 日本語チャンクでシンハラ語を生み出す方法② |